■ドライブはやはり、スタートが肝心だと思います
Contents
■オススメ度
青春キラキラロードムービーが好きな人(★★★)
キャストのファンの人(★★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.11.13(アップリンク京都)
■映画情報
情報:2023年、日本、80分、G
ジャンル:ラジオでバカにされた女子高生が仕返しのために東京に向かうロードムービー
監督:宮岡太郎
脚本:井上テテ
キャスト:
小栗有以(南小春:陸上に青春を捧げてきた女子高生)
山内瑞葵(渕上由佳:彼氏を年下に奪われた女子高生)
倉野尾成美(迫宮玲奈:イタフルエンサーの女子高生)
山﨑空(津川歩美:兄の車を借りて東京に向かう女子高生)
水野勝(三枝:小春たちをナンパする男)
近藤雄介(中島:小春たちをナンパする男)
若林拓也(河合:小春たちをナンパする男)
大川航(早坂哲人:由佳の元カレ)
久保姫菜乃(石井好恵:哲人の今カノ)
鈴木Q太郎(杉浦浩二/KOZI:玲奈のファン)
西丸優子(南ひかり:小春の母)
吉田ウーロン太(南和幸:小春の父)
浅沼みう(南夏美:小春の妹)
小手伸也(横須賀ヒロミ:小春をバカにするラジオのパーソナリティ)
山﨑空(テレビに映り込む歩美そっくりの女性)
■映画の舞台
静岡県:富士市
静岡県:小田原市
神奈川県:横浜市
東京都:新宿区
ロケ地:
埼玉県:入間市
入間市立西武中学校
https://maps.app.goo.gl/xWdRqSV19dfmsvMZ6?g_st=ic
彩の森 入間公園
https://maps.app.goo.gl/McjaCKorgcHtBeMQ6?g_st=ic
神奈川県:横須賀市
ファーマシーガーデン浦賀
https://maps.app.goo.gl/J1bdK1ssEVJw4BJe7?g_st=ic
神奈川県:三浦市
みうら映画舎
https://maps.app.goo.gl/WKTDaBpg1Lfpkoj67?g_st=ic
千葉県:木更津市
木更津スポーツヴィレッジ
https://maps.app.goo.gl/BWqDowTizKif1vm2A?g_st=ic
Bee My Berry 観光農園
https://maps.app.goo.gl/f3oDN43LGVzRacE26?g_st=ic
埼玉県:狭山市
美容室Muse狭山店
https://maps.app.goo.gl/iDGYCNphuMRusNRq8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
陸上に全てを捧げてきた小春は、高校生最後の大会にて、スタートできずに終えてしまう
その時彼女の脳裏に過ったのは、彼女を支えてきたアイドルグループの解散のことで、その想いは誰にも話せないものだった
その夜、ラジオを聴いていた小春は、その番組の悩み相談のコーナーにメールを送ってしまう
そこでパーソナリティーの横須賀ヒロミに心の中を話すものの、その内容について彼は笑い、本名まで言い、そして面白がってコーナーを作るとまで言い出してしまう
翌朝、その噂は学校中に広まり、小春は自殺を決意して学校の屋上へと向かう
だが、そこには彼氏を年下の女に奪われた由佳がいて、彼女はその男を殺しに行かないかと誘う
そんな二人に合流するかのように、東京に憧れるインフルエンサーの玲奈と、たまたま東京に向かう用事のあった歩美も加わることになる
そして、4人は一路、東京を目指して走り出すことになったのである
テーマ:青春の語種
裏テーマ:失敗も思い出のひとつ
■ひとこと感想
現役のAKBを全く知らないので、4人のことも知りませんでした
単純にスケジュールが空いたのと、青春キラキラムービーで癒されるのも悪くないかなと思ったからで、内容に関してはそこまで期待していませんでした
映画は、東京に4人を向かわせる強引な展開があって、そこからどう考えても台車の上に乗せて走っているよねという映像が続きます
まともな映画なら酷評されそうな映像ですが、本作の趣旨がファンに向けた映像体験なので、その目線であればOKなのでしょう
エンドロール後に重大なネタバレがあるのですが、この手の映画を観る人なら、エンドロールの歌唱も込みで鑑賞すると思うので注意喚起はいらない感じになっています
演技はまあ、深く突っ込むのは野暮というものかなと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
とりあえず、無理やりAKBの4人を東京に向わせることになるのですが、コントでも使わないような強引な流れになっていたのは笑ってしまいます
小春と由佳はわかるけど、どうにかして車に乗せたいので歩美を登場させるし、真面目キャラ3人だと会話劇に特徴がないので、アホっぽいキャラを入れることになっています
青春を嘲笑うことに怒りを覚える彼女たちですが、この時代には人生の全てと勘違いするような出来事が多く起こるのですね
なので、大ファンだったグループの活動休止に「全てが終わった」と思ってしまうことは普通のことだと思います
学生時代は、それだけひとつのことに全勢力を注いでいて、その余白というものも全力に生きていきます
それゆえに生命力が溢れていて魅力的なので、それが表現できていれば良いのかなと感じました
■小春が受けた傷の正体
本作は、青春キラキラムービーに属する物語で、クラブ活動に全てを賭けた女子高生が、まさかの失敗を犯すという冒頭になっていました
推しのアイドルの解散がショックだったというもので、これを人前で笑いのネタにするのが、パーソナリティーの横須賀でしたね
小春は青春を陸上に支えてきましたが、その苦難を支えてくれたのがアイドルグループで、それは一種の誓いのようなものだったと思います
自分を鼓舞するための「誰にも言えない誓い」であり、本来は墓の中まで持っていくようなものだったでしょう
何かに夢中になっている人というのは、その行動の源泉になる力を持っています
それが恋人や家族だったり、自分自身であったり、小春のようなアイドルだったりします
そのどれもが貴重なもので、それを他人のスケールで測ることはできません
アイドルは恋愛沙汰で解散に至っていましたが、その事件自体が小春やファンを悩ませているのに、さらに存在すら消えてしまう
これでショックを受けないファンというものはいません
青春時代には、何かに打ち込むと、それに集中する傾向があります
とは言っても、そのことだけに集中できるのではなく、それを支えるもう一つのものというものがあります
それが親に褒められる、目標を達成するという褒賞系から、自分自身を褒める賞賛系というものまであります
後者の場合は、昨日の自分よりも秀でているという目標を持ち、それを確認する作業としてのイマジナリーフレンドというものを持っています
それが、小春の場合は「アイドル」だったということで、それが飼い猫やアニメのフィギュアだったりするのですね
この自分にレスポンスを返してこない相手を対象にすることで、自分の中にある「高まり」というものを強く持ち続けられると言えるでしょう
■勝手にスクリプトドクター
本作の難点は、4人の主人公が集うシーンで、この無理矢理感がどうにかならなかったのかなと思いました
むしろ、それ以外はうまく構成されていて、エンドロール後に「スターターピストルを持っていた理由」もきちんと回収しています
4人を同時にスタートさせるという命題があったのかもしれませんが、この4人の関係性を描く前に召集になっているので、それゆえに無理矢理な感じになっていると思います
彼女たちは同じ学校の同級生ですが、クラスメイトなのかどうかもはっきりわかりません
会話の内容だと、顔と存在は知っているというものですが、学校内ヒエラルキーの居場所がわからず、それゆえに初対面のようにも見えてくるのですね
それぞれが東京にいく理由はバラバラでも構わないのですが、小春を連れ出す由佳は「彼女の悩みを理解している存在」である方が良いでしょう
きっかけが元カレ問題だとしても、怒りをぶつける場所を探している中で、小春のラジオ問題が紛糾し、自分の友人を傷つけられたことが原動力になるというのが良かったように思えました
痛フルエンサーとして登場する玲奈は、ある意味「あまり関わりたくないクラスメイト」という立ち位置になると思います
彼女に関しても、小春と由佳が一緒にいるところで「自撮りをしている痛いヤツ」という印象を植え付ければ問題ないでしょう
