■どんな状況下でも瞬時に冷静になれるかが、生存の確率を高めることに繋がります
Contents
■オススメ度
実話系クライム映画が好きな人(★★★)
容赦ない犯人を見たい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.9.15(京都シネマ)
■映画情報
原題:인질、英題:Hostage:MissingCelebrity
情報:2021年、韓国、94分、G
ジャンル:国民的俳優が拉致事件に巻き込まれた事件をベースに紡がれるクライムスリラー
監督&脚本:ピル・カムソン
原作:『誘拐捜査/解救吾先生/Saving Mr. Wu(中国、2015年、監督:ディン・シェン)』
Amazon Prime→https://amzn.to/3Upw4Or
キャスト:
ファン・ジョンミン/황정민(本人役、誘拐される国民的俳優)
キム・ジェボム/김재범(チェ・ギワン:サイコパスな誘拐犯のリーダー)
リュ・ギュンス/류경수(ヨム・ドンフン:誘拐犯のナンバー2)
チョン・ジェウォン/정재원(ヨンテ:誘拐犯グループの一員、ファン・ジョンミンのファン)
イ・ギュウォン/이규원(コ・ヨンノク:リーダーに浸水する誘拐犯の一味)
イ・ホジュン/이호정(セッピョル:誘拐犯グループの武器調達担当の女)
パク・ソンウォン/박성웅(ファン・ジョンミンの弟)
ジョ・キュンヒュン/조경현(ファン・ジョンミンのマネージャー)
イ・ユミ/이유미(パク・ソヨン:カフェ店主惨殺事件で拉致された女性)
キム・ジョヘ/김주희(カフェの社長、ソヨンの雇い主)
バク・ジョヘ/백주희( オ刑事:ソウル地方捜査班の女性刑事)
シン・ヒュンジョン/신현종(クァク刑事:ソウル地方捜査班)
ハン・クオン/한규원(チャン刑事:ソウル地方捜査班)
ジー・ナムヒョク/지남혁(グー捜査官:ソウル地方捜査班)
リュ・スンヒュン/류성현(パク署長:平沢西部警察)
キム・ジェチャル/김재철(イ刑事:平沢西部警察)
イム・ヒョンテ/임형태(シン・ソンリ:山に住む老人)
ハン・ナムジュン/허남준(新作映画で犯人役を演じる若手俳優)
ノ・ウンハ/노은하(ファン・ジョンミンの妻)
チョン・ジュニョン/정준현(ファン・ジョンミンの息子)
■映画の舞台
韓国:
ソウル
https://maps.app.goo.gl/EtDDcjVY43vB7RXR9?g_st=ic
ピョンテク市
https://maps.app.goo.gl/CwMZAag4p28Pj9y8A?g_st=ic
ロケ地:
韓国:華川郡
https://maps.app.goo.gl/TrgmVaomktTXEZxg9?g_st=ic
ナムサンミョン
https://maps.app.goo.gl/Nk4eoAfEXoSnsanp8?g_st=ic
チュンチョン市
https://maps.app.goo.gl/GLbupUgzA7iftPLm6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
国民的スターのファン・ジョンミンは映画公開を控えて映画完成披露会に出席していた
家族が旅行に行っている間に自由を謳歌しようと考えたジョンミンは、マネージャーを帰らせて、一人でソウルの繁華街をうろついていた
行きつけのコンビニに鍵を預けたジョンミンだったが、そこにファンを公言する若者がたむろしてくる
写真撮影を頼まれたジョンミンだったが、泥酔を理由に断った
そのまま路地裏を行くジョンミンだったが、先ほどの若者たちがバンで追いかけてきて、有無を言わさずに暴力を振るって誘拐してしまう
そして、気がついた時は場所もわからぬ山奥で、そこにはニュースになっていた「カフェ店主惨殺事件」のもう一人の被害者も監禁されていたのである
犯人グループはカフェ店主との金銭受け渡しが不本意な額だったこともあり、ジョンミンに「二人でいくら出す?」と迫る
ジョンミンは「1日で引き出せるのは5億ウォン」だと伝え、ATMのカードを取りに行かせるために犯人たちを自宅へと行かせたのである
テーマ:演技
裏テーマ:自尊心
■ひとこと感想
実話をベースにした映画のリメイクということで、国民的俳優が自分の名前で出演するという一風変わった映画になっていました
犯人が容赦なく、リーダーはサイコパスだし、ナンバー2の暴力もとめどない感じに仕上がっていましたね
俳優の顔を殴るは蹴るわと暴れまくり、警察に対しても容赦ない犯行を繰り返します
アメリカだったら即射殺だよなと思っていましたが、韓国だとあそこまでやってもきっちりと捕まえるのだと驚いてしまいました
