■甘みを感じるために必要な渋みというものが人生にはあるのですね
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■オススメ度
大人の拙い恋愛映画に興味のある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.5.6(MOVIX京都)
■映画情報
原題:달짝지근해:7510(きらめき:チホとイルヨン)、英題:Honey Sweet(ハチミツ色)
情報:2023年、韓国、118分、G
ジャンル:人見知りの製菓研究員とシングルマザーを描いた恋愛映画
監督:イ・ハン
脚本:イ・ビョンホン
キャスト:
ユ・ヘジン/유해진(チャ・チホ:絶対味覚をもつ製菓会社の天才研究者、45歳)
(幼少期:クァク・チェミン/곽채민)
キム・ヒソン/김희선(イ・イルヨン:ポジティブすぎるシングルマザー)
【家族親類友人関連】
チャ・インビョ/차인표(チャ・ソクホ:借金まみれのチホの兄)
(幼少期:チェ・ミンソン/최민성)
クォン・グィビン/권귀빈(チホの母)
イ・ヒョンソク/이형석(チホの父)
キム・ダイン/김다인(ソクホの実母)
チョン・ダウン/정다은(イ・チンジュ:イルヨンの娘、大学生、射撃の有望選手)
チョン・ウソン/정우성(イ・ユック:イルヨンの元カレ、チンジュの父)
ハン・ソナ/한선화(ウンスク:拒食症ののめり込み小悪魔女子、ソクホのギャンブル仲間)
【会社関連】
チン・ソンギュ/진선규(キム・ビョンフン:製菓会社のナルシスト室長)
イ・ビョンヒョク/이준혁(ドンウ:チホの同僚研究員、恋愛相談に乗る既婚者)
キム・ギチョン/김기천(製菓会社の所長)
ユン・ビョンヒ/윤병희(研究班の同僚)
チェ・ギョシク/최교식(チェ常務:会社の取締役)
ソン・ジョンア/손정아(製菓会社の社員)
キム・ホギョン/김호경(製菓会社の社員)
キム・ゴヌ/김건우(製菓会社の役員)
チェ・チャンシク/최창식(製菓会社の役員)
【告発動画関連】
イ・ジフン/이지훈(イングク:チホの友人、放送局のプロデューサー)
イ・ドンヨン/이동용(リ監督:ドキュメンタリーの監督)
キム・ハンソル/김한솔(告発動画のインタビュアー)
ソン・ダヘ/손다혜(撮影スタッフ)
イ・ジェソク/이재석(撮影スタッフ)
イ・ドンギュ/이동규(討論番組の司会者)
パク・ドヨン/박도영(反対派の討論者)
キム・ボムソク/김범석(肯定派の討論者)
ク・ソジュン/구서준(肯定派の討論者)
ユ・スヨン/유수연(討論会の質問者)
キム・ギョンリ/김경리(討論会の聴衆)
キム・リョンホ/김륜호(討論会の聴衆)
ハン・テジン/한태진(テレビ局の技術スタッフ)
キム・インギョン/김인경(テレビ局の音響スタッフ)
チャン・ジョンヒュン/장준현(討論会の撮影スタッフ)
カン・ダヒ/강다희(討論会のスタッフ)
チャン・ジフン/장지훈(討論会のFD)
イ・ソンヨン/이성용(討論会のFD)
【チホと絡む他人】
ウヒョン/우현(ウェルビンチキンの社長)
ヨム・ヘラン/염혜란(チホの相談を受ける薬剤師)
ハン・テウン/한태은(薬剤師の同僚)
イム・シワン/임시완(求愛する男性)
コ・アソン/고아성(ヘヨン:求愛される女性)
ヒョン・ボンシク/현봉식(やたらとチホと絡む路上の中年男性)
【その他】
キム・ソヒョン/김서현(ソクホが絡む交番の警官)
ギ・ソユ/기소유(ローン会社に連れて来られている女の子)
イ・ヒョンジョン/이현정(女の子の母親)
イ・ホチョル/이호철(ローン会社で喚く巨漢の男)
キム・ミンジョン/채송화(ローン会社のスタッフ)
キム・スジン/김수진(ローン会社のスタッフ)
イ・ワンス/이왕수(ギャンブラー)
ジン・ジョンマン/신정만(ギャンブラー)
チョン・ドゥヒョン/전두현(ギャンブラー)
カン・チュンフン/강충훈(チホたちを助ける市民)
ホン・ソングァン/홍성관(チホたちを助ける市民)
イ・スンフン/이승훈(チホの主治医)
キム・チャンシン/김창신(病院の職員)
イム・スンボム/임승범(キンパ天国のカップル)
アン・ジュリ/안주리(キンパ天国のカップル)
キム・ボムテ/김범태(新人警官)
イ・ハンソル/이한솔(警官)
キム・ユルホ/김율호(ドラマの俳優)
シン・ウヒ/신우희(ドラマの女優)
カン・ジウン/강지은(マクドナルドのアルバイト)
ソ・ジョンウォン/서정원(日本食レストランの店員)
ヤン・ジェヒョン/하시연(レストランのカップル)
ハ・シヨン/김민정(レストランのカップル)
オ・ウンベク/오운백(フライドチキン店の男性オーナー)
ファン・ユンスク/황윤숙(フライドチキン店の女性オーナー)
■映画の舞台
韓国:ソウル
韓国:自由路ドライブシアター
韓国:江陵
ロケ地:
韓国:ソウル
韓国:江陵(ビーチ)
https://maps.app.goo.gl/pgQVWmE19RVGpvnV8?g_st=ic
韓国:坡州市(ドライブシアター)
https://maps.app.goo.gl/6fz8uMURWxSmWRLf6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
製菓会社の研究員として大ヒット商品を開発したチホは、極度の人見知りで、時間に正確で無駄のない男だった
起きる時間、出勤する時間、食べるものなどが決まっていて、その通りにすることで安心する性格をしていた
ある日、兄ソクホの代わりに借金を払いにきたチホは、そこでイルヨンという窓口の女性と絡むことになった
チホを追いかけてきたイルヨンが目の前で転倒してしまい、慌てたチホは彼女を背負って病院を目指す
だが、極度の栄養失調状態だったチホは力尽きて倒れ込んでしまった
二人は救急車で病院に運ばれてしまい、イルヨンから医療費を借りたことで縁ができてしまう
彼女は食事を奢ると言い、行きつけのキンペ王国という料理店に連れて行く
そこから急速に仲を深めていく二人だったが、イルヨンには大学生の娘がいて、男で失敗した母を嗜めることになったのである
テーマ:ドキドキの正体
裏テーマ:ありのままを好きでいること
■ひとこと感想
『フクロウ/梟』の主人公の盲目の鍼灸医が今度は中年のラブロマンスに登場するとのことで興味が湧いて参戦
同じ人なのかと思うほどの変身ぶりだったように思います
映画は、人見知りの研究員とシングルマザーの恋愛で、女性経験のないチホが男性遍歴最悪のイルヨンの振り回される様子が描かれています
ローン会社で働いているイルヨンの元に兄の代わりに借金を払いにきたチホがやってくるという流れで、大声を出す客にビビる女の子を宥めているチホを見て、イルヨン気にいるところから始まります
イルヨンには大学生の娘チンジュがいて、彼女が射撃をしているのが元恋人を殺すためという強烈な個性を持っていましたね
彼女は母親の男を見る目のなさというものを痛感していて、チホも怪しいと感じています
一方で、チホの兄ソクホも「金目当てのシングルマザー」と思い込んでいて、なんとか二人を別れさせようと画策します
チホの会社も仕事に身が入らないチホをなんとかしようと考えていて、ナルシスト上司が出てきたり、適当なアドバイスをする同僚などが障壁になっていましたね
その周辺ではロミオ&ジュリエットカップルがいたり、キンペ屋さんで会話を盗み聞きするカップルもいるし、やたらと絡んでくる男などもいましたね
とにかく、無駄に思える要素もコミカルに絡んでくるので、鑑賞後感の良い作品だったのではないでしょうか
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
中年の恋というのは若者ウケはせず、同年代の同じような境遇の人の共感を得るかどうかがヒットの要因になっています
今回は人見知りと男運の悪い女という組み合わせで、恋愛的な主導は女性の方が取るように動いていきます
はじめは「食べ友」の関係ですが、二人とも着地点を探って「言い得て妙」という関係を作っていましたね
