■ポンニ河の息子「たち」というタイトルにしていれば混乱しないのになあと思ってしまいました


■オススメ度

 

インドの戦国映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.6.19(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:Ponniyin Selvan:Part II(ポンニ河の息子:パート2)

情報:2023年、インド、165分、G

ジャンル:チョーラ王家の相続争いを描いた伝記系アクション映画

 

監督&脚本:マニ・ラトナム

原作:カルキ・クリシュナムルティ/Kalki Krishnamurthy『Ponniyin Selvan(ポンニ河の息子、1950年)』

Amazon Link(原作:英語版)→ https://amzn.to/4eWK3oQ

 

キャスト:

ヴィクラム/Vikram(アーディタ/Aditha Karikalan:チョーラ王家の皇太子、スンダラ国王の長男)

   (若年期:サントーシュ・シュリーラーム/Santosh Sriram

カールティ/Karthi(デーヴァン/Vanthiyathevan:アーディタの勅命を受ける戦士)

 

【チョーラ王家:王室関連】

ジャラム・ラビ/Jayam Ravi(アルンモリ/Arunmozhi Varman:アーディタの弟、スンダラ国王の次男)

   (若年期:Samartha Stayajit)

トリシャー・クリシュナン/Trisha Krishnan(クンダヴァイ/Kundavai:アーディタの妹、スンダラ国王の長女)

   (若年期:Nila)

プラカーシュ・ラージ/Prakash Raj(スンダラ/Sundara Chozhar:チョーラ王家の国王)

ヴィディヤ・スプラユニヤン/Vidhya Subramaniam(王妃/Vaanavan Maadevi:スンダラ国王の妻)

ラール/Lal(マライヤマン/Malayaman:王妃の父、家長)

 

ラフマーン/Rahman(マドゥランダカ/Madhurantakan:センビヤン皇太后の息子、正統後継を主張する本家の末裔)

ジャヤキトラ/Jayachitra(センビヤン/Sembiyan Maadevi:チョーラ王家の皇太后)

 

【チョーラ王家政治関連】

プラブ/Prabhu(ヴェーラール候/Periya Velaar:ランカ戦線の将軍)

ショービター・ドゥーリパーラ/Sobhita Dhulipala(ワーナティ/Vanathi:クンダヴァイの親友、ヴェーラール候の姪)

 

サラトクマール/R. Sarathkumar(パルヴェート候/Periya Pazhuvettarayar:チョーラ王家の財務大臣、ナンディニの夫)

アイシュワリヤー・ラーイ/Aishwarya Rai Bachchan(ナンディニ/Nandini / Oomai Rani:パルヴェート候の若き妻)

   (若年期:Sara Arjun

ヴィノーディニ・ヴァイディヤーダン/Vinodhini Vaidynathan(ヴァスキー/Vasuki:ナンディニの侍女)

シャクティ・ラァニ/Shakti Ramani(カニ/Kani:ナンディニの侍女)

 

パールディバン/Parthiban Radhakrishnan(カランダカ/Chinna Pazhuvettarayar:首都タンジャイの治安担当長官)

モーハン・ラーマン/Mohan Raman(アニルダ/Anirudhdha Brahmmarayar:チョーラ王国の宰相)

 

【デーヴァンとアーディタの交友関連】

ニカラブル・ラヴィ/Nizhalgal Ravi(カダンブル候/Sambuvarayar:カダンブル嬢の城主)

アシュウィン・ラーオ/Aswin Rao(カンダマーラン/Kandhamran:カダンブル候の息子、デーヴァンの友人)

 

ヴォクラム・プラブ/Vikram Prabhu(パールティバ/Parthibendran Pallavan:パッラヴェ朝の武人、アーディタの友人の戦士、謀反側につく)

 

アシュワリヤ・ラクシュミ/Aishwarya Lekshmi(プーングラリ/Poonguzhali:アルンモリを慕う海の女)

アシュウィン・カクマヌ/Ashwin Kakumanu(センダン/Sendhan Amudhan:プーングラリの兄、花売りの男)

ヨーグ・ジャビー/Yog Japee(カルティルマン/Karuthiruman:シンハラ語を話せる漁師、ナンディニの出自を知る男)

ニンミ・ラファエル/Nimmy Raphael(ラッカンマ/Rakkamma:漁師)

 

