■むしろメルヘン展開のまま終わらせた方が伝説の映画になったかもしれません


■オススメ度

 

木村拓哉さんのファンの人(★★★)

綾瀬はるかさんのファンの人(★★★)

織田信長が好きな人(★★)

歴史映画が好きな人(★★)

 


■公式予告編

鑑賞日2023.1.27(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報2023年、日本、168分、G

ジャンル:「魔王」と呼ばれた織田信長と政略結婚の相手である濃姫との関係を描いた歴史ロマン映画

 

監督大友啓史

脚本:古沢良太

 

キャスト:

木村拓哉織田信長:魔王と呼ばれるようになる天下統一を目指す武将)

綾瀬はるか濃姫:国の命運をかけて織田信長と政略結婚をする女)

 

伊藤英明福富平太郎貞家濃姫の侍従)

中谷美紀(各務野:濃姫の筆頭侍女)

北大路欣也斎藤道三:濃姫の父、美濃の戦国大名)

 

宮沢氷魚明智光秀:本能寺で謀反を起こす織田五大将の一人)

市川染五郎森蘭丸:信長の側近)

 

音尾琢真(木下藤吉郎/豊臣秀吉:織田五大将の一人)

斉藤工徳川家康:信長を飲み込もうとする戦国三英傑の一人)

 

増田修一朗滝川一益:織田五大将の一人)

池内万作柴田勝家:織田五大将の一人)

橋本じゅん丹羽長秀:織田五大将の一人)

小久保丈二太田牛一:丹羽長秀の与力)

 

本田大輔林秀貞:信長幼少期の筆頭家老)

浜田学佐久間信盛/退き佐久間:織田家の部将)

武田幸三森可成:織田家の部将、槍の名手)

 

和田正人前田犬千代/前田利家:信長に「犬」と呼ばれている小姓)

髙橋努池田勝三郎池田恒興幼少期から信長に仕える小姓)

レイニ長谷川橋介:気性が荒い小姓)

野中隆光蜂屋頼隆:馬廻。信長の親衛隊・黒母衣衆の一人)

池田純矢堀久太郎:信長の小姓)

 

森田想(すみ:濃姫の侍女)

 

本田博太郎織田信秀:信長の父)

見上愛生駒吉乃:信長の側室)

尾身としのり平手政秀:信長の教育係)

 


■映画の舞台

 

1500年代

尾張国愛知郡那古野(現在の愛知県名古屋市)

那古野城

 

尾張国春日井郡清洲(現在の愛知県清洲市)

清洲城

 

美濃国井之口(現在の岐阜県岐阜市)

岐阜城

 

近江国蒲生郡安土山(現在の滋賀県近江八幡市)

安土城

 

京の都

本能寺、延暦寺ほか

 

ロケ地:

兵庫県:明石市

明石城跡(安土城登城)

https://maps.app.goo.gl/K2VW32LKquh7VQT28?g_st=ic

 

兵庫県:丹波篠山市

篠山城跡(桶狭間からの帰還)

https://maps.app.goo.gl/NiPK7G5EVsXsQuYUA?g_st=ic

 

兵庫県:加東市

朝光寺(比叡山延暦寺焼き討ち)

https://maps.app.goo.gl/2WSZZ42BCRshKpT69?g_st=ic

 

滋賀県:甲賀市

岩尾池(信長の悪夢)

https://maps.app.goo.gl/arQ4d22UW7gtXAn97?g_st=ic

 

滋賀県:彦根市

彦根城(金ケ崎戦からの帰還)

https://maps.app.goo.gl/HwqeNvtZWvf2aA8E8?g_st=ic

 

京都府:京都市

隨心院(本能寺、信長急襲)

https://maps.app.goo.gl/JnuD1q2WfkaHAAS96?g_st=ic

 

泉涌寺(濃姫の公家化粧)

https://maps.app.goo.gl/GShpg2hXQa15c5vS7?g_st=ic

 

仁和寺(薬草&スリを追うシーン)

https://maps.app.goo.gl/MzdkLCQyVHKXTKbG9?g_st=ic

 

妙光寺(本能寺から逃げるシーン)

https://maps.app.goo.gl/rHepteRV7fwY3LW16?g_st=ic

 

妙心寺(岐阜城の広間、軍議)

https://maps.app.goo.gl/ibDECBmjd3saf9DJ6?g_st=ic

 

妙顕寺(信秀の葬儀)

https://maps.app.goo.gl/hzUDQLb9htvvXtY28?g_st=ic

 

霊鑑寺(二条城の一室)

https://maps.app.goo.gl/Hr7GtELHEQFPU96p6?g_st=ic

 

宮城県:石巻市

宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)

https://maps.app.goo.gl/CkgLXUFdAxYPnJY46?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

1549年、那古野城にて、尾張国の武将・織田信長は美濃国の濃姫と結婚の儀を執り行うことになった

二人の結婚は政略結婚で、尾張が美濃の姫を人質に取るという形になっている

だが、濃姫はいつでも信長の首を取る覚悟を持っていて、二人の仲は夫婦と呼べるものではなかった

 

その後、美濃は兄弟で割れ、濃姫の父・斎藤道三は討死してしまう

今川義元が尾張を目指して攻め込む中、

濃姫は戦略が練れずに途方に暮れる信長を鼓舞し、桶狭間にて本陣を強襲する案を打ち出す

 

結果として、今川を打ち破った信長は、天下統一への道を歩み始め、それは濃姫が父と辿ろうとしていた道だったことがわかる

だが、信長がその道を行けば行くほどに人としての心を失い、濃姫や家臣との距離ができてしまう

それでも、魔王と呼ばれる信長を慕う明智光秀たちに支えられ、信長は己の道を邁進するのであった

 

テーマ:天命に捧げる愛

裏テーマ:愛ゆえに遠ざかる

 


■ひとこと感想

 

織田信長に個人的な感情はありませんが、木村拓哉さんが演じるということで、どんなふうになるのか興味を持って参戦

濃姫の存在は名前ぐらいしか知らないにわかではありますが、これ史実なの?と思うくらいに信長の偉業に寄り添っていましたね

 

物語は天下統一を目指す信長の影に濃姫ありという感じですが、後半はガッツリと恋愛映画みたいになっていましたね

京の街で襲われた後に燃え上がるところなど、お互いがひた隠しにしていたものがぶつかる凄いシーンになっていました

 

色んなところでロケが行われていますが、城に関してはガッツリと再現CGみたいになっていましたね

室内が本物を使いまくっているだけにかなり浮いているなあと思いました

 

映画としては、可もなく不可もなくと言ったところですが、感覚的にはフィクション感が強めに思えましたね

木村拓哉さんが誰を演じても木村拓哉さんというのは仕方のないところでしょうが、これまでの織田信長とは違ったイメージになっていたのは良かったように思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

史実ベースなのでネタバレも何もなく、予告編で大体のシーンが登場していましたね

個人的な感覚だと、やはり169分は長すぎる感じに思えて、濃姫との出会いと別れまでを描いたら、そりゃこうなりますよねという感じには思えます

むしろ、思いっきりすっ飛ばしまくって、なんとか形になっている、という印象を持ちました

 

あまり日本史には興味がなくて、登場人物は名前ぐらいしか知らないのですが、戦国の世にここまで女性がガッツリと前面に出ているというのは違和感がすごいですね

諸説ある人物ではありますが、相当な部分において史実ベースのフィクションという捉え方で良いのだと思います

 

政略結婚だったけどお互いを認め合う中で、ジェットコースター理論で燃え上がる展開には胸熱でしたね(ちょっと物足りないけど)

 


濃姫とはどんな人?

 

濃姫とは、安土桃山時代の女性で、織田信長の正室となったとされる人物のことです

斎藤道三の娘で、濃姫の他に「於濃」「帰蝶」「胡蝶」「鷺山殿」などの別名があります

映画の「BUTTERFLY」は「帰蝶」と呼ばれていたところからの抜粋になりますが、映画では「姫」以外に呼ばれていなかったように思います

 

『信長公記(しんちょうこうき)』によると、平手政秀(映画には登場しません)の働きかけによって政略結婚が成立したとされていて、信長のもとに斎藤道三の娘が嫁いだという記述があるだけで、「濃姫」という言葉は登場しません

「濃姫」の名前が浸透したのは『絵本太閤記』『武将感状記』などの「濃姫=のひめと読む」として登場しているからですね

美濃から来た高貴で美しい姫という意味で、「濃姫」と呼ばれたとのことで本名ではないとされています

 

名前に関しての記述は『美濃国諸旧記』という書物にて、「帰蝶」であったと書かれていて、「帰蝶」は「胡蝶」の誤読であるという説があります

また、同書物には斎藤道三の出家に絡んで「鷺山殿」と書かれていたともされていますね

 

