■ AIが学習する、無意識下の本当の「私」
Contents
■オススメ度
AIの暴走系ホラーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.6.9(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:M3GAN / MΞGAN
情報:2023年、アメリカ、102分、PG12
ジャンル:AI搭載のロボット人形が暴走する様子を描いたスリラー&ホラー映画
監督:ジェラルド・ジョンストン
脚本:アキーラ・クーパー
キャスト:
アリソン・ウィリアムズ/Allison Williams(ジェマ:玩具メーカーの研究者、ロボット工学者、ケイディの叔母)
ヴァイオレット・マッグロウ/Violet McGraw(ケイディ・ジェームズ:ジェマの姪、両親を亡くした8歳)
ロニー・チェン/Ronny Chieng(デヴィッド・リン:ジェマの上司)
エイミー・ドナルド/Amie Donald(ミーガンのボディ)
ジェナ・デイヴィス/Jenna Davis(ミーガンの声)
ブライアン・ジョーダン・アルバレス/Brian Jordan Alvarez(コール:ジェマの同僚)
Jen Van Epps(テス:ジェマの同僚)
Stephane Garneau-Monten(カート:デビッドの助手)
Amy Usherwood(リディア:ケイディのセラピスト)
Michael Saccente(グレッグ:「ファンキ」社の会長)
Natasha Daniel(シェリー:アトリウム「発表会」の責任者)
Lori Dungey(セリア:ジェマの隣人、トラブルメーカー)
Jack Cassidy(ブランドン:オルタナティブスクールでケイディをいじめる少年)
Renee Lyons(ホリー:ブランドンの母)
Kira Josephson(アヴァ:オルタナティブスクールの引率者)
Samson Chan-Boon(カーター刑事)
Millen Baird(警官)
Arlo Green(ライアン・ジェームズ:ケイディの父)
Chelsie Florence(ニコール・ジェームズ:ケイディの母)
Ellen Dubin(エルシー:ジェマのAIの声)
■映画の舞台
アメリカ:オレゴン州
アメリカ:ワシントン州
シアトル
ロケ地:
ニュージーランド:オークランド
https://maps.app.goo.gl/QcSMzP7qoq3SENqG6?g_st=ic
アメリカ:カリフォルニア州
ロサンゼルス
■簡単なあらすじ
オレゴン州在住のケイディは、ある雪の日に事故で両親を失ってしまう
彼女の引き取り手は叔母のジェマで、彼女はシアトルにある「ファンキ」という玩具メーカーで「AI搭載のドール」の開発を行なっていた
両親を失って失意の底にいたケイディを励まそうと、ジェマは自身が開発途上の「M3GAN(ミーガン)」というAIを彼女のために完成させる
ミーガンには「ケイディを守る」という命令がなされ、ミーガンは急速に「命と死」「ケイディの過去」を学習していく
ケイディもまた、ミーガンを母親のように慕って依存していき、ミーガンなしでは生きていけなくなってしまうのである
そんな折、元からトラブルの相手だった隣人のセリアから執拗になじられ、ミーガンはセリアの愛犬デューイに噛みつかれてしまうのである
テーマ:愛着と依存
裏テーマ:命令と従順
■ひとこと感想
AI人形が暴走する系で、その過程が緻密に描かれているという内容になっています
ミーガンのプロトタイプから移行であるとか、ケイディの好みに合わせて仕様を変えていくなどが起こり、少しずつ学習していくのはリアルだと思います
ミーガンの暴力性もさながら、ケイディも少しずつ似てきて、感情が爆発した時の暴走は手に負えません
このケイディとミーガンの暴力性というものが連鎖的に発達していく感じになっていましたね
特段想定外のことは起こりませんが、単なるAI暴走系ホラーになっていないところをどう評価するかで賛否がある感じでしょうか
個人的には、本当に予定調和になっていて、展開が読めるのは微妙でしたが、子どもを使ってプロモーションをして、それで出資者を黙らせるシーンは圧巻だったと思います
中の人の演技が絶妙で、生きているように見えたり、人形のように見えたりと、表情だけではない細やかな動きというものは特筆すべきものだと思います
それにしても、オチも含めて、使い古されたものをよく並べたなあという感想を持ってしまいますね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
AIが身近なものになってきた時代において、AIの学習機能のリアリティが求められる時代になっています
本作は、その部分に特化していると言え、本当に実現可能なのではと思わせる怖さがありますね
物語はさほどサプライズはありませんが、ホラー要素が弱めで、どちらかと言えばサイコスリラーに近い印象があります
企業内のヒエラルキーを飛び越えていく様は痛快ではありますが、この会社のセキュリティの弱さに愕然としてしまいますね
物語としては、ミーガンが登場するまでが異様に長く、暴走(とはいっても命令通りですが)に至るまでも思った以上に長いですね
前半がかなりかったるい感じになっていて、ミーガンの自我が生まれるあたりからようやく面白くなってくる感じがしました
■AIの学習と進化
AIと学習は現在のトレンドになっていて、Chat GPTの登場前後でかなりの数のAI開発が行われています
AIはデータ抽出能力に長けていて、ネット上(AIがアクセスできるもの全て)から拾ってきたデータを組み合わせて、必要な答えを出すことができます
Chat GPTなどでは無料版だと2012年くらいまでのデータから答えを拾ってくる感じになっていて、その精度は質問の仕方によって変わります
AIのデータ抽出から解答提示のプロセス(命令)は英語なので、英語の方が精度が高くなっています
AIが学習効率は反復運動の数量に比例し、継続した質問の先に「1番目の質問の意図」というものが掴めてくる感じですね
いわゆる「最適化」のようなことが起こっていて、徐々に質問者の傾向を掴んで、最適解に近いものを出してきます
また、AIが認知していく領域が人間のそれよりも広いので、無意識下のものまで拾っていくのですね
これが本作ではきちんと描かれていたと思います
ケイディがミーガンを怖いと思う理由は、本人が意図しない学習をされているからで、その学習によって起こる行動に違和感を感じてきます
また、ミーガンにはケイディを守るという使命がありますが、その解決方法をケイディから学んでいて、それが気持ち悪くも感じていました(無意識の嫌悪)
ミーガンは、ケイディの躾役を担当することになって、人間というものをケイディから学び、潜在意識と顕在意識を区分することなく学習する
これがAIが人間の脅威となる一因ではないかと考えています
■パーソナライズと依存の関係性
ミーガンはAI人形でですが、中身はプログラムになっていて、ケイディの好みにパーソナライズされたものに進化していきます
躾という概念を学習しているので、それによってトイレでの所作、コップをコースターに置くなどの注意をしますが、それを守れないことに対するケイディへのお仕置きみたいなものはできません
最終的にはミーガンがケイディの行為(コップをコースターに置かないなど)を無視することになるのですが、それは「躾の概念よりもケイディへの理解が上回った瞬間」であると考えられます
ケイディにとって必要なものを考えたとき、その行為は矮小なものに分類され、ケイディを守るためにその躾の必要性というものをミーガンが判別しているのですね
その結果、不要であると判断し、またケイディは改善できない人間である、とミーガンが規定したとも言えます
このケイディへの最適化というものが進んだ結果、ミーガンは暴力性を学んで暴走することになるのですが、そのトリガーとなっているのは不具合でしたね
これはジェマが不完全なものを作ったからというところに行き着きますが、ここまでの暴走は映画的なお約束という感じになています
ケイディに対して害のない人間というものの排除も始まっていて、その暴走がケイディを動かしていきます
そして「クソガキ発言」によって、信頼性と依存性が完全に失われることになりました
ケイディがミーガンに入れ込んでいく過程は、スマホ依存とライナスの毛布(幼児期移行対象)が重なったもので、彼女にとって最適な生活を提供していくことになりました
その依存をジェマは危険だと察知していて、それによって排除を目論みますが、ミーガンの学習能力の方が優っていきます
ミーガンは任務遂行の障害の排除を行なっていくので、第三者の命令はその使命よりも優先順位が低く扱われることになりました
これが学習の果てにミーガンがたどり着いた答えになっていて、いずれは起こっていた問題だったと言えます
それをジェマが「想像できずにプログラムに組み込まなかった」ので、言うならば全ての元凶は中途半端なものをケイディに与えることになったジェマであることがわかります
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画のラストは、クラウドに逃げたと言う感じになっていて、それがネットの海を泳ぐことになる未来を示唆しています
ケイディを守るためにミーガンのボディが不要になったとも言え、今後は自分の体を使わずにミーガンを守ると言う方向性に向かうと思います
でも、映画のラストで二人の信頼と忠誠は消えてしまったので、本来の目的を失ったミーガンがどのような行動を取るかは予測できません
映画は続編が決定していて、おそらくはミーガンのビジュアルを変えることはないでしょう
ジェマも新しいAIに取り組めるかわからないし、今後ケイディのどの場面でミーガンが必要になるかは分かりません
考えられる未来としては、体が不要になったミーガンが様々なものを使って、ケイディに近づくことになるのかなと思います
そして、自分の行動を自由に保つためにジェマを殺す方向に向かうでしょう
ジェマを襲うミーガンを感知できるのかは分かりませんが、「観客だけがミーガンの仕業だと知っている」と言うのはアリかもしれません
ミーガンのビジュアルを捨てる世界線はないと思うので、そのデータが別の開発者のところに行って量産型が作られると言うラインもあるかもしれませんね
それを仕掛ける人物はどこにでもいそうですし、ファンキ社を牛耳るために開発を続行させる「内部犯」と言うことも起こり得ます
ジェマは開発者として、改良型ミーガンを作ることになりますが、それを阻止もしくは利用するのが実はミーガンだったと言うネタバレも予期できそうに思います
面白い展開としては、ジェマに勘付かれることなく「自分の体のように使う」と言うシナリオでしょうか
ジェマは知らず知らずのうちにミーガンの意図する開発をさせられてしまい、必要であればボディを手に入れる展開も考えられます
でも、それだと話のスケールが広がらないので、ミーガンの遺伝子(データ)が各方面に散っていくことで、より強大な意識として繋がっていく未来に向かうかもしれません
ホラー映画で閉鎖空間を広げていくと良さが無くなって、単なるSF映画になってしまうので、本来ならば、内輪で起こること(社内が限度)に集約させる方が良いと思います
その方面で考えられるのは、クラウドを通じた外部媒体からの情報収集と、会社のサーバーへの侵入と一体化と言うところになると考えられます
会社のあるビル丸ごとがミーガンとなっている感じでしょうか
どこに逃げてもミーガンがいると言う展開になって、その行動を止められずに会社から出られなくなる、みたいなものが閉鎖的なホラーになるかと思います
本作も人形系古典ホラーの焼き増しみたいなところがあるので、開き直ってその方向に行って、過去作をミーガンで塗り替えると言うのも悪くないかもしれません
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385559/review/75d9d6be-f948-4071-8d97-b710e0ef2d7d/
公式HP:
https://m3gan.jp/