■南インドを知るために、映画の背景を紐解くのも良いかも知れません
Contents
■オススメ度
インドのマフィア戦争に興味のある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.7.20(T・JOY京都)
■映画情報
原題:ಕೆ.ಜಿ.ಎಫ್: ಚಾಪ್ಟರ್ ೧、英題:K.G.F: Chapter 1
情報:2018年、インド、154分、G
ジャンル:極貧の子どもとして育った少年がマフィア界で成り上がる様子を描いたクライム&アクション映画
原題:ಕೆ.ಜಿ.ಎಫ್: ಚಾಪ್ಟರ್ ೨、英題:K.G.F: Chapter 2
情報:2022年、インド、166分、G
ジャンル:マフィア界の頂点を目指す青年が飛びかかる火の粉を振り払う様子を描いたクライム&アクション映画
監督&脚本:プラシャーント・ニール
キャスト:
ヤシュ/Yash(ラジャ・クリシュナッパ・バイヤ/ロッキー:貧困の家庭に育った少年→マフィアの片腕としてミッションに参加)
(少年期:Anmol Vijay)
【KGF関連】
ラメーシュ・インディア/Ramesh Indira(スーリヤワルダン:KGFの創設者)
ラーマチャンドラ・ラージュ/Ramachandra Raju(ガルダ:スーリヤワルダンの長男、KGFの後継者)
ヴィナイ・ビッダッパ/Vinay Bidappa(ヴィラト:ガルダの弟)
サンジャイ・ダット/Sanjay Dutt(アディーラ:スーリヤワルダンの弟)
アイヤッパ・P・シャルマー/Ayyappa P. Sharma(ワラナム:KGFの司令官)
ジョン・コッケン/John Kokken(ジョン:KGFの監督官、奴隷調達係)
Puneeth Rudranag(ルガ:KGF鉱山の監視役)
【ムンバイ・マフィア関連】
シュリーニディ・シェッティ/Srinidhi Shetty(リナ・デサイ:ラジェンドラ・デサイの娘、カマルの婚約者、ロッキーの想い人)
Divya G Gowda(リナの付き人 ※Chapter2で登場)
ヴァシシュタ・N・シンハ/Vasishta N. Simha(カマル:リーナの婚約者、KGFの幹部)
ラッキ・ラクシュマン/Lakki Lakshman(ラジェンドラ・デサイ:バンガロールの裏社会のボス、リナの父、KGFのボス)
B・S・アヴィナーシュ/B. S. Avinash(アンドリュース:デサイとKGFの両方と手を組む犯罪組織のボス、シェッティの上司、KGFの高位幹部)
ターラク・ポンナッパ/Tarak Ponnappa(ダヤ:アンドリュースの腹心)
ディネーシュマン・ガルール/Dinesh Mangaluru(シェッティ:ロッキーの雇用するムンバイのマフィア)
ハリーシュ・ライ/Harish Rai(カシム:ロッキーのメンター、シェッティの仲間)
【政治関連】
アチュト・クマール/Achyuth Kumar(グルパンディアン:DYSS党の党首、スーリヤ・ヴァルダンの親友、KGFの幹部)
Yash Shetty(シャム:考古学局の職員)
Appaji Ambarisha Darbh(インド国会議長 ※ Chapter2で登場)
ラヴィーナ・タンダン/Raveena Tandon(ラシカ・セン:首相を狙う代議士)
【家族関連】
アルチャナ・ジョーイス/Archana Jois(シャンタマ:病死したロッキーの母)
クリシュナッパ/Krishnappa Kgf(クリシュナッパ・バイリヤ:ロッキーの父)
【著作関連】
アナント・ナグ/Anant Nag(アナンド・インガラギ:『エル・ドラド』の著者)
(若年期:アショーク・シャルマー/Ashok Sharma)
Mohan Juneja(ナガラジュ:インガラギへの情報提供者)
プラカーシュ・ラージ/Prakash Raj(ヴィジャエンドラ・インカラギ:アナンドの息子、※ Chapter 2から登場)
【報道関連:News24】
T. S. Nagabharana(シューリニバース:チャンネルのオーナー)
マーラヴィカ・アヴィナーシュ/Malavika Avinash(ディーパ・ヘグデ:編集長兼アンカー)
Govinde Gowda(ピオン:お茶汲みスタッフ)
【奴隷関連】
B. Suresha(ヴィタル)
Srinivas Murthy(ナラヤン)
Lakshmipathi(ランチャ/ナレーター)
Roopa Rayappa(シャンティ:女の子を産む女性)
Sampath Maitreya(シャンティの夫)
Krishnoji Rao(KGFの盲目の奴隷)
Sarah Shakthi(ファルマン:ロッキーを崇拝する若者)
イーシュワリ・ラーオ/Easwari Rao(ファーティマ:ファルマンの母)
【その他】
バーラクリシュナ/Balakrishna(イナヤト・カリール:ドバイを拠点とするマフィアのボス、シェッティのライバル的存在)
Tamannaah Bhatia(ミルキー:「Jokae」のダンサー)
Mouni Roy(ルーシー:「Gali Gali」のダンサー)
Neenasam Ashwath(クルカルニ:?)
