■黒い絵を見たあなたには、どんな過去が見えたのでしょうか
Contents
■オススメ度
高橋一生さんのファンの人(★★★)
原作のファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.5.26(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2023年、日本、118分、G
ジャンル:かつての想い人の言葉を思い出した漫画家が、その絵を探すためにルーヴル美術館へと出向く様子を描いたミステリー映画
監督:渡辺一貴
脚本:小林靖子
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
ドラマ:『岸辺露伴は動かない(2021年、全8話)』
キャスト:(わかった分だけ)
高橋一生(岸辺露伴:特殊能力「ヘヴンズ・ドア」を持つ漫画家)
(青年期:長尾謙杜)
飯豊まりえ(泉京香:露伴の担当編集者)
木村文乃(藤倉奈々瀬:露伴に「黒い絵」のことを教えた女性)
白石加代子(猷:露伴の祖母)
安藤政信(辰巳隆之介:ルーヴル美術館の臨時鑑定士)
美波(エマ・野口:ルーヴル美術館のキュレーター)
Simon Ivanov(ピエール:エマの息子)
Arnand LeGall(ジャック:ルーヴル美術館のキュレーター)
Léa Bonneau(マリイ:ルーヴル美術館のキュレーター)
Jean Christphe Loustau(ニコラス:ルーヴル美術館の消防士)
ロバ(ユーゴ:ルーヴル美術館の消防士?)
Philppe Mamolo(モリス・ルブラン:画家)
MEDDY(若き日の露伴から絵を譲り受ける男?)
池田良(ワタベ:露伴とオークションで競る男)
前原滉(カワイ:露伴とオークションで競る男)
嶋村友美(オークショニア)
中村まこと(骨董屋)
増田朋哉(骨董屋の店員)
Arenzki Ait Hamou(露伴のファン)
Oscar Zouout(露伴のファン)
生田拓馬(山村左馬助:仁左衛門の弟)
大谷亮介(仁左衛門の父?)
加賀屋圭(奉行?)
■映画の舞台
フランス:パリ
ルーブル美術館
ロケ地:
神奈川県:横浜市
ホテルニューグランド
https://maps.app.goo.gl/g8gd78LZZG4g7G6K7?g_st=ic
福島県:会津若松市
向瀧
https://maps.app.goo.gl/yqjd82w1hS8eJeuEA?g_st=ic
栃木県:宇都宮市
大谷資料館
https://maps.app.goo.gl/tFpBHDywpxseGWZ29?g_st=ic
東京都:品川区
大森ベルポート
https://maps.app.goo.gl/UgPoEDbbXo4281ct8?g_st=ic
フランス:パリ
ホテル ルテシア
https://maps.app.goo.gl/aft7ZGtGnFVFUq4V6?g_st=ic
ルーヴル美術館
https://maps.app.goo.gl/aiBn3BaUJ1YUjmHA6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
ある昼のこと、うたた寝をしていた岸辺露伴は、振り返って「ねえ、この世で壱番黒い絵って知ってる?」と呟く女性のことを思い出していた
その姿はぼんやりとしていて、いつの記憶だったか思い出せない
露伴はリアリティを求める性格をしていて、次回作の取材と称して、あるオークションに潜入することになった
そこでは数多くの美術品がやり取りされていて、露伴には目的の絵画があった
それが「黒一色で描かれた絵」で、それを落札しようと札を上げ続けた
競合相手を打ち負かして絵を手に入れた露伴だったが、会場に来ていた競合相手が強奪に訪れた
彼らは絵の裏地に何かあると思っていたようだったが、そこには何もなく、さらに意味のわからない幻覚を見るようになる
露伴は強奪者の一人に「ヘヴンズドア」を仕掛け、その理由を探る
そして、その謎を解くために、パリのルーヴル美術館にいくことを決めたのである
テーマ:絵に込められた感情
裏テーマ:過去を映し出す鏡
■ひとこと感想
『ジョジョ』は初期だけ知っていて、実写版も観ましたが、本作の前進になるドラマを見る時間はありませんでした
とにかく濃いキャラというのと、ヘヴンズドアで記憶を読めるスタンドを持っているということは知っていたので、なんとなくついていくことができましたね
映画は、ドラマの延長なのかはわかりませんが、これはこれで完結しているように思います
過去の出来事を思い出せなかった露伴が、黒い絵を見たことによって過去を思い出したのかなとか思っていました
エピソードはたくさんあるものの、後半の「奈々瀬の過去譚」が蛇足のような感じがして、ダラダラと続いている感じがしましたね
そこをサクッとフラッシュバックのように映像が入り混じっていくような演出がなされれば良かったように思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
この世で最も邪悪な絵ということで、それを見た人は「過去を思い出して苦しむ」という感じになっていましたね
いわゆるトラウマを想起させて、そのまま死に至らしめる力があって、絵そのものが時空を超えたスタンドのようにも思えます
映画では、その黒い絵の呪いから逃れるために露伴が自分の記憶を消すのですが、そのあとは普通に戻っているし、このあたりの流れがよくわかりません
おそらくは、記憶を消す中で奈々瀬の過去を読むことができ、それによって黒い絵の真相に迫ったことで呪いが解けたという感じなのでしょう
個人的には物語の構成があまり上手くいっていない感じがして、特に後半の奈々瀬の過去がすごく蛇足感を感じてしまったのですね
物語のピークが「ルーヴルでの黒い絵との対決」になっていたので、その解決と説明になっている後半の回想録が長すぎるように思えました
露伴が黒い絵と対峙し、その力の源を「自分が見ている幻覚で知る」というものになっていて、彼自身の後悔が「若き日に奈々瀬に向き合えなかったこと」になると思います
でも、その事実を現在軸の露伴が知って、それを消すという行為で物語は終わるので、そこから先の物語を長々と解説する意味はないのだと感じました
■過去が見せる幻覚
黒い絵を見ることで、その人自身の過去や前世の深い闇に襲われるという展開を迎えます
あの地下倉庫にて、それぞれは過去に襲われるのですが、溺死した息子ピエールに苛まれるエマがいるかと思えば、自分の過去ではない者に襲われていた消防士などもいました
黒い絵は山村仁左衛門の怨念が籠っていて、それは彼の不遇の人生の集大成のようでしたね
仁左衛門を苦しめた者たちへの復讐というよりは、その邪悪な復讐心とふれ合うことで、その人が抱えている闇が噴出し、それに襲われるという流れになっていました
黒は光を吸い込み、その黒が本物であればあるほどに、光(=希望)というものを吸い込んでしまいます
人の心から希望が消えてしまうと、そこに残るのは絶望だけで、それが心を支配していくことで、エマたちのような処遇に晒されてしまうと言えるのでしょう
黒い絵は過去を見せるのではなく、光を吸い込んでいくので、相対的に絶望だけが人を支配していくことになります
あの絵は希望を吸い込むブラックホールのようなもので、これまでに数多くの希望を吸い込んで来たと思います
なぜ希望を欲するかと言うと、単純な発想だと「道連れ」と言うことになります
仁左衛門が黒に固執したのは、希望を吸い取る力があることを感じていたからで、彼自身がある種のスタンド使いだったのかなと感じました
このあたりは原作を読めばスッキリするのですが、仁左衛門を傀儡としていた何かがいたと言うよりは、彼自身がそうだったという方がしっくりくるような気がします
■過去を塗り替える方法
彼らは過去の怨念に囚われると言う感じになっていますが、唯一京香だけは何の変化もありませんでした
過去と前世を通じて、怨念に囚われるようなものはなく、黒い絵には無反応だったのですね
彼女のような、過去に遺恨が全くないと言う人生は極めて稀で、過去に何かあったけど、それを遺恨にしない方法を考える方が無難であるように思います
過去に起こったことをどう捉えるかですが、基本的な反応として「自分なりの解釈を持つ」「忘れる(忘れたふりをする)」「ひたすら引き摺る」と言うものがあります
どれを取っても黒い絵の餌食になるのは間違いないのですが、ワンチャンありそうなのは「自分なりの解釈を持つ」と言うものでしょう
これは「過去ときちんと向き合った上で起こったことを理解する」と言うもので、その原因に対して独自の対応をしている段階になります
黒い絵は「過去を怨念のようにする」と言う特質があり、それは対象者の恐怖として現れます
なので、過去が恐怖を乗り越えた先にあるものだとしたら、黒い絵は作用しない可能性があるのですね
前世の記憶とか行いになるとさすがに厳しいところはありますが、こと現世で起こったことならば、その恐怖は自分が作り出しているものなので、対応は可能かと思います
前世が作用している場合は、おそらくは前世における罪というものを本人が知っている、もしくは知らないと怨念化しないような印象があります
黒い絵は「潜在意識化にあるものを恐怖にする」という印象があるので、前世の記憶を有していないと、単なる理不尽な仕打ちということになります
映画ではそこまで厳密には描かれていませんが、あの場所にいた京香以外の人物を苦しめるという意味合いになっているので、そう言ったことかもね、ぐらいで考えておくほうが良いかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、大まかなカテゴリーだと恋愛後悔映画になるのだと思います
かつての露伴は奈々瀬に恋をしていて、彼女を振り向かせられなかったことが今回の騒動を呼び起こしています
奈々瀬としては、夫の暴走を止めるために特殊能力を有する露伴にコンタクトを取ったという感じになっていて、露伴の忘れていた過去というものが舞い戻っているように思います
奈々瀬と露伴の生きた時代にはズレがあって、青年期の露伴が出会った奈々瀬も幻のようなものだと思います
おそらくは、黒い絵が見せた幻のようなもので、そこから奈々瀬が抜け出したことによって、黒い絵の魔力というものが解放されたのかもしれません
黒い絵は奈々瀬の喪失によって凶暴化し、ルーヴルで絵に対する冒涜を目の当たりにして呪いが発動したように思います
モリス・ルブランによって模写されなければ黒い絵の放出はなされなかったのですが、その黒い絵の模写が「金儲け」に使われたことで、さらなる凶暴化を招いているのでしょう
絵に対する敬意や純粋性によって、黒い絵が見せるものは質感が違っていて、より悪質なほどに「現在の自分では対処できないもの」になっているように思えてしまいますね
その辺りの厳密性があるのかは初見ではわかりませんが、物語を作り込むのならば、絵に対する敬意がある人ほどイージーモードで、そうでない人ほどハードモードで追い込んでいくのかなと感じました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/386405/review/33b9c6b0-04ed-472a-ac84-7bd46e03d0eb/
公式HP:
https://kishiberohan-movie.asmik-ace.co.jp/