■「やらかし」が多いほど、少女は愛される女性へと成長していく


■オススメ度

 

青春期に女の子たちの生態を見たい人(★★★)

フィンランド映画に興味のある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日2023.4.10(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題Tytöt tytöt tytöt(女の子、女の子、女の子)、英題:Girl Picture

情報2022年、フィンランド、101分、PG12

ジャンル:年頃の女子たちのセックスの悩みを描いた青春映画

 

監督アッリ・ハーパサロ

脚本イロナ・アハティ&ダニエラ・ハクリネン

 

キャスト:

アーム・ミロノフ/Aamu Milonoff(ミンミ:スムージースタンドで働く女子高生)

エレオノーラ・カウハネン/Eleonoora Kauhanen(ロンコ:ミンミの親友)

リンネア・レイノ/Linnea Leino(エマ:大会を控えるフィギュアスケーター)

 

Sonya Lindfors(タージャ:エマのコーチ)

Cécile Orblin(カロリーナ:エマの母)

 

Oona Airola(サンナ:ミンミの母)

Yassin Ei Sayed(ライオネル:ミンミの義弟、4歳)

 

Mikko Kauppila(ヤルモ:ロッコに気があるスムージーバーの客)

Amos Brotherus(シピ:金持ちの同級生)

Bruno Baer(カレ:ムーミンマグカップの同級生)

Nicky Laaguid(ヘンカ:ロンコに◯◯させる同級生)

Oksana Lommi(フリーダ:誕生日パーティーを開催する同級生)

Yasmin Najjar(ソーニャ:ロンコの友人)

Rebekka Kuukka(サーナ:ミンミと喧嘩になる同級生)

 

Pietu Wikström(サムリ:エマとミンミを部屋に招く男性)

Fathi Ahmed(オットー:サムリの友人)

 

Tuuli Heinonen(サロ:警官)

Jantsu Puumalainen(体育の先生)

Maron Lahdenperä(ウェイター)

Robin Touray(バーテンダー)

 


■映画の舞台

 

フィンランドのどこか

 

ロケ地:

フィンランドのどこか

 


■簡単なあらすじ

 

スムージーバーでアルバイトをしているミンミとロッコは、ルームシェアをする親友で、悩み事はセックスのことばかりだった

スミージーバーのバイトには同級生たちも通っていて、ロンコに気がある青年・ヤルモとか、フィギュア代表選手のエマたちのグループも来ている

ミンミがエマをからかったことで険悪になるものの、ミンミはますます彼女に興味を持つようになっていた

 

ある日、クラスメイトのフリーダのバースディパーティに行ったミンミとロンコ

ロンコは目当ての男に色目を使いながら接近するも、下手な会話でジ・エンド

ミンミはプールサイドでぼっちを決め込んでいるエマを見つける

 

ミンミはトリプルルッツができなくなって悩んでいたが、ミンミはフィギュアのことは全くわからない

「やって見せて」というミンミに、エマはプログラムの流れを説明しながら踊り始めた

それから2人は急接近し、体を求め合う関係になる

だが、ロンコの方が頭でっかちで失敗ばかりを重ねていき、少しずつ距離ができてしまうのであった

 

テーマ:素直になれない理由

裏テーマ:セックスよりも欲しいもの

 


■ひとこと感想

 

フィンランドのJK事情は全く知りませんが、仲の良い3人組のあれこれかなあと思っていましたが、実はLGBTQ+絡みだったのは驚きました

ロッコはノンなのでミンミとはそういう関係になりませんが、未体験特有の勉強しすぎ感が出ていましたね

ミンミはバイなのかレズなのかわかりませんが、経験はあるように思えます

 

とにかくセックスのことしか考えていない感じになっていて、微笑ましいほどにぶっ飛んでいましたね

スクールカーストがあるのかは分かりませんが、随分とフリーなんだなあと思わせます

 

物語は三者三様の心のすれ違いを描いていきますが、そこまで深刻な事態にはなりません

どこか突き抜けた感じになっていて、基本的にみんなあまり深くは悩まないようでした

この辺りが国民性なのかわかりませんが、陰湿さはさほど感じず、表現が直接的だったのが印象的だったと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画は、ミンミとエマの拗れた関係を描きながら、バージンをどう捨てるか問題に悩んでいるロッコを描いていきます

群像劇のような流れになっていて、とにかく人の入れ替わりが激しく、セックスに対してかなりオープンな環境のように思えました

 

恋愛というよりは、先に体の相性という感じで、好きかどうかを考える前に「ヤリたいからヤる」みたいなノリがずっと展開していきます

基本的に女の子の方にリードがあるようで、意外なほどに男子が従順のように思えます

 

若気の至りが全開の作品なので、そのあたりは見ていて恥ずかしい部分もありますが、環境が違いすぎて、自分の時とは比べようがありません

ガールズトークも全開で、セックストークもオープンになっていました

フィンランドのJKの生態を知るという意味では最適な映画なのかもしれません

 


フィンランドってどんな国?

 

フィンランドは北欧のスカンジナビア半島に位置する国で、公用語はフィンランド語とスウェーデン語になります

現在は共和国制ですが、以前は王政を敷いていました

1809年までスウェーデン王国に属し、その後ロシア帝国のが併合してフィンランド大公国となりました

その後、ロシア革命を機に1917年に独立、その後フィンランド内戦、ソビエト連邦との冬戦争、第二次世界大戦、ナチス・ドイツとのラップランド戦争の4つの戦争を経験して今に至ります

首都はヘルシンキで、ロシア帝国のサンクトペテルブルク方面への主要な都市として栄え、現在はヘルシンキの北方180キロのところにあるタンペレという都市も栄えていきました

 

フィンランドの人口構成は、92%がフィン人で、スウェーデン人が5%、その他が3%という構成

フィン人の国という意味合いて「フィンランド」という国名になっています

祖先はエストニア人に遡り、約4000年前頃のフィン・ウルゴ属の特徴的な櫛目文土器が発見されているとのこと

また、フィン人は「自称としてスオミという言葉を使う」のですが、その語源は多くの定説があり、固定されたものはないとされています

 

ミンミたちは高校生で、フィンランドの高校は中学の時の成績で割り振られています

大学は無料ですが、教育水準は高く、「フィンランドメソッド」というものがあって注目され始めています

高校から大学への進学率は世界第2位の87%とのこと

ミンミとロンコのさりげない会話の内容から、彼女たちの知的レベルの高さが伺えます

 

フィンランドで人気のスポーツはアイスホッケーで、フットボール、フロアボールなども人気を集めています

エマが目指していたのはフィギュアスケートのヨーロッパ選手権で、この大会はオリンピック以上に古い歴史のある大会です

ちなみに男子の最多優勝回数がスウェーデンのウルリッヒ・サルコワさんという選手で9回優勝しています

女子は地元のヘルシンキで行われた大会でラウラ・レピストさんが優勝した1回のみになっています

前年の結果で国別の出場者数が決められるようで、2024年の女子シングルのフィンランドの枠は2となっています

ラストでエマが選ばれているというのは相当な実力者であると言えるでしょう

 


少女たちは何に悩んでいるのか?

 

スムージースタンドで働くミンミとロンコの話題は、どこにでもいる若者特有の会話でした

ロンコの悩みは「異性とのセックス」で、エクスタシーを感じられるかどうかを心配しています

ミンミの場合は母との関係で、母には再婚相手がいて、その間に義理の弟がいるという関係になっています

母は新しい家族との生活を重視し、ミンミは17歳にして一人暮らし(ルームシェア)をして、親元から離れています

 

エマの場合は、学業とか異性とは別次元の悩みで、幼い頃から頑張ってきたフィギュアにて、世界大会に出られるかどうかという瀬戸際にいます

何らかの理由でトリプル・ルッツが跳べなくなっていて、それによって窮地に立たされていました

彼女がなぜ跳べなくなったのかは描かれませんが、重圧もあるでしょうし、コーチとの関係、張り詰めた重圧など様々なものがありました

母親との関係は普通ですが、練習では視界に入らないように距離を置いていましたね

ミンミとの関係については好意的で偏見がないように描かれいました

 

エマはミンミとの出会いを運命だと感じていて、それをストレートに伝えていきます

対するミンミは「大切なものほど壊してしまう」という性質があって、それはこれまでに幸福というものをあまり享受できていなかったからだと言えます

彼女自身は母親が好きで、義理の弟のことも大好きです

でも、再婚相手とは会話を交わさないように、一定の距離を保っているように思えました(お互いに)

 

ミンミは自己嫌悪が強く、ロンコは自己肯定が低い感じになっていて、ミンミは他人の幸せを大事にして、ロンコを奮い立たせます

エマとの関係においても、彼女との関係は幸福を呼びますが、彼女の夢の障害ではないか?と感じている部分があります

そこで、エマに対して「自分の失敗の原因にしないで」と強く言い、彼女が嫌がること(男性との関係性)をして突き放してしまいます

この一連の行為について、ロンコには相談せずに、母親にするところが彼女らしく、まだ子どもでいたいという願望が顔を覗かせています

 

彼女は長女が感じる家庭からの疎外感と合わさって、母親は別の家庭に集中してしまっているのですね

母親が思うほどミンミは精神的に成熟しておらず、でも、母親たちの迷惑にはなりたくないと考えている

このあたりの素直になりたい自分と素直になれない自分との間で苦しんでいるのがミンミという存在でした

でも、彼女はそんな自分の救済よりも先に、ロンコやエマたちの幸福を望んでしまうという相反する心理があったように思えます

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、「少女たちのやらかし」を描いていて、ミンミは「素直になれずに自壊する」し、ロンコは「想像力が勝ちすぎて感性を疎かにする」し、エマは「現実逃避に他人を巻き込む」ということをしてしまいます

それぞれの原動力が少しずつズレてはいるものの、3人ともに「自分が愛されているか?」ということを確認したいと思っていたように見えました

ミンミは「母親はまだ私の母親だろうか」と思っているし、ロンコは「無知で無垢な私は愛されるに足る人間だろうか」と考えているし、エマは「フィギュアで結果を残すこと以外に自分が愛されることはあるのか?」に悩んでいました

 

これらの複雑な彼女たちの心がすれ違い、うまく行かない現実を与えていくのですが、それぞれは自力で乗り越えていく必要があるのですね

ミンミは自分を追い込むことでエクスキューズを出さざるを得ない状況まで追い込んでしまうし、ロンコは経験を重ねることでしか自分の価値を引き上げられません

エマは自分を鼓舞してきた原点に立ち返ることによって、頭ではなく心で跳ぶことで克服をするのですが、そのために必要だったのが怒りのエネルギーになっていました

ミンミの行動はエマの怒りを呼び起こし、彼女の中にある原因を本質から逸らすという性質によって、ミンミに対する怒りが自分の方に向いていくのですね

ミンミがそれを狙ったやったわけではなく、彼女自身が自身の弱さを曝け出した結果、それが違う形となって波及した、と言えます

 

人の行動は不思議なもので、何かしらの目的を持って行っても、違う結果につながることが多いのですね

ミンミは頭でっかちでのロンコにセックスのアドバイスをしますが、良かれと思っているのに全部失敗に結びついていくところはコミカルでもありました

また、ロンコが失敗話をしても上の空で、適当に言ったアドバイスに適当な相槌を返すのですね

ロンコは内省に向かうので、ミンミのアドバイスで失敗したと言わないところがチャーミングでもありました

本作は、このあたりの繊細でリアルな女子の心をうまく描いていると思うので、同年代の女子には刺さるのではないかと思います

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/385794/review/b7b59003-2504-4a89-9f7b-69e91516992e/

 

公式HP:

https://unpfilm.com/girlpicture/

アバター

投稿者 Hiroshi_Takata

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA