■色々と残念だけど、ネタ的には良い意味で歴史に名を残せたかもしれません

 


■オススメ度

 

C級ホラーをこよなく愛する人(★)

超低予算映画が好きな人(★)

 


■公式予告編

鑑賞日2023.7.12(イオンシネマ四条畷)


■映画情報

 

情報2023年、日本、74分、PG12

ジャンル:森でヒッチハイクをしていた若者が奇妙な家族から逃げる様子を描いたホラー

 

監督山田雅史

脚本宮本武史

 

キャスト:

大倉空人(山崎健:過保護にうんざりする青年)

平野宏周(佐々木和也:鍵の悪友)

 

中村守里(清水涼子:ハイキングで迷う慎重な大学生)

高鶴桃羽(野本茜:ハイキングで迷う陽気な大学生)

 

川崎麻世(ジョージ:カウボーイの格好をした謎の男)

速水今日子(ジョセフィーヌ:ジョージの妻)

結城さと花(アオ:顔に青いアザのあるジョージの娘)

結城こと乃(アカ:顔に赤いアザがあるジョージの娘)

 

保田泰志(大男:ジョージの弟)

演者不明(太郎:家族の一員)

 

細田善彦(宝田:ドライブインの店長)

 


■映画の舞台

 

日本のどこかの森

 

ロケ地:

群馬県:高崎市

群馬県立榛名公園松之沢グランド

https://maps.app.goo.gl/tZL8oMAbEja9afEa6?g_st=ic

 

群馬県:渋川市

オンマ谷風穴

https://maps.app.goo.gl/EdbE9SsLh4yiWQ8z9?g_st=ic

 

白樺食堂(ドライブイン)

https://maps.app.goo.gl/BGJT4heabWgQnfZK8?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

ある森のハイキングに来た女子大生の涼子と茜は、道に迷ってしまい、なんとかドライブウェイに辿り着いていた

バスは3時間後しかなく、二人はヒッチハイクをして戻ろうと考える

 

数分後、白くて汚れたキャンピングカーが彼女たちの前で止まり、カウボーイの格好をした男性が降りてきた

涼子は不気味に思っていたが、足を怪我していたこともあって、乗り気の茜に従うことになった

 

一方その頃、若者二人組はハイウェイのドライブインを訪れていた

そこで買い物をした二人は、偶然そこを訪れたキャンピングカーに乗せてもらう

だが、彼らが連れて行かれたのは、森の奥深くにあるロッジで、そこにはカウボーイ姿の男ジョージの家族の住処だったのである

 

テーマ:不条理とサイコパス

裏テーマ:おもてなしは断るべき

 


■ひとこと感想

 

低予算ホラー映画だと思っていましたが、びっくりするほどの低クオリティになっていて、『プー あくまのくまさん』がまともな映画に思えるほどでしたね

怖さが微塵もなく、猛スピードで横切るキャンピングカーがピークになっています

 

物語性は皆無で、彼らが襲われる理由も迷い込む因果も全くありません

とにかく運が悪かったというだけの物語になっていて、その理不尽の連鎖が描かれているだけのチープなホラーになっていました

 

雰囲気は良いけど、作り込みが弱い感じでしょうか

とにかく展開が読めてハラハラもしないので、もう少し何らかの要素を足した方が良かったように思います

何が必要だったのかは色々とありますが、まずは「演技」をなんとかしないと、物語をうまく作れても無理ゲーだったんじゃないかなあと思いました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

都市伝説が元ネタのようですが、よくある不条理系ホラーで、変な家族に巻き込まれるというだけなので、真新しさというのは全く感じません

この手のホラーは「おかしな家族の作り込み」が全てなのですが、ビジュアルは頑張ったけど中身は残念という感じになっていましたね

 

後半になって、女子大生と青年のつながりが唐突に出たり、実は助かっていないみたいな感じになっていますが、蛇足感が半端なく、ミステリーにする部分を間違えているようにも思えます

ストーリーも大概ですが、泣き叫ぶだけの演技なのにすごくチープに映ってしまうのはどうしてなのでしょうか

 

閉鎖空間不条理系ホラーには隠された因果が必要なのですが、それがない時点で物語の深みを作りようがありません

色々と手を加えれば記憶に刻まれたと思うので、そのあたりは「いつものさいつよ」あたりでガッツリと書いていきますね

 


不条理系ホラーの鉄則

 

不条理ホラーとは、主人公たちが理由もなく襲われるというもので、その正体がわかるものとわからないものが存在します

被害者の因果である場合、その閉鎖空間に足を踏み入れた理由、行動要因、過去などが関係し、本人が認知していない罪があるというのが原則になっています

恨みの類は「被害者だけが憶えている」ことが多く、加害者だった人間が「恨みの被害者になる」という構図があっても、それは仕方ないよね、という感じになっていきます

登場人物の行動要因は、その地の禁忌を破るというもので、大体がバカな行動として、踏み入れてはいけない土地を荒らすという感じになっています

過去に関しては、前世でというパターンとか、その人物の家族の犯した罪を肩代わりさせられるケースもありますが、不条理ホラーだと「止められる立場だけど見過ごした」ということの方が多くなっています

 

この逆のパターンだと、加害者側の不条理の犠牲になるというパターンで、運悪くその場所に来てしまったとか、加害者の食指をそそるタイプだったというパターンがあります

娼婦を襲うホラーなどは、職業倫理、宗教や道徳観念の相違によって殺戮が起こり、被害者側の背景(どうしてそのポジションにいるのか)などは加味されません

あくまでも、加害者側が被害者を「悪」と断定している時に、この不条理劇が起こってしまいます

 

本作の場合だと、被害者側は単にピクニックに訪れた女子大生と、行方不明の恋人を探しに来た若者だけなのですね

なので、加害者側の条理に晒されていることになります

ジョージの一家がヒッチハイクの若者を襲う理由は何か?

これが不条理ホラーの恐怖感の根幹となるものだと言えます

 

映画ではあまり明言されませんが、イメージ的には食料目的のように思えます

彼らがカニバリズムに傾倒する理由などは分かりませんが、映画内のニュースなどではバラバラ殺人事件が頻発というような言葉があったと思うので、単なる快楽殺人者なのかもしれません

彼らには快楽殺人やカニバリズムに至る背景がほとんどないので、スクリーンの向こうの出来事感(自分はそんなことには巻き込まれない)というのが強かったように思えました

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は色々とヤバい作品でありますが、根本となるコンセプトが不明瞭で、ログラインを作るにしても安直なものになると思います

ログラインとは、映画を誰かに説明するときの一文という意味合いがあって、本作の場合だと「行方不明の恋人を探しに来た青年が友人と共にヒッチハイクで罠を張る家族に襲われる」ということになります

これだと、ありきたりな話になってしまい、そこまでの深みを感じません

 

この一文に「食料」を追加すると少しだけ様相が変わります

「行方不明の恋人を探しに来た青年が友人と共にヒッチハイクで食料を得る家族に襲われる」という感じですね

カニバリズムなのか、単なる強盗なのかを匂わせますが、「罠を張る」よりは一歩だけ具体的な感じになっています

 

これに追随して、主語である部分をもう少し捻ることで、どのような物語なのかの肉付けがされます

「行方不明の恋人を探しに来た青年」はそのままなので、これを端的に変えることになります

行方不明の原因は単なるヒッチハイクですが、本作は都市伝説を加味しているので、「都市伝説を軽んじた恋人を探す青年」に変えると効果的になります

 

さらに「青年が友人を巻き込んでいる」のですが、これに関しては「青年たち」に変えて、涼子と健を結びつけさせる方が効果的でしょう

関連づけ過ぎてはいますが、物語の中で明かされる真実は「和也と茜の関係」ではなく、「涼子と健」である方が良いのですね

和也がヒッチハイカーになっている理由が序盤で明示され、後半になって無関係と思われた涼子と健の関係性が浮上する

そして、涼子の過去をヒッチハイカーと関連づけることで因果が生まれてきます

 

涼子と家族を結びつけるものは、わかりやすいのは同じ孤児院出身などの出自で、アカとアオを知る人物のために食料にはならないというものでしょう

逃げて口外されることを恐れての幽閉で、涼子はアカとアオの幼少期の異常行動を見たことがあるという設定を加味しても良いと思います

物語の発端は「カニバリズムのヒッチハイカーがいるという都市伝説」を知った茜が涼子を誘うというもので、彼女たちがドライブインを訪れた際に「ニュース映像でバラバラ殺人事件が報道され、肉体の欠損が仄めかされる」というものになります

そのニュースを真剣に聞いていた涼子は、トラウマになっていた孤児院のアカとアオの記憶を思い出し、逃げるように促すものの間に合わずに拉致されるのですね

涼子はノリノリで彼らのアジトに向かうけれど、涼子だけは「本当であること」を知っている

連れて行かれる二人の間にある温度差というものは必要な要素であると言えます

 

この二人を追って、和也と健はやってくるのですが、和也が茜を突き放したという事実はあっても良いでしょう

そこは迎えに来なかったではなく、バカな行動(都市伝説を追う)というものに対する認識の開きでOKだと思います

でも、実際に恋人が被害者になったかもということで、和也は健を巻き込む形で連れて行くのですね

この関係性は普通に友人だからでもいいし、孤児院時代からの付き合いなどのように絡めても問題はないと思います

 

これらの迷える者の設定を決めて、「被害者側のポジション」を規定します

その後は「加害者側の動機」なのですが、ジョージとジョセフィーヌは「同族を探して孤児院で二人を見つけた」というので十分だと思います

二人を引き取り、ジョージの弟も加わった「食人ファミリー」が出来上がり、それによって森に迷い込む愚か者をハンティングしていくのですね

双方の設定と動機が絡み合わせることができれば、物語というものは勝手に動いていくものです

劇中で示された「現場から逃げない理由」「涼子だけが生きている理由」というものが作り込まれていることで違和感なく走って行けるので、後は「どのタイミングで設定を提示するか」ということになります

これらは全て伏線ということになるので、序盤で明示することになりますが、シナリオのセオリーとしては「開始後20分以内」が理想とされています

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作はかなりの低予算映画で、雰囲気のあるロケーション(ドライブイン、山小屋)などは良かったと思います

メイクに関してはピンキリだと思いますが、殺戮描写としては控えめに思えますね

ホラー映画なのにPG12に止めようというところが微妙で、カルト系の知る人ぞ知るホラー映画として名を残したいのあれば、ターゲットを絞るということも重要であると思います

 

PG12は小学生に助言あればOKというレベルですが、カニバリズムで容赦ない映像があるとなればR18+になっても良いと思うのですね

R18+だと観客が限られると感じますが、本作はどう考えても12歳を対象にしてはいないので、映倫区分を意識する必要はなかったと思います

多くの観客を呼び込むためにPG12もしくはGを目指そうと緩くなる映画は多くありますが、ホラー映画は制限してナンボの世界なので、カルトの頂点を目指すのならR18+でやり切る方が良かったように思えました

 

有害であるかどうかは描かれる倫理観に依りますが、本作の場合は「善の勝利」が根底にあると思うので、忌まわしきヒッチハイカーを根絶やしにして逃げ切るというエンドにすれば問題ないと思います

この手のエンドでわかりやすいのはコテージが燃えるというパターンなのですが、一歩奥へと踏み込むのならば「ヒッチハイクのワゴン車」でこの一族を轢き殺して、コテージごと炎上させるという派手なものになるでしょう

ここまで来ると予算の問題があると思いますが、コンセプトが明確で目指すゴールが明確であればクラファンなどで資金が集まると思います

 

本作は違う意味で歴史に残るのだと思いますが、何かしら爪痕を残して欲しかったというのが本音ですね

細かなところの再現を積み上げて映画を作る場合もあれば、大きな視野で作られた物語の細部を仕上げる映画もある

本作がどちらのマインドで作られたのかはわかりませんが、もし後者だとしたら、もう少し大きな視野で物語を紡いだ方が良かったのではないでしょうか

以上、素人が考えた「さいつよ」シナリオでした

ちなみに「さいつよシナリオ」のログラインは「都市伝説を軽んじた恋人を探す青年たちが、ヒッチハイクで食料をハントする家族を見つけ根絶やしにする」となります

ログラインはあらすじではないので結末まで書くことが望まれるので「根絶やしにする」というワードを使うことで、物語の方向性がイメージしやすいのではないでしょうか

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/387410/review/b368838d-c455-4ac4-83c4-802083e72596/

 

公式HP:

https://hitchhike-movie.com/

アバター

投稿者 Hiroshi_Takata

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA