■セックスに通ずる道を作ることこそ、真の方法論なのかもしれません


■オススメ度

 

若気の至りの映画に興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.7.25(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:How to Have Sex(セックスをする方法)

情報:2023年、イギリス&ギリシャ、91分、PG12

ジャンル:リゾート地を訪れた人々の乱痴気騒ぎを描いた青春映画

 

監督&脚本:モリー・マニング・ウォーカー

 

キャスト:

ミア・マッケンナ=ブルース/Mia McKenna-Bruce(タラ:リゾートに来る16歳)

ララ・ピーク/Lara Peake(スカイ:タラの親友)

エンバ・ルイス/Enva Lewis(エム:タラの親友)

 

サミュエル・ボトムリー/Samuel Bottomley(パディ:タラに言い寄る男)

ショーン・トーマス/Shaun Thomas(バジャ:スカイと交わる男)

ラウラ・アンブラー/Laura Ambler(ペイジ:パディの妹)

 

Anna Antoniades(空港のアナウンサーの声)

 

Anna Antoniades(パーティーの女性ホスト)

Elliot Warren(パーティーの男性ホスト)

 

Eleni Sachini(ホテルの受付)

Guy Lewis(トム:ロンドンから来たナンパ男)

 

Eilidh Loan(フィー:タラを気にかける旅行客)

Finlay Vane Last(ジョシュ:フィーの友人)

Eric Manaka(フィーの友人)

Matilda Rowe(フィーの友人)

Elizabeth Matthews(フィーの友人)

 

Daisy Jelley(ジェマ:後半に合流する観光客)

Konstandina Rousohatzaki(リア:後半に合流する観光客)

 

Olivia Brady(タラの母の声)

 


■映画の舞台

 

ギリシャ:

クレタ島マリア

 

ロケ地:

ギリシャ:マルタ島

マリア/Malia

https://maps.app.goo.gl/PS8oCn5DS6AYtQkd7?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

16歳のタラとその親友スカイ、エムはギリシャのマルタ島にハメを外しに来ていた

テンションマックスで他人の目などお構いなしの彼女たちは、ホテルに無理難題を押し付けて豪華なルームを手に入れた

 

その隣にはパディとその妹ペイジ、そしてパディの幼馴染バジャが来ていて、タラたちはパーティーなどで距離を縮めることになった

タラはまだ未経験で、この旅行でそれを捨てようと思っていたが、バジャを良いと思ってもスカイが邪魔をし、代わりにあまり好みではないパジャが言い寄ってきた

 

彼女たちは18歳と年齢を偽っていて、酒やタバコに明け暮れる日々を送っていく

そんな折、パジャと二人きりになったタラは、ビーチに赴き、その時を迎える準備を整え始めていたのである

 

テーマ:初体験と秘密

裏テーマ:上書きできない記憶

 


■ひとこと感想

 

若者がリゾート地でバカをやるという内容で、高校生三人が年齢をごまかしてやりたい放題やっていました

そんな中で、バージンのタラがこの旅行で処女を捨てるというのがテーマになっていて、その初体験がどんなものかというのを紐解いていく流れになっていました

 

偶然、隣の部屋になった三人組と仲良くなって、そこからラブゲームのような展開になって行きましたが、男性経験豊富なスカイが場を見出していくという感じになっています

どうやらバジャーはスカイとは何もない感じで、タラがそれに振り回されていた、という感じになっていました

 

予告編で寂れたゴミまみれの通りを一人で歩くタラが描かれていて、あの状態にどうなってなるんだろう、というのは一つのキーになります

セックスの時はどっちとも取れるというよりは、どちらかと言えば受け入れている感じに描かれますが、その後どんな感じになったのかは描かれません

ラストシーンでエムに告白することになりますが、ある意味タラ目線の真実であって、パジャはそうとは捉えていないように思いました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

男女における性行為の合意というのは非常に難しくて、映画で描かれている範囲だと、パジャは相手が合意したと捉えてしまうと思います

とは言え、その後の展開はタラにとって望ましいものではなく、例えば中出しの強要とか、力で服従させてフェラをさせるなど、全てに対して合意しているとは言えないのですね

ここを勘違いしている男性(女性の場合もある)がいて、導入で合意が取れれば全てがOKと考えてしまいがちなのだと思います

 

映画では、結局どんなセックスだったのかはほぼわからず、放心状態になったタラが言い出せないことで孤独になっていく状況を描き出して行きます

合意不合意の問題よりも、セックス体験における期待値と現実に裏切られた格好になっていて、それが尾を引いているように思えます

 

その後のパジャの言動を見る限り、彼自身は満足のゆく行為だったのでしょう

でも、匂わせによって、さらに孤独に追い詰めている自覚がないところに問題の本質があるように思います

男女によって見方が変わる映画だと思いますが、視点を共有することで、セックスそのものへの相互解釈や理解というものが生まれるのかな、と感じました

 


セックスにおける合意

 

本作は、主人公タラのロストバージンを描いていて、当初はパディと合意の上で為されたようになっていました

でも、パディとの一夜を経て、彼女は行方をくらますことになっていて、心配したエムが問い質すと、実は無理矢理だったという告白をするに至ります

それでも、映画では行為のシーンは描かれておらず、その直前のやり取りだけをみていると、とても強姦したようには思えません

 

とは言え、彼女の心は別のところにあって、彼女自身が想像するセックスではなかったことは明白なのですね

それを考えると、ゆきずりの関係というのは、行為そのものが目的でないと、齟齬を生むことになると言えます

また、セックスを体でするのか、心でするのかという問題があって、処女だったタラはその両立ができると幻想を抱いていたのかもしれません

このあたりは女性だと見方が変わると思うので、あくまでも男性側の視点で、映画で描かれていたことを主体に考えてみました

 

セックスにおける合意形成は難しいものがあって、それをどのように取るのかというのは、それぞれの関係性によるものだと思います

それは、セックスに何を求めるかというもので、それが一致していないと後々問題になるように思えます

タラの場合は、体験したいというだけではなく、自分の好きな人でという付随するものがあって、それがパディではなかったのですね

なので、好きな人がいる目の前で違う男と行為をしたことが、彼女自身をさらに苦しめる結果となっています

バジャが悪いかどうかは何とも言えませんが、タラ自身も迷いがあるのなら拒むべきだったように思えました

 


リゾートでハメを外す功罪

 

本作は、高校生3人組がリゾート地に来てハメを外すという内容で、近くにいたらとても迷惑な客だと思います

うるさいし、人の目も気にしないし、そのテンションは微笑ましい部類とは思えません

リゾート地ではしゃぐのが目的のようですが、実際には男漁りに近い印象を持ちます

それを見越して男が近づいてきますが、その選球眼のスケールはよくわからない感じになっています

 

映画の冒頭にて、ロンドンから来た男が彼女たちに声をかけますが、そこではあっさりと相手を無碍にしていて、釣りに来たのに慎重なのかと思わせたりします

でも、これは彼女たちのテンションを読み切れていないだけで、女性に声をかけるタイミングによっては、ロンドン男も何かしらにありつけたように思えます

要は、相手のテンションの緩急を観察して、負のテンションの時に静かに近づくのがベターなのですね

3人組は全員が同じテンションでいられるわけではなく、その連帯に不和が生じる場面があります

なので、そのテンションをよく観察して、1人になりたがっているけど、そのテンションに戻れずに困っている、という瞬間に声を掛けるのが良いと思います

 

彼女たちはマックステンションの初日を終え、その疲れを癒したのちに、隣の部屋のグループと関係を持つことになります

これは狙ってのものではなく、彼らも同じテンションループの中にいて、ひと段落が済んだあとだったのですね

そして、これからどうする?的な空気感になった時、同じようなループに陥っているタラたちと合流することになりました

でも、実のところ、タラはそのテンションには乗り切れておらず、この時点で孤独感を感じていたことがわかります

 

リゾート地でハメを外すというのは言わば才能が必要で、その素養がないとうまく波に乗れません

タラの目的が本当にセックスだったのかはわかりませんが、リゾート地では別人格を演じることになって、それによって普段は解放できない自分というものを表現することになります

彼女は、どこかで素の自分を消せずにいて、それは周囲の空気とは融合しないのですね

それは自分自身を傷つけもしないけど、何も残さない空虚なものになってしまいます

他人に迷惑を掛けるのは論外ですが、別人格で別の人生を生きてみるというのは、戻った日常を変えてしまう魔力があるようにも思えてしまいます

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、肝心なシーンを描かずして、その行為が女性から見てどう映ったのかを描いています

そのセックスは同意だったのかという心情がラストで明かされるのですが、その行為を引きずっていたのはタラだけだったということになっています

彼女があの境遇に陥ったのは、タラ自身の落ち度というものではなく、実質的にはスカイの巧妙な行動だったように思いました

 

スカイはバジャをタラの前で蔑み、それがタラの執着を生んでいます

このスカイの言動はバジャに狙いを定めているからであり、バジャがタラの方を向いていることを察してのことだと思います

そこから2人は執着が生まれるものの、それを素直に表現して向き合わないという状況になってしまいます

そして、この状況をきちんと見ていて、スカイの仕掛けを利用したのがパディでした

 

2人は供託して仕掛けを施しているわけではないのですが、歴戦の経験値から、どのような距離感になれば懐柔しやすいかというものを心得ているように思います

事実、タラだけが被害者っぽい感じになっていますが、スカイもパディもこの夏の目的を果たしたことに対して悪びれていません

スカイはタラが処女であることがあっさりと暴露しているのですが、これがパディを引き寄せることに繋がっていました

彼女はこの時点でバジャに狙いを定め、タラから引き離すためにパディを利用しています

このカラクリが読めないタラは、スカイに良いように操られ、それが不本意なセックスへと結びついていると言えます

 

映画のタイトルは「How To Have Sex」で「セックスをする方法」という意味なのですが、これは「その時の状況、相手などを洞察して、自身の目的に誘導する方法」という意味にも思えます

リゾート地での別人格出現をコントロールし、さらに周囲の人物を動かすことでスイートスポットを作る

それでいて、自分は加害者とは思われないように、あえてタラの変化に無頓着であることを別人格的に演出しています

これがわかるのが最後の空港のシーンなのですが、ある意味サイコホラーのような感じになっていて、女性って怖いなあと改めて思わされることになりました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101712/review/04071608/

 

公式HP:

https://culture-pub.jp/hths_movie/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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