天文4年(1535年)の生まれで、和睦のために信秀(信長の父)の嫡男・吉法師丸(信長のこと)と結婚させられています

二人の間には子どもがいなかったというのが通説ですが、信長には生母不明な子どもが多く、本当にいなかったのかはわかっていません

死んだことに関しても諸説あって、病気で亡くなった説、戦死したというものなど色々ありますね

戦死に関しては、本能寺の変の際に「薙刀を持って共に戦っている場面」が描かれているからですが、創作物としての描写と考えられていますね

色々とわからないことが多いゆえに、色んな解釈を以って、本作のような人物像が出来上がったのでしょう

濃姫が好戦的で、腕が立ち、ツンデレというのもそこまで違和感はなく仕上がっていたと思います

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作はどう見ても濃姫が主人公なのですが、大人のパワーバランスの結果、ダブル主演となっています

ダブル主演でも良いのですが、信長の「LEGEND」はそこそこ意味が通っても、「BUTTERFLY」を濃姫だとするのは、ある程度歴史の知識がないと意味がわかりません

予告編で「蝶のように舞い」と表現されても、本編では「雪解けに蝶がいた」ぐらいの描写しかなく、そもそも「胡蝶」とも「濃姫」とも呼ばれないキャラクターでした

個人的な感覚だと、実は「LEGEND OF BUTTERFLY(胡蝶伝説)」としてシナリオを書いたけど、「ちょっと待って」と言われて色々あったのかなあとか余計なことを考えてしまいました

 

本作はいわゆるバディものと恋愛映画をミックスしたような感じになっていて、「軍師と将軍」「ツンデレ同士の恋」みたいなエッセンスがあると思います

いわゆる「最悪の出会い」スタートで、相手のイメージが少しずつ変わっていって、いつの間にか好きになっていたパターンの恋愛なのですが、信長の方は最初からゾッコンのような感じになっていましたね

意地の張り合いになっていて本当のことを言えず、そして洛外での危険な出来事を凌いだ二人が「くんずほぐれつ」になっていきました

この流れ自体は悪くないのですが、恋愛を全面に出すと「歴史映画っぽくない」感じになってしまうのだなあと思ってしまいました

また、相手が織田信長で、エピソードが鎧を着ているようなキャラクターなので、歴史の事実を要所で描かないと、時間の流れというものがわからなくなってしまいます

 

この映画は「戦国もの」で行くか、「ラブロマンス」で行くかを迷った挙句、どっちも取りに行って失敗している典型のように思えます

恋愛譚としては、濃姫が信長に心を許していく過程が雑ですし、信長のデレ感が足りません

戦国ものとしては、桶狭間が秒で終わるなど、時間経過のアイテムにすらなっておらず、信長が誰かと戦うというシーンもほとんどありません

戦争シーンのほとんどない戦国映画で盛り上がるはずもなく、信長が先陣切って戦うという脚色は避けていたように思いました

木村拓哉さんを目立たせながら、これまでにない一面を創作するというのが本作品の求められているものであると考えられますが、それをうまくまとめられたとは言えなのではないでしょうか

 

というわけで言いっぱなしもアレなので、少しばかり余興を考えてみました

ここからはいつもの「素人のさいつよ」なので、興味のない方はスルーしてくださってOKです

 

【オープニングイメージ】狂気

桶狭間の合戦、血まみれの信長が息を切らせて目を輝かせている

瞳の中に映る影(実は濃姫)

 

【起】平穏の中にある狂気

濃姫の青春期、父・道山との日々、野山を駆け回り活発な姿を描く

信長の下積み時代、周囲との関わり方などを描き、片鱗としての狂気を描く

成人し、いくつかの戦いを経て、美濃戦を描き、そこで濃姫との邂逅を描く(印象は最悪)

 

【承】政略結婚を装った「信長の指名」

信長、美濃との戦いを終えて、濃姫のことを側近に調べさせる

そこで、両国の思惑を踏まえた上での政略結婚を考える

方々に手を尽くして、濃姫を迎え入れることに成功する

だが、濃姫は父の仇であると敵意をむき出しにして、信長の思惑は脆くも崩れ去る

桶狭間の助言を受け、軍師としての才能を彼女の中に見て惚れ直す

依然として濃姫は敵意を剥き出しで、夫婦としての営みもままならない

桶狭間の奇襲、その全容を描き、信長の進路「天下統一」への道のりが見えてくる

信長が「濃姫のことを女として見なくなり」濃姫側に変化が生まれてくる(女としてのプライドに火がついてしまう的な)

 

【転】魔王への道、なのに惹かれる濃姫の苦悩

比叡山の焼き討ちで魔王覚醒、明智光秀の登場

濃姫、暴走する信長が怖くなって距離を置きはじめる

だが、信長のトリガーは外れ、焼き討ちの際に濃姫を暴力的に支配しようとする

気後れする濃姫は体を許すことになるが、同時に歪んだ愛情を持って、信長に入れ込んでしまう

信長は夢にまっしぐらで、濃姫の愛情を受け止められず突き放すが、実は濃姫には伝えていない思惑(夢)を抱えていた

 

【結】濃姫との別れ、暴走の果てに迎える終焉

濃姫の病が発覚するも、彼女はそのことを信長には伝えない

悪化を隠し、信長と会えない日々が募る

家臣に「素直になられたらどうか」と言われるものの、濃姫の心は揺るがない

濃姫にその時が迫り、信長はその知らせを聞いて駆けつけてくる

「お前が死んだら、戦う理由がなくなる」的な甘い掛け合いで盛り上げる

「私が愛したのは、魔王と呼ばれたあなた」的な返しでラブロマンス的に盛り上げる

濃姫の死によって、心を失った信長は暴走を繰り返す

その様子を見ていた明智光秀は、獣では国を収めされないと家康と密通し、本能寺の焼き討ちに向かう

 

【エンディングイメージ】伝説として炎になる信長

濃姫の形見を手にした信長、炎に包まれる

エンドロールで怒号と寺が焼ける音が延々と流れる

劇伴はなく、ただ業火で焼かれる信長を印象付ける

 

こんな感じでしょうか

基本的には「結婚しているけど気持ちがすれ違う」というところと、伝説の中でも「狂気」を主体にして変貌していく信長を描くことを考えました

でも、その狂気の奥底には「濃姫と過ごしたい未来があった」という感じに持っていって、それが叶わぬ「悲恋」というものにした方がインパクトがあるのかなと思いました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

戦国武将とラブコメというのは、家父長制真っ只中なのであまり親和性はありません

でも、家父長制を良しとしない武将もいるし、自由恋愛に憧れる人もいるでしょう

そんな中で、政略結婚させられた伝説と訳あり女というのが本作の構図になっていて、正室とは言ってもポジショントークみたいなところがありました

また、歴史に詳しい人のツッコミは細部へのこだわりがメインで、ここまで大嘘っぽい創作だと意外と寛容になってしまうという不思議な側面があります

 

本作が成功するかどうかは現時点ではわかりませんが、歴史に名を残すかと言われれば微妙じゃないかなあと思います

というのも、本作を振り返った時に、この映画を端的に表す名シーンというものが思い当たらないのですね(あえてならメルヘン妄想シーンでしょうか)

二人の出会いから別れまでの十数年間を描いていて、桶狭間、比叡山焼き討ち、本能寺の変など多くの歴史の瞬間が描かれています

そんな中で「桶狭間は戦ってもいない」し、「焼き討ちは表現が緩い」し、「本能寺は途中からメルヘン妄想が入る」ので、戦国映画としての名シーンはありません

 

また、恋愛映画としても微妙で、敢えてなら洛外セクロスシーンになりますが、口吸いでストップ&どっちが上になっているか分かりにく構図でショボーンとなっています

あのシーンは、これまでマウントを取ってきた濃姫がマウントを取られる場面なので、ガッツリと濃姫を押さえ込んでいる構図で描くべきなんですね

そこがかなり緩くて、情事のシーンとしても中途半端だったりします

 

恋愛を捨てたはずの二人が絡み合うシーンにおいて、それぞれが抱えていたものが噴出し、ただ愛欲のままお互いの体を貪り合う

ここまで徹底したシーンにならないと存在理由すらなくなってしまいます

木村拓哉さんと綾瀬はるかさんを配した時点で、そこまでキツい映画にはならないことはわかっていましたが、その低い期待値を覆してこそ、伝説になると言えるのではないでしょうか

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/383628/review/49f1aa49-ef94-4d22-9358-5ad523e5d8a8/

 

公式HP:

https://legend-butterfly.com/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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