映画はソウル近郊から南に向かった郊外の山奥という設定で、ソウル市警とビョンテク市警が入り乱れるという展開になっていきます
ラストで面白い仕掛けがあって、本編よりもゾクっとしてしました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
俳優が自分役で出演する映画というのは稀で、ここまでボッコボコにされる役というのはさらに稀なことだと思います
「ドッキリだと思った」とか、「インタビューあるから顔はやめて」とか、危機感のない導入から始まって、カフェ店主惨殺シーンを動画で見せられてからは雰囲気がガラッと一変します
どうやって脱出するのかなと思っていましたが、「決死の演技を披露するという俳優ならではの脱出劇」というのが面白かったですね
こういった事件では犯人がアホな行動を取ってスキを見せるのですが、本作では元からあった火種がセッピョルの死によって爆発するという犯人のキャラクター像を活かしたシナリオになっていました
本作の脱出劇は突出するほどの出来栄えではありませんが、やはり「再現映画を作る2年後のオチ」は最高でしたね
本編の犯人も怖いのですが、安堵の後に垣間見る犯人というのは別格の怖さがありました
■元ネタの事件について
本作は中国映画『誘拐捜査(解救吾先生)』のリメイクで、リメイク元は実際にあった「呉若甫誘拐事件」をモチーフにしています
この事件は2004年2月に実際に起きた事件です
被害者の呉若甫さんは1962年生まれの中国人の俳優で、人民解放軍芸術学院を卒業されています
事件の概要は、2004年2月3日の午前2時に、呉若甫さんと数人の友人が朝陽区三里屯の豹豪酒場から出てきた際に、警察官を名乗る3年の男に手錠をかけられ、車に引きずり込まれました
友人が警察に通報し、北京市の公安局が捜査にあたります
犯人は指名手配中の王立華という人物で、この男は北京で別の誘拐事件を起こしていました
拉致された翌日の朝8時に友人あてに王立華から電話が入り、200万(円?)の身代金の要求を受けます
その後、同日の午後7時に金松地区にいた王立華が逮捕されます
その夜の10時に王立華は呉若甫の拘束場所を供述し、同日23時、その場所にいた王立華の仲間を逮捕するに至りました
その後、呉福甫は自身の事件を扱った作品『誘拐捜査』に被害者役ではない役柄で出演を果たします(現場に駆けつけた警官役だったそうです)
事件の前日にあたる2月2日に、呉福甫はプロデューサーのチェン・ヨンと香港のディレクターを交えて、テレビドラマの打ち合わせをしていたそうですね
そのホテルの向かいにある酒場に行き、そこから出る際に襲われたとされています
誘拐の際に犯人は銃で脅し、友人に危険が及んだために単独で犯人の車に乗り込みます
車が出てから40分後に小屋に連れて行かれ、そこで20代の若い男(杜清江)を見たと言います
小屋には暖房がなく、二人は寒さで凍えていました
飛行機の離陸音がしたために、飛行場の近くだったのではないかと思っていたとのこと
体は9つのチェーンロックで固定されていて、動きを完全に封じられていたと言われています
犯人は合計で6人、交代で二人の監視をしていました
呉福甫は最終的に家族ではなく友人にお金の引き出しを依頼します
お金が犯人に渡ることはなく、友人が警察に協力をして、王立華の車を発見して逮捕に至ります
その際に犯人は手榴弾とか銃器で武装していましたが、犯人が寝静まった夜中にSWAT部隊が突入したために、一発の銃声も響かなかったとされています
以上が元ネタの事件の経過になります
参考にしたのは以下のサイトですが、思いっきり中国語なので翻訳機能を使って読んでみてください
↓網易「娱乐圈奇案解密:九死一生的吴先生」URL
https://www.163.com/ent/article/B4A8GKL600034UOI.html
■実際に誘拐されたどうするか
誘拐されたことがないので体験談を話せませんが、アメリカなどでは「誘拐を防ぐ教育」と同レベルで「誘拐されたらどうするか」という教育に着手しています
これらの教育では、誘拐に巻き込まれた時に「事前に何をすべきか知っておくことが重要」というスタンスになっていて、実際にできるかどうかよりも知識として入れておいた方がよいという考え方になっています
基本的には「自分が動けなくなる前に逃げる」というのが前提で、その根底には「犯人が長距離移動をすると警察が探しづらくなる」というものがあります
なので、まずは車に乗らないようにする、というのが第一原則となります
どこまで可能かは状況によりますが、まずは人通りの多い方向に逃げるとか、建物に向かうというのが最善策で、人通りの少ない路地を歩くのを避けるのが無難となります
次に重要なのは「声を出すなどして周囲に知らせる」というもので、犯人が自分を取り押さえたとしても「ひたすら叫び続ける」ことで、事件の認知が起こる可能性があります
「助けて!」とか「警察呼んで!」とか短い言葉を繰り返し言うとか、場合によっては「嘘でもいいから『火事です!』と言う」のもアリだとか
人は火事に敏感に反応する(自分も巻き込まれる可能性があるので)ので、注意を引きやすいと言われています(英語だと「Fire!」と叫ぶのが効果的とのこと)
これによって、たとえ車に引き摺り込まれても、誰かが見ていて通報すれば警察が初期の段階で把握することができます
目撃者を増やすことで捜査の進展が期待できるので、他者認知をいかに行うかは救出の鍵になります
次に重要なのは、可能な限り抵抗することです
殴る、蹴る、引っ掻くなどの攻撃や、相手の急所となる「目鼻」「股間」「喉」などへの直接攻撃をします
デリケートゾーンと呼ばれる中心線を狙うことで、脱出の機会が得られる可能性が高くなります
この際に可能であれば武器を探すことを恐れずに行います
室内なら椅子やテーブルなどで相手との距離を取るとか、地面に落ちているもの(土の塊など)を投げるとか、距離を取って攻撃できる棒、至近距離で攻撃力の高い重めの本などで相手を殴るのもアリでしょう
これらの攻撃でも捕まってしまったら、そこからは相手の指示に従う方が賢明です
相手が複数で優位性がある場合、武器の所持などによって抵抗不可能だった場合は負傷を避けた方が無難と言えます
意識のある状態で車などに乗せられた場合は、移動方向、車外から聞こえた音などに気を配るようにしてください
車のトランクに入れられた際は、リリースコードを探します
これはエマージェンシー・リリース・コードと呼ばれるもので、蛍光素材で暗闇でも見つけられるものになっています(アメリカの車には多いそうです)
日本の車だと電磁式オープナースイッチが採用されていて、これらを内側から開けるにはバックドア側の内張りを剥がしてコードを露出させます
そこにある白いプラスチックの部品を見つけるのですが暗闇で手足が拘束されていると難しいかもしれません
以下のサイトで部品に関しての写真などが掲載されているので、知っていれば「誘拐以外」の困った時に役立つかもしれません
↓カーライフDIYのホームページ
https://carlifeanddiy.com/2018/08/07/backdoor-open/
自宅に車を所有している人なら、その場所を把握できますので、実際に開閉してみる練習をするのもアリかなと思います
車から脱出できずにアジトまで連れてこられたら、まずはヒステリックにならずに冷静に周囲を観察することが必要になります
懇願したりするよりは、尊厳を保ち対等に振る舞うことで、犯人が自分のことを人間だと認知されやすいとされています
犯人が相手を人間だと認識すると殺される確率は低くなると言われています
また、対話の際は交戦的にならず、非協力的でもない方が良いとされています
その後、誘拐犯との対話では「誘拐犯と仲良くなるようなことは避ける」と言う原則のもと、必要なものを提示し、落ち着いて頼む方が良いですね
また、相手がテロリストである場合は宗教の話はタブーです
監禁されている場合は、できるだけ多くの情報を入手することを心掛けてください
音や匂い、人の立っている位置を知ることで出口がわかることがあります
また、自分の監禁に携わっている人の行動を注視することも重要で、それがルーティンによるものかなどで、犯人内のピラミッドというものがわかる場合があります
今回の映画のように他の捕虜がいる場合は、その人とコンタクトを取れる方法を探します
映画では近くにいましたが、隣の部屋にいるなどという場合もあります
その際は直接的に話すことは避け、モールス信号を送るなどの方法が必要になります(こればかりは相手もその知識があることが前提ですが)
最終的には「長期間の拘束を想定する」ことになります
そのためには食べられる機会があれば食べて、健康状態を保つ努力をします
体を鍛えることができる場合には少しでも筋肉を動かして血流を巡らせておく必要があります
精神的な効能を得るには瞑想、祈りなどが有効とされています
基本的には救助を待つというのが前提で、安全に脱出できる確信がない限り動くのは危険です
自分自身が何らかの交渉のカードである場合は危害が加えられる可能性が低く、交渉のカードから除外されると途端に命の危険に晒されます
相手が動く時はこちらが動きやすい時でもあるので、その機会を逃さないように注意を払いますが、無謀な突進はそのまま殺される可能性があるので避けた方が良いでしょう
また、警察などに発見された場合は、速やかに頭の後ろに手を当てて跪くなどのように、当局の指示に従うことが賢明です
無事に保護されたら、知り得る情報は全て話し、医師の診察を受けることが重要となります
この他にも事前に準備できることや気をつけておくべきことはたくさんあります
まずは知識として知っておくことで、有事に記憶から引き出すことができるでしょう
以上は以下のサイトを参考にさせていただきました
英語のサイトなので、翻訳機能などを使って一度は読んでみることをおすすめいたします
何事も映画のようなことは起こらないと思われがちですが、映画のようにうまくいくこともありません
でも、知識がゼロだと何もできませんので、常日頃から考える必要はありませんが、情報を所得しておくことで役に立つことがあると思います
↓wikiHow「誘拐または人質の状況を乗り切る方法(How to Survive an Adbucion or Hostage Situation)」URL
https://www.wikihow.com/Survive-an-Abduction-or-Hostage-Situation
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は元ネタの映画をさらに膨らませて、映画的な脚色が加えられている作品になっています
犯人側のキャラが立っていたりして、エンタメ作品としても面白い内容になっていました
映画の犯人は5人組でしたが、サイコパスのリーダーを筆頭にグループ内部の序列も想定の範囲になっていて、意図せずにその崩壊を招く結果になっています
ギワンは非道で、仲間を道具としか見ていませんし、ヨンテはジョンミンのファンなので傷つけることを恐れています
ドンフンの価値観はセッピョルとの関係であって、セッピョルは快楽主義のため相手がドンフンである必要性を感じていません
一番地味なヨンノクはギワンを盲目的に信仰していて、彼のためならなんでもするタイプの人間でしたね
このように、単独犯でなければ、グループ内の序列というものは「各々の欲求に従って固定され、衝突する」ということがなされます
先の「誘拐されたらどうするか」の中でも「相手についてできる限り知る」というものがあって、それは自分との距離感覚と同時に犯人内部の距離感覚というものを測ることが重要になります
映画だと、ジョンミンの立場でわかる「ギワンがリーダーで無慈悲」「ドンフンは反抗心があって野心が強い」「セッピョルは快楽主義で自分以外に興味はない」「ヨンテは雰囲気や状況に呑まれる」という感じになっています
ジョンミンの立場からすれば全くわからないのがヨンノクの存在で、彼はあの小屋にはほとんど立ち入らないのですね
常に外でギワンと行動している人物ですが、それは管理の方に回っている人間ということになります
現場と管理というものがグループの中にあって、ジョンミンのところで役割をこなす人間の存在はわかりにくいのが現実だと言えます
この映画でもヨンノクが大活躍する後半がありますが、「こいつ誰だっけ?」感が強かったですね
それまではほとんどジョンミンの半径5メートル以内の出来事だったので、ジョンミン目線の映画の切り取り方だと、そのように思っても仕方がないと言えます
実際にジョンミンの立場でヨンノクを把握することは難しく、ギワンの行動が単独か否かということを知る以外にはありません
わかりやすいのは、交渉相手ではなく、現場でもない人間とギワンが話していることに気づくということになり、ギワンの指示で外部で動く人間がいるかどうか、ということになるでしょう
そう言った場合は、現場の人数(映画だと3人)が動かないのに「ギワン以外の人間が動いている」と察することになりますので、このようなシチュエーションも踏まえて初めからできるだけ相手を観察することが重要になります
映画の場合だと拉致の現場に現れた3人(ギワン、ドンフン、ヨンノク)と小屋にいたヨンテと喘ぎ声で発覚した第五の人物セッピョルという流れになっていたので、最初にいたのが3人という把握がなされていれば、外で動く人物に気付けたかもしれません
あくまでも映画を俯瞰して観ていれば気づくものではありますが、映画を見る際に登場人物を俯瞰的に把握するという癖をつけていたら、意外と実生活で役立つ日が来るかもしれません
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/383476/review/faa51721-d752-4bf3-a2fb-3de89d2e72ed/
公式HP:
https://hitoziti-movie.com/