■狂った世界で生き残るには、さらに狂った世界に身を投じなければならない


■オススメ度

 

クズ人間同士の底辺バトルに興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.9.13(T・JOY京都)


■映画情報

 

情報:2022年、日本、127分、PG15

ジャンル:ある強盗がきっかけで人生が狂っていく若者たちを描いたクライムムービー

 

監督:大森立嗣

脚本:高田亮

 

キャスト:

西島秀俊(安西幹也:家族との平穏な暮らしを望む元ヤクザ)

 

斎藤工(萩原政春:クレイジーな闇金業者)

宮沢氷魚(矢野大輝:事件に巻き込まれるラブホの従業員)

玉城ティナ(坂口美流:大金を欲しがる風俗嬢)

宮川大輔(武藤:借金を抱えた元会社員、美流の恋人)

 

大森南朋(蜂谷一夫:強盗事件を追う刑事)

 

三浦友和(浜田:強盗団のボス、元政治家の秘書)

前田旺志郎(浜田の手下)

若林時英(浜田の手下)

青木袖(浜田の手下)

 

奥田瑛二(杉山:強盗団に金を奪われた「杉山興行」の組長)

鶴見辰吾(オガタ:「杉山興行」の幹部)

 

奥野瑛太(飯島:安西の元舎弟)

片岡礼子(みどり:夫の更生を信じる安西の妻)

鈴木結和(結菜:安西の娘)

 

螢雪次朗(宮脇:汚職を隠す県知事)

モロ師岡(萩原たちに仕事を提供する仕入れ屋)

 

夏美沙和(浜田に巻き込まれるホステス)

 


■映画の舞台

 

都内某所と山梨県甲府市

 

ロケ地:

東京都:八王子市&あきる野市

 

神奈川県:相模原市

 

千葉県:木更津市

 

静岡県:伊東市

下田屋(正田屋)

https://maps.app.goo.gl/DojrR8dsvbnhSPV5A?g_st=ic

 

神奈川県:横浜市

モザイクモール港北(観覧車)

https://maps.app.goo.gl/6jmhYQH3KhVrbKxf6?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

寂れた繁華街にあるラブホでは、組の資金洗浄のための裏工作が行われていた

ある筋からそこでマネロンが行われていることを知った5人組は、襲撃をかけてまんまと金をせしめることに成功した

 

その中の一人・萩原は闇金業者として武藤を抱え込み、その恋人・美流も巻き添えを食らうことになった

美流は分前の少なさに苛立ち、高跳びするはずなのに再度、萩原とコンタクトを取ることになった

 

一方その頃、金を奪われたヤクザは飼い犬の刑事・蜂谷に事件を追わせていた

蜂谷は組員と強盗被害者を分離させ、現場で見聞きしたことを問い詰める

蜂谷は内部から情報を聞きつけた外部の仕業であると踏み、ヤクザの幹部・オガタに「被害額を大幅に膨らませて情報を流せ」と提案する

 

程なくニュース報道では3倍近い被害額でニュースが流れることになり、その金に食いつくクズどもが集まって来るのであった

 

テーマ:居場所探し

裏テーマ:自由と束縛

 


■ひとこと感想

 

ハードボイルド系のクライム映画だと思って鑑賞

エロ要素が足りない感じはしましたが、配役ではあれが限度かもしれません

 

物語は「情報を得た外部のアウトロー」が金欲しさに結託して強盗を成功させるものの、その綻びが徐々に広がっていく様子を描いていきます

 

とにかく憑依系の演技がヤバくて、俳優さんたちの演技力で魅せる内容になっていますね

 

物語としてはやや退屈で、よくわからない演出(よくわからんところでキャラが叫ぶとか)があったりとまとまりがないように思えました

このあたりは好みの問題ではありますが、クズが右往左往して死んでいく映画が好きな人なら問題ないのかもしれません

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

タイトルは「Goodbye Cruel World」と言うことで、「惨めな世界よ、さようなら」と言う意味になります

酷い運命から抜け出すと言う意味なのですが、抜け出せた人物がいたのかはなんとも言えないところでした

 

ラストは安西と蜂谷の元にオガタのところの手下が来て、そこで「一発」の銃弾が響き渡ります

どちらかが撃たれたと言うことになり、助かったのがどちらなのかはわかりません

 

オガタが死んだことで手下は解放されますが、金のありかを優先するか(安西生存ルート)、警察との癒着を残すのか(蜂谷生存ルート)はどちらも有効そうに思えてしまいます

このあたりは組長の杉山次第だとは思いますが、物語のテーマが「居場所」と言うことなので、蜂谷を生存させて使う方が理に適っているのかなと思います

 

逆の視点で考えると、この世界から「死を以てでも抜け出したい」と考えるのは、どちらかと言えば安西なのかもしれません

彼にとって、ヤクザに舞い戻るぐらいしか居場所はありませんが、そこに執着する必要もないでしょう

そう考えると、もしあの銃弾が安西を殺したとするならば、それは希望だったのかなと思ったりもします

どっちにしても、感覚的には安西死亡のルートの可能性が高いのかなと考えています

 


居場所とは何か

 

本作ではクドいほどに「居場所」というキーワードが溢れ、その多くは「裏家業をしてきた安西たちが表舞台で居場所が無くなっている」という意味合いになっています

安西は義父の旅館を汚れた金で立て直して再起を図りますが、飯島に見つかったことで暗雲が立ち込めます

飯島も同じようにヤクザに足を洗ってからは職場を転々としていて、居場所を求めて安西に縋ることになりました

裏の世界に縁のない人のほとんどは「それを自業自得というのでは?」と切り捨てると思います

 

実際問題として、居場所というものは自分が居たい場所ではなく、自分が誰かに求められる場所のことを意味します

その概念で言えば、安西も飯島にも「正田屋」には居場所がありません

安西は良き父に戻ろうとしますが、飯島を招き入れたことで崩壊を招いていて、これをどうにかできたかと言えばかなり難しかったと思います

お金を渡しても解決にはならないでしょうし、寄生虫のような生き方しかできない現時点の飯島では、切り捨てる以外にないのですね

でも、安西の誤算は、それを妻に見られたことであり、これを避けるためには妻子家族の及ばないところで消す以外になかったと言えます

 

これらの安西の行動は実に直情的で、それが安西が治すべき性質だったと言えます

目的のために手段を講じるところまで頭が回らなくて、それが飯島の寄生を許してしまった弱さに繋がっています

それは現実への向き合い方とか、現在地を正確に把握していないとか、色んな言い方があると思いますが、実際には「これまでの生活の中でそう言った習慣がなくても生きていけたという、成功体験から脱却できていないから」と言えるのではないでしょうか

 

そんなことができればヤクザにはなっていないと言われてしまいそうですが、適性がヤクザの稼業にしかないのなら、そこで生きていくしかないと思います

暴対法などができて稼業を続けることが困難な時代になっていますが、それは裏家業だけの問題でもなかったりします

時代の移り変わりと共に生きていく糧を得る方法は変わって行きます

そうした時代への対応力は誰にでも降りかかる難題であると言えるでしょう

なので、キツい言い方をすれば、通用しなくなった拳を振り上げている暇があれば、拳を通用させられるまで鍛えるか、拳が通用する世界に行くしかないと思います

 


居場所の作り方

 

理想的な居場所というのは周囲との関係性において、相互で求め合う場所であると言えます

自分だけが心地よくても、周囲が心地よくないと、いずれは追い出される危険性もあります

また、相手に求められる場所でも、それが自分の中で肯定的でなければ、いずれ関係は破綻します

このように、相互で求め合うことを見つけることはとても難しく、容易に探し出せる場所ではありません

 

でも、こう思うのは理屈でモノを考えるからで、実際の人間関係は「惰性」で続いていくものだったりします

誰かがコミュニティに入ったとして、そのために玉突き状態で居場所が移動しても、移動で馴染む人もいれば反発する人もいます

誰もがベストなポジションにいると入り込む余地はなく弾かれますが、実際にそこまで強固なコミュニティというものはなかったりします

コミュニティは流動的な生き物のようなモノで、何かの追加や削除によって目的や方向性が変わるほど曖昧な存在だったりします

また、流動化したものが落ち着くまでは衝突がありますが、それらはやがて落ち着いてしまい、その環境が前からあったかのように馴染んでしまうことの方が多いでしょう

この流動と衝突化に関して、コミュニケーションの上手い人はすっぽりと求めれられる場所に入り込み、次の流動性を活かして自分の居場所へと近づくのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作では「真面目に語るのがアホらしくなる」ほどに、底辺と呼ばれる場所に集まった鬼畜たちが右往左往する様子が描かれています

共感できるキャラがほぼいなくて、かと言って堕ちていくのを楽しく見られるというものでもありませんでした

彼らがあの場所に行き着いた理由はボカされていますが、短絡的な思考でその場凌ぎの人生を生きてきたという共通点はあると思います

また、金銭関係のトラブルがほとんどで、同じ種族が集まったのにも関わらず、分配に際して不平等を行ったことで報いを受けていきました

 

事の発端は美流と武藤に十分な金を与えなかったことで、使い捨ての道具に抵抗されただけなんですね

そうした底辺の感情をうまく使いこなしたのが蜂谷だったのですが、彼も最終的に隙を見せて襲われてしまいます

彼も萩原同様に彼らを道具として見ていたわけで、同じ理由で抵抗を受けています

安西と飯島の関係も、安西はそう思っていなくても、飯島は自分は道具だったと思い込んでいて、彼自身が持っていないモノを全て持っているように見えるのが安西という人物だったということになります

 

浜田が手下に反抗されるのも同じ理由で、どうしてもこう言った世界に生きていると、自分の居場所を作るための道具に人を使う傾向が強いのですね

そう言った意味において、頂点に君臨する以外にその呪縛から逃れることはできないと言えます

私がもし安西の立場なら、計画が終われば無慈悲に浜田以外の道具を全部壊しますね

浜田が手下を手懐けているかどうかは経験則でわかりますし、十分なものが与えられていないならば、反旗を翻す可能性は高いでしょう

そうした時には浜田を飛び越えて、直接手下を道具にするために与えるべきものを与えます

そうすることによって、自分に従順な道具以外は手元に置かないという方法を取るでしょう

この際に情は一切不要ですね

そういう世界に生きているならば、そういう生き方をするしかない

この世界を居場所にするなら、そういう覚悟が必要なわけで、それを持っていたのは杉山しかいなかったというのが本作の教訓であると言えます

普通の世界ではこんな選択をする必要はないのですが、居場所のあるステージによっては、人であることを捨てる以外に生き延びることができないと思います

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/381663/review/e054c63f-fb02-40d7-ab4f-f0bb342e962c/

 

公式HP:

https://happinet-phantom.com/gcw/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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