■結局のところ、巻き込まれ女子は可哀想で終わってしまっている気がしますね
Contents
■オススメ度
土屋太鳳を眺めていたい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.2.23(イオンシネマ久御山)
■映画情報
情報:2024年、日本、110分、G
ジャンル:マッチングアプリで出会った男がヤバかった系のスリラー風イヤミス映画
監督&脚本:内田英治
原作:内田英治
Amazon Link(小説版)→ https://amzn.to/3uLl6L0
キャスト:
土屋太鳳(唯島輪花:「ナガタウェディング」のウェディングプランナー)
(幼少期:川口玲那)
佐久間大介(永山吐夢:輪花がマッチングアプリで出会う相手、特殊清掃員)
金子ノブアキ(影山剛:マッチングアプリ運営会社「ウィルウィル」のチーフエンジニア)
(幼少期:山口太幹)
真飛聖(西山茜:捜査一課の刑事)
後藤剛範(堀井健太:茜の後輩、巡査部長)
片山萌美(伊藤尚美:マッチングアプリを薦める輪花の同僚)
片岡礼子(美知子:輪花の過去を知る車椅子の女)
(若年期:大村彩子)
斉藤由貴(節子:美知子に寄り添う世話係)
(若年期:寉岡瑞希)
杉本哲太(唯島芳樹:輪花の父)
(若年期:藤本タケ)
永瀬莉子(工藤未菜:輪花の後輩)
酒巻誉洋(輪花の上司)
石田佳央(輪花の上司)
三島ゆたか(輪花の上司)
中澤功(料理長)
前原滉(和田拓馬:「ウィルウィル」社の総合イマジネーション部長)
円井わん(椎名楓:「ウィルウィル」社の企画担当者)
瀧川鯉斗(片岡隼人:輪花が担当する結婚式の新郎、輪花の憧れの高校時代の先生)
畦田ひとみ(莉愛:隼人の婚約者)
演者不明(久保黎人:アプリの被害者)
八鍬有紗(喜田真由:黎人の妻、ギャル嫁)
名越志保(真由の母)
木村知貴(香川耕平:アプリ利用の被害者)
坂本ちえ(香川由紀奈:耕平の妻、被害者)
安藤彰則(警官)
■映画の舞台
都内某所
ロケ地:
茨城県:守谷市
ウエディングヒルズ アジュール
https://maps.app.goo.gl/uMfXfeuuARzEAMZEA?g_st=ic
神奈川県:横浜市
平成はら幼稚園
https://maps.app.goo.gl/3urBZE1AxuMMVnrf6?g_st=ic
喫茶あらき
https://maps.app.goo.gl/8NuQafpWNjJEmjnx6?g_st=ic
東京都:新宿区
ハンドレットステイ東京新宿
https://maps.app.goo.gl/2qQ1nLYiGxZowMX18?g_st=ic
東京都:世田谷区
ディスクユニオン下北沢店
https://maps.app.goo.gl/gcbN12d4kUqVNYB97?g_st=ic
東京都:品川区
目黒シネマ
https://maps.app.goo.gl/ajxQTdJS1KWQetg9A?g_st=ic
■簡単なあらすじ
都内でウェディングプランナーとして働いている輪花は、父・芳樹と二人暮らしだったが、多忙のため、恋愛をしている暇などなかった
父は婚期遅れを心配しつつも、輪花にはその気がまるでなかった
親友で同僚の尚美は世間で流行っているマッチングアプリを彼女に薦めるものの、一向に動く気配はなかった
だが、尚美は半ば強引にアプリ登録をさせて、マッチング率の高そうな相手を選ぶ
輪花は仕方なくマッチングをさせるものの、相手とのコミュニケーションはなかなかうまくはいかなかった
街では、そのアプリの利用者が被害者になっているという連続猟奇殺人事件が勃発していて、その開発元は利用者減少に戸惑いを見せていた
ある日、輪花の会社とアプリ会社が合同で企画を行うことになり、輪花はそこでアプリ開発者の影山と会うことになった
尚美の計らいでマッチング相手の相談をすることになった
プライベートでも親しくなってくる二人だったが、街では次々とアプリ婚の被害者が出て、自分が担当したカップルだけでなく、高校時代の恩師夫婦まで被害に遭ってしまうのである
テーマ:相性の裏側
裏テーマ:怨念が引き摺り出す関係
■ひとこと感想
マッチングアプリを使ったカップルが怪死を続けるというふれ込みでしたが、蓋を開けると「実はそうではない系」になっていましたね
ネタバレになるといけないので伏せますが、主人公を追い詰めるための道具の一つがマッチングアプリということになっていると言えます
映画は、一応ホラー映画なのですが、ビジュアルの怖さはそこまでではなく、心理的な怖さは女性限定のような印象を受けます
アイドル起用の映画ですが、そこまで悪くなかったし、むしろうまい配役のように思えましたね
でも、やはり作り込みが激しすぎて、キャラの造形も含めて、シナリオマニュアルに沿って作ったような感じになっていました
なので、犯人が一瞬でわかり、最後以外は想像の範囲になるのだと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
マッチングアプリ自体を利用したことがないのですが、その対極に時代性を感じさせるプライベートチャットが出てきたことに驚いてしまいました
いわゆる輪花以外にも「通信による交際」というものの恐怖に囚われている人物がいる、ということで、映画としての本懐は「通信でつながる怖さ」みたいなものがテーマになっているように思えます
とは言え、それ以前に人としてどうなの?という行動を起こしているので、その余波を主人公は被っていることになります
いわゆる巻き込まれ系で、不本意なアプリ活動を示した友人は報いを受けるし、過去の関係を払拭できない父親もあんなことになるし、という感じで、スリリングな展開というものは面白かったと思います
とは言え、異母兄妹弟関係の闇が濃すぎて、この人たちがつながる可能性の方が低すぎて、シナリオが結論ありきで枝葉を作っている感じが否めませんでした
過去編が結構重要で、現在パートと役者が違うところを上手く活用していましたね
この辺りの配役はパンフレットで確認できるので、わからなかった人は購入してみても良いかもしれません
■マッチングアプリの歴史
マッチングアプリは、モバイルアプリケーションを介して提供されるオンライン恋愛サービスのひとつで、スマートフォンの登場によって利便性が上がり、シェアが拡大しているものです
2012年に「Tinder」というアプリが登場し、あっという間に世間に浸透していきます
2014年の段階で1日あたり10億回操作、1200万件ほどのマッチングを成立させていました
このTinderは他のアプリとの連動性もあって、Facebookのプロフィールと紐づけられて、本人確認がなされているとされています
このTinderが日本に入ってきたのは2015年頃からで、日本人女性が外国人男性と交際を求めるために利用していました
でも、2018年に大阪市内の民泊にて、このアプリを利用した女性がアメリカ人男性に殺されるという事件が発生し、Tinder社は日本独自のセキュリティ機能を追加するという発表がなされています
ちなみに、日本で利用が多いのは「Pairs」「Tinder」「タップル」「Omiai」「with」「恋庭」「Tantan」「ゼクシィ縁結び」などだそうです
アプリケーションは「マッチングのための性格検査」を行なって、独自のアルゴリズムを用いてユーザーをマッチングさせていきます
この機能が優れていれば優れているほどマッチング率が上がり、利用者の増加につながっていきます
また、「興味のない候補」を排除したり、「興味がある人とのチャットを介したコミュニケーション」というものが安易に行うことができます
それでも、「完璧な相手」を求めることに労力を費やすことになり、アルゴリズムは完璧ではないので、イタチごっこが繰り返されることもあります
また、テキストメッセージだけで相手を判断することは難しく、オンライン恋愛は実に表面的な交流となっています
また、「ゴースティング(Ghosting)」という問題が起きるのですが、これは「突然、コミュニケーションを絶つ」というもので、これがマッチング相手のストレスにつながっていきます
これまでに良好な関係を築いていたと思えば、突然音信不通になり、アプリサービス自体を退会していたりするのですが、その真意がわからないまま放置状態になっているのですね
相手が複数のアプリで同じようなことをして、それで特定を見つけたらシャットダウン状態にすることが可能で、いわゆるアプリで二股かけているみたいな状況になっていても利用者が気づかない、ということも挙げられます
同じアプリ内だと「他の利用者にマッチング中などを知らせることができる」のですが、複数のアプリを同時に使用していた場合、それを特定することは非常に困難でしょう
テキスト上のやり取りなので、相手の挙動や感情を読み解くことができないので、この構造を利用する人もいると推測されています
あとは、個人情報の流出と悪用という観点が取り沙汰されますが、これはマッチングアプリだけに限らないものなので、いかに企業側がセキュリティを強化できるかにかかっています
これらの悪用などを踏まえて利用するユーザーもいるし、リスクを考えずに利用するユーザーもいるので、そこで語られる物語というものは、想像以上に表面的かつ深層的だったりするのかもしれません
■作り込みすぎると嘘っぽくなる
映画は、サスペンス的に次々と事件が起こり、主人公・輪花は「巻き込まれるキャラ」として、右往左往することになります
自分の周りで関係者が怪死し、自分が関係した夫婦も次々と殺されていきます
あまりにも自分に関係することが多すぎるのですが、自分自身には実害というものがほとんどなく、マッチングした相手が不気味という流れになっていました
それらは犯人側の仕掛けであり、信頼できる自分を演出する一環として利用されていましたが、輪花を取り巻く関係は「並行して二つの意思が存在していた」という流れになっていました
ひとつは「輪花の父に恨みを持つ影山の意思」で、もうひとつは「輪花に純粋に好意を持つ吐夢の意思」となっています
この二人が実は異父兄弟という設定になっていて、父親が違うために、それぞれの輪花への想いというものが180度違うことになっていました
でも、事件は「影山が同僚・尚美と片岡夫妻を殺害」「吐夢はその他の夫婦を殺害」というふうに分けられていて、輪花の父は二人の母親である愛人との再会によって引き起こされた副産物のようになっていました
