■この映画で何かが生まれたのかはわからないが、地域振興系映画の課題が見えたことが唯一の収穫かもしれません
Contents
■オススメ度
タップダンスが題材の映画に興味がある人(★★)
小芝風花のファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.2.10(イオンシネマ久御山)
■映画情報
情報:2024年、日本、104分、G
ジャンル:タップダンサーに挫折した若者が女将修行をする中で、地域振興のイベントに参加する様子を描いたコメディ映画
監督:雑賀俊朗
脚本:渡辺典子&雑賀俊朗
キャスト:
小芝風花(樋口由香:老舗旅館「ひぐち」の一人娘、夢はタップダンサー)
(少女期:花崎暖)
松田るか(石崎あゆみ:山中温泉「いしざき」の若女将、由香の親友)
(少女期:隅田志音?)
松本昇馬(石崎鉄男:あゆみの兄)
中村静香(星野麻衣:元No.1キャバ嬢の女将候補)
八木アリサ(カトリーヌ:フランス出身の女将候補)
奈月セナ(秋山美希:由香の高校時代の同級生)
青木瞭(松村康平:由香の高校時代の同級生、加賀市役所の観光課職員)
(少年期:宮本琉成)
村松真人(大崎保:加賀市役所の観光課職員、部長)
芳賀美咲(今井みゆ:加賀市役所の観光課職員)
早咲(本田菜緒:加賀市役所の観光課職員)
小野木里奈(七尾桜子:個性派の女将候補)
水島麻理奈(輪島梅子:個性派の女将候補)
佐藤藍子(白石朋子:旅館「山代館」の女将、「女将ゼミナール」の講師)
篠井英介(村岡一朗:ラジオ局のディレクター)
森崎ウィン(花澤譲治:天才観光プランナー)
檀れい(樋口春美:由香の母、老舗旅館「ひぐち」の女将)
岡田幸治(高橋政夫:老舗旅館「ひぐち」の板前)
岩橋道子(山田さとこ:老舗旅館「ひぐち」の中居)
HideboH(佐藤稔:由香のタップダンスの師匠)
小川善久(「ひぐち」の常連客)
小鮒幸子(「ひぐち」の常連客)
真田怜臣(晴美の医師)
小林穂高(原口:由香の同級生、舞台設営)
(幼少期:中健悟)
工藤真麻(子役?)
原雅(?)
渡辺桜子(金沢みどり:?)
市川大希(麻衣を知る若者、キャバクラの客?)
重岡サトル(加藤大介:麻衣を知る若者、キャバクラの客)
上地唯加(松任恵子:同級生)
中塚智(滝田:「ひぐち」の中居)
椎名賢治(カトリーヌの彼氏?)
山岸夕莉(カトリーヌの彼氏の母?)
志村源一郎(麻衣の父?)
長岡美奈(麻衣の母?)
奈良岡美海(麻衣の友人?)
米澤心寧(麻衣の友人?)
宮原ひなこ(麻衣の友人?)
木下瑠香(麻衣の友人?)
多々見友貴(麻衣の友人?)
羽生麻衣子(麻衣の友人?)
兵藤遥陽(アナウンサーの声)
ひゃくまんさん(観客のマスコットキャラクター)
宮元陸(加賀市長、観客)
今中美里(女将ダンサー)
中西彩乃(女将ダンサー)
NON(女将ダンサー)
Kuriko(女将ダンサー?)
Yuko(女将ダンサー?)
Emi(女将ダンサー?)
sky(女将ダンサー?)
