■調べてみると色々アレだけど、二人の間にだけ漂う愛というものがあるのかもしれません


■オススメ度

 

親子の絆を描いたヒューマンドラマが好きな人(★★★)

贋札事件の背景を知りたい人(★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.1.3(京都シネマ)


■映画情報

 

原題:Flag Day

情報:2021年、アメリカ、112分、PG12

ジャンル:愛する父の裏の顔を知った娘の葛藤を描いたヒューマンドラマ

 

監督:ショーン・ペン

脚本:ジェズ・バターワース&ジョン=ヘンリー・バターワース

原作:ジェニファー・ボーゲル/ Jennifer Vogel(『Flim-Flam Man: The True Story of My Father’s Counterfeit Life(2005年)』

 

キャスト:

ディラン・ペン/Dylan Pennジェニファー・ヴォーゲル:苦悩する犯罪者の娘)

 (10代:Jadyn Rylee

 (6歳時:Addison Tymec

 

ショーン・ペン/Sean Penn(ジョン・ヴォーゲル/John Bryson Vogel:ジェニファーの父、贋作事件の犯人)

キャサリン・ウィニック/Katheryn Winnick(パティ・ヴォーゲル:ジェニファーの母)

ホッパー・ペン/Hopper Penn(ニック・ヴォーゲル:ジェニファーの弟)

 (少年期:Beckam Crawford

ジョシュ・ブローリン/Josh Brolin(ベック:ジェニファーの叔父)

Dale Dickey(マーガレット:ジェニファーの祖母)

 

Regina King(ブレイク:アメリカの国務長官)

 

Norbert Leo Butz(ドク:パティの新しい恋人)

ベイリー・ノーブル/Bailey Noble(デビー:ジョンの新しい恋人)

 

エディ・マーサン/Eddie Marsan(エマニエル氏:大学の面接官)

 


■映画の舞台

 

1992年、

アメリカ:ミネソタ州

ソーク・センター

https://maps.app.goo.gl/AbmzG48cT53DWqbF9?g_st=ic

 

アメリカ:ケンタッキー州

ブルー・グラス

https://maps.app.goo.gl/Vx3Nq2aPNjuAzJur9?g_st=ic

 

ロケ地:

カナダ:マニトバ州

ウィニペグ

https://maps.app.goo.gl/onaH1rN8jfSGWFxe7?g_st=ic

 

マニトバ大学フォートギャラリーキャンパス

https://maps.app.goo.gl/YCxWa3FryB3Yg6jP9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

1992年、アメリカにて「贋札事件の犯人が裁判の直前に逃亡する」と言う事件が勃発する

娘のジェニファーは父がその犯人だったことを知るものの、父を愛する気持ちは変わらなかった

 

時は遡り、1981年、ジェニファーは父ジョン、母パティ、弟のニックとともに過ごしていた

父は農場を買い込んで事業を始めるものの、先行きはあまり良くなく、夫婦仲も最悪になってしまう

父は事業に失敗から姿をくらまし、母はアルコール依存症に陥っていく

 

そんな様子を危険だと感じた伯父のベックは、ジェニファーとニックを連れて、父親の元に届けることになった

父には新しい恋人デビーもいて、彼らは一緒に暮らし始めるようになった

 

その頃、母も新しい男と関係性を持っていたが、その男ドクはジェニファーにちょっかいを出し始めるのであった

 

テーマ:父娘の絆

裏テーマ:孤独と虚構

 


■ひとこと感想

 

愛する父は世紀の犯罪者だったと言う実話ベースのヒューマンドラマで、ショーン・ペンさんと実の娘&息子が登場すると言う家族映画でした

内容はシンプルで、裁判直前に父が逃走して、それを見守る娘が幼い頃からの「父との思い出に浸る」と言うもの

どこまで行っても、父を愛することには変わりなくて、でも父親は嘘まみれの男だったと言うふうに紡がれています

 

映画のテンポは異様に遅く、ゆったりとしたドラマが好きな人向けの内容で、睡眠不足で行くと一気に持っていかれる内容ですね

私も2本連続の鑑賞で集中力が途切れてしまいましたが、それでも物語の把握には問題なかったりするのが不思議なところですね

 

父の物語のように見えますが、実質的には娘はこう思っていたと言う自伝のようなもので、アメリカを震撼させた事件の内情に迫るクライム映画ではありませんでした

そのあたりが勿体無いかなと思いましたが、原作からして「父を回顧する」と言う娘目線の物語なので、この偏愛にも似た感情をどう捉えるか、と言う感じになっています

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

原作の「Flim-Flam Man」がペテン師とか詐欺師と言う意味があって、贋札事件だけでなく、様々な出来事に「嘘が多い人生だった」と振り返っています

家庭内不和、養父からの暴力と逃避などを経て、ジェニファーはジャーナリストの道を歩みます

 

彼女が優秀であること、ジャーナリストを目指している理由などがラストで明かされますが、彼女の観察眼による父の物語は「愛情によって歪んでいる」と言う印象を持ちました

 

フラッグ・デイに生まれた父の数奇な運命といえば聞こえは良いのですが、父も娘も大概ヤバいよねと言う感覚は拭えません

この環境で娘がジャーナリストになれた経緯の方がサプライズで、それを中心に据えると物語の軸はブレそうに感じました

 

ともかく、物語の展開がスローで、史実ベースなので、事件を知っている人が観てサプライズを感じるのかは謎ですね

結局のところ、娘から見た父はこんな人だったと言うことと、それでも愛すべき存在だったと結ばれるのですが、その関係性が特殊すぎるので共感性は低いのかなと思ってしまいますね

 


贋札事件のあれこれ

 

1995年1月12日のこと、ジョンはテキサス州ブラウンズビルの配送センターに出向き、そこからミネソタ州の自分が経営している営業所に小包を送りました

配送員は荷物を不審がりましたが、彼は内容物を「服」と答えました

配送員の懸念は、その配送所がメキシコに近かったため、中身が麻薬ではないかと疑ったとされています

配送員は荷物を受け取った後、ジョンが姿を消したのを見計らって、麻薬取締局に通報しました

 

その後、荷物はミネソタ州に送られ、そこの配送所にて地元の調査員が荷物を調べます

中身は「2つのエアゾール容器、いつくかの紳士服、4グラムのコカイン、38枚の100ドル札」が見つかり、「偽造に使われるテストプリント用のストリップ(プリント基盤、放熱用のマイクロストリップのことと思われる)」「テストプリントは財務省のシールとシリアルナンバーが刻印」されていました

捜査官はジョンの過去を調べ、1986年に武装銀行強盗で服役した過去を知ります

その後、1991年からミネソタ州ミネアポリスにて、小さな印刷会社を始めていたことも判明します

連邦捜査官は荷物を元に戻して通常配送させ、覆面捜査官がその荷物を運びます

そして、ジョンの印刷会社に荷物が運ばれたことを確認して逮捕するに至りました

 

会社を調べる中で、保管用のロッカーから「196,116枚の100ドル偽造紙幣」が見つかります

技術に関しては、前回の強盗の服役時に印刷関連の業務に配属され、そこで技術を学んだとされています

流通量は500枚程度でした

その後、裁判へと進みますが、1995年1月17日に保釈され姿を消してしまいます

 

その後、1995年7月12日、ジョンはサウスダコタ州のスーフォールズで銀行強盗を行った後、FBIによって高速道路を追われます

そして、ミネソタ州のラッシュモア近くまで逃走した末に、ジョンは銃で自殺を図りました

これが映画の結末にあたる部分ですね

ちなみに事件は、アメリカ史上最大の偽札偽造事件であると記録されています

 


フラッグ・ディについて

 

「フラッグ・ディ」とは、「毎年6月14日の記念日」で、「1777年の6月14日にアメリカ合衆国の旗が採択された記念日」となっています

1916年にウッドロウ・ウィルソン大統領は「6月14日を正式にフラッグ・ディと定めることを布告」します

その後、1949年8月3日に「フラッグ・ディ」が議会法によって制定、フラッグ・ディは合衆国の連邦休日ではないとされています

 

国旗の制定を初めに祝ったのはワシントン州フェアフィールドで、ほぼ毎年パレードを行なっているそうです

その他にもウィスコンシン州アップルトンで開催されたり、マサチューセッツ州クインシーでもフラッグ・ディ・パレードが行われています

一番規模が大きいとされているのが、ミシガン州スリーオークスのパレードで、記念日前後を合わせた3日間のイベントになっています

 

現在では、6月14日のある週(2022年だと、6月12日〜17日)は「国旗週間」として、大統領が「国旗が制定された日である」と言う布告を発します

旗は全ての政府の建物で掲げられ、いくつかの町でパレードが行われます

 ↓クインシーで行われた「Flag Day Parede」の動画です

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は「父と娘」が実際の「父娘」となっていて、存在感の薄い弟も実の息子になっています

原作は「娘から見た父」として、「信用ならない男だけど愛していた」と言うテイストで、本作は真逆のスタンスになっています

父は様々な罪を犯してきたけれど、家族に向けた愛は本当だったと言うものですが、実際のジョン・ヴォーゲルの人生を紐解くと、家族から見た「補正」と言うものがかなりかかっているといえます

 

わかっているだけでも、武装強盗、偽札製造、銀行強盗だし、最後の銀行強盗は「偽札裁判の直前」と言うのだから呆れてしまいます

さすがにこれだけのことをして、「親子愛は本物だった」と言うのはどうなの?と思ってしまいます

映画では、ジョンの過去の犯罪、自殺直前の強盗などは描かれておらず、あのまま抵抗を続けていれば「射殺されていた」と言うことは予測されます

 

映画は、その直前に「父のことを思い返す」と言う構成になっていました

映画の冒頭の年代表記は「1992年」なので、武装強盗服役後になり、その時点の回想が「若い青春時代」になりますね

そして、さらに深い階層は1986年以前となり、こちらが少女期ということになるでしょう

 

少女期の段階では武装強盗服役のことは理解できていないし、服役中に色々と知った割にはジェニファー自身は父を肯定的に捉えていました

そして、現在軸の段階ではほぼ成人で、偽札で捕まって裁判になるということは理解できています

なので、この時期のことを回想すると、「信用ならない男」というのは言い得て妙ということでしょう

 

せっかく、服役を終えて真っ当な人生を送ろうとした段階で、印刷会社(映画では農場)を経営し始めたのにうまくいかない

母は愛想を尽かして出ていってしまい、ジョンは新しい恋人デビーを母親がわりにして一緒に住む時代がありました

それなのに「裏では偽札を作っていた」というのが判明し、ジョンは偽札かどうかわからない札束をジェニファーに残していました

さすがにここまで来ると「父を理解できない」感じになるので、それまでの父の姿のほとんどは「嘘だった」と認識せざるを得ません

 

それでも、父のことを愛していたというテイストになっているのですが、それはショーン・ペンがジョンの代弁者として語っているからでだと思うのですね

なので、どこか「嘘だらけの人生」というものがショーン・ペンの何かを刺激したのでしょうが、映画を見る限りでは「最低な父親だけど、子どものことは愛していた」という部分に起するものがあったと想像できます

とは言うものの、いくらなんでも許容できない父親なので、この親子愛に関しては共感を得づらいかなと感じました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/383352/review/24cc7cc8-a7a8-4506-9bb6-6002470ab130/

 

公式HP:

https://flagday.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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