■授業で盛り上がってもクラブが存続できないのは何でだったんだろうか
Contents
■オススメ度
青春映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.10.28(MOVIX京都)
■映画情報
英題:Give It All(すべてを捧げる)
情報:2024年、日本、95分、G
ジャンル:ボート部を通じて青春する女子高生を描いた青春&スポ根映画
監督:櫻木優平
脚本:櫻木優平&大知慶一郎
原作:敷村良子『がんばっていきまっしょい(1996年)』
キャスト:
雨宮天(村上悦子/悦ネエ:流されてボート部に入る女子高生)
伊藤美来(佐伯姫/ヒメ:悦ネエの親友)
高橋李依(高橋梨衣奈/リー:ボート部を復活させる転校生)
鬼頭明里(兵頭妙子/ダッコ:ボート部に入るお嬢さま)
長谷川育美(井本真優美/イモッチ:ボート部に入るお嬢さま)
江口拓也(二宮隼人:唯一のボート部員)
演者なし(渋川:ボート部の顧問)
竹達彩奈(寺尾梅子:港山高校のボート部のエース)
三森すずこ(大野舞:梅子のチームメイト)
内田彩(安田夏央莉:梅子のチームメイト)
藤田優香(悦子の母)
宮田俊哉(レース実況、校内)
岡野友佑(レース実況、大会)
中村早希(悦子たちの担任)
■映画の舞台
愛媛県:松山市
三津東高校
ロケ地:(モデル)
愛媛県:松山市
お好み喫茶 ソフトタイム
https://maps.app.goo.gl/nyPm49fnzYXBeUQL7?g_st=ic
珈琲館 赤煉瓦(リーのバイト先)
https://maps.app.goo.gl/h7vD5k4Yq3Rwp1Qd6?g_st=ic
DUKE SHOP 松山店
https://maps.app.goo.gl/cXx1xq2z2dHWjvj86?g_st=ic
梅津寺 ブエナビスタ
https://maps.app.goo.gl/MwZ2cqqoVSTD3vmC8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
高校2年生の悦子は、校内のボート大会に参加していたが、途中でやる気をなくして途方に暮れていた
そんな様子を見ていた転校生の梨衣奈は、ようやく夢のボート部に入れると心を躍らせていた
だが、その校内大会を最後に部員は引退となり、ボート部は廃止状態になっていた
偶然、梨衣奈の隣の席にいた悦子と姫は、「隣のクラスに二宮がいる」と言い、彼は唯一のボート部員だった
梨衣奈は極度の男性恐怖症だったこともあり、悦子と姫は一緒に彼女を二宮のところに送り届ける
二宮は「部の復活には最低4人は必要」と言い、断りきれなかった悦子と姫は名前だけを貸すことになった
だが、そんな彼女らの元に、ボートで決着をつけたいという妙子と真優美が復活を聞きつけてやって来る
そして、流れに逆らえぬまま、悦子と姫も部活動を開始することになったのである
テーマ:青春を捧げるもの
裏テーマ:心がひとつになる理由
■ひとこと感想
かなり古い原作がアニメになるということで、なんで今更と思いながらも鑑賞してきました
CGアニメになるのだと思いますが、この動きには好き嫌いがあるように思います
リアルテイストなのか、常にゆらゆらしている感じになっていて、こだわるところはそういうところではないだろうと思ってしまいます
物語は、巻き込まれ女子高生の変化を描いていますが、彼女自身の成長は目に見えるようでも、キャラが大きく変わるということはなかったですね
それにしても、あそこまで描くなら、恋愛関係は放置してほしくなかったですね
おそらくは、彼にその気がゼロだとは思いますが、悦子の迷いの起因はそこにあったと思うので、スルーはどうなのかと思いました
映画は、映像は綺麗なのですが、エンディングが全く無縁のアイドルでしたね
この手の作品は声優が歌うとばかり思っていましたが、プロの歌手(アイドルだけど)の割には「ええ」という感じになっていましたね
愛媛の松山が舞台なのですが、現地民ならわかるあるあるが入っていたのでしょうか
ほとんど方言が出てこないので、あまりご当地っぽさを感じませんでした
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作にネタバレがあるのかは何とも言えないのですが、一応は最後のレース結果がどうなるかということになると思います
最後の夏が終わって、それぞれは新しい道を行くことになると思いますが、彼女たちが今後どのような進路を取ったのかがわかりませんでした