無理矢理東京行きにねじ込んで行くのですが、その動機が「東京に詳しい」ではなく、玲奈が自分自身の自撮りのために行くという「異物感」を抱えさせた方が活きてくると思います
歩美に関しては、「クラスにいるけど存在感が実はすごいヤツ」という立ち位置なので、これも小春と由佳が一緒にいるところで、教室の隅で読書をしているとか、担任に睨みを効かせている不思議な存在である、ということを認知させれば問題ありません
普段から、彼女は他の人と違うというところを認知させ、でも歩美側は「陸上に青春を賭けている小春を羨ましく思う」という内面があれば良いと思います
小春は、由佳の怒りの発憤に付き合わされ、歩美の内なる想い(今風に言えば同性愛的な何か)に引っ張られることになり、ムードメイカーの玲奈がトラブルを引き起こすということになります
キャラ設定が「中の人」に寄っているのかは分かりませんが、概ね普段のイメージを損ねないような感じには思えるので、この邂逅のために「普通のクラスのシーン」を挿入した方が良かったでしょう
構成としては、「授業のシーン」「担任が陸上の大会の話をする」「それぞれの反応」という流れを経て、いざ本番に移るのですが、この教室のシーンで「すでに小春がおかしい」ということを由佳と歩美は気づいている、というのが分かりやすい伏線の張り方なのかなと思いました
エンドロール後に最大のネタばらしがあるのですが、これに関しては「事前告知が必要なレベル」だったと思います
MCUのような次回予告みたいなものではなく、本編の重要なオチになっているので、これをどのように嵌め込むかというのは重要だと思います
ファンならば「彼女たちの曲を最後まで聴くだろう」という思惑だと思いますが、一般層はそうではないので、せめて「エンドロールでその後を描くかメイキング」を挿入し、そして曲の終わりと共に「最後のシーン」へと繋げるというのが良かったように思えました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、いわゆるファンムービーになっていて、たくさんいるメンバーの中から4人(+1)を抽出する形になっています
グループのことを詳しく存じ上げないので、どのようなポジションなのかは分かりませんが、いわゆる一軍のトップ10ぐらいに入る中堅レベルのキャリアであるように思われます
固定ファンが付き、キャリアアップの側面にて、音楽&ダンスの次のステージを模索しているのでしょう
これらの映画はファンだけが観るわけではなく、映画雑食の人もいれば、余暇を過ごす人もたくさんいます
私の観賞回では、ガチっぽい人が2人、余暇老人が1人という構成で、私は映画雑食系となります
この三種の人種の誰もが満足できる映画というのは難しく、それぞれには見方というものがあります
ファンは「推しがどれだけ出演するか」でしょうし、余暇人だと2時間を苦痛なく過ごせるになると思います
で、一番厄介なのが映画雑食系で、どんな映画に対しても理想というものを押し付ける傾向にあると思います
映画制作のマインドとしては、ファンが満足するものを作るというのが第一条項で、映画マニア向けは二の次になる傾向があります
それはそれでOKだと思うのですが、映画の興行収入的などを考えると、これら以外の「一般層」へのレスポンスが必要になってくるのですね
マニアはブログで文句を言うか、レビューサイトで悦に浸ると思いますが、これらに付随しない一般層というのは、単純な映画鑑賞後の感覚というものを広めていく力があります
ファンムービーに特化しすぎると何がおざなりになるかと言うと、訴求目的の配分が色濃く出てしまうことなのですね
これによって物語の力が削がれてしまうことになり、不自然さというものが出てきます
それが凝縮しているのが「4人が旅に出るまでの集合」になっていて、ここをうまく構築できていれば違和感なく物語が始まったのではないかと思いました
素人目線で色々と書きましたが、このような固定された集客力を前提とする映画だとしても、映画自体の完成度の高さというものが後々のアイドルたちの評価にも繋がっていきます
それゆえに、もっと高みを目指して、日本のファンムービーは世界一であると自負できるほどに、一大ジャンルを築いていければ良いのではないかと思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP: