■いつまでも一緒にいたいという流れまでは汲めるものの、その決断で生じた摩擦がスルーされているのは微妙かもしれません
■オススメ度
ほっこりした家族ムービーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.10.20(MOVIX京都)
■映画情報
情報:2022年、日本、113分、G
ジャンル:こじらせ女子があるきっかけで医者一家の世話になるヒューマンドラマ
監督:長崎俊一
脚本:矢沢由美
キャスト:
高杉真宙(市川俊英:診療所の若き医師)
関水渚(関口亜子:俊英の憧れの女性にそっくりな女性、こじらせ女子)
水島かおり(土屋秋子:マイペースすぎる俊英の叔母、酒屋)
江頭勇哉(土屋武紀:秋子の息子、ミュージシャン)
佐藤貢三(俊英の父、医師)
中島歩(俊英の兄、医師)
石橋蓮司(市川英男:俊英の祖父、診療所の院長)
芹川藍(小野上きよ:市川家の家政婦)
ベーコン(タマ:市川家の猫)
小野ゆり子(竹野まり子:俊英の元婚約者)
DJ松永(須江洋司:俊英の親友、診療内科医)
行井あい佳(診療所の看護師)
水原睦実(診療所の看護師)
金沢涼恵(診療所の看護師)
■映画の舞台
日本のどこか
ロケ地:
静岡県:沼津市
志村内科胃腸科医院@閉業(市川診療所)
https://maps.app.goo.gl/PCsDh425tWHwbDJj9?g_st=ic
CAFÉ スプーニー
https://maps.app.goo.gl/AnNjFEmnU41J2kMU6?g_st=ic
ナフコツーワンスタイル沼津店
https://maps.app.goo.gl/ChpJyEk3MvrHMQxZ8?g_st=ic
土屋酒店
https://maps.app.goo.gl/pqzmLhDjPu7RYvFF7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
診療所の医師として祖父・英男とともに働いている俊英は、無愛想で感情がないと看護師たちに陰口を叩かれていた
俊英は二世帯住宅を構えるまで準備が整っていた結婚を破談にしてしまった過去を持ち、その原因は複雑で簡単には語れないものだった
ある日、その診療所に「原因のひとつ」でもある女性が登場する
叔母・秋子が連れてきたその女性は東京から休暇で訪れてきていた女性だったが、実は別人と間違われていたのである
彼女の名は関口亜子で、東京から訪れて、夫の出張中に羽を伸ばしにきていた
秋子の息子・武紀のバンドの記事を書いたライターだと思われていたが、実はその記者の双子の姉だったのである
俊英は「双子の妹の写真」を武紀に無断で持ち歩いていて、理想を大きく膨らましていた
だが、現れた亜子は理想とは真逆で、態度も悪く酒癖も悪く、心療内科で薬をもらってアルコールと一緒に服用してしまうヤバい奴だったのである
テーマ:家族
裏テーマ:感性と馴染み
■ひとこと感想
どんな話かまったく知らずに、関水渚さんが出演するとのことで鑑賞
Dr.コトー的な何かなのかと思っていましたが、ことのほか医療に関しては舞台設定だけにとどまっていました
亜子が実は双子だったぐらいしかサプライズがなく、彼女の夫婦関係もざっくりとしかわかりません
もっとわかりやすいくらいにダメ夫とかだったら良いのですが、それすら判断できない程に存在感がないと言えます
映画は家族の一員を経験していくことで、少しずつ関係が変わっていくのですが、一応は不倫関係になるので、進んで良い恋愛なのかは悩むところでしょうか
不器用な男子が拗らせ女子と関わるという内容ですが、この二人の恋愛観は高校生レベルに見えるところは少しだけ微妙だったかなと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
タイトルの意味は何となく想像つきますが、それほど効果的で映画の内容を表せているとは思えません
ラストに登場する亜子の夫は声だけですが、とても良い人そうなだけにかわいそうに思えますね
両親から絶縁されて出てきたみたいになっていますが、それでハッピーエンドなのかは何とも言えません
映画のテーマは「家族の良さを知る」と言うことなのですが、亜子の家族観がわからないので、彼女が市川家から何を得たとか、どんな違いがあったかなどがわからないのがもどかしいですね
冷静に考えると、好きでもない人と結婚しかけた男と、結婚までした女がくっつくと言う話で、それが美談になっていいのかどうかは悩みます
この二人の関係について、祖父も父も兄もスルーどころか、好意的に見ているところが謎のように思えました
■タイトルの解釈
映画のタイトルは『いつか、いつも…いつまでも』となっていて、解釈が分かれる感じになっています
「いつか」というのは未来を意味し、「いつも」は現在であり、「いつまでも」は現在と過去、未来を総括する言葉になっています
これらの時間軸の表記は、俊英と亜子の関係性を表記するもので、「いつか」は「写真の憧れの存在」としての亜子の妹であり、「いつも」は「亜子と暮らす日常」であり、「いつまでも」は「亜子と暮らした日常の末に望む未来」であると言えます
最初は憧れの存在(見た目からイメージする理想の女性)だった亜子は、実際にはとんでもない人物でしたが、俊英にとっては「全てを否定するほどの存在ではない」というものになっています