大学のボート部に行くとか、受験で都会に行くとか、家業を継ぐなんてものもあったと思いますが、完全にスルーされていました
スルーと言えば、悦子の恋愛も中途半端で、梨衣奈と一緒に居ただけであれだけ動揺して誤解する割には、その後は関係性がほとんど変わらなければ、その穴埋めもしていない感じになっています
はっきりと好きとかが出てこないのですが、かと言って姫とそういう関係であるということもありません
映画は、かなり中途半端な流れになっていて、これが原作準拠なら仕方がないのかもしれません
でも、約30年もの月日を経てわざわざアニメ化するぐらいなので、そこはオリジナルで映画的な結末を迎えても良かったように思えました
■青春を捧げる価値
本作は、校内大会を見た梨衣奈がボート部を復活させるという物語で、ボートバカの二宮が助け舟を出すことになりました
梨衣奈は転校生で、自分が何者であるかを確立したくて、そこで心を奪われたボートにのめり込んでいきます
彼女の真逆の性質を持っている悦子がいて、クールに見える女性に憧れを抱えていたとも言えます
転校前の梨衣奈は描かれませんが、おそらくはぼっち寄りだったのかなと思いました
中学、高校にはクラブ活動がありますが、一方で属さずに帰宅部という人もいます
学校によって強制と自由が分かれると思いますが、クラブ活動には大きく分けて二つの効能があると思います
ひとつはチームプレイになることが多く、協調性を高める機会を持てるということでしょう
個人競技のスポーツであっても、全てを自分で賄えるものではなく、自分の競技のためにバックアップをしてくれる存在のことを知ることになります
もうひとつは将来的な適性の確認で、それは組織のどの立場が自分を活かせるのかを学ぶことと、自分自身の欲望の方向性を確認できることだと言えます
協調性=組織内の振る舞いとなりますが、人は4つの気質に大きく分かれるとされています
リーダーシップを好む「コントローラー」、補助に入る「サポーター」、状況を分析する「アナライザー」、チームの雰囲気を担う「プロモーター」
人には全ての要素が満遍なく入っていますが、その中でしっくりくる適性というものがあって、それが進路を選ぶ際にも重要となります
会社選びをするとしても、希望部署に影響が出るし、組織の大きさ(=責任の大きさ)というところにも直結します
このような適性は、一生懸命やった末にわかるもので、そのためには「同じ目的を有するチームに加わる」というのが最も効果的であると言えます
目的がバラバラだとそこに行き着く前に終わってしまうので、明確に全国大会!などの目標がある方が良いのですね
そんな中で、他人から期待される自分、自分が認知する自分などが明確になっていって、最終的にはいずれかのタイプに属することが理解できるようになります
自分の不得手な性質で期待されてしまった人もいるだろうし、自分を過剰評価していた人もいるでしょう
でも、そのような理解は体験なくしては進みません
なので、可能な限り、目的を共有するチーム競技のクラブに入った方が良いと思います
■勝手にスクリプトドクター
本作は、クラブ活動に勤しむ女子高生たちを描いていますが、青春にありがちな色恋沙汰があるようで無いという感じに描かれていました
梨衣奈が二宮と二人で話しているだけで妄想全開でメンタルが崩壊する悦子を描いていますが、その後どうなったのかなどはほとんど描かれていません
二宮に女っ気が無いこともアレですが、彼以外の男性が登場しないことも、そっち方面に話が進んでいかない要因のように思います
恋愛に関してはどっちでも良いのですが、梨衣奈と悦子の関係悪化に利用するならば、その結末はきちんと描いたほうが良かったのでは無いでしょうか
チーム内不和が起こって実力を出せなくなるという枷でしかない恋愛は、分解すると悦子の嫉妬心ということになります
人の嫉妬心は恋愛だけで生まれるのではなく、単に梨衣奈の飲み込みが良くて、実力的に疎外感を感じる(本人の思い込み)というものでも代用が効きます
梨衣奈は目に見えて成長するけど、悦子は自分の成長が感じられず、徐々にボートから心が遠ざかっていく
これは見たまんまの物語になっていて、そもそも二宮の存在すらも、ボート部復活の道具でしかありませんでした
悦子に二宮への恋愛感情があったとしても、それを起こるエピソードは描かないし、悦子自身が二宮に梨衣奈を紹介しているので、そう言った感情は当初は持ち合わせていないように見えます