見かけ上は自殺ですが、真相はわからない感じになっていて、このキャラクターの突発的な行動は、輪花を怯えさせるための舞台装置のように思えます
これらの行動や人間関係は非常に作り込まれているのですが、それゆえに「かなり狭い人間関係のお話」へと収束していったように思えます
事件の大きさ(広域性)と人間関係の狭さ(局地性)のバランスによって物語の奥行きが変わってくるのですが、本作の場合は「だんだんと小さな話にスケールダウンしていく」という感じになっていたのが惜しかったかなとともいます
広げた風呂敷を畳めない問題もありますが、ここまで「一家族の物語でした」となってしまうと、設定の精密さが却って嘘っぽくなってしまうのだなあ、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、今社会で話題沸騰中の問題を引用していますが、マッチング・アプリ自体の怖さというものはそこまで描かれていませんでした
マッチングした相手が猟奇殺人鬼だったというネタでも、それに遭遇するケースは非常に稀なので、リアリティを感じない人の方が多いと思います
予告編で登場するようなストーカー気質の利用者もいますが、その粘着の怖さは、背景で動いている猟奇殺人がかき消してしまっていました
猟奇殺人とマッチングアプリ自体の関連はそこまで感じられないのですが、それは吐夢がマッチングアプリのカップルを狙った理由が映画内では示されないからなのですね
影山の方は明確に「輪花への嫌がらせ」という一貫性があったのですが、吐夢の方にはそれはなく、色んなアプリでトラブルを起こしているユーザーである理由もわかりません
過去に別のマッチングアプリなどで酷いことがあったなどがあれば理解はできますが、そう言ったものがない単なる快楽殺人になっていて、その果てに輪花が関わった夫婦がいた、というだけになっています
マッチングアプリは「擬似空間上の出会い」の中で、その無機質なやり取りに怖さを感じたりするのですが、問題になっているゴースティングというものを取り入れた方が良かったように思えます
これまでにアプリを利用してきた吐夢が度重なるゴースティングに心を痛めてしまう
そして、今回は輪花がそれを行なってしまい、それによって執着を生んだという過程の方がわかりやすいでしょう
映画では、影山が輪花を知ったのも偶然で、吐夢が現れたのも偶然になっていて、しかもアプリを利用するのは尚美の強引な行動によって引き起こされています
尚美がいなければ彼らが会うこともなかった可能性が高いのですが、犯人のその後の計画性を考えると、尚美が主導したという構図になっているのが嘘くさくなってしまいます
しかも、他人のスマホを勝手に使用して、勝手にメッセージを送ったりしているので、その辺りも全て「受動的」で一貫するのならば、アプリは使用していなかったけど、影山たちとの仕事を円滑に進めるために始めると言った方がスムーズだと言えます
吐夢との出会いは偶然なのですが、この男の危険性を知っている(トラブルメーカーであること)影山がアプリに細工をして吐夢とのマッチングをさせるという方が説得力が増したでしょうね
意図的な操作によって、輪花はトラブルメーカーとマッチングしてしまうので、その相談に乗るなどして、自分を白馬の騎士状態に仕向けることで計画の遂行がしやすくなるように思えます
また、どうしても尚美を巻き込みたいのであれば、尚美と影山が接近することで輪花の感情を揺さぶることもできるし、アプリ以外の情報を引き出すこともできます
このあたりの出会いから接近までの流れが強引すぎるのが難点で、のちに計画的であることがわかるとおかしく感じるのですね
なので、計画的という骨子があるのなら、偶然性を完全に排除できる仕掛けを施し、それをネタバレにした方が良かったように思います
映画は、最終的には父の愛人の恨み巻き込まれている娘なのですが、輪花に対する敵が多すぎて、さらに共闘していないというのも場面転換が多すぎる原因になっているように思えます
愛人の恨みが起点になっていて、愛人の息子が不倫相手に怒りを覚えるのは理解できますが、無関係の愛人の娘に対して報復をするというのは無茶苦茶な逆恨みのように思えます
さらに、輪花を苦しめるために友人や親しい人を殺していくという行動になっている方が猟奇的で、背景で行われていた快楽殺人の方の色合いも薄まってしまっていたりします
個人的には、影山か吐夢のどちらかがすべて行なっていたという方が良かったように思えます
影山は「不倫の影響を受けずに育った輪花憎し」なので、それ以外の殺人をする動機は弱めになっていて、その影山の思惑を利用する形で吐夢が介入して「影山がやりそうなこと」として快楽性を継続させる方がスッキリします
それを考えると、すべてが影山のせいに見えるのだけど、実際にはすべての罪を押し付けることに成功した吐夢の一人勝ちになる方が自然なのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/98254/review/03519301/
公式HP:
https://movies.kadokawa.co.jp/matching/