■『エンドゲーム』の無茶をうまく吸収した最終章になっていましたね
Contents
■オススメ度
シリーズのファンの人(★★★★)
特にロケットのファンの人(★★★★★)
■公式予告編
https://youtu.be/1yU5utwQZ5Y
鑑賞日:2023.5.3(イオンシネマ四條畷IMAXレーザー)
■映画情報
原題:Guardians of the Galaxy Vol.3
情報:2023年、アメリカ、149分、G
ジャンル:銀河を守る個性的なチームが仲間のために危険を冒す様子を描いたファンタジー&アクション・ムービー
監督&脚本:ジェームズ・ガン
原作:ダン・アブネット&アンディ・ランニング『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』
キャスト:(わかった分だけ:自信なし)
クリス・プラット/Chris Pratt(ピーター・クイル/スターロード:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのリーダー)
【ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー】
デイブ・バウティスタ/Dave Bautista(ドラックス:サノスに家族を殺された戦士)
ヴィン・ディーゼル/Vin Diesel(グルート:木のようなヒューマノイド)
ブラッドリー・クーパー/Bradley Cooper(ロケット:遺伝子操作されたアライグマの姿をした元人間)
カレン・ギラン/Karen Gillen(ネビュラ:機械の体を持つガモーラの義理の妹)
ポム・クレメンティエフ/Pom Klementieff(マンティス:ピーターの義理の妹、デレパス能力を有する)
ショーン・ガン/Sean Gunn(クラグリン・オブフォンテリ:元ラヴェンジャーズの副司令官、ヨンドゥからヤカの矢を受け継いだ男)
マリア・バカーロヴァ/Maria Bakalova(コスモ:ソ連によって宇宙に飛ばされた犬)
【ノー・ウェア】
Stephen Blackhart(スティーミー:住人)
Sarah Alami(グローブ:住人)
Terence Rosemore(グルブ:住人)
Troy Beecham(住人)
R. Grayson Brice(青いエイリアン)
Sarah Dean(住人)
Christina R Gregg(住人)
Casey Shirley(住人)
Analisa Wall(ダンサー)
Giovannie Cruz(オルローニの行商人)
Brandon Morales(踊る警備兵)
Dennice Rivera(クラブのオーナー )
Jason Hamlet(住人)
【ラヴェンジャーズ】
ゾーイ・サルダナ/Zoe Saldana(ガモーラ:ピーターの元恋人、サノスの義理の娘)
シルベスター・スタローン/Sylvester Stallone(スタカー・オドルド:ラヴェンジャーズの伝説的リーダー)
マイケル・ローゼンバウム/Michael Rosenbaum(マルティネックス:スタカーの右腕)
マイケル・ルーカー/Micheal Rooker(ヨンドゥ・ウドンタ:ラヴェンジャーズの元リーダー)
Ving Rhames(チャーリー27:スタカーの部下)
Dee Bradley Baker(ブラープ:ラヴェンジャーズにいる耳が4つの動物)
Tara Strong(メインフレーム:頭だけのロボット)
【ソヴリン】
ウィル・ポールター/Will Poulter(アダム・ウォーロック:ガーディアンズを殺すために作られた人工生命体)
エリザベス・デビッキ/Elizabeth Debicki(アイーシャ:アダムの母、ソヴリンの女王)
【オルゴ・コープ】
チュクウディ・イウジ/Cukwudi Iwuji(ハイ・エボリューショナリー:ロケットを作った遺伝子の研究者)
Miriam Shor(研究者)
Nico Santos(研究者)
Daniela Melchior(ウラ:ラボの管理者)
Nathan Fillion(マスター・カージャ:警備の責任者)
リンダ・ガーディリニ/Linda Cardellini(ライラ:囚われのウサギ、アライグマ時代のロケットの恋人)
Mikaela Hoover(フロア:言葉が話せるウサギ)
Asim Chaudhry(ティーフ:言葉が話せるセイウチ)
Olive Raine Cleope(囚われの女の子)
Scarlett Bell(囚われの女の子)
Finn David(囚われの男の子)
Zachary Ortega(囚われの男の子)
Sarah Anne(囚われの女の子?)
Elodie Clarke(囚われの女の子?)
【カウンターアース】
Tara Warren(カンガルー人間)
John William Wright(ハイエナ人間)
■映画の舞台
キーストーン・クアッドランド(Keystone Quandrant)星系内ハーフワールド(Halfworld)
ノーウェア&オルゴコープ&カウンターアース
ロケ地:
アメリカ:ジョージア州
アトランタ
イギリス:ロンドン
■簡単なあらすじ
サノスとの一戦で破壊されたノーウェアを立て直していたガーディアンズ・オブ・ギャラクシーたちだったが、リーダーのピーターだけはガモーラロスに明け暮れて、アルコール漬けの毎日を送っていた
和気藹々とダンスを踊ったりして遊んでいた住人たちだったが、突如謎の物体が飛来し、ロケットに衝突してしまう
それによってロケットは致命的な重傷を負ってしまう
ガーディアンズたちは謎の物体と交戦する中、何とか物体の動きを止めることに成功する
それは、かつて交戦したソヴリンの女王アイーシャが作り出したアダムで、彼はロケットを殺すために作られていた
ロケットの治療を施そうとするネビュラだったが、彼の中に「89P13」と言う謎のコードと、治療を開始すると自爆する装置のようなものを見つけてしまう
そこで、ガーディアンズは「コード」を探すために、オルゴコープに出向くことになった
そんな矢先、ラヴェンジャーズが彼らの前に立ちはだかり、ガモーラを連れて行けと言う
ガモーラはサノスによって命を落としていたが、彼女はピーターに出会う前の世界から来ていて、ピーターとは初対面だった
ピーターは複雑な感情を抱えながら、オルゴコープへと向かう
そこは宇宙船ではなく、一つの有機体の様相を呈していて、中には自らを創造主と名乗るハイ・エボリューショナリーと言う研究者がいた
彼はロケットを実験体として扱った人物で、遺伝子操作と融合によって今のロケットを作り出していた
そして、ソヴリンをそそのかしてアダムを送り込んだのも、彼らをオルゴコープに連れてくるための罠だったのである
テーマ:チームとして必要なもの
裏テーマ:実験動物の悲哀
■ひとこと感想
MCUシリーズも本シリーズも隈なく鑑賞していますが、さすがに内容をほとんど覚えていない状態でしたね
なので、直前でwikiを読みながら、どんな内容だったかを頭に入れたのですが、『アベンジャーズ:エンドゲーム』の後のことをすっかり忘れていて、ガモーラ生きてるやんとちょっと混乱してしまいましたね
映画は「ロケットの出自」を描いていて、彼がアライグマの姿をしている理由が描かれていきます
鑑賞後に知ったのですが、本シリーズとしては完結とのことで、ラストシークエンスは驚いてしまいました
たぶん、帰ってくるのだと思いますし、ガーディアンズの新シリーズを作ることも可能でしょう
帰るべきところがある者は帰り、なき者は探すと言う感じに結ばれていて、ちょっとだけ寂しさが募りました
IMAXレーザーの最前列のリクライニングで鑑賞しましたが、3Dだったこともあって、映像の速さについていくのが精一杯でしたね
字幕必要な人は真ん中よりも後ろの席をオススメいたします
150分ぐらいずっと上を見ている体勢だったので、予想以上に疲れましたよ〜
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
シリーズ最終章ということで、ガーディアンズのリーダーが変わるという流れになっていました
これまでに描かれなかったキャラクターの過去を深掘りすることになったのですが、瀕死の重傷を負ったロケットが「走馬灯のように過去を見ていた」ということになります
なので、ロケットの過去を知るのは観客だけで、ガーディアンズのメンバーは知らないまま、ということになります
ガーディアンズたちには辛気臭い話が合わないし、過去に何があったのかを気にしません
本作では、ロケットの過去譚に合わせて、ピーターとガモーラの現在が描かれていて、ピーター自身も過去に囚われた存在になっていました
ピーターと出会う前のガモーラですが、二人の仲が深まった過程を考えれば、本作内でロマンスが花開くというのはないことがわかります
仲間になって、同じ方向性を向き、ダサいところもカッコいいところも見ていくことで心が開かれていくので、単体のエピソードでいきなり惚れ込まないところがリアルでもありました
