■舞台に上がることが許されなければ、舞台から引き摺り下ろすことになるのは、世の常なのかも知れません


■オススメ度

 

インドのカースト制度に興味のある人(★★★)

『RRR』経由で観ようと思った人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.7.19(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:Rangasthalam

情報:2018年、インド、174分、G

ジャンル:村の統治に反旗を翻した兄弟を描いたヒューマンドラマ

 

監督&脚本:スクマール

 

キャスト:

ラーム・チャラン/Ram Charan(チェルボイナ・チィティ・バーブ:農園を手伝う陽気な難聴の青年)

 

サマンタ・アッキネーニ/Samantha Akkineni(ラーマ・ラクシュミ:チィティの想い人)

ナーガ・マヘーシュ/Naga Mahesh(パッラル:ラーマ・ラクシュミの父)

 

アーディ・ピニシェッティ/Aadhi Pinisetty(チェルボイナ・クマール・バーブ:選挙に出馬するチィティの兄)

 

ジャガパティ・バーブ/Jagapathi Babu(バーニンドラ・プーパティ/プレジデント:ランガスタラムの村長)

アジャイ・ゴーシュ/Ajay Ghosh(シェーシュ・ナイドゥ:ソサエティの管理人、村長の手下)

Vajja Venkata Giridhar(アブール:村長の手下)

Jeeva(ジェーラム:村長の手下)

 

プラカーシュ・ラージ/Prakash Raj(ダグシナ・ムールティ:MLA、州議員)

アミット・シャルマ/Amit Sharma(シュリマーン・ナーラーヤナー:ムールティの助手)

バネージー/Banerjee(シタルム:ムールティの主治医)

 

ナレーシュ/Naresh(コレスワラ・ラオ:チィティとクマールの父、仕立て屋)

ローヒニ/Rohini(カンタンマ:クマールとチィティの母)

ベイビィ・アニー/Baby Annie(チンニ:チィティとクマールの妹)

 

アナスーヤ・バラドワージ/Anasuya Bharadwaj(コーリ・ランガンマ:チィティの叔母)

ラジーブ・カナカラ/Rajeev Kanakala(ランプラサド:イラクに行っているランガンマの夫)

 

プジータ・ポナーダ/Pujita Ponnada(パドマ:クマールの恋人)

 

ブラフマージ/Brahmaji(会計監査人)

 

マヘーシュ・アチャンタ/Mahesh Achanta(マヘーシュ:チィティの仕事仲間)

サトヤ/Satya(ヴィーラ・バブ:チィティの悪口を言う村人)

 

ノエル・シーン/Noel Sean(エラ・スリヌ:借金苦で川で溺れ死ぬ男)

Shaking Seshu(ソーマラージュ:土地を奪われて川に身投げをする爺さん)

 

シャトル/Shatru(カーシ:チィティとクマールの敵対者)

チャトラパティ・シェーカル/Chatrapathi Sekhar(ガバナティ:チィティとクマールに警告する聖人)

 

プージャー・ヘグデ/Pooja Hegde(「Jigelu Rani」を歌う金ピカクイーン)

 


■映画の舞台

 

1980年代、

インド:アーンドラ・プラデーシュ州

ゴーダーバリ川沿岸の村ランガスタラム

 

ロケ地:

インド:アーンドラ・プラデーシュ

Papikonda National Park/ハピコンダ国立公園

https://maps.app.goo.gl/dq98gbS7fC44YK1q8?g_st=ic

 

ラジャムンドリー/Rajahmurdry

https://maps.app.goo.gl/4zSDPvUUZcJr1HXm7?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

アーンドラ・プラーデシュの小さな村ランガスタムに住む難聴の青年チィティは、ゴーダーバリ川から水を汲み上げて農家に配布する仕事を請け負っていた

ある日、彼の元にドバイに出稼ぎに行っていた兄クマールが戻ってくる

家族との時間を作ることになったクマールだったが、村で次々に「借金のカタに土地を奪われている」という話を聞いて、その内情を調べ始まる

 

村を支配しているのはプレジデントと呼ばれる村長で、パンチャーヤト(村の議会)は不正な帳簿を作って私腹を肥やし、文盲の村人から搾取を行なっていたことがわかる

プレジデントに掛け合うも動きを見せず、そこでクマールは村長選への出馬を決める

MLAの代議士ムールティもようやく動き出したランガスタラムを応援する立場に回った

だが、選挙活動を行うものの、村民の関心は薄く、プレジデントの取り巻きが何をするかわからないところがあって、支持の拡大は難しくなっていた

 

一方その頃、チィティは兄を手伝いながらも、ラクシュミに恋煩いをしていて、難聴による意思疎通の困難さがあらぬ方向へと向かってしまう

ラクシュミは自分を一番に考えて欲しかったが、チィティは彼女と同じくらい兄のことが好きで、二者選択には答えられない

やむを得ず、ラクシュミとの別れを選ぶものの、燃え上がった恋の炎は、そう簡単には消えやしない

 

そんな折、叔母のランガンマから「あること」を告げられたチィティは、虫の知らせを受けて、クマールを探し始める

だが、難聴の彼が兄を探すのは容易ではなかったのである

 

テーマ:権力へ鉄槌

裏テーマ:カーストを崩すのは暴力

 


■ひとこと感想

 

何の話か全く分からず、『RRR』のラーム・チャランさんが踊るということだけ念頭に置いて映画を見始めました

冒頭からいきなり誰かわからんおっさん(先生と呼ばれていた)が死にかけるという展開で、そこに至るまでの2ヶ月間が前半になっています

後半は事故直後とさらに2年後という展開になっていて、かなりの長い年月が描かれていることになりました

「Interval」って表記出たけど、そのまま後半に続くのは様式美のようになっています

 

映画は、1980年代のインドの地方都市を舞台にしていて、文盲の村人相手にカースト上位が搾取しまくるという構図になっています

そんな体制に反旗を翻すのがクマールで、彼が出馬するまでが前半、後半はその顛末という内容になっています

 

インドのカースト制度に詳しいと対立構造と服従の意味が分かりますが、それがなくても「絶対王政を敷いている村長と取り巻き」という構図は何となくわかりますね

借金づけにしている様子が描かれていましたが、領収書の概念を知らない人もたくさんいるし、6年生まで学んだ!が侮蔑の対象になる世界線は、とても30年前とは思えないところがあります

時代背景と国民の識字率の関連性などを考えていくと、ある程度の世界観は掴めてくるのではないでしょうか

 

そして、カースト最下層の反旗が描かれているのですが、その転覆に必要なものが前時代的な感じになっているのも、地域性ということになるのかなと思いました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

お祭りだらけで楽しく踊るタイプの映画かと思っていましたが、ガチの政治色の濃い復讐劇になっていたのは驚きました

兄クマールが選挙に出るまでが前半とは思わず、全然話進まないなあと思いながら睡魔に襲われそうになりましたね

 

冒頭の事故は暗殺のように見えたので、クマールを支持した代議士までもが襲われたのか!と思っていましたが、まさかの単なる事故になっているところがビックリしました

黒幕なのに事故死しかけると言うのは展開がぶっ飛びすぎていて苦笑してしまいます

 

映画の本懐は、この事故で昏睡になったことが必要なのですが、すっきりとしたようなしないような不穏な終わり方になっていましたね

それもそのはずで、犯人は誰かが明白なので、普通の生活ができそうにもありません

なので、ラクシュミも復讐を果たしたけど困惑している、と言う感じになっていました

 


カーストと時代背景

 

映画の舞台は1980年代の南インドで、時期的にはインド・パキスタン戦争の直後に当たります

第三次印パ戦争が1971年なので、それから10年後ということになります

政局的には、1964年にネルーが死んだ後、1966年にその娘インディラ・ガンディーが政権を担います

この体制は1977年の選挙大敗にて、ジャナタ党に政権を譲離ましたが、1980年には再びインディラ・ガンディーが政権に返り咲きます

でも、1984年に暗殺されてしまうのですね

 

映画の時期は、この暗殺の後とされていて、パンフによれば当初のタイトルは「Rangasthalam 1985」だったとのこと

この時期は、インディラの息子ラジーヴ・ガンディーが政権を担っていた時期でした

国民議会派による揺るがない中央政権も、プレジデントが支配するランガスタラムだけは不可侵というように描かれていました

 

当時のインドにはカースト制度があって、これは「バラモン(司祭)」「クシャトリア(王侯・士族)」「ヴァイシャ(庶民)」「シュードラ(隷属民)」という分け方になります

プレジデントは聖紐(ウパナヤナ)を身に纏っていました

これは「シュードラ以外のカースト」において、カーストの一員として資格を得る儀式の際に授けられるもので、学生のための伝統的な通過儀礼の一つとされています

聖紐は「左肩から胸を横切って右脇腹」に通す細い紐のようなものです

プレジデントが川で沐浴しているシーンなどで、細い紐のようなものをかけていて、それが聖紐だったりします

プレジデントがカーストのどの位置になるかははっきりとしませんが、チィティたちとは違うというものを明確に示すシーンになっています

 

シュードラが政治に口を出すということ自体がプレジデントからすれば青天の霹靂のようなもので、文盲の村民を支配していた時代は終わります

ちなみにカースト制度自体は、1950年に制定されたインド憲法の17条によって禁止になっています

でも、憲法が禁止していても、それは「カーストを利用した差別行為」だけなので、カーストそのものは禁止になっていません

それゆえに、カーストは制度としては残っていますし、教育水準との相関性によって、地方都市では「カーストの禁止すら知らない層」というのがいてもおかしくないのかな、と思います

 


効果的な罪と罰の関係性

 

映画の本編は「2年後」とされる、ムールティ代議士の事故後になっています

構成としては、「ムールティの事故」が冒頭の映像になっていて、そこに至るまでが前半となっています

プレジデントと対抗し、兄クマールが選挙に打って出る流れで、クマールが襲われて死に、代わりに叔母のランガンマが村長になります

ムールティの事故はおそらく暗殺に近いのですが、それに対する言及はほとんどありません

彼を轢いたトラックは止まりもせずに逃亡していて、チィティは犯人を追うこともなく、ムールティの救助に向かっていました

 

チィティは兄の最期の言葉から、ムールティの秘書シュハーマン・ナラーヤナーが暗殺に関連していることを知り、それを確かめるためにムールティの元に向かっていました

でも、それを確かめる前に彼は事故で死にかけていて、その事実を突きつけるまでは、ムールティに死なれても意味がありません

秘書を問い詰めても、黒幕にはたどりつかないのですね

ムールティはプレジデントの支配構造を壊すためにクマールを選挙に推薦させて、彼の失脚と同時に、クマール殺害に対する報復というものを嵌め込んでいきました

 

クマールはプレジデントの最後の悪あがきという感じになっていて、その枷がなくなったランガスタラムは、ムールティの支配下に入ることができます

政治的な素人集団が政治を執り行うことで、ムールティの影響力と地盤を作ることになり、いわゆるフィクサー的な立場になろうとしていました

ランガンマの成功の影にムールティがいれば、同じような村での「反カースト」の流れを利用して、村長を擁立することができる

そうすることで、国政に出る際の地盤を作ることが可能であると思えます

 

チィティはムールティがそこまで考えていることなどには興味がなく、ただ兄を殺した黒幕としての罰を与えようと考えています

「微熱が出ただけで死刑は延期される」というように、罪と罰を正しく認識している状態こそ、復讐を果たすタイミングであるというのですね

また、社会的に絶頂な位置にいる段階でそれを行うことは、その落差が効果的であると思います

殺されれば死後のことを考える意味はないのですが、輝かしい未来があったと思えたからこそ、その絶望は計り知れない

ムールティが幸福の最中にいることは偶然ではあるもの、落差の最大値を与えるということは、神の裁きのように思えてなりません

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、教育水準の格差を利用して経済的な損失を与える官僚を描いていて、文盲などに限らず、「知らない者が損をする社会」というものが描かれていました

これをインドのカースト最下層の話だからと片づけるのはナンセンスで、同じようなことは日本でも起こっています

法律は作った人の味方であり、それを利用する人の味方なのですが、中には悪用する人もいます

このコロナ禍でも様々な助成制度があっても報道しないし、報道側が理解していないので「足りていない」と誤報道をしているケースも多くあります

 

このような法律などの情報所得は容易ですが、その制度を理解するためにはある程度の教育水準が必要になってきます

法律の文言も慣れれば理解できますが、とっつきにくさがあるのは否めなません

このあたりのことは「知っている人を有利にさせるためにわざとそうしている」のではないかと勘繰るほどに、奥歯にモノが挟まったような、どうとでも解釈できる言葉遊びになっていました

 

本作では、文盲を利用して契約書を偽造していたのですが、小学校程度の学力を有するラクシュミでも、そのおかしさには気づけています

いわゆる簡単な算数の話になっていて、それは教育というよりは直感的にわかるおかしさだったりします

1万ルピー借りていたのに、2万ルピーだったみたいな、かなり雑な会計でも騙せると思っていたりします

個人的には複利とか、利率が複雑で元本しか返していないレベルでわからない系かと思っていましたが、そう言った人もいた反面、単純に圧政で嘘をつかせるという暴挙に至っていたのは、借用書を取らない闇金よりも酷いものがありました

 

これは極端な例えになっていて、描きたいものは「借用書の文言を圧政で変えられる」というところなのだと思います

なので、この状況を変えるには、村長を交代させて、ソサエティを解体させるしかなかったのですね

でも、クマールを擁立させて、プレジデント一派による殺害を教唆する流れを作ったのが、ムールティだったという流れになっていました

 

この頃のインドは暗殺の繰り返しで、非暴力とは程遠い状況になっていました

現在はそう言った方向性は減りつつありますが、圧政に対して民主主義が機能しない場合には無敵の人が生まれるのは世の常なのですね

為政者はそれをうまくコントロールしていますが、それが顕在化する現在では、その矛先がどこに向かうかは「無敵の人の思い込み次第」というヤバい状況になっています

どの知識に感化されるかとか、どんな感性で解釈するかなどは読めないので、今後ますますヤバい展開を迎えるのではないでしょうか

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/389255/review/bc41858f-f453-4528-8e04-068ef3c6e6ad/

 

公式HP:

https://spaceboxjapan.jp/rangasthalam/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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