■デスゲーム=文化祭と考えれば、楽しめる青春キラキラムービー
Contents
■オススメ度
とりあえずホラー映画なら何でも観る人(★★★)
橋本環奈さんのファンの人(★★★)
山本舞香さんの本領発揮が観たい人(★★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.10.14(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2022年、日本、102分、PG12
ジャンル:カラダを探さなければ一日が終わらない世界に迷い込んだ高校生たちを描いたスラッシャー系ホラー映画
監督:羽住英一郎
脚本:土城温美
原作:ウェルザード『カラダ探し(スターツ出版、2011年)』
キャスト:
橋本環奈(森崎明日香:ぼっちの女子高生)
眞栄田郷敦(伊勢高広:明日香の幼馴染、女子からモテるリア充)
山本舞香(柊留美子:明日香のクラスメイト、年上彼氏と付き合っている不良娘)
醍醐琥太郎(浦西翔太:明日香のクラスメイト、いじめられっ子)
横田真悠(鳴戸理恵:明日香のクラスメイト、高広に気がある学級委員長)
神尾楓珠(清宮篤史:不登校の高広の友人、映画のオリジナルキャラ)
柄本裕(八代友和:学校の司書教諭)
西田尚美(明日香の母)
柳俊太郎(留美子の彼氏)
Maari(清原陽菜:理恵の友人)
石田夢実(彩佳:理恵の友人)
安永星良(小野山美子:殺人事件の被害者の少女)
■映画の舞台
県立逢庵高校(架空、映画では「アカシア学園高校」の看板あり)
ロケ地:
福岡県:北九州市
西南女学院マロリーホール(学舎)
https://maps.app.goo.gl/MJToB7PLUvYqxmrz6?g_st=ic
西南女学院中高ロウ記念講堂(礼拝堂)
https://maps.app.goo.gl/NyXAA98XmME9451z6?g_st=ic
レムブラン ベース キャンプ
https://maps.app.goo.gl/1aJ7xhgcyX4PB5uaA?g_st=ic
旧安川邸(小野山邸)
https://maps.app.goo.gl/rwgAsqDWeStXG148A?g_st=ic
北九州市若松
岩屋海水浴場 海の家 たかみ荘
https://maps.app.goo.gl/SY4jqdfp9asYXAUv6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
ある日から高校でぼっち生活になった明日香は、人気のない場所で食事をし、誰とも関わらない生活を送っていた
ある日、登校中に野良猫がバスで撥ねられて死んでしまう
不穏な一日が始まる中、改装中の礼拝堂の前に来た明日香は、そこで井戸から無数の血まみれの手が這い出してくるのを見てしまう
一日が終わり、何気なく過ごしたと思った矢先、明日香は深夜の校庭に放り出されていた
同じようにクラスメイトの高広、篤史、翔太、留美子、理恵もその場所に飛ばされてしまっていた
不気味な夜が静まる頃、急に物音がして、人形を引きずった少女が彼らの前に現れた
少女は容赦なく彼らを次々と殺していき、全員が殺されたあと、再び彼らは同じ5月7日を過ごすことになったのである
翔太は「カラダ探しが始まった」と言い、「かつてバラバラ殺人がこの学校の近くで起きた」と続ける
その被害者の少女のカラダを探して、棺桶に入れないと、その日が終わらないと悟ったのである
テーマ:孤独
裏テーマ:生贄
■ひとこと感想
橋本環奈さんの顔芸を楽しむ映画かなと思っていたらまさにその通りで、何とか脳内補完をしながらセーラー服姿を追うことになりました
山本舞香さんを下から抉るのは撮影監督のフェチなのかなと思ってしまいます
ともあれ、ループ系ホラーなのですが、ガッツリと青春映画になっているところが面白かったですね
きらきら感のあとの絶望感という落差がすごい映画で、途中で海で遊んでいるシーンを観ていると、「あれ? これ、ホラー映画じゃなかったっけ?」と思ってしまいます
ラストは巨大化した「あれ」と戦うことになるのですが、お約束のような「窮地で愛を確かめ合う」というギャグをぶっ込んでいましたね
鑑賞環境が少し最悪で、後方の小学生?ぐらいの年齢層が「テレビを見ているかのようなリアクションで騒がしい」ので、その前の席の人たちはタイヘンだったんじゃないかなと思います
大ホールの前3列目で鑑賞していましたが、最後方のはしゃぎ声が普通に聞こえてきていましたね
「橋本環奈の顔が怖い」という声が響き渡り、笑っていいのか悩んでしまいましたねえ
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ループ系ホラーということで、ミッションをクリアしないと何度も同じ日が繰り返されるという「ゲームのような設定」になっていました
そのゲーム感覚をキャラクターが認識していて、昼の青春と夜のバトルできっちりと入れ替えているところは妙にシュールに思えます
スラッシャー系としてはPG12なので期待はせずと言ったところで、人形っぽいのがゴロゴロ転がっていました
「赤い人」も奮闘していて、まさかの巨大化という、本当にゲームのノリになっていたのが笑えます
というよりも、ラストバトルのあの作戦が何をしたかったのか実にわかりにくかったですね
鎖で縛るのは分かりましたが、ペンキみたいなものを仕掛けていた意味は謎であっさりとゲートを突破されていました
最後は「好きな人(でいいのかな)」が殺されて、気がふれた明日香がパイプで殴り倒すという、これまでの物理法則を完全に無視しているのは凄かったですね
「孤独」がテーマなので、エミリーが巨大化したのが「リア充を目の前で見せられた恨み」とかだったら面白かったかもしれません
■孤独が引き寄せたもの
本作のメインキャラはすべて「孤独」を抱えている人物像になっていました
明日香は「水泳の授業を休んだために透明人間扱い」で、留美子は「彼氏が浮気している」し、篤史は「怪我でバスケができなくて引きこもり」で、翔太は「いじめられているキャラ」、理恵は「表面だけの人気者」ということになっています
高広だけは孤独っぽさがなく、いわゆる陽キャとして彼らを助ける側にいるように見えます
映画では「異世界転生前の世界」が「クラスのいじめ事件」ぐらいしかないので、あのクラスの人気者である高広にも彼なりの悩み(ヒロイズムによる孤独)というものがあるのかもしれません
「孤独」を問題視する一方で、人は一人になりたがる生き物で、そのバランス感覚がとても重要であると思います
その孤独は望んでいるものか否かというのは本人にしかわからないものですが、孤独でいる状況を生み出しているのも本人だったりします
状況を変えるためには、例えば留美子は彼氏と別れればOKでしょうし、理恵も優等生のイメージを崩せば問題ないでしょう
翔太に関しては勇気が入りますが、いじめられている要因というものに気づけることができれば解消される可能性はあります
明日香に関しても、自分からは話に行かないし、その場から逃げているので、声をかけたい人がいてもコミュニティを出てまでそれを行う人はいません
いじめ問題は「不特定多数の人間を同じ場所に詰め込むと起こるもの」なので、クラス替えが1ヶ月ごとに変わるとかになれば解消されたりするのかもしれません(物理的に難しいと思いますが)
コミュニティの問題は、それをどう維持するかによりますが、リーダーとなるべき人間(=いわゆる担任)は責任回避に動く大人だったりします
担任と生徒の間では世代間感覚の相違によってうまく行かないのですね
なので、コミュニティの問題は内側にいる人間がどのように生きたいかというのを真剣に考える以外にありません
これは孤独の解消と同じ問題が根底にあって、「人は慣れるもの」というところがあり、「期間限定」というゴールが見えているので耐えられるというものがあるからですね
耐えられない人からドロップアウトすることになり、それが篤史でした
でも、彼がドロップアウトしているのは単なる逃避で、ただ時間を浪費しているだけになります
このキャラは映画のオリジナルなのですが、このキャラをわざわざ入れてきたところに、映画の「孤独」に対する考え方があるのかなと思いました
映画における「孤独」は近しい人の存在で変化するものなのですね
その変化には勇気が必要なのですが、その勇気を生み出したのがホラー要素であったところが面白いと思います
これまでの青春映画なら、文化祭とかがその役割を担うのですが、それが「カラダ探し」という非日常になっていて、映画のラストで文化祭の実行委員会のメンバーに6人が選ばれるというオチまでついていました
なので、作者の中では「青春映画の非日常にホラーを組み込んだ」という感覚なのかもしれません
■勝手にスクリプトドクター
本作は「青春映画」がベースになっていて、「異世界部分がデスゲーム」になっていました
青春映画としては「ぼっちが冒険を経て仲間を得る」というもので、それが通常の映画だと「文化祭」とかになるのですね
それが今回は理不尽なデスゲームに巻き込まれるということで、強制的に結束を余儀なくされることになっています
文化祭や体育祭ならサボることもできますが、クリアするまで死を繰り返すので、他人任せにもできません
これらの作品の設定はとても興味深く、また閉鎖空間スリラーは「その世界に招聘された理由探し」にもつながるので、後半において「孤独が餌になっている」という理由づけは素晴らしいと思います
それぞれのキャラクターが日常で感じていた孤独感というものは、「本当の人付き合いをしたことがない」というところにあって、それぞれのキャラクターが学園生活を送る上で「自分自身が規定したキャラクター」というものを演じてきました
でも、そのキャラクターを演じていても前に進まないからこそ、それぞれが本音をぶつけ合う展開へと向かっていきます
本作はここまではほぼ完璧な映画で、問題は最終決戦に至るシークエンスであると思います
いよいよ頭だけとなったものの、それはどこにも見つからないのですが、それが人形の中にある、もしくは赤い人が持っているという可能性は引っ張るほどのネタではありません
小野山邸に行くくだりもホラー要素としてはOKですが、そこで封印を解いたみたいになってエミリーが巨大化するというのがやや陳腐に思えます
前述のように、「孤独が餌になっている状況」なので、その逆の状況こそが「赤い人がエミリーを発動させるトリガーになりえる」でしょう