■映画の舞台
石川県:加賀市
加賀温泉
https://maps.app.goo.gl/m46RSr284BpLPVD78?g_st=ic
ロケ地:
山中温泉文化会館
https://maps.app.goo.gl/oJpKsWJNGU5cfA1y5?g_st=ic
芸妓検番 花館
https://maps.app.goo.gl/9PQaVmW7zfeWz9FA6?g_st=ic
割烹加賀(同窓会)
https://maps.app.goo.gl/i5w7Q8Zbuho3HKpY9?g_st=ic
愛染寺
https://maps.app.goo.gl/ZQEwnNz7dqBzntts8?g_st=ic
浮御堂
https://maps.app.goo.gl/WCRVVk67pimRCtgS9?g_st=ic
加賀片山温泉 佳水郷
https://maps.app.goo.gl/xMazFmqDvB4QPRow6?g_st=ic
大江戸源泉物語 山代温泉 山代家
https://maps.app.goo.gl/NiutwmjJkiDjj7kw9?g_st=ic
みやびの宿 加賀百万石
https://maps.app.goo.gl/TrJu4pNbdnPnJgF2A?g_st=ic
湯快リゾート山代温泉 彩朝楽
https://maps.app.goo.gl/mwmkDpvjcUPznRtZ6?g_st=ic
星野リゾート 界 加賀
https://maps.app.goo.gl/78PSoQ1NYbwXLubT9?g_st=ic
山中温泉 芭蕉の館
https://maps.app.goo.gl/jA9Cuv2XvAwr1fUs9?g_st=ic
加賀市立錦城中学校
https://maps.app.goo.gl/vwahWGtiWh3aVTpf9?g_st=ic
石川県:金沢市
金沢城公園
https://maps.app.goo.gl/fbpygkQJ7Q8kT2KZ8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
東京にてタンプダンサーの夢を叶えようとしていた由香は、オーディションで満足の行く結果が得られずに悶々としていた
そんな折、地元の温泉旅館の女将をしている母・春美が倒れたという知らせが入った
急遽、地元の加賀に戻った由香だったが、母親は元気そのもので、東京に帰りたくない由香は、そのまま居候をしようと考える
だが、母は穀潰しに与えるものはないと言い、旅館を手伝うことになった
加賀では地元のアピールをするために観光プランナーを呼び寄せていて、プランナーの花澤は、地元を見て回りながらアイデアを考えていく
花澤は、女将ゼミにも顔を出し、そこで親睦を深める中で、由香がタップダンサーであること知る
そこで、女将候補を集めて、和服でタップダンスを踊るという企画が動き出す
トレーナーには由香が選ばれるものの、教えることは不得意で、やむなく師匠を頼ることになる
タイムリミットは2週間、そこで由香たちは日常の業務をこなしながら、イベントのために練習を重ねるのである
テーマ:地域振興アイデア
裏テーマ:女将にとって必要なこと
■ひとこと感想
鑑賞したら一部が石川県の震災復興に寄付されるということですが、そんなことは関係なく鑑賞
夢破れた若者が転身を図る系かと思っていましたが、びっくりするぐらい足し算だらけのシナリオに胸焼けしてしまう、という内容になっていました
映画は、ガチの人たちがダンス指導に入っているので、ダンスシーンはかなり作り込まれています
でも、肝心のシナリオが破綻だらけの展開になっていて、映画の核となる物語の着地点を描かないという、どうしたらこうなるのかわからない内容になっていました
物語は、夢の挫折と再生というテーマがありながら、その帰結がかなりおざなりになっています
脇を固めるキャラも個性を持たせれば良いというものではなく、不要なシーンと展開の連続になっていました
また、他のニュースでも話題になっていたように、本家レディ・ガガに無許可でPR動画などを作っていたようですね
当初のタイトルは「Lady Kaga」だそうで、そりゃあ怒られますわな、と思いながら、映画の内容でさらに怒られそうな感じがしますねえ
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、タップダンスと女将を掛け合わせて、和服でタップダンスを踊って、それで地域振興をしようと考える物語でした
その中心となるのが、タップダンサーを挫折した若者で、やることないから女将修行でもするかという、加賀中の女将さんを怒らせそうな導入になっていました
その他の女将候補もキャラを立てたいだけで、キャバ嬢とか外国人などを配し、お家事情のある幸薄娘を登場させたりしています
タップダンスのシーンに関しては、プロが入っているし、バックダンサーにもプロがいるのでかなり見応えがあります
それでも、それらの良さを十分に活かせていないシナリオになっていて、選択と集中が全くできていない作品になっていました
作りたいシーンを先に考え、それを無理やり物語に組み込んでいるのですが、さすがに昼に始まったイベントのメインが夜に始まったり、と時間経過すら考えていない展開には驚いてしまいました
それよりも、由香がどうするのかわからないまま終わっているし、持ち逃げされたお金のことも無視されています
綺麗に終わっているように見える一方で、ダンスの楽しさを思い出して終わりというだけでは、地域振興も全く無関係になってしまうのですね
この辺りを誰も突っ込まなかったのかが不思議でなりません
■地域振興映画について
本作は、地域振興を企画する内容になっていて、天才プランナーというものが登場していました
数々の町おこしを成功させた実績があり、それによって依頼が舞い込みましたが、映画自体も加賀の地域振興を意識させるものになっています
今回は、地場産業としての加賀温泉を立て直そうという思惑があり、温泉地のPRのために何をしようかという流れになっています
メタ的には、温泉地のPRに女将候補がタップダンスを踊るというものは意味を感じませんが、映画内では意味があるように描かれています
実際に効果があるかは置いておいて、様々なチャンレンジの上に実績というものが積み上がるのですが、メタ的な効果がないと実質的には意味がなかったりします
映画内での効果というものは描かれず、道に迷っていた由香が踊りの楽しさを取り戻すところで終わっています
イベントは成功したように見えますが、イベントの成功=町おこし成功というわけではありません
イベントの企画が観光客の誘致になっているのですが、実際には地元の人々が楽しんで終わりになっているので、配信などを通じてどのような効果があったのかを描く必要はあったように思えました
ビジネスにおけるPDCAサイクルの一環としては、P(企画=女将にタップダンスを踊らせる)D(実行=イベントの開催)で留まっていて、C(評価=反省や影響の精査)とA(改善&再実行)までは辿り着いていないのですね
せっかく天才プランナーを登場させたからには、CとAにまで進んでいく様子を描かないとダメなのですが、映画では「イベントの障害物」として扱われるだけで、しかもその顛末は不明なまま終わっていました
メタ的な効果というものはこれから起こるものですが、映画内に関しては何らかのリアクションが描かれないと嘘になるのですね
そう言った意味において、本作内のプロジェクトは結果まで描く必要があり、その理想論をベースにして、実社会の影響というものの考察に至れるのではないでしょうか
また、本作の場合は、地場的な特性として温泉街が登場しますが、その温泉をPRするには至っていません
ごく普通のイベントを起こしただけに留まっていて、イベント会場の設営に障害があった段階で、それを付随するのではなく、別の手法でアプローチする必要があったように思います
一番わかりやすいのは、ステージではない場所で踊るというもので、ハンディカメラなどを使用して、実際の温泉で踊る(デッキブラシダンスなど)とか、旅館の前で踊るとかでしょう
それぞれがサブ会場的なところで踊りを披露し(事前のVTRでも良い)、そしてメイン会場にやってくることで盛り上がりというものが生まれます
また、設営の準備のために時間稼ぎ的なものとして、PR動画ダンスを先に流していくこともできます
本作の場合だと、ステージダンスにこだわり、対外的にはライブ配信をするというものになっていますが、カメラの向こうの反応は完全無視だったりします
それを考えれば、金を持ち逃げしたプランナーがその行き先で「自分が切り捨てたイベントを見る」というのもありでしょう
そうした大局的な構成を見せることで、可能性というものをもっと訴求できたように思えてしまいます
■勝手にスクリプトドクター
本作は、地域振興をメインに扱っているものの、実際には「夢を見失ったダンサーの道筋を示すもの」だったと思います
ダンサーがダメだったから「女将になってもいいかな」というのが当初のマインドで、その軽々しさが壁にぶち当たるという構成になっていました
舐めプからの現実を見るという流れになっていて、そして母親のこだわりである「女将とは何か」というものを体感する流れになっていたと言えます
女将が何があってもやり抜くというマインドを持ち、それをイベントの成功に結びつけたことで格好はついていますが、その後に彼女がどうするのかが描かれていないのが微妙だと感じました
女将としてのこだわりである「やり抜く力」「諦めない心」を得た由香が、どんな人生を歩もうとするのか
女将としての本格的な修行に入るのも良いし、ダンサーの道を再度模索することだってできます
映画的には、生き生きとダンスをしている姿を見ている母という構図になっていて、それは由香に引き続き夢を追いかけてほしいと思っているように思えます
由香には母の体調という危惧するものがあるので、それが足枷となって羽ばたけないかもしれません
その問題を払拭することで物語の先が見えてくるので、本作の設定をそのまま活かすならば、かなり地味だった「サイン色紙をもらっていた友人(同級生)」が「ひぐち」にて本格的な修行に入るというのもありだったように思えました
映画は、イベントをメインになっていますが、その障害になるものがたくさん登場しています
それらは全て、女将はどんな状況になっても諦めないというものを描くための舞台装置なのですが、いざイベントが始まってからもずっと障害が起こっていることになります
ダンスシーンを魅せるという意味合いもあるのですが、この度重なるアクシデントというものが流れを阻害しているところがありました
アクシデント自体は起こることだと思いますが、そこで人物が必要以上に会話をしたりするのがナンセンスで、特にラジオディレクターの老眼鏡探しとかの演出は愚の骨頂のように思います
大きなトラブルはステージが始まるまで、そのあとは細かなトラブルを背景で描きながらも、それに動じない由香を描いていくことで、彼女が本来行くべき道も見えてきます
このステージは、これまでに由香が立とうとしていた舞台の裏側を知る経験にもなっているので、それらの学びが彼女をダンサーとしてひとつ上のステージに立たせることになるのではないでしょうか
この辺りをきちんと描いて欲しかったように思いました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、タイトルをつける段階でレディ・ガガからクレームをつけられるという顛末があり、そのグダグダすぎる流れが最後まで尾を引いている感じになっていました
このタイトルだと、レディ・ガガの楽曲を使って踊るのかなと誤解されてしまいますし、当初のタイトル『Lady Kaga』は紛らわしい以外の何者でもありません
個人的にも、レディ・ガガとコラボか、タップなんて踊れるんだろうかと思っていたら、まったく関係なくてビビりました
もし、使用していたら、どれぐらいのお金がかかっていたんでしょかねえ
加賀とガガが似ているを利用するのは良いと思いますが、それならばガチで「レディ・ガガを映画に組み込む」くらいの企画を作る必要があるのですね
単純に便乗しようとするから問題になるわけで、覚悟を見せる意味合いでも、「着物でタップ、レディ・ガガの楽曲を使用」で、「サプライズゲストとしてレディ・ガガ本人をどこかでカメオ出演させる」これぐらいの企画になっても良いと思います
実現可能性ゼロのように思えても、これを実現するために何をすれば良いかを考えることが重要で、企画が頓挫したとしても得られるものが大きかったように思います
映画は、ダンスシーンの素晴らしさを打ち消すシナリオと演出が微妙で、この映画で何を見せたかったのかとか、加賀の何をアピールしたかったのかとか、どんな科学変化を起こそうとしようとしたのかが見えてきません
ダンスが上手い人が必ずしも教えるのが上手くないというメッセージがあっても、多忙のはずの師匠がベッタリ2週間いるというのも変な話で、2、3日の猶予で由香が学び、教える側に回る方がベストでしょう
本作では、由香がどのように変化し、成長していくのかがメインになっているので、それがダンスが楽しいという原点回帰で終わっては勿体無いと言えます
なので、このステージを通じて由香が何を学び、どのような道を行こうと考えたのかを示してこそ、きちんとした結びになったのではないでしょうか
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/98329/review/03468335/
公式HP: