■もしもAIが政治を動かしたらと言う仮定だけど、ビジュアルに騙される国民性を揶揄っていたのでしょうか?
Contents
■オススメ度
歴史系コメディ映画が好きな人(★★★)
映画館で涼みたい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.7.26(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2024年、日本、110分、G
ジャンル:コロナ禍で崩壊した政府の代わりに偉人をAIで再現して政権を任せる様子を描いたコメディ映画
監督:竹内英樹
脚本:徳永友一
原作:眞邊明人『もしも徳川家康が総理大臣になったら(サンマーク出版)』
Amazon Link(原作:Kindle版)→ https://amzn.to/3YmFA9s
キャスト:
浜辺美波(西村理沙:テレビ局政治部の新人記者)
野村萬斎(徳川家康:内閣総理大臣)
竹中直人(豊臣秀吉:財務大臣)
GACKT(織田信長:経済産業大臣)
赤楚衛二(坂本龍馬:内閣官房長官)
髙嶋政宏(徳川吉宗:農林水産大臣)
江口のりこ(北条政子:総務大臣)
観月ありさ(紫式部:文部科学大臣)
池田鉄洋(徳川綱吉:厚生労働大臣)
小手伸也(足利義満:外務大臣)
長井短(聖徳太子:法務大臣)
音尾琢真(石田三成:財務副大臣)
山本耕史(土方歳三:警備隊)
田中茂弘(緒方洪庵:ワクチンを開発する化学者)
足立英(吉田拓也:財務省官僚)
酒向芳(御子柴学:日本党幹事長)
梶原善(森本慶一:テレビ局政治部部長、理沙の上司)
小籔千豊(島川徹:情報バラエティ番組司会者)
野間口徹(コメンテーター)
村岡希美(コメンテーター)
徳井健太(コメンテーター)
千葉雅子(常磐英子:文句を言う野党議員)
矢嶋俊作(宇津井芳雄:社会新党の党首)
森永徹(細川信孝:衆議院議長?)
石川武(企業の偉いさん?)
川守田政人(?)
外山誠二(コロナで倒れる総理大臣)
栗田芳宏(AI開発した科学者?)
窪田等(ナレーション)
神野崇(記者)
細貝光司(記者?)
山岡隆之介(記者)
しーしーしょうま(ユーチューバー)
田村響華(アナウンサー)
秋山ゆずき(レポーター?)
イアン・ダンカン(外国の要人)
ブレイク・クロフォード(アメリカの大統領)
枝ちなみ(高橋美那:首相官邸の女子職員)
中島瑠愛(首相官邸の女子職員)
宮田祐奈(首相官邸の女子職員)
花岡咲(首相官邸の女子職員)
南瑠霞(手話通訳の人)
タイガ(犬)
■映画の舞台
日本:東京
永田町
ロケ地:
東京都:世田谷区
駒沢大学
https://maps.app.goo.gl/8meAscvGWatzD32v5?g_st=ic
東京都:品川区
昭和大学上條記念館
https://maps.app.goo.gl/z2proCziu1ac7Ybn8?g_st=ic
埼玉県:さいたま市
氷川神社
https://maps.app.goo.gl/acRnCnB6q3m5csfaA?g_st=ic
群馬県:前橋市
アルフォンソ・ロイヤルチェスター前橋
https://maps.app.goo.gl/Vq4xBk3NyUNdgsxU7?g_st=ic
茨城県:水戸市
茨城県庁三の丸庁舎
https://maps.app.goo.gl/fdFJsmKehY6RNcxL6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
2021年の日本では、コロナ禍の影響によって大混乱し、時の首相も病に倒れて、未曾有の危機を迎えていた
そこで、科学者たちはAIによって偉人を再現し、臨時内閣を発足させることを提案する
総理大臣には徳川家康が就き、その他にも織田信長、豊臣秀吉、紫式部など、著名な偉人によって内閣が結成された
テレビ局の社会部の新人記者の理沙は、上司の森本から無理難題を言われるものの、アナウンス部に推薦と言う餌に釣られて、官房長官を務める坂本龍馬への単独取材をすることになった
当初は否定的だった世論も、次々と行われる改革に色めき立ち、SNSを活用した露出も増えて、国民の支持を掴んでいくことになった
だが、徳川家康は何らかの懸念を抱いていて、りさにその胸の内を晒すことになったのである
テーマ:政治不信の打開策
裏テーマ:国民の本質
■ひとこと感想
どう考えても爆死案件のコメディだと思っていましたが、世の中にグイグイと迫るメッセージ性がありましたね
この中の一人でもいれば日本は変わりそうですが、変わらなければいけないのは国民なんだと思います
この方針が決定して採用された経緯が謎ですが、どう考えても進まないでしょうね
それでは話にならないのですが、結局のところAIが偉人の過去を学習して行動させているので、AIによって政治が行われていると言うのは間違いないのですね
このAIに政治を託すと言うのが無茶な感じになっていますが、今の政権や野党よりマシと言われれば納得せざるを得ない感じになっています
映画は、偉人たちの行動パターンが史実に基づいていると言う設定になっていますが、司馬遼太郎などの歴史小説や大河ドラマを参考にしている感じがしますねえ
そのあたりを突っ込むのは野暮な話ではありますが、大衆の迎合をAIが考えているのなら、そう言ったキャラ設定に持っていくのかなあとか考えてしまいました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ネタバレがあるのか何とも言えない内容ですが、家康、秀吉、信長を一同に集めたらこうなるよね、と言う感じになっていました
てっきり他国と一戦交えるみたいなヤバい方向に行くのかと思っていたら、国内問題で切り上げたのでホッとしてしまいました
国民が自立していないと言う根幹がアメリカ軍の武力の傘の下にいる、と言う感じにも展開できなくはないのですね
映画は、現在の政局を皮肉っている内容で、政治的な主導力のなさ、国民の他人任せ、政治に本気で関与しない野党など、色んなところにいっちょ噛みしていましたね
笑えるのはコロナ禍がほぼ終息したからであり、渦中だったら笑えない話だと思います
AIに政治をやらせたらに近いとは思いますが、過去の歴史の中で参考にできる政局というのもないでしょう
結局のところ時代にミスマッチする形になって、独裁的な政治を許容できるかというところに行き着いてしまうのかな、と感じました
■AI政治はどうなるか
本作は、偉人が政治を行ったらという感じで描かれていますが、実際には「AIによって再現された偉人」であり、そのものとの大きな乖離があると推測されます
AIは膨大なデータベースの中から抽出し、命令による目的を再現することに長けていて、巷で流行っているChat GPTなどは「ネットワーク上にある情報をまとめる」という機能になっています
なので、徳川家康のデータを収集し、それを映像化したものになっています
データも膨大な数あるので、歴史的史実に基づくものから、フィクションの小説、もしかしたら二次創作的なものまで網羅する可能性があります
AIのデータ抽出の際にある程度の命令を出すことになるのですが、そこに人的な思惑が絡むことになります
生成されたAIデータを動かす命令にもそう言った意図が介在し、彼らが判断しているように見えて、実際にはその恣意的な命令に従っていることになります
映画は、その部分が見えないように進みますが、後半になって「意図」が介在したことが仄めかされていました
この構造を現代の政治に絡めると、そこにいる議員や閣僚は「本人の意思で動いているのかどうか」という猜疑心が生まれることになります
実際の政治の世界でも、一部の人を除いて、源流となる思想や権力者がいて、その代弁者であることが多く、それが見える形だったのが派閥というものだったと思います
今では脱派閥なんて綺麗事を言っていますが、実際には党の権力者の意向、その支持者の意向、もっと深くを辿れば諸外国の意向などがあって、その言いなりになっているのが目の前にいる議員であると言えます
これは日本の選挙制がそうさせている部分があるのと同時に、そういった構造になっていることを報じないマスコミ、理解しようとしない国民にも問題があると思います
今回の映画では、ある議員によるAIを使った政権運営ということになっていて、その背景にいる組織などは出てきません
それでも、この作戦は大いに成功し、目論見はほぼ実現したように思えます
でも、首謀者が見誤ったのは、AIが現在進行形で学ぶということを忘れていたことなのですね
この学びなくしては、現在の政治に応用することができないので、外せない機能ではあるのですが、それによってAIと関わる人の影響力というものが、首謀者の計画を阻むという結果になっているのは面白いと感じました
■勝手にスクリプトドクター
本作は原作のある作品なので、それがベースになっています
ここでは、原作改変とか関係なく、こういうふうにしたらもっと面白かったのになあというスタンスで、好き勝手書くのでご容赦くださいまし
まずは、AIによる偉人が傀儡政権の煙幕になっている部分は良いと思います
ですが、いち議員の思惑で進んだというのは無理があるので、ここは某国の影が見えた方が良いと思います
その国をどの国に設定するかで映画の風景が変わりますが、危機を煽るのであれば大陸国家ですし、現代風刺なら海の向こうの大国ということになります
また、首謀者をそのままにして、彼が「今の日本の政治体制を変革させる必要がある」という強い信念を持っていた、というのでもOKだと思います
危機意識を煽る方向性だと、政治家の献金問題やヤバい写真を撮られて縛られている議員だったというもので、某国に有利な政治を展開するという流れになります
また、現代風刺の方向性だと、謎の国際会議があって、そこで決められたことを実行するためにコロナに罹らなかった議員が槍玉に上がったパターンでしょうか
こちらも大国の趣旨に沿った政治を「加速させる」という意味合いになると思います
どちらでも「日本で起きたパンデミックは意図的なものだった」ということが起こり得るのですが、そこまで踏み込むとクレームが来そうに思います
この思惑があったことが暴露されることによって、政治に踊らされていた国民がどのように反応するかを描く必要があるのですね
映画でも、その暴露はあったものの国民が周知をして暴動が起きるということもないし、裏の世界だけで完結しているのも微妙だったと思います
主人公がジャーナリストなのにそれらを訴求する力がないのは仕方のないことですが、こう言った国家的な陰謀があった時にマスコミがどのように動くのか、というところもあっさりしたものになっていたと思います
AIで生成されたホログラムに入れ込むジャーナリストという構図だけ見れば、かなりバカにしている内容ではありますが、そのあたりがきちんと突っ込まれている訳ではなく、偉人たちは成すべきことをして去ったみたいに終わっているのはどうなのかなあと思ってしまいました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、今の政治に失望した層が「偉人が政治を執り行ったらマシになるのではないか」と思わせる部分がありました
でも、過去の偉人たちは生きてきた時代も違うし、そもそも民主主義の世界ではないのですね
なので、その時代に通用してきたことというのは、今の世界ではかなり抵抗が起きると想像できます
それでも、あのコロナ禍における決断できない政治に嫌気を持っていたのは事実で、それを解消させる何かがあったようには思います
これらのリーダーシップは、一歩間違えば独裁政権そのものなのですが、それを支持するかどうかは時代性、独裁者の人柄、時代性などによって可能だった時代があったのですね
現行の世界の独裁者を見ても、自国民に対する政策を行なっていれば英雄視される部分があり、その政治がどうだったのかは政策などの行方で評価するしかない部分があると思います
もし、コロナ禍であのような政治が行われたとして、実際にどこまで国民が支持をしたのかは分かりません
でも、歴史の偉人であるというフォーマットと、ビジュアライズされた人物イメージによって、それが許される風潮を作り出していたように思います
映画は、国民の支持を得るための方策すらもAIが考え出したのかは分かりませんが、そう言ったことも可能であることは、日本の政治を見ていればよく分かります
政策論議なしで人物のイメージだけで選挙が行われた某都道府県の知事選などが良い例であり、任期で何を行なったかとか、これからどのような政治をするなどは関係ないのですね
あくまでも「知っている人(表面上)だから投票する」みたいなことが普通に起こっていて、そう言った選ばれた人がまともな政治をしたという記憶はほとんどなかったりします(メディアが報じない部分もあれば、他府県のことを興味を持って追いかけることもないのですが)
国政選挙も「どこの誰か知らない人」よりも、分かりやすい実績、ヴィジュアルなどで決められることも多く、そもそも選挙のポスターもそれが重視されています
今では加工技術が進んでいるので、写真はほぼCGのようなものになっていて、どんなに極悪な顔をしていても良い人に見えるように加工することは可能だったりします
実際の政治でも、見た目で判断する人はかなり多く、今では切り抜きのわずかな情報で全てがわかったかのような感じになっている人もいます
そう言った表層だけを見て、その裏側を考えない人が多いし、また裏側だけを掘り進めて悪人だと断定する人もいたりします
政治家を選ぶ選定基準の多くがイメージに頼っている段階では、この映画のようにAI政治で悪用を働くことも可能なのですが、それが警鐘になっていないところも本作の弱いところのように思えます
もっとも、今の政治を見ていると、いっそのことAIにさせた方が良いんじゃないのという極論に達する気持ちはわかるのですが、それが実現する世界と言うのは良い方向に向かうイメージが皆無なのですね
なので、道具としてのAIを超えるものができた時、そこにはある特定の人物の思惑が載っていると言うことを見抜かなければ、取り返しのつかないことになりでしょう
映画はそこまでのことを訴求はしていませんが、前提条件を理解して観ると、違った印象になると感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100771/review/04073916/
公式HP:
https://moshi-toku.toho.co.jp/