■いつの日から「ヲタク」は「オタク」になったんだろうか?


■オススメ度

 

日本の古き特撮が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.6.18(TOHOシネマズ二条)


■映画情報

 

原題:Iké Boys(パワーを持った少年たち)

情報:2021年、アメリカ、88分、G

ジャンル:あるDVDを見た若者が特殊能力を経て世界平和に立ち向かう様子を描いたヒーロー映画

 

監督:エリック・マキーバー

脚本:エリック・マキーバー&ジェフ・ハマー

 

キャスト:

クイン・ロード/Quinn Lord(ショーン・ガンダーソン:日本のヲタク文化をこよなく愛する青年)

ローナック・ガンディー/Ronak Gandhi(ヴィク/ヴィクラム・カプール:ショーンの親友)

比嘉クリスティーナ/Christina Higa(清水ミキ:日本から来た留学生、インディアン文化に興味がある)

 

ビリー・ゼイン/Billy Zane(ニュート・グラフストロム:ショーンの先生)

釈由美子(レイコ・グラフストロム:ニュートの妻)

 

ベン・ブロウダー/Ben Browder(ウェイン・ガンダーソン:ショーンの父)

 

岩松了(緒方大介:映画を作った監督、活動家)

 

Saylor Bell(ベサニー:同級生)

Sam Ashby(ハンター:同級生)

 

Agneeta Thacker(スニタ・カプール:ヴィクの妹?)

Sanjana Rajagopalan(プリーティー・カプール:ヴィクの妹?)

 

Chris Freihofer(ローリー神父)

 

Christopher Troy(メカ・ショーンの中の人)

Hunter C. Smith(怪獣ヴィクの中の人)

 

Gary England(気象予報士)

 

金子次郎(日本人プロデューサー)

高階匠(日本人プロデューサー)

金子修介(日本人プロデューサー)

星川桂(日本人OL)

 

樋口真嗣(「Go! Movie」のナレーション)

 

Lee Roland(ラジオ番組のホスト)

Joel Dilley(カントリーストアの店員)

 

David Steece(キック・アスの狂信者)

Dom Laguan(キック・アスの狂信者)

 

Alexandra Swanbeck(同級生)

 


■映画の舞台

 

アメリカ:オクラホマ州

 

ロケ地:

アメリカ:オクラホマ州

 


■簡単なあらすじ

 

オクラホマの田舎町に住んでいるショーンとヴィクラムは、日本の特撮やアニメが大好きで、スクールカーストの最底辺にいる若者だった

ショーンは通販でレアな特撮DVDを手に入れ、日本人留学生のミキと3人でそれを見ることになった

 

そのビデオは数十年前に日本で撮影されたもので、当初は世界の危機を警告するもので、それを映画として制作し、世に知らしめようと考えられていた

だが、映画は民衆に受け入れられることなく、マニアックな作品として、埋もれることになっていた

 

3人がDVDを見ると、突然テレビから電撃が飛んできて、3人はそれを受けて気絶してしまう

そして、翌朝目覚めると、ショーンは手からビームが出て、ヴィクラムは怪力を手に入れるなどの、特殊能力が身についてしまう

だが、秘密裏に世界の存亡がかかった陰謀が渦巻いていて、3人はそれに巻き込まれていくのである

 

テーマ:ヲタクパワー

裏テーマ:尽きない特撮愛

 


■ひとこと感想

 

どんな話なのか全く頭に入れずに鑑賞

特撮好きの監督が撮った特撮映画ということは知っていましたが、びっくりするぐらいチープなノリになっていたのは驚きました

おそらく意図的だと思うのですが、全編「棒読みせりふ」の応酬になっていて、個人的にはちょっと辛かったですね

 

物語の展開が恐ろしいほど遅く、DVD唐電撃受けるあたりが真ん中らへんだったような印象

いつ始まるんだろうという感じで、スクールカースト底辺強調シーンが多かったように思います

 

映画は、どこかで見たことがあるような特撮ヒーローと敵の組織が登場し、懐かしいような感じがします

このテイストを受け入れられればOKですが、かなりゆったりとした映画なので、寝落ちしてしまうかもしれません

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

世界の危機のために作られた一本の映画が、時を経てオタクにスーパーパワーを与えるという夢のような世界になっています

誰しもが一度は思ったことだと思いますが、現実でそれが起こると色々な弊害が出るのですね

 

少しずつ変身後のパーツが登場するのは笑ってしまいますが、スーパーロボットになるのはまだしも、怪獣になるのは嫌ですねえ

ショーンVSヴィクラムになるのかとヒヤヒヤしましたが、そんなことはありませんでした

 

岩松了がノリノリで、釈由美子を久々に見た感覚

比嘉クリスティーナはアイドル出身だそうですが、グループ名を見てもピンときませんでした

こちらも知る人ぞ知る、という感じなのかもしれません

 


特撮はチープな方が味がある

 

本作は、特撮愛に溢れた作品で、冒頭から懐かしい感じに始まり、後半のスーパーヒーローも見たことある感じになっていました

展開も「未知のパワーを手に入れる凡人」という設定で、それぞれが使命感を帯びていくように描かれています

映画は、この王道とも呼べる設定をそのまま使って、自分の作りたいものを作ったんだなあと思わせてくれます

主人公は、若い頃の監督が投影されていて、幾度となく妄想に耽ったのかな、と感じました

 

特撮は模型を使って撮影されることが多く、CGなどのように細かな映像にはなりません

でも、ちゃんと壊している感じとか、体重が移動しているイメージが湧きやすく、その物が動いているので、物理的な動きというものがとてもリアルに感じられます

今ではモーションキャプチャーを使ったりして、CGの素材となるものは実際に動かして装飾するということもあり、完全にCGで動きを再現するのは困難であるように思えます

 

動きの滑らかさであるとか、その場に物理的に存在するものが次に影響を及ぼすなどの関連性が必然的に起こって来るのも良いと思います

例えば壊れたビルに足元を掬われるとか、それによって応援部隊の到着に支障が出るとか、そう言ったものを事前に予測させて把握させやすいのですね

また、何度も何度も行うわけにはいかないので、ある程度の緊張感を持って臨むことになり、そこで起こるアクシデントも味があるものになったりします

完成されたものからはそこまで汲み取れませんが、それを利用できる手作り感という物が特撮にはあるように思えます

一見チープに見えるものも、実際には細かな職人の技によって作られていて、その裏側を知るとより愛おしく感じられます

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、主人公がレアなDVDを手に入れて、それを見たことで特殊な力を授かり、そこで友人と留学生ミキも巻き込まれることになりました

ミキはネイティヴ・インディアンに興味があるという設定でしたが、ちょっとズレている感を出すのにそのプロフィールは大丈夫かと心配になってしまいました

ミキの歓迎会のようなものでDVDを見るときにそれを選ぶのは無茶だと思うのですが、これって体験談なのかなと思ってしまいました

好きな人に良いところを見せようとして、なぜかレアなDVDを見せることになって、「これ持ってる僕凄いでしょ?」という感じで玉砕した過去があるのかなと勘繰ってしまいます

 

その後、このDVDから放たれた光を浴びて特殊能力を得ることになるのですが、ここから先は妄想みたいな感じになっていましたね

潜在意識下で3人が共通の夢を見ているような感じになっていますが、そもそもこのDVD(映画)は日本で公開されたけど「大コケした映画」だったはずなのですね

なので、どうやってDVDになったんだろうという疑問が湧いてしまいます

関係者向けに作られた原盤のコピーのような物が発掘されたのでしょうか

 

映画はツッコミどころ満載なのですが、ミキの留学理由は不要だったように思います

そのまま、日本の引っ込み思案なオタク少女でという方がマニアなネタをぶっ込みやすく、観客がついて来れないような展開もできたと思います

アメリカの日本オタク向けの映画なので、そこはもっとコアなところを攻めてもよかったでしょう

どこまでショーンのオタク度が極まっているのかを示す意味合いでも、アメリカのオタクでもちょっとわからんネタが多すぎわ!ぐらいの悪ノリで良かったでしょう

 

その後、めっちゃ近くに悪の組織がいたり、自分の空手?の先生がいっちょかみだったりと雑な感じで展開していきますが、DVDから力を得ることで「敵側のリスクが上がっていることを危惧していた」ぐらいの設定はあって然るべきかなと感じました

悪の結社はDVDが作られる前からあったので、緒方監督が渾身の作品を作ったけど、彼らの力で封じられたという過去があっても良かったと思います

DVDは啓発のために作られていましたが、そこから力を受け取る理由ぐらいは明確である方が良いのですね

日本の誰もが見てもダメで、数十年後に作用する理由は何か

その仕掛けを施した人物が、実は緒方を裏で操っていた、という裏設定があっても良かったのかな、と感じました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、刺さる人には刺さる系の映画で、一般ウケというのはかなり厳しい内容になっていたと思います

個人的にはほぼ刺さるところがなく、キャラの魅力だけは際立っていたように感じました

カタコト英語のミキに始まり、冒頭の緒方監督、釈由美子演じるレイコの存在も良かったと思います

でも、話があまり面白くなく、テンポが合わなかったのか、何度も寝そうになってしまいました

 

映画は、90年代ぐらいの「隠さなければならなかった頃の雰囲気」という感じで、これが今のオクラホマの田舎町で起こっているのかは何とも言えません

日本でこれらの趣味を隠さなければならなかった要因は色々とありますが、やはりメディアの影響が大きかったように思います

また、アングラにいることこそが正義という風潮があって、分かり合える人だけで語り合えれば良いという文化もありましたね

そう言ったものの垣根が徐々に崩れていって、今ではあの時のオタク文化がなかったかのような発展を見せていると思います

 

個人的には、ここまで公になるのはどうなのかなと思う一方で、衆人が楽しめるものに変化させていった制作側の意図というのもあったのかなと感じています

それでも、この業界の飽和度は相当なものがあって、今ではドラマよりも多いのではないかと感じています

テレビ自体をほどんど見ない人なのですが、音楽のサブスクは利用しているので、音楽業界から見たアニメの影響力というものはチャートを見ているとわかります

個人的にはdヒッツ派なのですが、アニメランキングはあるのにドラマ・タイアップランキングというのはないのは不思議だなあと思っていました

 

アニメの曲はなぜかわかるのが不思議で、特にアニメの主題歌として流行っている(アーティストのファン層以外も支持している)楽曲というのは、不思議と聴き分けができてしまうのですね

これを言葉でどう表現すれば良いのかはわからないのですが、おそらくは通常の楽曲の作曲方法と根本から変えていかないとダメなんだと思うのですね

オープニングで激しく動くアニメーションと同調しつつ、これから本編が始まりますよというフェードアウトをしていく作りになっていて、具体的に言えば「アニメのタイトルが出るまでの短くてキャッチーなイントロ」「アニメーションの動きとマッチするBメロの雰囲気の転調」「徐々にキーが上がっていって、最後のサビが最高音程でロングトーン、からのスパッと切れるアウトロ」みたいな感じでしょうか

全ての楽曲がこんな感じではないのですが、流行っているタイプのザッツ・アニソンというのは、この方程式で作られているような感じがします

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101246/review/03944434/

 

公式HP:

https://atemo.co.jp/ikeboys/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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