■鬼平はどこへ向かうコンテンツなのだろうか


■オススメ度

 

原作ファンの人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.5.10(イオンシネマ久御山)


■映画情報

 

情報:2024年、日本、111分、G

ジャンル:若き日の因果に囚われる鬼平を描いた時代劇

 

監督:山下智彦

脚本:大森寿美男

原作:池波翔太郎『鬼平犯科帳(文藝春秋、1967年~1989年)』シリーズ

 

キャスト:

松本幸四郎(長谷川平蔵:火付盗賊改方長官)

市川染五郎(長谷川銕三郎:若き日の平蔵)

 

仙道敦子(久栄:平蔵の妻)

 

中村ゆり(おまさ:引き込み女になりたがる女)

   (若年期:中島瑠菜

甲本雅裕(鶴の忠助:おまさの父、流れ盗賊)

 

本宮泰風(佐嶋忠介:平蔵の筆頭与力)

浅利陽介(木村忠吾:平蔵の同心、うさぎ)

山田純大(酒井祐助:平蔵の同心、柳剛流の免許皆伝)

久保田悠来(沢田小平次:平蔵の同心、小野派一刀流の遣い手)

 

柄本時生(小野十蔵:平蔵の同心)

(お磯:十蔵の妻)

(おゆみ:十蔵の娘、5歳)

 

大石昭弘(竹内孫四郎:平蔵の同心)

井手麻渡(山田市太郎:平蔵の同心)

𠮷田道広(山崎国之進:平蔵の同心)

 

中井貴一(京極備前守高久:幕府の若年寄)

 

森岡豊(山本利右衛門:平蔵の友人)

 

火野正平(相模の彦十:平蔵の密偵)

和田聰宏(小房の粂八:盗賊・丹兵衛の元配下、平蔵の密偵)

古田新太(血頭の丹兵衛:粂八の父親的存在)

橋爪功(蓑火の喜之助:盗賊三箇条を守る大盗賊)

浪岡一喜(小川や梅吉:弥平の一味、のちの丹兵衛の一味)

窪塚俊介(助次郎:弥平の一味)

藤野涼子(おふじ:助次郎の身重の妻)

 

山口馬木也(岸井左馬之助:平蔵の無二の親友)

松元ヒロ(三次郎:軍鶏鍋屋「五鉄」の亭主)

中島多羅(おたね:三次郎の妻)

原沙知絵(おふさ:服部角ノ助の妻、桜屋敷の娘)

 

柄本明(鷺原の九平:ひとりばたらきの老盗賊)

 

北村有起哉(網切の甚五郎:盗賊の頭)

   (若年期:銭山伊織

志田未来(おりん:甚五郎の引き込み女)

山口祥行(桑原又二郎:甚五郎一家の浪人)

田中俊介(野尻の虎三:甚五郎の配下)

 

松本穂香(おろく:本所・深川のすあい女)

矢柴俊博(土壇場の勘兵衛:おろくを殺した家具師)

ベンガル(大黒の与右衛門:盗人酒場に入り浸っていた盗賊)

 

谷口高史(大村の主人)

 


■映画の舞台

 

天明7年~寛政7年頃

日本:江戸

 

ロケ地:

京都市:左京区

下鴨神社 糺の森

https://maps.app.goo.gl/8oGKLX5PZjJzs4HB6?g_st=ic

 

京都市:下京区

大本山佛光寺

https://maps.app.goo.gl/p26JTeznzsA2weXC8?g_st=ic

 

京都市:右京区

仁和寺

https://maps.app.goo.gl/znuCBuuqrkSMbn9k8?g_st=ic

 

大覚寺

https://maps.app.goo.gl/Ln3GP9aKomeF2i989?g_st=ic

 

京都府:京丹後市

五十河の里民家苑

https://maps.app.goo.gl/WA8vMRHnvvTRHXdu7?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

火付盗賊改片の長谷川平蔵は、京の町の平和を守るために、配下の同心たちと邁進していた

ある日、平蔵の元にかつて交流を持ったおまさがやってきた

彼女は平蔵の密偵になりたいというものの、平蔵は首を縦に振らなかった

 

その頃、町では強盗が頻発し、その亡骸のそばに「鬼平」と血文字が残されていた

平蔵は自分への挑発であると考え、その行方を追っていく

彼は配下の忠吾に羽振りの良い客がいく店を聞き、お忍びでそこに出向くことになった

 

芋酒がうまい店だったが、そこでに物騒な客と態度の悪い女がやってきた

平蔵は男を黙らせ、女と話し込むことになるものの、店を出た途端に浪人どもに取り囲まれてしまった

 

テーマ:因果応報

裏テーマ:人を惹きつける魅力

 


■ひとこと感想

 

これまでにたくさんの映像化がされた作品で、本作は新しい鬼平犯科帳のSeason1という立ち位置になっています

時代劇専門チャンネルにて『本所・桜屋敷』が放映され、その続編にあたる劇場版という立ち位置になっています

今後は、時代劇専門チャンネルにて『でくの十蔵』『血頭の丹兵衛』と放映される予定になっていて、この4作品で一つのまとまりとなっているのですね

 

映画は、鬼平の何を知っていたら楽しめるのかは分かりませんが、平蔵という昔は悪人、今正義の味方ぐらいのことしか知らなくても何となくついていける内容でしたね

今後は時代劇専門チャンネルでの放映なので観るかどうかは分かりませんが、テレビ放映よりは気合が入っているという感じになっていました

 

物語は、若き日の平蔵が回顧録として登場し、その因縁がいろんな形で噴出する様を描いていきます

おまさは青春期のこじれ縁から歪な愛情になっているし、鬼平を翻弄する悪党とも深い繋がりがあることがわかります

それにしても妙なあだ名がついたキャラが満載で、文字だけで表現すると、「誰だ誰だかわからない」感じになっていますね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

時代劇の古典にネタバレがあるのかはわかりませんが、映画としてはテレビのスペシャル版を観たような感覚になりました

物語も起承転結がはっきりしている内容で、そこまで小難しくもなく、過去編との絡みもそこまでのサプライズではありません

とは言え、おまきはちょっと変わりすぎてやしないかいと思わないでもありません

 

映画は、チャンバラシーンも満載で、脇役にも重鎮が登場しまくっていましたね

シリーズを知っている人なら「出ました!」みたいな感じのキャラも多そうでしたが、「意味深に登場するけど本作ではチョイ何だろうなあ」というのが多すぎる感じもしてしまいましたね

 

本作はともかく、鬼平の格好よさよりは、おまきの美しさを堪能する作品のように思えました

引き込み女を演じた人たちがほぼ同系統というので混乱しそうになりましたが、これも時代劇あるあるなのでしょうか

とにかくバッチリメイクでエロさ全開というキャラ被りで、女豹同士の戦いが勃発しないかヒヤヒヤしてしまいました

 


鬼平ってどんな話?

 

『鬼平犯科帳』とは、池波正太郎が書いた時代小説で、長谷川平蔵という主人公が、悪を裁くという内容になっています

彼は火付盗賊改方として、元京都西町奉行の長谷川宣雄の息子という設定になっています

17歳くらいの頃はヤンチャ者で放蕩三昧の日々を過ごしていました

その後、本所・深川界隈の無頼漢にトップになって、「本所の鬼」などと呼ばれていました

 

父が亡くなった後に家督を継ぎ、今の職業に就くことになります

若い頃の放蕩経験から「鋭い推理力と観察眼を持つ」という設定があり、犯罪者だった経験から「事情によっては咎めない」と配慮する人物でもありました

わかりやすい時代劇の勧善懲悪系ではありますが、悪党側の論理に耳を傾けるという性質があります

でも、救いようのない悪には鬼なので、このあたりのバランスが各話によって変わっていく面白さがあるように思います

 

一応、長谷川平蔵は実在の人物で、幼名も「銕三郎」としてそのまま登場しています

小説はいわゆるフィクションで、実際の人物がどうだったかはわかりませんが、池波版・平蔵のイメージが強すぎますね

ちなみに、池波正太郎による人物造形は「8代目・松本幸四郎」とのことで、今回の映画では「10代目・松本幸四郎」とその実の息子が平蔵を演じているというのは面白いなあと思ってしまいます

 


シリーズの1作品だけを映画にして効果がある?

 

本作は、時代劇専門チャンネルで放送されていてドラマの続きで、この後の物語もドラマで放送されることになります

全4話の2話目だけを映画として公開しているのですが、わかりやすい映画専門チャンネルの宣伝のようなものだと言えます

時代劇専門チャンネルは、スカパー!やJ:COMなどのサービスで視聴できる番組で、月額990円(税込)で4K放送が楽しめるサービスとなっています

その視聴者層の拡大を狙ってのものだと思いますが、どれぐらい効果があるのかは未知数だと思います

 

昨今では、WOWOWで続編ドラマをしている『沈黙の艦隊』などのように、映画館から各種サービスへの流入を狙う方法などで展開していくケースが増えているように思えます

個人的にはサブスク系の動画サービスには入っていないので、そのために契約をするかと言われればしないのですが、それは映画鑑賞と動画視聴は別ものだと思っているからなのですね

なので、同じ理由で「テレビ放送の劇場版」というものも観ません

普段、テレビで放映されているものを見返している(予習)時間がないこともありますが、そもそもが映像の作り方から違うように思います

 

部屋を明るくした状態で観る作品を作るのと、暗い中で観る作品を作るのとでは絵作りの部分から違うので、視覚の麻痺があっても、なかなか同じようにはいかないのだと思います

映画にしろ、テレビにしろ、没入できる環境を作れればそこまで大きな差異はないのですが、映画館ほど視聴環境を保つのに制限がある場所も少ないと思います

自分の視野を最大限に使う没入と、視野よりも狭いところを凝視して没入するという違いがあるので、狭いところほど集中力が必要になると思います

120分の映画をずっと凝視し続けるのは相当な負荷がかかるので休憩が必要になってきますが、映画館の環境だと凝視する必要がないので、その分負担も少ないように感じます

あくまでも個人的な感想ですが、テレビやデバイスで映画を観ると、映画館よりも疲れるという印象を持っています

 

本作は、その視聴方法の違いを超えてでも流入を目指していて、それは費用対効果を見込んでのものだと思います

だとするならば、時代劇専門チャンネルをどうやって観るのかまで宣伝しないとダメだと思うのですね

私もググってやっとわかったけど、スカパー!に入って、さらに月額料金がかかるのかとか、家にあるBS放送の有料チャンネルで観られる(光テレビ)のかなどを探すのに一苦労でした

公式HPに行けばわかると思うのですが、その手間が結構面倒な部分もあります

 

また、時代劇専門チャンネルNETというサービスもあって、こちらだと月額550円で観られるそうですね

映画の最後に「続きの視聴方法をスクリーンで流されても困ります」が、流入を考えるのなら、映画の入り口で販促物を渡すとか、特典の中に封入するなどの工夫が必要ではないかな、と思いました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、昔馴染みのあるキャラクターを再登場させる作品で、これまでの鬼平犯科帳と比較されるのもやむなしだと思います

とはいうものの、演者の演じ比べを楽しむという層は少なく、時代劇というコンテンツを新しい世代にも認知してもらうという意味合いが強いように思えました

時代劇を観る年齢層は高めで、若年層が興味を示すために何をするか問題というものがあります

さすがに10代に人気の俳優を時代劇の主役に抜擢というのは難しいと思いますが、ターゲットを今よりも少し下げるという意味では、中堅どころの元アイドルを起用するのはアリだと思います

 

その上で「予定調和の物語がウケるのか」という問題はあって、時代劇は「基本的には勧善懲悪」で、悪はとことん悪というスタンスを貫いてきました

敵に背景を与えて、正義の闇を描いているヒーローものは多いですが、現実逃避の先にあるコンテンツで泥臭いリアルを追求してもあまり意味がないように思えます

今回の敵役は事情はあれども、仲間を平気で殺すという徹底型だったので、正義を応援したくなる素地を備えていました

個人的にはもっと鬼畜でもよかったと思いますが、平蔵の過去の清算も含むキャラだったので、ちょうど良いのかもしれません

 

今回の平蔵は「かつて悪だった」という人物の改心した後なのですが、それがもっと強調されても良かったと思います

どうして善の側にいられるのかなどは平蔵の過去を紐解いていくうちにわかると思うのですが、やはり連続ドラマでないと難しいボリュームなのですね

本作は新しい鬼平シリーズの「Season 1」の第2話という立ち位置なので、それを知りたい人はドラマを観てねというものになっています

第1話でその方法を行う方式はまだ理解できるし、最終話だけを映画にするというのもビジネスとしてはアリなのでしょう

でも、途中1話だけを映画で公開というのは、やはり意味がわからない部分が多いように思います

 

コンテンツビジネスは飽和状態に陥っていて、どの環境で観られるかというものも変化していきます

プラットフォームの戦いの中で、良質な作品の奪い合いというものが起こっているのですね

プラットフォームの目玉的な商品をサブスクサービスの利用者増加に向けてアピールをしているのですが、映画館でその宣伝をして意味があるのかは微妙だなあと思って観てきました

 

個人的には、いずれコンテンツ自体がプラットフォームから切り離されていく時代が訪れると考えています

それは、動画のデータそのものがブロックチェーンの技術によって保証される時代が動き始めているからなのですね

これによって、これまでにはさまざまな配給権などのしがらみの上で公開や放送に至ってきたものが、クリエイターとユーザーが直接繋がっていく未来につながります

これらの管理やアクセスのプラットフォームを作り、そこに広告を介在するとか、コンテンツの再生(ダウンロード)による手数料というものを組み込むことができれば、全世界にコンテンツが同時に発信される時代になります

言語の壁が高い日本語コンテンツは字幕対応などで遅れを取ると思いますが、それらを見越したコンテンツ作りを進めていく時代にあると思います

 

この流れが主流になれば、どこで観る(プラットフォーム、鑑賞場所)というものに囚われることがなくなります

ブロックチェーン上で認証を受けたコンテンツを買って配信するなんて未来もあると思いますが、それも製作者の収益化に寄与する形にはできるので、クリエイターとしてはチャンスが広がっていくと思います

今では個人でそれをやるという人がいても、企業規模でそれを行うというのは、少なくても日本ではまだ未開発の部分だと思うのですね

なので、いずれは起こってくる映像流通革命を視野に入れて、日本独自のコンテンツ作りというものを進めていく時代が来ているのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/94567/review/03807094/

 

公式HP:

https://onihei-hankacho.com/movie/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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