■幕末ヒポクラテスたち
Contents
■オススメ度
医療映画に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.5.16(MOVIX京都)
■映画情報
情報:2026年、日本、103分、G
ジャンル:幕末の医療現場の実情を描いた伝記映画
監督:緒方明
脚本:西岡琢也
原作:大森一樹「ヒポクラテスたち(1980年)』
キャスト:
佐々木蔵之介(大倉太吉:京都のはずれの村の蘭方医)
藤原季節(相良新左:気性の荒いヤクザ)
藤野涼子(相良峰:呉服屋の娘、新佐の妹)
栗原英雄(相良屋宗兵衛:相良屋の店主)
渋谷めぐみ(新左と峰の母)
柄本明(弾蔵:解剖の達人)
内藤剛志(荒川玄斎:葛根湯を信奉する漢方医)
田中偉登(玄庵/喜八:玄斎の息子)
(幼少期:今津心之介)
真木よう子(大倉フミ:太吉の妻)
川島鈴遥(りん:太吉の長女)
(幼少期:安齋吏都)
林ひより(せい:太吉の次女)
(幼少期:大八木沙耶)
葛飾心(一郎太:太吉の長男)
(幼少期:今江翔)
浅海翼(太吉の次男)
堀家一希(放念:寺の錦坊)
諏訪太朗(弥助:棺桶職人)
阿南健治(与市:母親を診てもらう村人、農民)
吉岡睦雄(分次:飯屋)
斉藤陽一郎(林原創作:新撰組の隊士)
室井滋(ナレーション)
【その他の出演者】
南浮泰造
関秀人(村人)
桑原良二(診察を受ける村人)
浜田隆広(賭場の元締め)
加田智志
石川典佳(新撰組の隊士)
ムラサトシ(村人)
村尾オサム(村人)
松谷圭悟(賭場の手下)
鈴木康平(日野の弟子)
佐々木郷(坂巻:新撰組の隊士)
亀井賢二(病気の爺さん)
松本澪(病気の少女)
山本欣生(与力:村人)
入木将志(新撰組の隊士)
堺翔太(新撰組の隊士)
清華かれん
■映画の舞台
1849年、
京都:洛南
黒川村
ロケ地:
京都府:京丹後市
五十里の里「民家苑」
https://maps.app.goo.gl/6F6ucvAdWWustBNB8?g_st=ic
静岡県:浜松市
瀧譚寺
https://maps.app.goo.gl/2v1MaNA3pDCTnAQP9?g_st=ic
京都市:右京区
京都庵 こい茶屋
https://maps.app.goo.gl/Rjhgq229WcLt5TfD9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
1849年(嘉永2年)、京都・洛南にある黒川村には、二人の反発しあう医者がいた
一人は「何でも葛根湯」の漢方医・玄斎、そしてもう一人が西洋医学を取り入れた蘭方医・太吉だった
太吉は無償で村人の治療にあたり、時には玄斎の解決できない患者を診ることもあった
ある日のこと、太吉の元に京都の有名呉服屋の使いとして、新佐というヤクザ者がやってきた
彼は誰も直せない患者がいると言い、太吉はその無礼な振る舞いを叱責しつつも、病人には非がないとして京の町に出向くことになった
そこで適切な診断を下すことになり、患者の容態はみるみる良くなっていった
その後、野暮用で京に滞在することになった太吉だったが、食事処で腹を満たしているところに、怪我をした新佐が転がり込んできた
小刀で脇腹を刺されていたようで、太吉は恩師の日野先生を呼ぶように告げた
だが、日野は席を外しており、弟子たちは道具だけ抱えて戻ってきた
そこで太吉はダメもとで道具を握り、新佐の腎臓摘出の手術を行うことになったのである
テーマ:医術の先にある未来
裏テーマ:患者のために必要なこと
■ひとこと感想
江戸時代を舞台にして、漢方医と蘭方医の交わりを描いていました
京都府立医科大学の150周年記念作品として、京都療病院(前身となる病院、明治5年)に辿り着くまでの歴史の一部を紐解いていきます
太吉という医師は架空の存在ですが、当時実際にいたであろうことは想像に難くありません
蘭方医とは、主にオランダ商館医などから西洋医学を学んだ日本人医師のことで、いわゆる外科的な治療を行うという特色がありました
この時代には、杉田玄白による『解体新書』の翻訳をはじめとして、様々な情報が流入することになります
モデルなのかどうかはわかりませんが、当時は丹後国出身の蘭方医・新宮凉庭という医師がいて、彼が京都で開業したのは1819年のことでした
新宮凉庭は「順正書院」と呼ばれる「医学学校」を建てた人物でもあるので、劇中の太吉のイメージに近いと思います
その他にも、映画に登場する日野鼎哉は実際にいた医師で、彼は痘苗を入手し、京都に除痘館を作った人物でもあります
錦坊の放念が天然痘に罹っているシーンがありましたが、その後の流行病として登場した「ダームドティホス」は架空の感染症とされています