それが一緒にいる時間が増えていく中で二宮を見る機会が増えて、それが隠されていた恋愛だったと気づくことになるのですが、二宮の活躍みたいなものがほとんど描かれないので、何の魅力があるのかもわかりません
せめて二宮が参加するレースを描き、そこで嫉妬心に気づくぐらいのざっくりしたエピソードがあった方が良かったでしょう
そこそこの成績を残した二宮を讃える中で、自分にはできないボディタッチとかをさりげなくする梨衣奈を見て、そこで「違い」を認識することになります
二宮との距離感が明確になり、彼がどんなタイプの女性に興味があるのかなどを考えてしまう
そんな中でも梨衣奈は天然キャラ全開で悦子を挑発しまくる(悪気はない)というのが溝深める原因として育っていきます
そうした先に「ボート競技の実力差の接近」とか、「梨衣奈に対する二宮の距離感の変化」などが一気に押し寄せて、あのような反応になるというのでも良いのですね
実際には二宮と梨衣奈にはそんな感情はないのですが、悦子だけは恋愛脳にやられて前が見えなくなっていたりする
そういった視野狭窄に気づく梨衣奈がいて、そこで余計なおせっかいをかけることになります
そして、その瞬間が二人の関係性のターニングポイントで、梨衣奈の知らずに起こす上から目線に悦子が反発することになります
ここまでドロドロになると手がつけられないのですが、結局のところ悦子を元のマインドに戻せるのは二宮しかいないのですね
なので、二宮と悦子の関係性の決着はつけた方が良かったと思います
この映画の流れだと悦子はフラれますが、同時に梨衣奈に興味が1ミリもないことも判明するでしょう
そして、一人相撲に明け暮れた悦子が元に戻ることで、物語はわかりやすい完結を迎えるのかな、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、青春をボートに捧げる系の青春映画ですが、主人公は何の取り柄もない普通の女子高生となっていました
属性も特徴がなく、脇役とされるキャラは設定満載で、どこか空気になっている部分がありましたね
彼女目線だと異世界招聘ものになっていて、その土地にある問題を可視化するという役割を担っていると言えます
この土地にあった問題というのはそこまで大きなものではなく、ボート部が参加人数の関係で休部になっていたことになります
授業でボート大会があるのに、ガチのクラブには人がいないのですが、その理由についてはほとんど語られませんでした
ボート部には輝かしい歴史があるし、コーチになる人は伝説級の人だったとしても、クラブ活動としては成立しないのですね
映画では、このあたりの「ボート部離れ」にはほとんど言及しないので、ちょっとだけモヤモヤ感が残っているように思います
結局のところ、憧れによって部は再開され、それぞれの想いが交錯することになりますが、彼女らのマインドも部の存続とは直接関係なかったりします
ダッコとイモッチはそれぞれ特権階級でいがみ合っているだけだし、ヒメも悦子のバーターみたいな感じで登場します
ボートの入り口を広げる効能があるとも言えず、解説アニメにもなっていないのが不思議でしたね
ルールの説明もなければ、ヒメのボートにおけるポジション(コックスと言います)に関する言及もありません
なので、どこに誰を配置するかという重要性もわからず、ある程度ボート競技について詳しくないと意味不明な部分が多かったように思います
ボート競技は、進行方向から順に「バウ(軸手)」「2番手」「3番手」がいて、「ストローク(整調)」「コックス」という役割があります
ストロークサイド(ストロークと3番手)は進行方向に向かって左側で、右側がバウサイド(バウと2番手)となっています
ストロークはレース中のピッチを担い、バウは選手全体を俯瞰する立場になっているし、コックスは心理面のリード(選手の対面になる)をすることになります
映画では、コックスがヒメ、ストロークが悦子、バウがイモッチになっていて、ダッコが2番手、梨衣奈が3番手を担っていました
このポジショニングにも意味があって、経験値や実力などが反映されているのですが、その説明はさらっとだけで、コーチが実力を見て配置していたことになります
どのポジションに負荷が掛かるとか、どうしたら力を出せるのかなどは専門的な部分が多いと思いますが、ある程度は説明したほうが良かったのではないかと思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101452/review/04414460/
公式HP:
https://sh-anime.shochiku.co.jp/ganbatte-anime/