ジャラヤーム/Jayaram(ナンビ/Alwarkkadiyan Nambi:デーヴァンにつきまとう僧侶)

アイシュワリヤー・ラーイ/Aishwarya Rai Bachchan(マンダキーニ:アルンモリを助ける聾唖の老女)

 

【パーンディヤ国関連】

キショール/Kishore Kumar G.(ラヴィーダサン/Ravidasan:パーンディヤ国の残党)

リヤズ・カーン/Riyaz Khan(ソーマン/Soman Sambavan:ラヴィーダサンの部下)

アルジュン・チダンハイム/Arjun Chidambaram(ワラグナン/Varagunan:パーンディヤ国の残党)

ヴィナイ・クマール/Vinay Kumar(デーヴァララン/Devaralan:パーンディヤ国の残党)

Harris  Moosa(カラパシ/Kalapathi:パーンディヤの残党)

Duresh Ekanmbarami(アファン・マラン/Aafhan Maran:パーンディヤの残党)

Anil Kumar(パスパティ/Pasupathi:パーンディヤの残党)

Nassar(パーンディヤ/Veerapandiyan:パーンディヤの国王)

Raaghavan Murugan(パーンデイヤ皇太子/Pandya Prince:パーンディアの皇太子)

Raghav(アマラブジャンガ・パンディヤン/Amarabujanga Pandiyan:パーンディヤ王の息子)

 

【諸外国】

バーブ・アントニー/Babu Antony(コッテッガ/Khottiga:ラーシュトラクータの国王)

バーラト・ラージ/Bharat Raj(カルカ/Karka:国王の甥)

A・シーモン/A Seemon(ウグラデーヴァン/Ugradevan:ラーシュトラクータ軍の将軍)

 

【その他】

Shyam Fernando(マヒンダン/Mahindan:アヌラーダプラの王)

Balaji Sakthivel(ヴァナンムディヤール/Vanangamudiyar:下位王)

Amzath Khan(マザヴァラヤル/Mazhavarayar:小国の王)

Aswin Rao(カンダマラン/Kandhamaran:カダンブルの王子)

 

Gopi Kannadasan(ダンブッラ・ビクシュ/Dambulla Bhikshu:寺院の僧侶)

 

Jaichandram(タントンギ・カリングラヤル/Thanthongi Kalingrayar:?)

Kannan(クンドラトゥール・キジャール/Kundrathur  Kizhar:・)

Sundaram(マザパディ テナワン/Mazhapadi Thennavan:?)

Jaindhan(ムンヌディ・パラヴァラヤル/Munnudi Pallavarayar:?)

Nambi(ムッタラヤル/Muttharayar:?)

Heavens Raja(サイバイト:?)

Balla Bhoopalan(イドゥンバンカリ/Idumbankari:?)

 

Bharathiraja Sakthivel(城の将軍)

Manojkumar K(城の護衛)

Aadesh Bala(城の護衛)

Plabhu Mani(城の護衛)

Vikram(城の護衛)

 

カマル・ハーサン/Kamal Haasan(ナレーション)

 


■映画の舞台

 

10世紀頃の南インド

チョーラ王国とその周辺諸国

ラトカ島(現在のスリランカ)

 

ロケ地:

インド:

ポンディシェリ/Pondicherry

https://maps.app.goo.gl/BebH45V1d6SLfWZG8?g_st=ic

 

テランガーナ/Telangana

https://maps.app.goo.gl/gbRRDMf6wc8J8dzL6?g_st=ic

 

タイ:バンコク

 

タイ:

クラビー/Krabi

https://maps.app.goo.gl/J26jMN2n9wEpzdXz6?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

前作にて、敵襲にあったアルンモリとデーヴァンは、行方が知れぬまま国を動揺させていた

海に落ちたことしか分からず、生きているかも死んでいるかも分からない

だが、アルンモリはプーングラリによって救出され、近くの寺院へと保護されていて、デーヴァンもなんとか岸にたどり着いて、合流を図ろうとしていた

 

アーディタはナンディニの策略であると怒り狂い、部下を引き連れてタンジャイを目指していた

アーディタとナンディニはかつて恋仲だったが、ナンディニの出自が不明だったことで王宮は良い顔をしなかった

挙げ句の果てには、アーディタが出兵している際に追い出されてしまい、それが原因で遺恨を残すことになった

 

チョーラ王国は、パルヴェートの暗躍によって、マドゥランダカの王位復帰を狙っていて、その目論見からアーディタとアルンモリを分断させようと考えていた

さらに、アーディタに滅ぼされたパンディヤの残党がナンディニと通じていて、王国の転覆を狙っていたのである

 

テーマ:愛は盲目

裏テーマ:王たる者の資質

 


■ひとこと感想

 

前作『PS1 黄金の河』の続編で、映画的には「アーディタとナンディニの過去譚」から紡がれていきます

二人を引き裂いたのは誰で、その理由は何かというミステリーがあり、それが後半に回収されるように描かれています

 

前作に引き続き、主要なキャストはそのままで、追加になったのが寺院の面々、アルンモリを助けた民たちということになりますが、パンフレットは1&2仕様のため、追加情報はありませんでした

なので、その追加キャストの補足をしたかったのですが、あまりにも情報が不足していて、誰が誰だかわかりません

 

俳優さんの名前をググったら、『PS1』の時に書いた自分のブログが出てきてしまったりして、タミル語でググるとかしないと無理なように思えます

映画は、思った方向には行きませんでしたが、それなりにまとまっていたように思います

それでも、盛り上がりに欠ける印象があったので、後半の決戦あたりから蛇足のように感じました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

インドの伝説の映画化なので、史実に合わせると、この流れになるのは必然なのでしょう

一般的な知識として、アーディタはナンディニにかけた苦労を詫びて自害し、彼女は恨み自体が思い違いてあったことを悔いて、後を追うようになっていました

映画がここで終われば綺麗にまとまっている感じなのですが、その後「アーディタを殺したのはアルンモリだ」という嘘の流布によって、全面戦争になるのは微妙でしたねえ(史実らしいのですが)

 

アルンモリがアーディタを殺したという嘘を多くの者が信じ、特にアーディタの側近たちが反旗を翻すことになるのですが、このあたりの流れが結構唐突な感じになっていました

その動きに乗らなかったマドゥランダカがアルンモリ側につくのですが、このあたりの対立構造がすっごくわかりにくかったですね

 

映画は、アルンモリ側が勝利し、アーディタの元側近たちが非業の死を遂げるという感じになっています

そこでアルンモリが戴冠を譲るという流れになって、これまた唐突感が半端なかったように思います

この頃にはデーヴァンは画面の中に映っているけど空気になっていて、クンダヴァイとの関係も進まなかったのはモヤモヤしてしまいました

 


史実的にはどうなのか

 

本作の主人公は、前半がアーディタで後半がアルンモリのように描かれています

原題のポンニ河の王子というのがこの二人を表していて、デーヴァンは狂言回しのような立ち位置になっていました

アルンモリは、のちに「ラージャラジャ1世(Rajaraja I)」となる人物で、史実では985年から1014年までチョーラ朝の皇帝として君臨した人物でした

最終的に南インドとスリランカの一部を征服し、インド洋全域でチョーラ朝の影響力を示した人物とされています

 

彼はスンダラ国王とマハバディ王女の息子として生まれ、出生名がアルンモリで「祝福された舌」という意味を持ちます

兄はアーディタ2世で、姉にクンダヴァイがいました

パランタカ1世の死後、長男のガンダラディティヤが王位に就きますが、彼の死後に息子のマドゥランダカが未成年だったため、王位はパランタカ1世の次男アリンジャヤに継承されました

このアリンジャヤも早くに死んだため、その息子のパランタカ2世(スンダラ王)が跡を継ぐことになります

 

史実では、そのままマドゥランダカに王位が譲られているのですが、映画ではアルンモリが継ぐのを辞めて、彼に王位を戻したというふうに描かれていました

ちなみにアーディタの死に関しては謎のままで、暗殺されたのではと示唆されていると言います

そして、マドゥランダカの死後、アルンモリが王位を継承し、「王の中の王」という意味を込めて、ラージャラジャという王名を採用した、とされています

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、史実を知っていれば、最後に誰が王になるかはわかるのだと思います

インドの歴史小説が原作なので、いわゆる「本能寺来るで」というスタンスで見守っているのかなあと思いました

前半でアーディタが準主役のような感じになっていて、チョーラ朝の内紛を描くためにデーヴァンが動き回っていました

それによって、全体像が見えてくるのですが、彼の役がなくても王朝の内紛というものは見えて来るのですね

問題は、誰がクーデターのことを王宮に伝えるかというもので、そのためにデーヴァンというキャラが創造されたのだと考えています

 

ちなみに、デーヴァンも実在の人物で、ヴァラヴァライヤン・ヴァンディアデーヴァン(Vallavaraiyan Vandiyadevan)というチョーラ朝の有名な族長で将軍だった人物なのですね

また、彼はのちにクンダヴァイと結婚しているのですが、映画はそこまで描いていませんでした

彼に関することは「クンダヴァイの夫としてラージャラジェシュワラム寺院の碑文に残っている」というもので、この史実から想像を膨らませたものだと推測されます

どのキャラを狂言回しにするかという中で、完全にオリジナルのキャラではないというところが、デーヴァンがそれ以上の存在として描くことに繋がっているように思えました

 

このキャラが活躍し、クンダヴァイと良い雰囲気になるところまで描いているので、最後まできちんと描いても良かったように思います

クーデターを伝達させるだけなら僧侶ナンビだけでも良い(結局、誰の差金か不明でしたね)と思うので、あえて王族と結婚した人物をピックアップするなら、意味のある帰結をまとめて欲しかったですね

史実に合うのかわかりませんが、後半はアルンモリと一緒に行動していたので、その功績を鑑みて将軍に抜擢されるところまでは必須だったように思いました

 

シナリオの配分として、前半でアルンモリの存在が薄く、明らかにアーディタが主導になっていました

なので、この描き方をするならば、アーディタが死んだら終了になってしまうと思います

その後、国がどうなるのかというところを描く必要はあるのですが、ここでアーディタの配下がアルンモリを敵視してクーデターを起こすのがよくわからない流れになっていました

誰も見ていないのに、いきなりその場に居合わせたわけでも、部下がそこにいたわけでもないのにアルンモリがやった!というのは意味がわかりませんでした

 

アーディタが死んだことで、スンダラ王は王位継承をどうするかを考える必要があります

アルンモリがアーディタを殺してまで王位にこだわっていたという脈絡が全くないので、単にクーデターをしたい連中が風潮しただけなのですね

それをアーディタの部下たちが鵜呑みにするという展開が意味不明で、さらにそこでマドゥランダカがアルンモリ側についたことで、戦争する意味はなかったように思えました

この辺りは史実に基づいているのかはわかりませんが、アーディタの死後が蛇足だったところに、さらに盛り上げる場面を作っていたのはバランス的におかしいかな、と感じました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、前後編で見れば、スンダラ王の息子二人の物語であることがわかりますが、この内容ならインターバルを入れる場所をもう少し工夫したほうが良かったように思えます

一本の映画ならアーディタに絞って、死んだところで終わりというのが潔く、ポンニ河の息子はアーディタのことでした、で良かったんだと思います

でも、実際にはその息子はアルンモリのことでした、となっていて、それならば前半でもっと出番を増やして、ランカ島を支配しているだけの描写に留めない方が良かったと思います

 

映画は、登場人物が死ぬほど多くて、それぞれの男前には慕う女の人がいる、という感じになっていましたね

その中でもアルンモリには海の女プーングラリという女性がいるのですが、彼女はどうやら妻にはならなかったようですね

wikiによれば、アルンモリには8人の配偶者がいて、本妻の他にも側室などがたくさんいたのだと思います

王族でないプーングラリが入る余地はないと思うのですが、アルンモリの長男の母親は判明していますが、次男に関しては身元が不明となっています

王族としての結婚をしつつ、実は本当に好きな人は王宮外にいて、そこで生まれた子どもは王宮に入れた、みたいな想像もできるように思います

 

このあたりまで描くと大河ドラマでやらないと無理だと思うのですが、いっそのこと「ポンニ河の兄弟」というタイトルにして、アーディタとアルンモリの生涯をきちんと描写した方が良いように思いました

それだと、前半は兄、後半は弟の物語になり、インターバルを入れる(前後半の分かれ目)は「アーディタの死」ということになります

あの回廊にて、アーディタとナンディニが出会い、そこで彼が自害をする

ここで終わってしまえば、後半への引きが抜群で、真相探しとその後の国内のクーデター関連をきちっと描けたのではないでしょうか

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/99397/review/03944435

 

公式HP:

https://spaceboxjapan.jp/ps-movie/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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