Surya Shekhar(ディラワール:?)
■映画の舞台
1951年、
インド:コラール
https://maps.app.goo.gl/HjxNK1sRc1yiqjgE8?g_st=ic
ロケ地:
インド:カルナータカ
マイソール大学
https://maps.app.goo.gl/wyY28vWSCNiUeL9G8?g_st=ic
ロケ地:
インド:テランナーガ
Hyderadad/ハイバララード
https://maps.app.goo.gl/D4BbCgSbjfXU2tGS7?g_st=ic
インド:カルナータカ
Bangalore/バンガロール
https://maps.app.goo.gl/jpNtJSybFrhAugny5?g_st=ic
Lalita Mahal Palace/ラリータ・マハル宮殿
https://maps.app.goo.gl/JUteKFpmiJxgPUTC6?g_st=ic
Kolar Gold Fields/コラール・ゴールド・フィールド
https://maps.app.goo.gl/PPBynZa9ndpRjchh9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
【Chapter 1のみ】
かつて焚書となった著作『エル・ドラド』の作者アナンド・インカラギは、ある不正を訴えるためにジャーナリストのもとを訪れた
眉唾ものの話だったが、ニュースチャンネル24のオーナーはその話に興味を持ち、ジャーナリスト兼ニュースアンカーのディーパ・ヘグニも彼の話を聞くことになった
1950年頃、インド南部に「K.G.F.」と呼ばれる場所があり、そこに一人の伝説の男がいた
彼の名はラジャと言い、貧困家庭に育ち、幼い頃に母は病気で亡くなっていた
彼は母の言いつけを守り、ムンバイにて名を上げようと奮闘する
警官を公衆の面前で殴り倒し、マフィアのボス・シェッティと会うことができたラジャは、ラジャを気に入って多くの仕事をさせた
ラジャはその頃からロッキーという名前に変え、彼の名はムンバイ中に知れ渡ることになる
そんな彼に大きな仕事が舞い込む
それは、K.G.Fと呼ばれる場所に金脈が眠り、そこの支配者であるガルダを殺せというものだった
そこでロッキーは奴隷に紛れ込んで内部に侵入し、そこでK.G.F.の内部調査を行うことになったのである
テーマ:母との約束
裏テーマ:傲慢は滅亡を呼び起こす
■ひとこと感想
インド映画ブームが到来し、インド各地の映画が上陸することになりました本作はカンナダ語ベースがオリジナルになっていて、いわゆるサンダルウッドと呼ばれる地域で制作された映画となります
カルナータカしゅうが拠点となっていて、物語の舞台でもあるマンガロールやバンガロール、K.G.F.があるのもこの辺りになりますね
映画は『Chapter 1』と『Chapter 2』が同時公開になっていて、映画館も「連チャンできるスケジュール調整」を行っていましたね
なので、320分(インターバル15分)一気見という荒技を敢行して参りました
記事的に二つに分けようかと考えましたが、ほぼ前後編みたいな感じなので一つにまとめてしまいました
なので、『Chapter 2』のネタバレもあるので、まだ見てないよという人は、一旦スクロールをやめてくださいね
物語は、貧困から成り上がる系の物語で、基本悪人しか出てきません
なので、カタルシスがあるかどうかは微妙な感じになっていて、まさにこの世の地獄のような展開を迎えています
語り部が回想する流れになっていますが、『エル・ドラド』が焚書となる経緯なとは『Chapter 2』にて明かされるので、前後編と思って見ておくのが良いと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
『Chapter 2』のネタバレまでかますので、心の準備は良いでしょうか?
