■能力が開花するたびに、崇拝と疑念が深まっていくシナリオを期待していたのだが…


■オススメ度

 

アクション映画が好きな人(★★★)

岡田准一さんのファンの人(★★★)

バイオレンスをとことん楽しみたい人(★★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.9.16(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報:2022年、日本、138分、PG12

ジャンル:ヤクザの潜入捜査員が、組のサイコボーイと組んで暴れていくバイオレンス&アクション映画

 

監督&脚本:原田眞人

原作:深町秋生(『ヘルドッグス 地獄の犬たち(2017年、KADOKAWA)』

 

キャスト:

岡田准一(兼高昭吾/出月梧郎:闇堕ちした元警官)

坂口健太郎(室岡秀喜:東鞘会のサイコボーイ、昭吾とタッグを組む)

 

北村一輝(土岐勉:昭吾と盃を交わす東鞘会のヤクザ)

松岡茉優(吉佐恵美裏:土岐の愛人)

MIYAVI(十朱義孝:東鞘会の会長)

吉原光夫(熊沢伸雄:十朱の秘書、東鞘会の三羽烏)

 

大場泰正(大前田忠治:東鞘会の三羽烏、典子の常連客)

金田哲(三神國也:東鞘会のインテリヤクザ)

吉田壮辰(お歯黒:三神の部下)

村上淳(番犬:拷問場の管理人)

赤間麻里子(佐代子:リーゼント妻)

 

大竹しのぶ(衣笠典子:昭吾の連絡係、サロン経営者)

尾上右近(サロンの常連客)

酒向芳(阿内将:典子に情報を流す警視庁の裏捜査エース)

 

木竜麻生(勝所杏南:サイコボーイの幼馴染、シェフ)

佐々木ありさ(ノバナ:杏南の友人、カフェの店員)

 

杏子(恭子:クラブ天童のママ)

中島亜梨沙(ルカ:クラブ天童の新人ホステス)

 

田中美央(俵谷一房:熊沢の兄弟分、華岡組)

重松隆志(ジョージ氏家:東鞘会の転覆を狙うヤクザ)

 

小柳アヤカ(ミス・チャオ:十朱と象牙取引をするチャイニーズマフィア)

 

原菜乃華(間宮比呂美:出月の交番勤務時に殺害された女子高生)

赤ペン瀧川(出月の巡査時代の先輩)

 

木村光正(僧侶)

土屋玲子(ヴァイオリニスト)

 


■映画の舞台

 

都内某所&沖縄他

 

ロケ地:

静岡県:賀茂郡

らんの里 堂ヶ島(沖縄の廃墟)

https://maps.app.goo.gl/ih9zxGg5ANRwSyZN9?g_st=ic

 

福島県いわき市

ヘレナ国際カントリー倶楽部(閉鎖中のホテル)

https://maps.app.goo.gl/H5P2dCi6aRyRVVkw5?g_st=ic

 

東京都:小金井市

大森武蔵野苑(大前田の邸宅)

https://maps.app.goo.gl/iBPyq1Q3NohQSHkS6?g_st=ic

 

東京都:中央区

カトリック築地教会聖堂

https://maps.app.goo.gl/pyEX948mTJzccYnn7?g_st=ic

 

CROSS DOCK HARUMI(十朱の会長室)

https://maps.app.goo.gl/Vjyq9j3qUjKgRnF77?g_st=ic

 

埼玉県:さいたま市

彩の国さいたま芸術劇場(東鞘会の本部)

https://maps.app.goo.gl/aBNfG3Avdf8gs5526?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

かつて巡査時代にある女子高生を見殺しにしてしまった出月は、その事件の加害者を執拗に追って処刑を実行していた

ある日、警察に行動を見透かされた出月は、阿内から兼高という偽名を与えられ、潜入捜査員になることを命じられる

 