また、タイトルにもなっているヒポクラテスは古代ギリシャの医師で、いわゆる「医学の父」とされる人物でした
彼の名言とされる「人生は短く、医術は長い(Ars longa, vita brevis)」も超有名な言葉だと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作は、患者を救うために日々努力と研鑽を積む医師が描かれますが、それ以上に医学の進歩の激しさというものも背景にあったと思います
後半にて、「最前線を走っているつもりだったが、今ではついていくのがやっとだ」という太吉のセリフがあるのですが、これはどの世界でも起こり得ることのように思います
情報のアップデートは日々必要であり、それでもフェイクが混じるのが怖いところでもありますね
映画では、太吉一家と新佐兄妹が中心として描かれ、外界を知ることで得られることの大きさを物語っていきます
その後、新佐は江戸に向かうことになりましたが、時代は幕末として、その先が見えない時代でもあったと思います
幕府が無くなっても医者は必要であり、特に西洋医学を積極的に取り入れていく動きを見せていた蘭方医にとっては、ようやく時代の流れに乗る準備ができたという段階だったとも言えるでしょう
テーマとして「患者を治すためなら、漢方蘭方ともに必要」という考え方が登場し、現代医学というのはその配合度合いこそ違えどもハイブリッドのような感じですね
急成長した西洋医学も必要ですが、人間の身体と自然との対話で培われてきたものにも価値はあると思います
それでも、ベテランの勘というものは邪魔になるようで、老害化してしまう太吉というのはあるあるのように思えます
すぐに修正できるところが彼の強みでもありますが、最前線を追いかけていくには少々歳を取り過ぎた部分もあったのかな、と思いました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、医学の夜明けを切り取った作品で、旧来の技術と発展途上の技術が融合していく時代を描いていました
どちらが優れているというものではなく、西洋医学の祖であるヒポクラテスですら「人は自然から遠のくほどに病気になる」という言葉を残しています
それは、人間が自然の一部であり、その恩恵と適応によって今の姿があるからなのですね
それを思うと、現代社会が病巣だらけなのは当たり前のことなのかもしれません
漢方と蘭方が入り混じりそうになった時、それを果たす為には目的意識が必要であると言えます
それは「患者を治すこと」を第一義に考えることにも繋がります
映画ではふれられませんでしたが、「ヒポクラテスの誓い」というものがあります
これは「師への敬意と伝承」「患者の利益」「無危害の原則」「秘密保持」「倫理と誠実」などの内容が示されたもので、医療倫理の原点となる宣誓文とされています
この原則に則った上で、患者の利益を最大限にして知識と知恵を進化させるのが医療というものだと思いますが、どこまで現代医療の中にこの「誓い」の概念が残っているのかは疑問に思うところもあります
それらは昨今のコロナ禍騒動で可視化されたものも含めると、多くの蔑ろにしてきたことで起こるものというものが各所で噴出しているように思えます
映画では、さらに「無知なる群衆の怖さ」というものも描いていました
謎の流行病にて、診療所を襲うという暴動が起きましたが、ある種の日本人的な価値観が強いエピソードになっていました
「どうせ治らないのなら」という絶望の先にある暴動であり、これを防げなかったことは太吉たちの力量が届かなかったこととは別次元のようなものでした
日本人を含めて、多くの人は病床で死ぬのですが、家族という名の運命共同体的概念というものがあの瞬間に悪い方に出ていたように見えました
その起こりは様々なものがあると思いますが、今の時代だとフェイクニュースなどによる煽動の他にも、行きすぎた個人主義によるものなど、多彩なものが集団を動かしていきます
その力をいかに正しい方向に向かわせるのかという命題があるのですが、その為には最低限の教養というものが必要になってくると言えます
それを熟成させるのは、人が生まれ持って兼ね備えている力のように思えます
そして、その力を使えなくなっている今の時代は、本当の意味で自然から遠ざかっている、と言えるのではないか、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
鋭意、執筆中にて、今しばらくお待ちくださいませ
公式HP:
https://gaga.ne.jp/bakuhippo_movie/