わかりやすく見た目が好みになっていて、その奥行きを知った先でのめり込んでいくのですね
俊英は亜子を拒絶することなく、これまでにない感情を見せていき、でも「夫がいること」を知っているので一線は越えません
最後は亜子に選択が委ねられ、自分の気持ちに素直になった亜子が俊英の元に戻るという内容になっていました
映画は亜子がとんでもないトラブルメーカーであるにも関わらず、それぞれのキャラが亜子を好きになって受け入れていく様子が描かれていきます
その要因の一つとして、医師としての義務感というものは大きかったでしょう
でも、英男としては、俊英の人生を前に進ませるために亜子の存在が必要だと感じていて、それが家政婦のきよにも伝わっているように思えました
誰もが俊英のことを愛していて、それゆえに亜子という存在が彼を変えていくことを望みます
これまでに俊英をなんとかしようとみんなが思ってきましたが、どうにもならないところに来たのが亜子で、ある意味みんなにとってのギフトだったと言えるかもしれません
■勝手にスクリプトドクター
本作はうまく纏まっている作品で、それほどシナリオがおかしいとかいうことはありません
ハートフルコメディとして問題のない作品ではありますが、一つだけ腑に落ちないところがあります
それが、亜子の選択と修羅場のシーンがないことでした
亜子の夫は声だけしかわからず、それはとても常識的な人物に映ります
この結婚に問題があったのは亜子の心構えで、相手に非がないことは明白でしょう
でも、亜子の決断というのは、言い換えれば「理想の男性ができたから離婚」にも見えてしまうのですね
問題は、亜子が夫に対して、「俊英の存在を言ったのかどうか」というところなのだと思います
亜子が自分の選択が相手を傷つけたことはわかっていますが、その理由の中に俊英がいるかどうかは結構大きな問題なのですね
特に亜子の夫の目線だと、「これまでの結婚は不本意でした」と言われてすぐに引き下がれるかと思ってしまいます
おそらくは口論になるし、そこで「亜子の心変わりを生んだ存在」への言及は避けられません
「本当に好きになれた人がいる」というのは亜子の夫からすれば残酷な提示であり、それによって「亜子の夫と俊英が邂逅なしのまま離婚に行き着く」というのは無理が生じます
それを考えると、亜子の決断シーンと亜子の夫と俊英が対決するシーンというのは必要に思えるのですね
亜子の夫が「亜子の言葉だけで離婚を決意できる」のであれば、亜子の夫もそこまで彼女に思い入れがなかったということになります
結婚1ヶ月で長期出張か何かで不在になる夫というところであるとか、それについて行かない関係性であるとか、そもそも亜子の夫の親族は離婚についてどう思うのかというところは完全に排除されています
映画では「両親から絶縁された亜子」というのが「ダンボール箱の落書きでわかる」となっていて、いくらなんでもそりゃ投げっぱなしすぎるだろうと思いました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画の本線は「人は見た目だけじゃない」とか、「理想は心を動かさない」など色々とありますが、最終的には「俊英の元に亜子が戻ってくる」というエンディングになっていました
不本意な結婚というのはあると思いますが、その解消には多大なエネルギーが必要となってくるのは間違いありません
そのエネルギーの先にある未来というものが、物語の多幸感につながっていき、それをスルーしてしまうと「え、これで終わり?」という感覚になってしまいます
この映画に泥臭い離婚調停が必要かは微妙であると思いますが、亜子の性格を考えると「言い出したら聞かない」になって、「夫が呆れて突き放す」とか、「夫の親族が思ってたのと違う」となって破談にするという流れになりそうな気がします
実際には亜子も亜子の夫もどんな家庭環境だったかもわからず、亜子が抱えてきた結婚のストレスの正体もわかりません
結婚して数ヶ月で精神科に行って眠剤をもらうまでになるというストレスが生じるならば、夫が最低の人間ということになるでしょう
それでも、夫は声しか登場しないので、実際の夫婦の現場でどのように豹変したかはわかりません
このあたりをわかりやすくするためにも、亜子の対決のシーンは必須だったわけで、その夫の反応を見せることで、亜子の睡眠薬まみれであるとか、絶縁した方が良いと思える家庭環境の提示になったように思いました
本作ではそのあたりが完全に「想像にお任せします」レベルになっていたのですが、想像で補完できるレベルではないと思うので、さすがに描写が足りなさすぎるのではないかと思いました
本編のほんわかムードで修羅場を描くのは難しいと思いますが、転調があっても良いと思うので、思いっきり泥まみれになった挙句、雨降って地固まるまで無茶苦茶になった方がよかったかなと思っています
夫もその親族も、亜子の家族ですら「手に負えない」ほど無茶苦茶になって、それでも俊英は彼女を平気で受け入れる方が意味を感じます
亜子のこじらせレベルまで、展開がこじれにこじれた方がもっと魅力的な作品になったのではないでしょうか
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/383436/review/9ec6991b-6110-423f-809f-c13b4c7dda40/
公式HP: