■なんとなく、1からやり直すヴィジョンが見えてしまいましたねえ
Contents
■オススメ度
演者のファンの人(★★★)
マーベルファンの人(★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.2.23(イオンシネマ久御山)
■映画情報
原題:Madame Web
情報:2024年、アメリカ、116分、G
ジャンル:謎の予知夢とリンクする男に狙われる三人の娘を助ける救命士を描いたアクション映画
監督:S・J・クラークソン
脚本:クレア・パーカー&S・J・クラークソン
原案:ケレム・サンガ
キャスト:
ダコタ・ジョンソン/Dakota Johnson(カサンドラ/キャシー・ウェブ/マダム・ウェブ:事故後に未来予知の能力を手に入れる救命士)
シドニー・スウィーニー/Sydney Sweeney(ジュリア・コーンウェル/スパイダーウーマン:エゼキエルに追われるメガネ少女)
イザベラ・メルセド/Isabela Merced(アーニャ・コラソン/アラナ:エゼキエルに追われる家賃未払い少女)
セレステ・オコナー/Celeste O’Connor(マティ・フランクリン/スパイダーウーマン:エゼキエルに追われるスケボー少女)
タハール・ラヒム/Tahar Rahim(エゼキエル・シムズ:キャシーたちを追う謎の男)
Zosia Mamet(アマリア:エゼキエルの部下)
Kerry Bishé(コンスタンス・ウェブ:キャシーの母、科学者)
José María Yazpik(サンティアゴ:コンスタンスを助ける現地民)
マイク・エップス/Mike Epps(オニール:キャシーの上司)
Kathy-Ann Hart(スーザン:オニールの妻)
アダム・スコット/Adam Scott(ベン/ベンジャミン・パーカー:キャシーの同僚)
エマ・ロバーツ/Emma Roberts(メアリー・パーカー:ベンの義理の妹、妊婦)
Jennifer Ellis(クロエ:メアリーの友人)
Kris Sidberry(アン:メアリーの友人)
Erica Souza(ロマ:メアリーの友人)
Josh Drennen(ジュリアの父、キャシーとベンが助けた女性の夫)
Yuma Feldman(絵をくれるジュリアの異母弟)
Miranda Adekoje(眼科医)
Deirdre McCourt(新人看護師)
Naheem Garcia(キャシーのアパートの家主)
Jill Hennessy(エゼキエルがナンパするNSA職員)
Rosemary Crimp(オペラ歌手)
Brian Faherty(オニールと一緒に倉庫に向かう消防士)
Shaun Bedgood(地下鉄のスマホ男)
Mike Bash(北向き列車を探すビジネスマン)
Cilda Shaur(キャシーを気遣う地下鉄の老女)
Rena Maliszewski(産婦人科医)
Michael Malvesti(事故を起こすトラック運転手)
Gopal Lalwani(タクシーを奪われる運転手)
Shawnna Thibodeau(キャシーを逮捕しようとするMTAの警官)
Dominique Washington(キャシーの担当看護師)
■映画の舞台
1973年、
ペルー:
2003年、
アメリカ:ニューヨーク州クイーンズ
ロケ地:
メキシコ:チアパス
パレンケ国立公園/Palenque National Park
https://maps.app.goo.gl/kqhjsJXgeFwB856v5?g_st=ic
アメリカ:マサチューセッツ州
ボストン
サウス・ショア/South Shore
https://maps.app.goo.gl/CaNGnUwsE63W1mDk8?g_st=ic
アメリカ:ニューヨーク州
ニューヨーク
■簡単なあらすじ
1973年、蜘蛛の研究者コンスタンスは身重の体にも関わらず、研究者のシムズと共に、南米ペルーのジャングルの奥地を探検していた
コンスタンスはこの地に生息する蜘蛛には特別な力が宿っていて、人類に貢献できると考えていた
だが、その蜘蛛を見つけたものの、シムズに裏切られて奪われ、自身はそこで命を落とすことになった
それから30年後、ニューヨークでは救命士キャシーが同僚ベンと共に橋梁で起きた事故の救助を訪れていた
何とか運転手を引きずり出すものの、キャシーはその車ごと川に転落してしまう
ベンの蘇生処置にて息を吹き返したキャシーだったが、臨死体験中に意味のわからない映像を見てしまう
さらに、その後も意味不明のビジョンは続き、地下鉄に乗車した際には、乗客の3人の少女が全身黒ずくめのスーツ男に殺される映像を見てしまう
度重なる映像が予知夢であると確信したキャシーは、3人の少女を連れて電車から降りる
だが、それに気づいたスーツ男は、天井を這うなどの謎の能力を見せつけながら、キャシーたちを追い詰めていくのである
テーマ:覚醒
裏テーマ:母の愛
■ひとこと感想
予告編の予備知識しかなく、スパイダーマンの女性版かなあと思って鑑賞
いわゆるキャシーがマダム・ウェブになるまで前日譚のようでしたが、シナリオが酷すぎて困惑してしまいました
退屈というほどではありませんが、シーンの繋ぎも無茶苦茶で、いつまで盗難者に乗り続けているんだろう、とか余計なことを考えてしまいました
同僚の苗字がパーカーなので、これはピーターが生まれる前の世界線なんだということはわかりますが、そのあたりの情報はなくても問題ない感じになっていましたね
繋がっていくのだと思いますが、大きな流れで考えると、スパイダーマンの源泉を辿るということになるのかな、と思います
女性が女の子3人を変態野郎から助けるという話ですが、それと並行して自分のルーツを探るという無茶なシナリオが展開していきます
追われてヤバいのにベンに3人を預けてペルー旅行するのはびっくりしてしまいましたね
そこはせめて3人で行ったら良いのにと思ってしまいました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
冒頭でコンスタンスがエゼキエルに殺されて、子どもだけ助かるというパターンだったのですが、その子どもが成長したら実は能力を有していた、というものになっていました
生まれる前に蜘蛛に噛まれたことで、同じような臨死体験がトリガーになっているのですが、どうやって育ったとか、なぜ救命士をしているのかなど、背景を端折りまくっていてびっくりしてしまいます
謎の男のネタバレも早々に判明(てか冒頭で犯人わかっているパターン)しているのですが、彼の背景もほとんど謎で、てっきり調べ物しているのがナンパ女だと思ったら違っていたりと、よくわからない流れになっていましたねえ
お金払って雇っているハッカーのような感じですが、そのお金をどうやって捻出しているのかすらもわからないし、あのスーツを着ている経緯も不明だったりします
予告編は本格的なミステリーというふれ込みですが、ミステリー要素ゼロのシナリオなので、何を観て「ミステリー」だと感じたのか、小一時間問い詰めたい印象がありますね
アクションシーンもほとんどなく、敵の能力がどんなものかわからないので、脅威なのかそうでないのかがわかりません
単に自分を殺しに来る3人がいるので探しているという設定ですが、あれで死んだのだとしたら予知夢は間違っていたことになると思うのですね
無理やり「あなたが観ていたのは私」と強引に締めていましたが、「いや、あんたには男の予知夢が見えたんかい!」と突っ込まざるを得ない感じに仕上がっていたように思えました
■そもそも「マダム・ウェブ」とは何か
主人公の「マダム・ウェブ」とは、1980年11月に発行された『アメイジング・スパイダーマン』の第210号に登場したキャラクターでした
彼女は「蜘蛛の巣に似た生命維持装置に繋がれた重症筋無力症の高齢女性」として登場します
映画では、マダム・ウェブの誕生譚ということで、彼女自身は「自分をマダム・ウェブとは呼ばない」のですね
マダムという年齢でもないので、この名前は何歳頃につけられたのかな、と勘繰ってしまいます
彼女は、透視能力、予知能力を持つミュータントなのですが、そう言われても「X-MAX」などに登場するミュータントとは違う印象を持ちます
今後、映画が向かう設定としては、「テレパシー、千里眼、予知能力」を得ていく流れになっていて、プロの霊媒師という肩書を持つことになります
また、ジョナサン・ウェブという男性と結婚しているのですが、本作にはその片鱗すら登場していません
なので、あの状態になったキャシーと結婚した強者がいる、ということになります
彼女自身は、4代目スパイダーウーマンことシャーロット・ウィッターの祖母になりますが、こちらはまだ映像化には至っていないようですね
ちなみに、本作で登場したメアリー・パーカーが出産したのがピーター・パーカーで、のちにスパイダーマンとなる人物になります
夫はリチャード・パーカーですが、本作には登場していません
また、リチャードとメアリーは飛行機事故で亡くなったという設定があるので、本作の今後をどこまで寄せていくのかはわからない部分が多いですね
マダム・ウェブを中心とした新しいスパイダーバースの登場ということになりますが、バースの話を始めるとややこしいので、このあたりはマニアのブログなどを読み進めていただいた方が良いかもしれません
■勝手にスクリプトドクター
本作は、そこまで悪くない内容なのですが、色々と脚本が無茶苦茶なところがありました
改稿に次ぐ改稿を行なった結果、何を描こうとしているのかわからないという内容になっています
本作の骨子は「キャシーのルーツ探し」になっていますが、その前に「現在にキャシー像に至ったもの」というものがざっくりと抜け落ちているように思います
キャシーは自分がペルーの生まれで、母親が亡くなっていることは知っています
でも、父親に関しては映画内では言及されず、もしかしたらエゼキエル?という路線も完全に封印する流れになっていました
身重の状態でペルーの奥地に来ることを許す夫というのは意味不明に近いので、おそらくはすでに死んでいる路線なのかなと思いますが、それにしては切り替えの早い母親だなあと思ってしまいます
ウィキをサラッと読んでも、キャシーの母コンスタンス・ウェブに関しては何も記載がないのですが、母親と同じウェブという名字であることを考えると、妊娠後に離婚もしくは死別というのは既定路線なのかもしれません
あるいは、結婚をせずに出産をして、パートナーはどこかにいるという設定なのかもしれませんが、最初はてっきりエゼキエルが夫なんだと思っていました
この辺りの設定に関しては今後示されると思うのですが、本作の一番のヘタレな部分は、敵が弱すぎるというところでしょう
エゼキエルの毒を受けて死にかけるということもなく、犠牲になる人もいないので、単にあちこち飛びまくっていたけど、いつの間にか倒されていた、みたいなざっくりとした印象になってしまいます
彼がコンスタンスを殺してまで蜘蛛を手に入れたとしても、彼があの能力(というかスーツ?)を手に入れた経緯なども放置したままで、彼に従っていたハッカーのような女性の説明は一切ありません
この女性も、セックスして毒を撒いたNSA職員を操っているのかと思ったら別人でしたね
本当に何のキャラだったのかわからないまま急に消えてしまいました
敵は単独犯で、しかも「自分が殺される夢を見たから」という訳のわからない理由になっていて、しかもあの方法で見つかることの方が奇跡だったりします
夢で見た少女三人の似顔絵を作り出して、しかも歳を若返らせて「これだ!」みたいな流れになったときは、本当に何も考えていないんだなあと呆れてしまいました
その後も、自分が殺される夢を見てきたはずなのにマダム・ウェブは一切登場しないポンコツな夢で、それなのにキャシーが「あなたが見たのは私」みたいなセリフで締めるところも何も考えていないんだろうなあと思ってしまいました
このシナリオを直すにはかなりの力技が必要で、まずはキャシーの過去を出産から繋ぐ必要があります
彼女が救命士をしているところもおかしな話で、自分のルーツを探すためにペルーに一度くらいは行っていないとおかしい感じになっています
出産後はおそらく現地民に育てられたと思うのですが、彼女がペルーからニューヨークに来た理由や経緯なども必要だと思うのですね
なので、幼少期のパートを描きつつ、ペルーで過ごす中で母親の遺品からニューヨークに憧れを抱くという流れになります
そこから、母親が住んでいた場所にたどり着くでしょうし、父親の存在に関しても疑問を持つことになります
それらの通過儀礼を終えてから、母親とは違う道を歩むための明確な転換期が必要になります
彼女のルーツを考えると、能力があるかどうかは置いておいて、蜘蛛に関して何らかの感情を有していないと不思議な感じになっています
唯一の自分探しのヒントを放置しているのには相当な理由が必要になっていて、それを提示してからようやく物語が始められるという感じに思えます
このあたりの流れは「設定をどう組んでいるか」がわからないので書きようがないのですが、いきなり予知夢を見出して、将来の仲間(手下?)と遭遇して、いつの間にか能力が開花するというのは強引なように思います
そして、圧巻のラストは「プロフェッサー?」と思えてしまうような「原作のビジュアルに無理やり寄せる」というものになっていて、このシーンは笑うところなのかな、と思わざるを得ない感じになっていました
ぶっちゃけると、「作り直す」というのが最適解なのかな、と言えるのかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、ソニーが作っているスパイダーマンシリーズの一環で、「女性軍団が悪い男をやっつける」という感じの映画になっています
この構図になる作品は数多くありますが、ヴィランとなるキャラの強大さ、傲慢さなどが強調されることが最低条件のように思えます
その点に関しても、コンスタンスを殺したという過去があるものの、その行為の起点となる彼の欲求とか本性というものがザックリし過ぎているので、キャシーが恨みを抱くという過程にあまり火がついているとは思えないところもありました
エゼキエルが蜘蛛を奪った後に何をして、何を得たのかは描かれず、それで多少の金持ちにはなったようですが、その影響は描かれていません
なので、彼自身が人間社会にとって何の脅威があるのかがわからず、結果として「自分が殺されるのが嫌だから」殺人を犯していない段階で芽を潰すという構図になっています
ヴィラン側の動機も思い込みでしかなく、キャシー他3人はその妄言から逃げているだけになっていました
この流れでエゼキエルを倒しても、当面の恐怖は去ったように見えているだけで、4人の友情が固くなったという意味合いしかありません
映画は、長期的なスパンで作られていると思いますが、本来なら「マダム・ウェブ誕生譚」というものは、その活躍が先に描かれた後の前日譚のような意味合いがあります
ラストで彼女が「マダム・ウェブ」っぽい感じになっていますが、本来の「マダム・ウェブ」が高齢女性というイメージがあるので、前日譚どころの騒ぎではないのですね
なので、シリーズ連作を考えるならば、力を得た瞬間から描くのではなく、「マダム・ウェブ」本来の活躍などを描いたのちに、そのシリーズが成功した暁にスピンオフで作るような映画だったと思います
この映画を皮切りに本来の「マダム・ウェブ」へと向かっていくのですが、その道は途方もなく長いと思われます
完成までにファンが離れないかは分かりませんが、それよりも計画通りに作れるかどうかの方が懸念材料なので、頓挫した段階で「別のマダム・ウェブが作られる」のではないでしょうか
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100723/review/03519298/
公式HP:
https://www.madame-web.jp/