連絡係はマッサージサロンの衣笠典子で、東鞘会のトップ・十朱に近づいて殺害することが目的だった

兼高は組織イチのサイコボーイと言われる室岡に接近して懐に入ることに成功する

 

そして、組の精鋭部隊である「ヘルドッグス」のメンバーとして頭角を表してきた

十朱との距離も近くなり、土岐とその愛人の恵美裏とも親密になっていき、組織の中枢に入りこむことに成功する

 

だが、組は分裂寸前で水面下の覇権争いが勃発する

十朱はその動きに先手を打とうとするものの、その場所には刺客が送り込まれていたのであった

 

テーマ:贖罪

裏テーマ:嫉妬

 


■ひとこと感想

 

予告編でたいそうなアクション映画かなと思いながら、いまだに「ヤクザに潜入捜査とか古いネタやってんのね」と思いながら参戦

イオンシネマのワタシアター死亡でどうなるかと思いましたが、ギリ開場にセーフで観ることが出来ました

 

映画は肉団的なアクションが売りの印象で、寝業でゴロンゴロン連発で、男女もゴロンゴロンやっている映画でしたね

内容は漫画的ですが、いつものアレみたいな感じで許容範囲でしたが、なにぶん「何言ってるかわからねえ」レベルに滑舌(録音が悪いのか?)が最悪でした

 

あそこまで聞き取りにくいと、字幕版が早々に出現するのではないかと思います

とは言うものの、観ていればわかる内容なので、消音で観ても内容が伝わるのではないかと思ってしまいましたね

 

ちなみに、冒頭の巡査時代はJKに恋してたってことでOKなんでしょうか

よくわからん関係性でしたね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

98%の相性がどこから算出したのか謎で、そのカラクリや説明は一切なしと言う潔さでしたね

とにかく漫画的なセリフが多くて、その多くは予告編に使われていたために本編でアガることはありませんでした

 

なんとなく、予告編のシーンを探すみたいな感じになっていて、アクションシーンも多いことは多いのですが、それぞれが思った以上に短いのは残念だったと思います

 

「潜入捜査官で上層部が埋まっている広域ヤクザ」と言うネタバレがギャグにしか思えず、愛人も舎弟もトップも潜入捜査員なのに気づかない土岐に失笑を禁じ得ません

兼高が警察に手を貸す流れもざっくりで、彼自身が十朱に近づこうとする理由は希薄でしたね

 

阿内とすれば、潜入捜査員が裏切って組のトップを張っていることを知っているのですから、その情報を隠す意味を感じません

組を壊滅に追い込む動機が明白なのが典子(息子の敵討ち)と恵美裏(動物助けたい)で、その他のキャラは何がしたいのかよくわかりませんでした

 

犯罪加害者家族の集まりもサラッとしていて、兼高が出月であることがバレるリスクをあんまり感じないのですね

警察官が組織の中にいるとしても、その警察官は巡査時代の被害者の足長おじさんにしか過ぎず、組の脅威になるかと言われればこれまた微妙だったりします

 

兼高がバレそうになっても、「ヤクザの世界の方が金になるから上り詰めようとしている」と言ってしまえば通用しちゃいそうなほどヤクザ側がアホの集まりになっていました

阿内も典子も意味深に「正体がバレることはない」と言っていましたが、十朱が兼高の正体を知っても排除しない(仲間に引き入れようとする)と言うことを読んでいたのかもしれません

 

でも、それは兼高が警察を裏切らないと言う前提がない起こらないことで、兼高が警察官であることへの執着がないと成立しないのではないかなと思いました

 


潜入捜査官とは何か

 

潜入捜査官とは、「身分秘匿捜査(Undercover)」をする捜査官のことで、日本では「おとり捜査に関する法令」によって行動が規定されています

秘密捜査は主に「犯罪組織対策」「資金洗浄」「武器取引」のようなものから、「未成年飲酒提供」など多岐にわたります

その歴史は19世紀のフランスのウジェーヌ・フランソワ・ウィドックが組織的な秘密捜査を始めたとされています

ウィドックは元々犯罪者でしたが、パリ警察の密偵となった人物で、日に国家警察パリ地区犯罪捜査局を創設した人物でした

この組織はのちのパリ警察となっています

 

潜入捜査の是非は色々言われますが、犯罪者側もスパイ活動をするわけで、生死がかかっている状況だと「性善説」では活動を行えません

なので、必要悪みたいな立ち位置になり、見つかれば法に裁かれる前に殺されるという前提があります

また、スパイされていることを前提で偽の情報を流したりと、現在は情報戦が優位性を決めるので、なりふり構わないというのが現状でしょう

これらの成果というものは表面化することはなく、数十年経った後に「映画化されたり」みたいなことになることが多いですね

 

ちなみに日本の「おとり捜査に関する法令」では、麻薬取締官は厚生労働省の認可を受けて、薬物の譲り受けが認められていたり(あへん法第45条)、警察官・海上保安官は都道府県公安委員会の認可を受けて、銃器の譲り受けが認められていたり(銃刀法第27条の3)、公営競技のノミ行為の客になったり(公営競技施行者、競馬法、自動車競技法など)できたりします

わざと犯罪を誘発するのもどうかと思いますが、現行犯でないと逮捕できない犯罪とかもあるので、社会秩序のためなら致し方ないのかなと思います

おそらく現実はフィクションよりも地味で狡猾だと思うのですが、この映画のように「トップとトップのボディガード、幹部の愛人、幹部のかかりつけ医」まで入り込まれるのは現実的ではないような気がします

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作はうまくまとまってはいるものの、前半は端折りすぎ、人物相関も放置、VS組長戦は瞬間芸というふうに色々と雑多なところが多かったように思います

出月が潜入捜査官になったきっかけもイマイチ分からず、復讐実行がバレてやむなく、みたいな感じになっています

てっきり、潜入先に出月の殺したい相手がいるとか、バックボーンがそこにあるとかのつながりがあるのかと思いましたが、まったく関係なくてズコーとなってしまいます

 

相性98%のサイコボーイとの出会いをなぜか最後に持ってきたり、しかも喧嘩をふっかけたと思ったらいきなり仲良くなっていたりと必要性もまったく感じられません

そもそも相性98%の根拠みたいなものはなく、三神は相性悪いけど、室岡はOKみたいなざっくりとしたものになっていました

なのに、最後は98%の相性なのに殺し合う展開になっていて、その設定を採用した意味がわかりませんでした

 

相性問題ははっきり言って必要なく、いきなり組織に潜入しているところから始まっても問題ないでしょう

また、警官時代にJKと映画を見る約束をしたみたいな、警官が未成年とデートの約束したらいかんでしょみたいなコンプライアンス無視の設定も余計でしたね

その後、被害者遺族にお金を振込み続ける動機も不明瞭で、街角でトカレフ持っていたのを知っていたのに防げなかったという後悔があったとしても、加害者皆殺しとか、加害者の金を補償金にあてがう程度でよかったでしょう

この足長おじさんパートは出月の潜入がバレるか否かの要素でしかないのですが、最終的に十朱も元潜入捜査員だったという設定で無意味になっています

 

根本的に何を描きたかったが明確ではなく、「潜入がバレるのをスリラーとする」のか、「潜入でトップまで辿り着く過程をスリラーとする」のかで描く方向性は変わってきます

バレる方を重視するならば、十朱が知っていることは伏せておいても、三神が早々に気づいて熊沢と土岐に垂れ込むというシークエンスが必要になります

トップに辿り着くまでを重視するなら、組織内で出月をよく思わない派閥との争いがメインになり、後ろから狙われるという危険性を描かなければなりません

本作ではそのどちらもいっちょ噛み程度でしかなく、お歯黒が街で出月を見かけるまで、誰もまったく疑わないというのはお花畑でしかないと言えるでしょう

 

本作では最終決戦まで「十朱は出月を疑っている様子を見せない」のが微妙で、十朱は何かあるごとに出月の正体を探ろうとするという流れが不可欠であると思います

十朱は自分と同じ匂いのする出月に対して嗅覚が効くはずで、あえて懐に入れて抱き込もうとして、少しずつ出月に「バレてますよ」というメッセージを出して言った方が緊張感が持続したのではないでしょうか

また、警察は十朱が元潜入捜査官で裏切ったことを知っていましたが、それを出月には伝えていません

それを伝えない理由も明示されず、出月が知らない方が良い情報でもないはずなので、終わってみれば「なんじゃあそりゃあ」というネタバラシになっていたと思います

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作に登場する敵は、出月の能力を推し量るために登場するもので、最終決戦が室岡になるのはわかりますが、その過程で登場する敵はしょぼいものばかりでした

室岡と組んで無敵状態というのが冒頭からあって、その後も「サクサクと相手を倒す」という展開になっていきます

相手の強さというのは段階的にヒートアップするのもので、沖縄での嘉納征伐があっさりでも良いのですが、その後は室岡と組む戦いは減って、個人戦の方にいきなりシフトしていきました

ホステスのルカの襲撃とか、その後の特殊部隊との戦いなどもコンビを組んだ効能よりは、出月スゲーの方が際立っていたように思います

 

この出月スゲーで室岡が心酔するとか、十朱が「やはり潜入捜査員なのか」と疑いを強めるという効果があればまだマシなのですが、単に十朱の信頼を得ているだけに留まっているのは微妙に思えます

戦いの中で室岡が信頼を強め、それとは逆に十朱は疑いを深めるというのが最低限のストーリーテリングだと思うので、どっちもが同じ目線で出月を見ているというのはナンセンスだと思います

一応は三神がお歯黒の証言を受けて疑いを持ちますが、彼では格が低すぎて釣り合いが取れないのですね

せめて、三神派全員が出月の動きを監視したり、三神がポジション的に不遇を被っているので、その腹いせがあったりする方が理屈は通りそうに思います

 

本作は、アクション映画としてはそこそこ楽しめるのですが、中心となる物語(組の中で信頼を勝ち得ていく)という過程がサックサクで中身がなく、その障壁がまったくないのはナンセンスでしょう

室岡との信頼関係の崩壊が最終決戦を生んでいくのですが、それならば「三神から聞かされる」よりは、室岡自身が疑問を持って正体を探ろうとする、という方がまだマシだったかもしれません

せっかく加害者家族の会みたいな設定を用意したのですから、そこから何かしらの動きがあった方がよかったでしょうね

室岡が友人から聞いた話を披露するシーンがありましたが、そのシーンで出月の反応を伺うこともなかったですし、その後にその話題が出月と室岡の会話に登場しなかったことも微妙かなと思いました

 

相性が良い設定が崩壊する過程をしっかり描かないと、最後の決戦は唐突になってしまいます

また、室岡は組織に傾倒しているというよりは、兼高を心酔しているように見えます

室岡が警察を憎んだり敵視したりするという部分も弱く、ヤクザに固執している理由も軽いので、彼が兼高の正体を知ったところで動揺するどうかは微妙かもしれません

物語の中の室岡は、単純に人殺しができればOKみたいなキャラで、それを実行できるところがヤクザの世界だったのですが、ヤクザ以上に人を殺しまくる潜入捜査官というポジションを知ってしまったら、あのキャラなら「俺も潜入捜査官になりてえ」とか言いそうに思いました

こういった細かなことも大切ですが、本作の場合は「聞き取りにくいのを何とかするのが最重要課題である」なので、それを直さなければ何をやっても意味がないように思えました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/380308/review/87d7fe74-8720-4828-a241-42eb3ff7a7fe/

 

公式HP:

https://www.helldogs.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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