はい、というわけで、まさかの「母親の執念の物語」という流れになって、ちょっと困惑しましたが、母の決意を胸に秘めた男は止められないという感じになっていましたね
「どんな人間になってもいいから、死ぬ時は支配者になれ」というパワーワードを体感する流れになっています
一応、『Chapter 3』があるとのことで、2024年にインドで公開されることが決まったとの報道がありました
綺麗にまとまっていたので、どんな展開を作るつもりなのかは気になるところですが、1980年代のインドの歴史を知っていると、なんとなく想像がついてしまうかもしれません
時代が1990年になるとしたら、まさかの展開があるのかもしれませんねえ
本作は、ロッキーが主役なのですが、3人の女性の戦いでもありました
ロッキーの母は時代に殺され、想いを息子に託します
ロッキーの子どもを授かったリナは非業の死を遂げ、それはロッキーの行動を大きく変えていきます
首相になったラミカ・センは歴史の隠蔽を行いますが、民との約束を守ったロッキーの掌の上にいることを知りません
この三人の女性は、主体性のある無力、主体性のない有力、主体性のある有力というふうに分かれていて、誰が歴史を作り動かしたかは興味深いものがありました
持たざる者は本当に何も持っていないのか?
それが問われる内容だったように思えます
■K.G.F.のあれこれ
映画に登場する「K.G.F.」は架空のものですが、元ネタになっている「Kolar Gold Fields」というのは実際にありました
場所はカルナーカタ州のコーラル(コーラーラ)の郊外になります
運営していたのは「バーラト・ゴールド・マインズ・リミテッド(BGML社)」と「BEMLリミテッド社」でした
鉱山自体は金価格の下落によって、2001年2月末に閉鎖になっています
1880年頃に「ジョン・テイラー・3世」が鉱山を開発し、1956年まで運営していましたが、その後国有化になっています
1902年にシヴァナサムドラの滝で水力発電を行い、鉱山にケーブルなどの電気施設ができあがります
鉱山の開発に伴って、より多くの労働力が必要となって、近くの居住区唐人が流入します
それによって、郊外に入植地が出来上がり、インドの技術者や地質学者、鉱山監督者などの裕福な家族が町の中心に住んでいたとされています
この土地はロバートソンペット、アンダーソンペットという呼ばれ方をしていましたが、それは2人のイギリス人鉱山職員の名前が由来となっています
公用語はカンナダ語で、タミル語も多く話されていました
この鉱山は1956年に国有化され、合計900トンにものぼる金が算出されました
2001年の2月末に閉鎖されましたが、食料、水、住居の不足から採算が取れなくなったとされています
■Chapter 3を考えてみる
「Chapter3」は2024年の夏にインドで公開される予定で、その予告編はすでに作られています
そこには「ROCKY IS ALIVE」とはっきりと書かれていて、彼が生きていることは確定事項になっています
どのように生き延びたのかは分かりませんが、車が爆破されるシーンなどがあり、不穏な時代を予感させていきます
映画の舞台は「Chapter 1」が1951年から1978年、「Chapter 2」が1981年になっていました
フィクションではありますが、ラミカ・センという女性首相が誕生しているところが、現実の1981年と被っている印象がありました
この時期のインドは国民会議派による長期政権時代で、1977年に瞬間的にジャナタ党が政権を取っています
でも、あっさりとインディラ・ガンディーによる政権の返り咲きがありました
1984年、インディラ・ガンディーが暗殺されるのですが、ラミカ・センがこの首相を準えているとしたら、彼女が暗殺されるシーンがあってもおかしくないかも知れません
実在のインディラ・ガンディーは暗殺当時に66歳で、ラミカ・センはどう見ても40歳前後なので、どこまで反映させているのかはなんとも言えない感じがしますね
ちなみに、暗殺は2名の男による銃殺で、場所は首相官邸の庭でした
ロッキーがどのように生きていたかは分かりませんが、爆発の瞬間に海に逃げて、事前に用意していた船などで逃亡した可能性は高いと思われます
「K.G.F.」自体が場所を移して存続しているので、それを政府が看過できているかがポイントとなります
ロッキーが暗殺者という路線はありそうで、インディラの跡を継いだ息子ラジブをモデルにした新キャラとの戦争が勃発するのかも知れません
ラジブの就任直後に選挙があったため、首相銃殺の余波を受けて、インド国民会議が圧勝していますね
この辺りの情勢が取り込まれ、これまで身内同士の喧嘩だったものが、VS政府となっていくド派手な展開になっていくように思えます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、「Chapter 1」は「Chapter 2」が同時公開され、2024年には「Chapter 3」が控えています
パンフレットも1と2がくっついたものになっていて、公式HPも然りという感じですね
京都だと、初週は連続で観られるスケジュールが組まれていましたが、2週目になると『ミッション・インポッシブル』公開の影響を受けて、連続で観るのは困難な状況になっていました
「Chpater 3」公開直前とかならわからないではないですが、その公開はどう考えても来年以降(おそらく2025年)なので、この時期の公開はちょっと意味がわからない感じになっています
日本未公開の続編を公開するというパターンはこれまでにもあります(最近だと『THE WITCH 魔女』とその続編)が、大体が新作公開の直前というパターンが多かったように思います
本作も、来年の「Chapter 3」に合わせて夏頃に公開しても良かったと思いますが、それを急いだ意味はわかりません
おそらくは『RRR』で再燃したインド映画ブームに乗っかっているのだと思われ、『ランガスタラム』と同時公開になっていたのはびっくりしました
時代背景が1980年とモロ被りで、『ランガスタラム』の舞台アーンドラ・プラデーシュは本作の舞台であるカルナータカの東隣になります(K.G.F.のある鉱山を東側に降りたところ)
ブログの記事を書いていたときにインドの歴史を見直していて、その近すぎる設定にどっちの記事を書いているのか混同するぐらい近い映画なのですね
おそらくインド映画好きならどっちも強行していると思いますが、日本で言えば「熊本県と宮崎県ぐらいの位置関係の戦後の話」なのに、その質感とかが全く違うのは驚いてしまいます
1980年代は、インドにとって激動の時代で、戦後に植民地時代が終わって、印パ戦争に突入したり、指導者の暗殺が相次いだりと凄い時代でした
その多くは北側(デリー)で起こっていて、その時期の南側はあまり知られていません
それが本作のようなサンダルウッドの躍進によって知る機会が増えたことは嬉しい限りです
これからもボリウッドのみならず、サンダルウッドの映画公開も増えてくるでしょう
サンダルウッドは、ざっくりいうと「南インドのカンナダ語の映画」なのですが、南インドには「トリウッド」「コリウッド」「モリウッド」というものもあります
このあたりはオリジナルの使用言語の違いだったりします
トリウッド(テルグ語)、「コリウッド(タミル語)」、「モリウッド(マラヤーラム語)」などのように、インドでは地域によって主要言語が違うのが特徴的なのですね
でも、言葉を聞いて言語を特定できる人はなかなかいないと思うので、ヒンディー語で作られた作品をテルグ語でリメイク(吹き替えも含む)となると、オリジナルを観ているのか吹き替えを見ているのかすらわからなかったりします
このあたりはIMDBや公式HPで詳細を調べることになりますが、英語版wikiなどでは、上の方にタイトルの後に「K.G.F: Chapter 1 is a 2018 Indian Kannada-language period action film(『K.G.F. Chapter 1』は2018年のインドのカンナダ語で作られたアクション映画です、という意味です)」のような感じで表記されているのでわかりやすいと思います
オリジナル言語で観たいという時は、何語で制作されたかを観て、それからそれにあったものを入手すればOKではないでしょうか
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/389695/review/19c2acda-382b-44b5-90ef-4ee84821df68/
https://movies.yahoo.co.jp/movie/389696/review/19f467bd-f06a-4afe-86ee-fff4ce8d20d9/
公式HP: