■感覚的に見えたものが正しいかわからないが、優先すべきは事故防衛本能であるように思います
Contents
■オススメ度
ハーレクイン的な恋愛ドラマが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.11.23(MOVIX京都)
■映画情報
原題:It Ends With Us(私たちでそれを終わらせる)
情報:2024年、アメリカ、130分、G
ジャンル:過去にトラウマを抱える男女が出会い、おかしくなっていく様子を描いた恋愛映画
監督:ジャスティン・バルドーニ
脚本:クリスティ・ホール
原作:コリーン・フーヴァー『It Ends with Us』
キャスト:
ブレイク・ライブリー/Blake Lively(リリー・ブルーム/Lily Bloom:花屋の経営者)
(若年期:Isabela Ferrer)
ジャスティン・バルドーニ/Justin Baldoni(ライル・キンケイド/Ryle Kincaid:リリーに恋する脳外科医)
ジェニー・スレイト/Jenny Slate(アリッサ/Allysa:リリーの店の店員、ライルの妹)
ハサン・ミンハジ/Hasan Minhaj(マーシャル/Marshall:アリッサの夫)
ブランドン・スクレイナー/Brandon Sklenar(アトラス・コリガン/Atlas Corrigan:レストラン「ルート」の料理長、リリーの元カレ)
(若年期:Alex Neustaedter)
Kevin McKidd(アンドリュー・ブルーム/Andrew Bloom:リリーの父、元市長)
Amy Morton(ジェニー・ブルーム/Jenny Bloom:リリーの母)
Robin S. Walker(ジョンソン医師/Doctor Johnson:救急医)
Emily Baldoni(ジュリー医師/Doctor Julie:産婦人科医、定期検診)
Adam Mondschein(ダンバル医師/Doctor Dunbar:産婦人科医、出産)
Caroline Siegrist(ケイティ/Katie:リリーの高校時代の友人)
Robyn Lively(バイランド夫人/Ms. Byland:葬儀の参列者)
Megan Robinson(スミス夫人/Ms. Smith:葬式の参列者?)
Robert Clohessy(州知事、葬式の追悼)
Steve Monroe(不動産業者)
Daphne Zelle(女性のウェイター)
Will Fitz(パーティーの参加者)
Cal McMenemy(パーティーの参加者)
Suki Úna Rae(パーティーの参加者)
Sharleen Shayan(パーティーの参加者)
Connor Ford(ボウリングをする人)
Tom Johnson(嘆く男)
Abbie Van Lee(電車のカップル)
■映画の舞台
アメリカ:メイン州
プレソラ
アメリカ:マサチューセッツ州
ボストン
ロケ地:
アメリカ:ニュージャージー州
ジャージーシティ/Jersey City
https://maps.app.goo.gl/zV1ZrQ6MVGoS2Q5J8
プレインフィールド/Plainfield
https://maps.app.goo.gl/DXtoR2wEgm6ftFqs6
アメリカ:ニューヨーク
■簡単なあらすじ
花屋を夢見ているリリーは、父の葬儀を終えた後、ボストンにて本格的に動き始めることになった
ようやく店舗を見つけて準備を始めていたところに、アリッサと言う女性が雇って欲しいと売り込んでくる
予定にはなかったが、人手が欲しかったこともあり、彼女を雇うことに決めた
アリッサには投資会社で働いている夫マーシャルがいて、兄を交えて食事をしたいと言い出す
仕方なく同席することになったが、アリッサの兄はライルと言う男性で、実は顔見知りの存在だった
彼は、父の葬儀後に戻ったボストンのアパートの屋上で出会った人物で、あれこれ話してはいたものの、関係を進めることなく終わらせていた
ライルは再会を歓迎し、そして二人の距離が「友達」へと接近することになった
リリーには高校時代に恋人のアトラスがいて、彼は隣の空き家に侵入して暖を取っていた
それに気づいたリリーが手を差し伸べて関係が始まるものの、父にバレてしまい、彼は病院送りになってしまっていた
それ以来会うことは許されず、そんな彼との思い出のオークのハート飾りは、今も宝箱に大事にしまわれていたのである
テーマ:過ちを許せぬ根源
裏テーマ:連鎖を断ち切る意味
■ひとこと感想
イケメンの脳外科医とラブゲームをする元市長の娘と言う漫画のような設定で、いわゆるハーレクインロマンス的な内容になっていました
過去にトラウマを抱える者同士が出会い、良い感じになった時に過去の恋愛が顔を出す感じになっていて、原作が実は私小説と言うホントなのかと勘繰ってしまい内容になっていました
映画では「インスピレーション」みたいな感じになっていて、かなりロマンティックに盛りまくっているのだと思われます
映画では、対抗馬として登場するホームレス青年が成功してボストンで1位になってたりするのですが、取り上げられている雑誌のインタビュー記事の内容は強烈でしたね
それを声に出して読ませるのもどうかと思いますが、色々とヤバい人ばかり出てきているように思いました
一番マシなのがアリッサの夫なのかもしれません
物語は、恋愛の障壁は過去のトラウマと言う感じになっていますが、リリーの抱えるものとライルの抱えるものは質も違いますね
冒頭の屋上で語られる伏線が初対面にすることかよと思ってしまいますが、そのあたりもモリモリになっている感じがしました
監督が夫役で、葬儀の参列者にリリーの実の姉がいたりと、色々と小ネタが満載の映画になっていました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作のネタバレといえば、タイトルの言葉がどこで、どのように使われるところかなと思いました
てっきりライルがリリーの意図を汲んで離婚を成立させ、それによって「終わらせる」と言うことかと思いましたが、私たちが「リリーと娘のエマーソン(ライルの亡くなった兄の名前)」になっていましたね
娘のエマーソンには意味がわからないので、リリーの中で完結している決意表明になっているといえます
離婚を決意したのは度重なる衝動的な暴力ではなく、その暴力を嘘で隠してしまうところでしたね
階段転落の詳細は「ライルはよろけて落ちた」と言う感じに見えていますが、後半では「リリーは突き飛ばされた」と確信しているシーンがありました
その後、レベル測定の質問の際にライルが咄嗟に自己弁護に走っていて、これでは続かないだろうなあと感じました
発作的に暴力が出るのも防ぐのも難しいのですが、それ以上に「やめて」と言うリリーに執拗に食い下がるライルは傍から見ていたら異常に思えます
おそらく「やめて」と言う言葉が一番出てきた単語で、自信過剰なライルがそれを跳ね除けようとするシーンが多かったですね
逆になんで結婚しようと思ったのかの方が謎で、離婚を告げるのもライルの亡き兄の名前をつけたと知らせる直後だったりと、リリーの性格もかなり難があるように思えました
■終わらせるために必要なこと
人間関係を修復させるか終わらせるかは難しい問題ですが、個人的には「一度終わらせた方が良い」と思っています
それは、それでも必要なら修復へと向かうと考えていて、一度亀裂が開いたものを無理やり続けようとする方が難しいと思います
亀裂はスッパリと割って見て、そこから再構築をすれば良いので、再構築に向かわない関係性は、無理やり続けても歪なままであると思います
感覚的に「もう無理だ」という瞬間があって、それを誤魔化しながら生きていくことはとても辛くて、その時に感じたインスピレーションというものは経験値や思考に勝ると言えます
人間関係というものは不思議なもので、疎遠だった関係が再会で修復することがあるように、必要に応じて生まれては消えるようなもののように思えます
この友人関係が恋人関係、夫婦関係となってくると話が違ってきて、さらに子どもがいるとその関係を子どもの生育に捧げなければならないという強迫観念が生まれてきます
リリーとライルの関係もそれに似ていて、娘のエマーソンが生まれたことで継続に至らなければ、という考えに至ると思われますが、リリーの決断はかなりドライなものになっていました
「もし娘がパートナーから虐待を受けたらどうするのか」というリリーの質問は、ライル自身が変わらなければ受け入れられないもので、その連鎖というものは一度剥がしてしまわないと清算されないことをわかっていたように思えます
もし、リリーとライルの関係が修復されるなら、この家族間で起こってきた暴力の連鎖というものが断ち切られた時でしょう
それがどのようにして断ち切られるかが見えてこない以上、解決策はないように思えます
リリーの父アンドリューはリリーの元カレのアトラスに暴力を振るった過去があり、ライルも兄エマーソンとのトラウマの中で暴力を肯定して精神を安定させるという性質がありました
そう言った一度こびりついてしまったものというのは、その連鎖が続く可能性のある状況下では整理されないのだと思います
なので、スッパリとライルとリリーが別れて、エマーソンを巡る新しい関係が生まれてくれば、ライルの精神的な安定の方策というものが見えてくるのかもしれません
■メロドラマで描くことの弊害
映画は、暴力の連鎖をいかにして止めるかを描いていて、その根底にあるものが「暴力者が自己肯定に甘んじてしまう精神構造である」と言えます
リリーの父の暴力と、ライルの暴力は質が違いますが、その方法が正しいと思い込む過程は似ているように思います
ただし、リリーの父の場合は「娘のため」という冠詞がつき、ライルの場合は「トラウマが見せている自己防衛」というものになっていました
どちらも行為を正当化させるというプロセスは同じで、自身の行為によって起きている「相手への配慮、思いやり」というものが欠けていると思います
これらの連鎖を断ち切るために「リリーは娘とふたりで生きていくこと」を選択します
これは言い換えれば、男が周りにいたら常に暴力問題が発生すると言っているようにも思えます
決断は娘を思ってのものですが、この構造は「娘のことを思ってアトラスに暴力を振るう父」にも見えてしまいます
最終的に、リリーと娘に暴力が及ばない場所がどこかはわかりませんが、男性がいたらダメということはないと思います
映画は、メロドラマ仕立てで描かれていて、暴力シーンがミステリーとなっていて、加害者と被害者の視点が違うというテーマを描いています
この方法がマッチしているのかはわかりませんが、ラストにアトラスが出てきて微笑みかけるという展開になってしまうと、結局は相手次第のようにも思えるのですね
アトラスと良い関係になっても、自分の子どもではないエマーソンを愛し続けることができるのかはわかりません
なので、男性の近くにいてはダメというテーマを完遂するのならば、アトラスからも距離を置くというエンディングの方が良いのかな、と思ってしまいました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、場外乱闘が活発な映画で、リリー役のブレイク・ライブリーによる訴訟連発が話題となっていました
詳しくは『It Ends with Us controversy』を読んだ方が早いのですが、色んな方面に喧嘩を売ったみたいなことになっています
実際にセクハラやモラハラがどの程度だったのかはわかりませんが、セクハラがあったといところから、それは虚偽で人権侵害だという感じの応酬になっています
さらに、この訴訟を報じたニューヨークタイムズも相手取ることになっていますね
読んでも意味わからないところが多く、誰か簡潔にまとめてくれないかなあと思ったりします
これらの訴訟沙汰がアメリカの公開にどのような影響があったのかはわかりませんが、日本公開に先立ってはそう言った話はほとんど流れてこなかったですね
某映画館では「○○パスがおすすめ!」みたいな感じに取り上げられていて、本作を対象にして良いのかは何とも言えない部分がありました
暴力の連鎖を断ち切るために女性が行動を示さなければならない、というテイストの映画で、それはそれで間違いないと思います
加害者は自分を加害者とは思っていないこともあるので、その事実関係を明確にする必要はあります
関係性を客観視させることでようやく加害者的な意識が生まれるのですが、その後も自己防衛と言うものは発生し、その行為を正当化する理由付けをしていきます
行為そのものでは無く、行為に至った過程などに何かしらの道筋を見つけるもので、それが客観視されるものと自己意識とは乖離があると言えます
映画でも、アリッサの目線では「兄エマーソンを撃ったことがトラウマになって、怒りのトリガーになっている」と言うふうに分析されていますが、リリーへの暴力の正当化を見ると、それが間違いであることがわかります
兄の事件はきっかけに過ぎないが、ライル自身の本性は事件があろうとなかろうと変わらない
その視点で見ているのがリリーだったと言うことになります
アリッサにとっては、兄は兄であり、過去のトラウマから抜け出して人生を謳歌してほしいと言う願いがあります
それが一連の雇い入れの売り込みのところから始まっていて、兄にとってふさわしい人を探しているようにも思います
彼女は家族の一員として、兄を慕う気持ちがあるので、事故に関する視点もライルを保護するものとなっています
実際には、ライルに暴力性があって、それが引き金を引かせたという側面は否めないわけであり、道具を手にした時に本性が見えると言うこともあります
映画はそこまでは言及していませんが、実際にはもっと複雑なものでしょう
なので、表層に出た部分だけで見えていないものもあるので、そう言った時は「事象に対する自分の感性」を第一に考えるしかありません
それはリリーの決断の源泉でもあると思うので、彼女があの時に瞬間的に感じたライルの本性というのは、彼自身や家族が気づいていないだけなのかもしれないのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/102261/review/04496823/
公式HP:
https://www.itendswithus.jp/
