■ぶっちゃけ、今回の一連の共闘で、ファジンは色々と骨抜きにされちゃったんだと思います


■オススメ度

 

スリリングな犯罪映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

https://youtu.be/LL2uXeYeM-4?si=BZp_E1iYyUZFz6L_

鑑賞日:2024.2.14(T・JOY京都)


■映画情報

 

原題:젠틀맨(紳士)、英題:Gentlman

情報:2022年、韓国、123分、G

ジャンル:ある事件に巻き込まれた興信所の男が敏腕検事になりすまして事件を解決する様子を描いたクライムミステリー

 

監督&脚本:キム・ギョンウォン

 

キャスト:

チュ・ジフン/주지훈(チ・ヒョンス:仕事完遂率100%の興信文化センターの所長)

パク・ソンウン/박성웅(クォン・ドフン/マイケル・クォン:ファニュ法律事務所の代表)

 

チェ・ソンウン/최성은(キム・ファジン:イカレ女と揶揄される凄腕検事)

 

カン・ホンソク/강홍석(チョ・チョンモ:ヒョンスの仲間、撮影担当)

イ・ダル/이달(チョ・ピルヨン:ヒョンスの仲間、追跡担当)

パク・ヘウン/박혜은(イラン:ヒョンスの仲間、凄腕ハッカー)

 

クォン・ハンソル/권한솔(ジュヨン:ヒョンスに犬探しを依頼する女性)

チャンチョン/장천(ファジンの愛犬)

ピョ・ヨンソ/표영서(オ・ヨンス:ジュヨンの友人)

イ・フンギョン/이훈경(オ・ヨンスの母)

 

イ・ソファン/이서환(イ班長:ファジンをイカレ女だと紹介する刑事)

イム・ソンジェ/임성재(チャ刑事:ソウル警察の刑事、尋問に同席)

チェ・チャンウク/최창욱(キム巡査)

 

ハン・サミョン/한사명(キム係長:ファジンの後輩検事)

キム・ナニ/김난희(チョン検事部長:ファジンの上司)

イ・ファジョン/이화정(ファジンの先輩検事)

 

パク・ジフン/박지훈(ソン・ミョンホ:闇クラブのマネージャー)

 

イ・ヒュンギュン/이현균(カン検事:ヒョンスと入れ替わられる検事、ソウル中央地検)

 

ソン・グァンジョ/송광주(屋台のオーナー/大将)

チョン・ヘジャ/정혜자(居酒屋のオーナーの妻)

 

クァク・ミンギュ/곽민규(ト・ジュノ:盗撮男)

 

キム・グィソン/김귀선(中央地検の検事長)

オ・アヨン/오아연(中央地方検察庁の長官)

ヨ・ビョンスン/유병선(検事長の声)

キム・ゴン/김건(副検事の声)

 

ハン・ウドゥム/한으뜸(ドフンの秘書)

ハン・ウテム/한으뜸(ドフンのアシスタント)

ソン・バンホ/송방호(チェ:ドフンのテニスのコーチ)

 

キム・ユミン/김은민(ダミ:GPSをつけられる女性)

チェ・ヘジン/최희진(ヒョンスにカン検事について教える看護師)

チョ・ビョンジョン/추병준(ヒョンスの妻、写真)

 

アヌバム・トリパティ/अनुपम त्रिपाठी(キム・デウン:ハッカー)

ジョン・ギョヨン/정규영(ウ・テシク:ハッカー)

 

パク・サンウン/박상운(ヒョンスの事務所のモーテルの受付)

ハン・サンチュル/한상철(向かいのアパートから覗き込む男)

チョン・ヨンギ/전윤기(路地裏の男、依頼主との仲介役)

ヨ・ジンア/유진아(フランス語通訳/ヨーロッパ鉄道の情報アナウンス)

 


■映画の舞台

 

韓国:ソウル

ソクチュ/束革

ピョンチャン/平令洞

 

ロケ地:

韓国:ソウル

 


■簡単なあらすじ

 

ソウルにて、興信所を経営しているヒョンスは、ある少女からの依頼にて犬探しをすることになった

少女がある館に入っても戻らず、その後を追ったヒョンスは何者かに襲われてしまう

目覚めると、そばにはナイフが落ちていて、ヒョンスは少女の誘拐犯として傍を通りかかったカン検事に捕まってしまった

 

だが、その車両は大事故を起こし、ヒョンスは命からがら脱出する

ヒュンスは病院に運び込まれるものの、なぜかカン検事と間違われてしまい、彼はそのまま検事になりすまして、自分をハメた男を追う事になった

 

そして、その捜査線上にて、少女は人身売買組織に関わっていて、大手法律事務所の代表クォン・ドフンによって中央検事長が顧客にいるのではないかと疑われた

これによって、「イカレ女」ことファジン検事も加わり、ヒョンスはチームを結成して犯人を追う事になった

 

テーマ:捜査に向かう心意気

裏テーマ:自意識過剰の盲点

 


■ひとこと感想

 