イルヨンは娘がどう思うかということはそこまで気にしないのですが、チホの出現によって、娘に変な男が近寄ってくると、途端に牙を剥くというキャラになっていました
でも、娘の方が強いというパワーバランスになっていて、それでも不可侵領域になっていましたね
兄も弟のことを大切に想っていますが、どこか利用している部分もあり、純粋ではありませんでした
それを指摘されて壊れそうになるものの、チホはそんなことでは兄を嫌いになれないという純真さを持っています
映画は、チホの健康問題の危うさとか、室長、イルヨンの元カレなどが入り乱れるカーチェイスが不穏さを醸し出していましたね
そのどれもがユーモアたっぷりのオチになっているのが良かったと思います
それにしても脇にいるキャラが微妙な絡みを見せてくるところは笑えてしまいます
■孤独を感じるとき
本作の主人公チホは、家族も恋人もおらず、プライベートで会う友人すらいません
彼の兄は服役していて、物語の冒頭で出所しますが、それまではあのアパートで一人暮らしを続けて来ていました
彼は好んでその生活をしていて、孤独だと感じたことはないように思えます
極度の人見知りと、人に会うストレスというものがあって、心の平穏を保つために、彼なりのルーティンというものが生まれていました
変化のない人生を送る人を見ると勿体無いなあと思われがちですが、本人はこの状態こそが幸せであると感じているのですね
そして、チホはヒット作を作ってしまったことで起きた変化というものを好意的には受け入れてないように思えます
彼は出社の際に「自分の作ったヒット作がプリントされたトラック」に悪態をつくのですが、それが彼の唯一の抵抗に見えます
その後の日常は、決まった時間に起きて、決まったものを食べての繰り返しで、退社するときに同僚に声をかけることすらありません
このような人物に孤独感があるのかは何とも言えませんが、人が孤独を感じるとき、それは「その状態を孤独だと認識するから」だと言えます
一人でいることが普通で、一人でいる方が楽しいという感覚だと「孤独」とは思えません
でも、イルヨンと会って、一人以外の「楽しい時間」を知ってしまうと、相対的に「一人でいる時間が孤独だ」と感じてしまうのですね
これは、人の幸福感というものが「相対的幸福感」に支配されているからで、この相対は今回のように現在進行形のものもあれば、過去との比較によって起こる場合もあります
人は内面的に感じる幸福と、対外的な影響によって感じる幸福を持ち合わせていて、人によってその比率は違います
個人的には、内面的幸福感の方が優位で、何かしらを達成したり、完璧な時間を過ごせたりすると、多幸感に包まれる傾向があります
対外的なものとしては、自分の行為が良い影響を及ぼした場合とか、その人の内面的幸福感にふれたときなども心が温まると思います
自分の行為が相手に及ぼす影響は、自分ではコントロールできないものなので、それが自分の思った通りになると嬉しいという感覚でしょうか
そこには「演技」などもあると思いますが、演技だとしても、相手のためのレスポンスは、その人に肯定感をもたらすので効果的であると思います
これらのキャッチボールを覚えると、それがない生活が空虚に思えることがあります
そして、その時間が楽しければ楽しいほど、孤独感は深くなってしまいます
でも、孤独感の強さというのは「相手への想いの強さ」でもあるので、それが悪いとは限らないのですね
その孤独を打ち消すための原動力が生まれる場合もあるので、人間とはいかに複雑なものかと思い知らされると思います
■愛を保証する周囲の理解
本作は、いわゆる中年の恋愛を描いていて、周囲がその交際について文句を言うと言う流れになっています
チホの兄ソクホは「イルヨンを金目当てだ」と思っているし、イルヨンの娘チンジュは「またロクでもない男を捕まえた」と思い込んでいました
当人同士が燃え上がっても、周囲の理解が得られないと障壁になってしまうのですが、今回の場合は「家族の思い込み」が障壁となっていました
実際に相手を見たわけでもなく、状況と過去によって決め付けられている部分もあり、なおかつ「二人が劇的な恋愛と言う自覚がない」と言う面白さもありました
もともと「食べ友」と言う名目で関係性がスタートしていて、これは恋愛経験の希薄なチホを考えてのイルヨンの知恵でした
なので、恋愛感情を最初に持ったのはイルヨンの方で、チホは彼女と過ごす時間を重ねるたびに、「これは恋では?」と思い始めていたと言えます
イルヨンはチホの恋愛のペースに合わせているのですが、それだけ大切にしたいと言う思いがあったのでしょう
でも、ソクホが乱入し、娘に危険が及んだことで、母親としての立場を優先することになりました
この二人の関係性を修復したのはソクホとチンジュで、双方が誤解していたものを確認し合う流れになっています
それによって、この二人の思い込みというものが消えるのですが、随分と掻き回したなあと思わざるを得ません
でも、これらの障壁を突破するかどうかは恋愛の強度を推し量るものなので必要な儀式であると言えます
二人の思いを理解して、そして周囲の変化によってそれが担保される
そこに至るまでの紆余曲折も恋愛の楽しみであると言えるのかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作には、魅力的な脇役がたくさんいて、それぞれが多くの思惑を抱えていました
チホが恋愛で使い物にならなくなって困ったら、ナルシスト室長が相手を口説きに来て、ソクホがチホを使って誘惑させようとしたら相手を間違える、という展開になったりします
また、二人の周囲で起こっている「全く無関係のカップル」の存在も際立っていましたね
キンペ天国の別のテーブルのカップルは盗み聞きをしているし、ロミオ&ジュリエットのカップルも我が道を行きます
ちなみに彼氏役がガチのアーティストなので歌も上手くてシーンに説得力がありましたね
この他にも、薬剤師も巻き込まれ役として面白く、ここにヨム・ヘランを配するというセンスが抜群でした
道ゆく通行人、同僚のドンウなど、韓国映画をたくさん見ている人なら、バイプレイヤーがたくさん登場していて面白い発見があったと思います
そして、これらの微妙に関わりそうで関わらない塩梅が絶妙で、物語を阻害しない程度のユーモアになっているのも良かったと思います
映画は、真っ直ぐに二人の恋愛を描かずに、彼らが影響を受けていくものをきちんと示して行きます
お菓子にしか目がないチホが人間に興味を持っていく過程とか、イルヨン側の家庭の内情がわかるにつれて思わぬ障壁が登場したかと思えば、あっさりと事故死するという変化球も混ぜていました
単純に大人の恋愛だけを描くこともできましたが、二人は社会人として、それぞれに交流関係があるわけで、それらを抜きにした物語になっていないところが良いのだと思います
これによって、二人の背景が広がり、それと同時に二人が本当にどんな人なのかというものが見えてきます
そして、周囲の人が微妙な障壁になっているところがツボで、年齢的なものも考えて、「盲目」で終わらせないところも妙なリアリティがありました
中年の恋愛で起こり得る問題というのは、青春期のそれとは違って公私ともに影響力が大きかったりします
チホがうわの空になったことで会社の業績に影響が出るとか、寂しい女を拐かして欲を満たそうとする上司なども出てきたりします
このように他で起こりそうなことをシリアスにしてしまうと、二人の中で起こる絶望的なこととのコントラストが薄まってしまうのですね
そう言った意味において、周囲をカラフルにすることで、二人の絶望感が際立って見えるので、うまい演出だなあと感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101240/review/03780095/
公式HP:
https://www.rakuten-ipcontent.com/mysweethoney/