この関係性と対比になっているロケットの過去譚は、「ロケットの中にある運命と自覚」を再確認させるものなので、全員がその過去を知る必要はありません
ロケット自身が自分の過去を他人に話すタイプでもないと思うので、彼の中で完結しているのは「らしいなあ」と思ってしまいます
人が再起する時、その中身は見えないもので、またピーターからロケットに伝承するのも、ピーター自身の置き去りにしてきた問題の解決が描かれているので、ピーターがロケットの過去を詳しく知る必要もないように思いました
■過去が現在に組み込まれていく過程
良質の脚本において、「回想録」というものは「キャラクターを前進させるため」にあると言われています
回想録にはいくつかの種類があって、「キャラクターの過去を説明する」「世界観を説明する」「置かれている状況を説明する」という説明系と、キャラクターが忘れていた大事なことを想起させる「進路提示系」というものがあります
本作の場合はどちらの要素もあって、観客に対して「ロケットの過去を説明する」というものと、「ロケット自身が自分が何者かを定める」という要素がありました
この回想によって、「ロケットは小動物も全部助ける」という方向に動き、それによって「ノーウェアにふさわしいリーダー」へと近づくことができました
これまでのロケットだと「高等動物だけを助けてきた」かもしれませんし、もしかしたら「自分と同じアライグマだけ」を助けたかもしれません
でも、実験動物時代に他の種族と仲良くなっていく過程で、同じ立場に置かれていた生命全てを救うという選択をします
ロケットは元人間で遺伝子操作されたものか、アライグマに人間の遺伝子を組み込まれたものか、という出自に対する疑念があり、映画の中では後者のように描かれていました
原作の設定がどうなのかは知りませんが、アライグマの体に色んなことをされていたというふうに描かれていて、アライグマの中に人間のDNAが組み込まれた末に、高等な脳内活動が起こって、自我というものが芽生えてきたのだと思います(間違ってたらスマン)
ライラをはじめとした同じ実験動物たちは、ロケットのようにそれぞれの土地で捕獲されてきた動物たちでした
ロケットは自分の出自が「ラクーン(=アライグマの英名)」であることを知り、自分の名前を「ロケット・ラクーン」と名づけることで、アイデンティティの中に出自を組み込むことになります
人類の歴史の中でも、その土地の名前の由来に人物の名前があったり、その土地の名前が自分の名前になったりする歴史があるのですが、今回のロケットの場合は「種族」を名前に組み込んだことになります
そうした心境の変化を得て、「種族というものの崇高さ」というものを感じ、どんな種族にも限りある命と尊い価値があることを感じたのではないでしょうか
■リーダーの伝承
本作は『ガーディアンズ』の最終章として、ピーターからロケットへのリーダーの伝承が行われています
帰る場所のあるピーターが祖父母の元に戻り、自分の居場所を見つけたロケットがそれを引き継いでいくのですね
ノーウェアの住人たちの多くはピーターたちに助けられた人々ですが、そこにロケット主導の元に助けられた種族が加わることで、他民族国家というものが出来上がっています
この映画における多民族国家というのは、言語を有する高等生物のみならず、という現実世界では起こり得そうにもないユートピアを描いていますね
現実世界でも、多民族を束ねるような地球国家というものは理想ではあるものの、実際問題として「最小単位の民族」ですらそれを維持できていません
現代社会では「血族」よりも「思想」というものが「最小単位になっている社会」でもあり、広義な信仰というものがコミュニティをコミュニティたらしめています
また、それぞれは複数のコミュニティに所属し、それは瞬間によって変わり、より居心地の良いコミュニティへと移っていくように思えてしまいます
その世界は、現実世界だけではなく、仮想空間や電子空間までもが、その領域を作り出してきています
このような社会を一つにまとめるのはとても難しくて、それを行おうとするときに「仮想敵」というものが創作される場合があります
実際に「命を脅かす存在」というものがあれば問題ありませんが、それがない状態でコミュニティを維持するために、為政者は「恐怖」によって思想の方向性を誘導してきました
でも、現在では「恐怖の源泉が仮想であった場合」に求心力を一気に失うのですね
それが現在進行形で行われているのが「ウクライナ危機」であると言えます
リーダーの資質として、「恐怖をうまくコントロールできる者」と「希望をうまくコントロールできる者」がいて、歴史の中でその二つをうまく使いこなしているのが「宗教」なのですね
なので、聖職者が聖職者たる尊厳を保っている間だけ、それらは機能してきました
でも、昨今の聖職者たる尊厳の堕落は失望を生み、幻想が壊れた怒りが世界を支配しています
もし時代が動くとすれば、この怒りを恐怖もしくは希望に変える者が出た時、と言えるのかもしれません
人の感情を支配するリーダーが生まれたとき、その尊厳と憧憬が無垢なるものとして認知されたとするならば、人類国家というものが生まれる可能性があるのだと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、シリーズのファンの見たいものをうまく見せていて、キャラクターの成長と親近感を融和させてきたと感じました
それぞれのキャラクターの出会いから仲間になるまでを描いた序章、チームとしての機能と成長を描いた第二幕、そして個人の成長によってチームの姿を変えるのが本作となっています
『ガーディアンズ』自体が生き物のように成長と発展を遂げていて、勢いで宇宙を守ってきたキャラたちが、役割を自認する中で、次なるステージへと向かっていきます
そうしたものが丁寧に描かれていることが重要で、かつMCUとの融合がありながら最小限の絡みになっていることも強みのように思えます
昨今のMCUはドラマ版まで観ないとキツい流れになっていて、今更『ワンピース』を1巻から読むのは無理みたいな流れになりつつあります(別冊も読まないといけない感じ)
それぞれの単体映画で活躍した人々が共通の敵と戦ったら、というところまでは良かったのですが、今では単体作品ですらコラボを観ていることが前提になっていて、本作もその流れに巻き込まれています
それでも、本作は『エンドゲーム』をうまいこと使っている感じがしますね
それがガモーラの存在だと思います
サノスに育てられたガモーラは『1』でガーディアンズに参加し、『2』で共闘したのちに、『アベンジャーズ:インフィニティー・ウォー』にて、サノスがソウルストーンを得るために殺されたキャラでした
そして、『アベンジャーズ:エンドゲーム』にて、ピーターに出会う前のガモーラが登場し、その流れのまま本作に登場しています
『エンドゲーム』否定派も多くいるとは思うのですが(どちらかと言えば私もそっち派)、こと『ガーディアンズ』シリーズでは、それがうまく作用しているように思えます
ガモーラのいないガーディアンズは寂しいものですが、生き返らせるわけにもいかず、パラレルワールドから来るという設定も萎えてしまいます
でも、『エンドゲーム』の無理矢理が功を奏していて、それによって、これまでに良い感じに培われた関係が完全にリセットされていました
ピーターの中でだけ募った想いが彼をふにゃふにゃにしているのですが、再会に至っても、そこから全く進展する気配がないのは面白かったと思います
最終的に何もなかったかのように二人は別れることになりますが、描かれない空白において、二人の距離は近づいていくように思えます
続編があるのかないのかはわかりませんが、喪失というものの認知は想いを強める効果があるのですね
ピーターの想いは変わらないだろうけど、ガモーラの中には育つ何かがある
ある意味ビターエンドのラブロマンスなのですが、ビターで終わらせているところが粋だなあと感じました
何かしら決定的なものを描かなくても、ガモーラがピーターに「ピーターの知る二人の関係を訊く」というシーンがあればOKで、そこから先に何かが育つことに性急さがない方がよりリアルに感じます
このあたりも丁寧に描かれていたので、よりファン心理に即したものになっていたのではないかなあと思いました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385959/review/7e600fca-6e09-474e-a755-a5fb2ca72132/
公式HP:
https://marvel.disney.co.jp/movie/gog-vol3