かなり入り組んだ物語になっていますが、振り返ると冒頭からおかしな事だらけで、色々仕組まれていたものが一気に判明する後半は爽快な感じがしました

事前知識をほぼ何も入れなかったのが正解で、ネタバレはない方が楽しめる映画となっています

 

ひょんなことから検事に間違われた興信所の男が、自分をハメた犯人を追っていく中で、事件の担当検事と遭遇するという流れになっています

この担当検事が相当の切れ者で、「イカレ女」という異名がついているほどの凄腕でした

 

映画は、イカレ女ことファジンと主人公ヒョンスの頭脳合戦になっていて、難敵ドフンをどう攻略するか、という内容になっていました

存分まで楽しむためにも、本当にネタバレは踏まないことをおすすめいたします

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

興信所のアジトがモーテルとか、通りすがりの検事にあっさり捕まっているとか、ファジンが干されている理由などの伏線が絡みに絡んでいて、ヒョンスの思惑は最後まで隠されていたものになっていました

2回目だとたくさんの発見があると思いますが、何気ない情報をきちんと覚えておくと、1回目でもヒョンスが何をしようと考えていたのかがわかるようになっていました

 

映画は、ある時点を冒頭のシーンに持ってきていて、それが「ヒョンスが検事ではないとバレているシーン」になっていました

ファジンとチャ刑事の取り調べを受けている中で、嘘発見器の結果が出るのですが、それは「嘘をついている」というものでした

このシーンが回想のどの時点だったかが重要で、それによって「ヒョンスの嘘」というものの質がわかるようになっています

 

結果的には、数年前に起きた金融事件が起点になっていて、その被害者である屋台の夫婦の仕返しを買って出ていたのですが、最後の最後まで観ないとどうなったかがわからないのですね

ラストシーンがあることによって、タイトルがジェントルマンである意味がわかるのですが、粋な事に命をかけてきたのは痺れる展開だったなあと感じました

 


回想録の使い方

 

本作の構成は、「ファジンとチャ刑事によるヒョンスの取り調べ」シーンが冒頭にあって、そこで「これまでの供述は嘘だった」と判明するところから始まります

そして、同じ場面が登場するまでは「ずっと嘘判定の供述の回想録」というものを見せられる事になりました

ジョヨンからの依頼で犬を探し、別荘のようなところで暴行に遭い、検事に捕まって事故に遭い、検事になりすまして事件を追う

これら一連の出来事のどこかに嘘がある、という事になります

 

その後、ジョヨンがヒョンスに近づき、この事件の背景にドフンがいることを知って、「有能な検事が率いるチーム」とタッグを組むことになりました

この時点ではすでにファジンが完全に術中にハマっていて、ドフンと過去の事件へとかなり急接近して行きます

ピリョンが捕まって暴行されたことで警察を動かさざるを得なくなり、同時にヒョンスが成りすましの別人であったことが判明していました

それによって、冒頭の取り調べシーンが始まる、という流れになっていました

 

この構成の面白いところは、単純に「何らかの形で敵対関係にある」というところを仄めかすだけではなく、「これらの一連は嘘ですよ」と宣言していることなのですね

でも、観ている間に「取り調べに至るまでのシーンが嘘の供述である」ということを忘れるくらいに、スリリングで展開の早いものになっていました

そして、再度同じシーンに戻った時、観客は「どのシーンが嘘だったのか?」を考えるようになります

この時点では、ファジンの立場と観客が同じになっていて、そこから先に見えてくる真相は、彼女の能力を超えたものになって行きます

 

ファジンは「嘘の本質」を見抜けず、その後もヒョンスに利用されていくのですが、この展開が見事すぎて感服してしまいます

後半はファジンの狼狽が起こるまでが観客と同じ目線になっていて、それが程よく進行した頃に「一気に梯子を外す」という展開になっています

そこからは、怒涛のネタバラシになっていて、「どこまでが嘘か?」というのを嘲笑うかのように、「全部嘘だったんですよ」と解答を見せていくことになりました

 

本作における回想の効能は、嘘の体験者であるファジンと同じ目線になることでした

それによって、ヒョンスの仕掛けた「全部嘘」の罠にハマるようになっていて、それが「解答」の効能を上げて行きます

回想録は「ストーリーを進ませるためにある」とは言いますが、本作ではそのセオリーを逆手に取って、「劇中内のある人物と目線を交錯させる」という意味合いがありました

これはかなり高度なシナリオテクニックだと思います

 


懐をどこまで見せるか

 

前半の全部が嘘だとしても、騙せるだけのリアリティというものが必要になります

この作戦で必要だったのは「ファジンを信用させつつ、彼女に近づく」というもので、彼女のカン検事リサーチ能力をいかに無効化するかということになります

今回は、ハッカーによる検察システムへのハッキングと画像すり替えが行われていて、ヒョンスはファジンがこれ以上は深掘りしないだろうという目処をつけていました

IDカードとデータベース照合以上の深掘りをするには、ヒョンスが検事であるかどうかを疑う段階にまで来ないと難しいのですね

事故現場にいる検事というだけではそこまで考えることも難しく、カン検事の自宅もしくは別荘もデータベースには組み込まれているので、あの場所にいる不自然さというものもなかったように思えます

 

その後、ファジンに考える隙も与えずに、事件が「ある少女の依頼」へとフォーカスされ、彼女がドフンの経営する闇クラブに通じていたという情報を先に提示します

これによって、ファジンは事件の奥側に意識を投じ、目の前にいるヒョンスに疑いを持たなくなる、という流れになっていました

ファジンにとっては、かつて苦渋を舐めさせられたリベンジができると感じていて、その突破口を見つける事に躍起になります

そして、ヒョンスのやり方というものに興味を持たせる事によって、共闘への流れをスムーズに行う事になりました

 

ヒョンスは、この時点で全ての手札を見せていて、その手札をファジンは利用する立場にあります

同じコントローラーを握ってゲームをしているような状況になっていて、このVRゴーグルで一緒にプレイ状態というものが、さらに目を曇らせる事になっています

ファジンはあまりにも速い展開についていけず、しかも手柄が目の前にあるというお預け状態になっています

これによって、ヒョンスのファジンの利用は終わり、完全なネタバラシシークエンスへと移行する事になりました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作では、自分のゲームのために手札を手に入れる様子が描かれていて、この巧妙さが物語を面白くして行きます

彼はドフンを倒すために必要なものを熟知していて、それによって必要な情報を手に入れるためにあらゆる方策を施します

しかも、その過程が綱渡り的であればあるほど、ファジンを手札に加えることができるという確信を持っていました

普通に考えて、「検事になりすますために大事故に巻き込まれる」ということを行うとは思えず、そこで間違われる確率もほぼゼロに等しいでしょう

 

ヒョンスは「世間が検事に持っているイメージ」というものを利用し、自分がスーツで相手が私服という瞬間を狙い、同時にIDカードの照合の段階で入れ替わることに成功して行きます

彼が現場に出向いたのは、そこにファジンが来るかどうかを確認することで、あの場所が彼女の管轄であることも承知していたのだと思います

事故に巻き込まれた検事が事故現場にくることは不自然ではなく、そこでファジンが事故をどのように捉えているかを確認する

この時点では、もう一人いたということがわかれば良く、それをファジンが認知しているだけで、次のステップにいくことができました

 

そこで、ジョヨンの背景を探っていくうちに、彼女が知っている情報を小出しにして前掛かりで出していくのですね

ここでの誤算は「検事ならドフンを知らないハズがない」というファジンの思い込みで、これによって「ファジンの中にカン検事への疑念」というものをわざと挿入して行きます

これまでに信じてきたものに疑念が湧いても、それを信じた自分を否定することは難しく、それによってファジンはヒョンスを信じるに値する人物であると無理やり思い込むことになります

でも、そうした葛藤の間にも事件は動いていて、それを刺激するのがピリョンの拉致という事になっていました

 

映画は、これらの体を張った命懸けのパフォーマンスによって、ファジンは精神的に疲弊し、正常な判断ができない程に追い込まれて行きます

ドフンの方もペースを乱されることで隠していた暴力性が出現し、それによってアドレナリンを放出する流れになっていました

最終的には、顔認証を罠だと感じ、スマホによる認証へと切り替えますが、これすらもヒョンスによる仕掛けだったと言えます

 

スイス銀行へのアクセスをした段階で情報を抜き取るように仕掛けていて、いわゆるフィッシング詐欺で使われるダミーページを仕込んでいたのですね

ファジンのPCと連動させたように、同じようにドフンのパソコンと連動させていて、ログインした段階で一気に資金の移動の操作というものを行なって行きました

スイス銀行のシステムがどのようなものかは知りませんし、実際にあのようなことができるのかはわかりませんが、ドフンがログインした後の画面も全てダミーで、ログイン情報が取得できればOKなのだと思います

それによって、スマホの画面とPCの画面で違うことが起きていて、それによって、キレイさっぱりとお金が奪われたことを知る事になりました

 

映画は、その後のネタバラシも凝ったものになっていて、何かの報告書を読むような感じで、事の顛末をファジンに教えて行きます(おそらくは今回用意した脚本のようなもの)

そして、単なる金泥棒ではなく、これらの回収金を被害者に返すと言ってしまうのですね

これが実行されればファジンは彼らを捕まえる理由がなくなり、実際に犯罪を犯していたとしても、それを追求する手立てというものがなくなってしまいます

検察の面汚しを一掃でき、また検事内で起きたことは隠蔽される傾向にあるので、目的を果たしたファジンが動くことは考えられません

ここまで見越してのヒョンスの動きではありますが、終わってみれば彼は1円も得をしていないように見えるのですね

このあしながおじさん的な思想は「恩人に恩を返す」という起点があるのと、彼ら自身がこのゲームを楽しんでいることでチャラに近いのでしょう

でも、表に出せないお金もドフンが運用していた可能性があるので、被害者への返金以上に「加害者側の資金」を没収することに繋がっているので、相当の利益が出ていることは間違いないのだと思います

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/100873/review/03486445/

 

公式HP:

https://klockworx-asia.com/gentleman/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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