もともと「赤い人」は「殺人鬼に追い詰められて孤独に死んだ少女」でした
その怨念、すなわち「誰にも助けてもらえなかったこと」が根付いて、それによって「同じ境遇の人物を生贄にすること」によって、赤い人は解放されるという設定があるのだと推測します
なので、同じ孤独を持つ人物を赤い人の世界に招聘する場合は、同じような境遇を集めて、それまでにできなかったことをさせる(他人と目的を有して行動させる)か、いつも人と一緒に行動してきた人を独りにするか、なんですね
映画では「同じ境遇を集めて、日常でできないことをさせる」という方策を選んでいるので、その結束は徐々に赤い人を苛立たせることになるはずでしょう
怨念の質は、彼らの結束の強さに準じて肥大化し、それがピークを迎えると飽和してエミリーを召喚させるという流れを呼ぶというのがセオリーなのかなと思っています
映画で残念だと思ったのは、エミリーが単純に封印を解いたからになっていて、それはゆくゆくは行き詰まるであろう彼らを待ち構える罠にすぎないことです
予想通りに小野山邸に行き、そこでエミリーを見つけ、それによってさらに強力な呪いが発動することになるのですが、その呪いの解け方も「孤独が薄れているから」というところまで行き着いた方がよかったように思えました
エミリーが発動した後も、彼らが協力して戦うことで巨大化し、それによって犠牲が出るという流れになり、そうした先に生き残った明日香と高広がどのような「別れ」をするのかというところがキーポイントになると言えます
このシーンの「はよ、頭を嵌めろ問題」は単に最後の会話を交わしているだけになるのですが、ひねりを加えるならば、「頭を置いてもエミリーは消えない」というシナリオに向かうことでしょう
彼らは棺桶を見てそう思い込んできただけで、実際にはそれは答えではなかった
そんな中で、最後に生き残った二人は「孤独が集められた原因であること」を思い出します
翔太が調べた過去の殺人事件などから「最後に一人で死んだこと」というのが浮上するので、そこで二人は「一緒に死ぬ覚悟をエミリーに見せる」のですね
これによって、エミリーは自分の死がさらに絶望になるので、それによって消滅するか、凶暴化してどちらかだけを殺すかになるでしょう
映画のラストシーンは翌日に進みますが、そこで彼らの記憶はリセットされていました
それぞれは「文化祭委員」に選ばれ、集まることになるのですが、デスゲームのことは誰もが覚えていないようでした
唯一、タイピンの存在で高広が明日香を思い出すのですが、そこで彼が思い出したことは「8歳の時に明日香が遊園地で死んでいた」という事実だったりするのですね
そうなると、エンドロール後の映像と辻褄があってきますし、そこにいる明日香の中身は「明日香ではなく、美子である」という見方もできるのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作のカテゴリーは青春映画ですが、彼らの「非日常前の日常の描写」が少しばかり少ないように思います
そこで描かれているのは「翔太のいじめ」だけで、それに対して各人が反応を見せています
でも、そこで登場するのは高広と理恵だけで、篤史も留美子もいません
留美子に関しては、どうやら年上の彼氏がいるらしいくらいで留まり、篤史に関しては「ゲームやってる姿」しか映っておらず篤史と認識できる材料に乏しすぎるでしょう
なので、もう少しクラス内でその場にいなかった二人について存在感をアピールする場があってもよかったでしょう
単純に考えるなら、「クラスの担任から高広が何かを預かって届ける」「留美子に関して悪い噂があって、それで喧嘩になる」というのがテンプレ的な説明描写になるかと思います
このあたりのテンプレは採用しない方が良いのですが、そういったものがまったくないために、日常の彼らの距離感がほとんどわかりません
単なるクラスメイトの域を越えてはいないので、それが急速に仲良くなって行くというところが駆け足に映ってしまうのですね
なので、日常をいじめだけで描写するなら、「いじめられる翔太」「一連のコントに対して毒を吐く留美子」「ひたすら距離を置く明日香」「取りまとめようとする高広」「何もなかったかのように振る舞う理恵」というかたちになるでしょう
そんな中で「篤史みたいに引きこもらないの?」ぐらいのことをいじめっこに言わせて、それに対して「高広が激昂する」「それを理恵が止める」というのもわかりやすい例えになると言えます
映画としては、文化祭の代わりにデスゲームをさせるという斬新さがあって、青春キラキラムービーとホラーデスゲームという光と影の落差があって楽しかったですね
でも、テーマ性であるとか、人物描写、展開や演出などに改善点があるのも事実だと思います
おそらく続編ありきで制作されていると思いますが、キャストの年齢層を考えると早く取らないと大変なことになりそうですね
興収がどんなものかわかりませんが、ある程度はヒットして、続編が作れるだけの資金が集まることを祈りたいと思いました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/378622/review/eb700fcf-d277-43ee-a56f-0abb5ef1d4b8/
公式HP: