■人生に大切なものは、野心とそれを理解できる愛なのかもしれません
Contents
■オススメ度
レナード・バーンスタインに興味のある人(★★★)
クラシック音楽が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.12.11(アップリンク京都)
■映画情報
原題:Maestro(指揮者)
情報:2023年、アメリカ、129分、PG12
ジャンル:レナード・バーンスタインと妻フェリシアを描いた伝記映画
監督:ブラッドリー・クーパー
脚本:ブラッドリー・クーパー&ジョシュ・シンガー
キャスト:(判明分のみ)
キャリー・マリガン/Carey Mulligan(フェリシア・モンテアレグレ/Felicia Montealegre:レナードの妻、コスタリカ系チリ人の女優)
ブラッドリー・クーパー/Bradley Cooper(レナード・バーンスタイン/Leonard Bernstein:アメリカ人指揮者、作曲家)
マット・ボマー/Matt Bomer(デヴィッド・オッペンハイム/David Oppenheim:クラリネット奏者、レナードの恋人)
Kate Eastman(エレン・アドラー/Ellen Adler:オッペンハイムの妻)
Vincenzo Amato(ブルーノ・ジラート/Bruno Zirato:ニューヨーク・フィルハーモニーの常任理事)
Greg Hildreth(アイザック:レナードを呼びに来るマネージャー)
Michael Urie(ジェリー・ロビンス/Jerry Robbins:作曲をせがむ劇場の舞台監督、振付師)
Brian Klugman(アーロン・コープランド/Aaron Copeland:ピアノを一緒に弾く作曲家、レナードの親友)
Julia Aku(オルガ:アーロンの友人?)
Nick Blaemire(アドルフ・グリーン/Adolph Green:ミュージカル映画の作詞家、脚本家、パーティーで歌う)
Mallory Portnoy(ベティ・コムデン/Betty Comden:作詞家&脚本家、、パーティーで歌う)
Tim Rogan(ディック・ハート/Dick Hart:シャーリーの友人、俳優)
Sara Sanderson(リル・ハート/Lil Hart:シャーリーの友人、女優)
Yasen Peyankov(セルゲイ・クーセヴィッキー/Serge Koussevitsky:ユダヤ系ロシア人の指揮者)
Josh Hamilton(ジョン・グルエン/John Gruen:レナードを尊敬する若い作曲家)
【レナードの家族】
マヤ・ホーク/Maya Hawke(ジェイミー・バーンスタイン/Jamie Bernstein:レナードとフェリシアの娘、長女)
(幼少期:Lea Cooper)
Sam Nivola(アレクサンダー・バーンスタイン/Alexander Bernstein:レナードの息子)
Alexa Swinton(ニーナ・バーンスタイン/Nina Bernstein:レナードの娘、次女)
Sarah Silverman(シャーリー・バーンスタイン/Shirley Bernstein:レナードの妹、フェリシアの友人)
【ミュージカル関連】
Benjamin Freemantle(船員のダンサー)
Harrison Coll(船員のダンサー)
Sebastian Villarini-Velez(船員のダンサー)
Dario Natarelli(船員のダンサー)
Ryan Steele(船員のダンサー)
Ricky Ubeda(船員のダンサー)
Carlos Sanchez Falu(バーテンダー)
Jeanette Delgado(自由に歩く女性)
Sara Esty(自由に歩く女性)
Ahmad Simmons(NYの歩行者のダンサー)
Kyle Coffman(NYの歩行者のダンサー)
Byron Tittle(NYの歩行者のダンサー)
Yesenia Ayala(NYの歩行者のダンサー)
Skye Mattox(NYの歩行者のダンサー)
Halli Toland(NYの歩行者のダンサー)
Leigh-Ann Esty(NYの歩行者のダンサー)
Gaby Diaz(NYの歩行者のダンサー)
Tanairi Sade Vazquez(NYの歩行者のダンサー)
【フェリシアの仕事関係】
William Hill(ジョセフ:フェリシアの舞台の管理人)
Valéry Lessard(フェリシアと共演する若い舞台女優)
Renée Stork(フェリシアと共演するベテランの舞台女優)
Soledad Campos(ジュリア・ヴェガ/Julia Vega:TVの子役、フェリシアの共演者)
Zachary Booth(メンディ・ウェイジャー/Mendy Wager:テレビ俳優、フェリシアの共演者)
Miriam Shor(シンシア・オニール/Cynthia O’Neal:女優、フェリシアの共演者)
Scott Ellis(ハリー・クラウト/Harry Kraut:TVのプロデューサー)
【パーティーの客】
James Cusati-Moyer(ジョージー:パーティーの客)
John Kroft(パーティーの若い男)
Scott Drummond(スコット:酔っ払って悪態つくパーティーの客)
Gideon Glick(トミー・コスラン/Tommy Cothran:シスコ出身のパーティーの招待客、ラジオ出演者、音楽学者)
【その他】
Alexandra Santini(「Claudio」のゲスト)
Jarrod LaBine(「Claudio」のゲスト)
June Gable(合唱を観にくる老女)
Mike Mitarotondo(ベルボーイ)
Colin Anderson(ステージマネージャー)
Kevin Thompson(ディレクター)
Rosa Feola(イーリー大聖堂で歌うソプラノ歌手)
Isabel Leonard(イーリー大聖堂で歌うソプラノ歌手)
Miller Bugliari(ミラー:医師)
Atika Greene(看護師)
Gabe Fazio(ウィラード音楽院のアシスタント)
Jordan Dobson(ウィリアム:教え子の指揮者)
■映画の舞台
1943年〜
アメリカ:ニューヨーク
カーネギーホール
https://maps.app.goo.gl/N4bLVwcssvkMpcEz7?g_st=ic
イギリス:ケンブリッジシャー
イーリー大聖堂/Ely Cathedral
アメリカ:コネチカット州
フェアフィールド
ロケ地:
イギリス:ケンブリッジシャー
イーリー大聖堂/Ely Cathedral https://maps.app.goo.gl/fjH7QEaRw7bSQeii7?g_st=ic
アメリカ:マサチューセッツ州
タングルウッド/Tanglewood
https://maps.app.goo.gl/hRHuJuuWf2XeWJJz5?g_st=ic
アメリカ:コネチカット州
フェアフィールド/Fairfield
https://maps.app.goo.gl/Zzch4a48Ecq567c78?g_st=ic
■簡単なあらすじ
1943年、ニューヨークフィルハーモニーの副指揮者のレナード・バーンスタインは、病欠のブルーノ・ワルターの代役として急遽指揮を執り、コンサートを成功させた
一躍時の人となったレナードは、作曲家としてのオファーも増え、友人のアーロンや振付師のジェリーたちと多くの仕事をこなしていた
ある日、妹シャーリーに呼ばれて余興の伴奏をすることになったレナードは、そこで彼女の友人のフェリシアと出会う
2人は意気投合してパーティーを抜け出し、フェリシアの舞台小屋で稽古の真似事を始めた
それから交際することになった2人は、ともに仕事で成功を収め、子どもを三人授かっていく
だが、フェリシアはレナードの良からぬ噂を知り、秘密にしている関係を目撃することで、2人の間に亀裂が入ってしまう
激しい口論の末にお互いを宥め合うことになったが、この頃からフェリシアの体調に翳りが見え始めてくるのである
テーマ:普遍の愛
裏テーマ:音楽を愛した男の後悔
■ひとこと感想
あまりクラシックを聴かない派ではありますが、それでも名前くらい知っているのがレナード・バーンスタインという存在ですね
どんな功績を持っていたのかとかはあまり知らなかったのですが、この映画では「少しだけ」知ることができるという感じになっています
映画は、レナードが表舞台に出ることになったカーネギーホールのコンサートを皮切りに、フェリシアとの出会いと別れまでを描いていきます
そして、構成として「回想録」という形になっているのですが、はじめはモノクロで、途中からカラーに変わるという演出になっていました
レナードが同性愛者であることとか、夫婦の危機を全面に描いてはいるものの、とにかく登場人物が死ぬほど多い映画でしたね
史実系で有名人なので、交友関係も広いのですが、それを画面から追うのはほぼ不可能な感じになっていました
かなり界隈に詳しくないとキツいのではないでしょうか
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、レナードの功績よりは夫婦愛を描いていて、トップクレジットも妻のフェリシアになっていました
エンドロール直前には3人の子どもに向けた謝辞が示され、映画制作にも関わっていたのかなと思いました
物語は、夫婦の馴れ初めから軋轢、病死による別れを描いていきますが、晩年のフェリシアの演技が凄くて、それ以外が頭から飛んでしまう感じになっています
フェリシアが亡くなったのが1978年なので、映画は35年もの長い年月を描いていることになりますね
そりゃ子どもたちも立派な大人になっていくのですが、途中から誰が誰だかわからない感じになっていましたね
仕事仲間もなんとなく識別は付きますが、何をしている人かほとんどわからない感じになっていたので、ググりまくって脳内補完をするしかありませんでした
それでも、頭の中がきちんと整理された訳ではありません
■レナード・バーンスタインについて
レナード・バーンスタインは、1918年にマサチューセッツ州ローレンスにて、ユダヤ人の息子として生まれました
幼少期の頃には、家庭用ラジオとともに育ち、別荘にて近所の子どもたちと一緒にショーを行ったりしていました
妹のシャーリーと一緒にオペラをしたり、ベートベンの交響曲を演奏したりしたと言われています
ちなみに映画には登場しませんが、13歳年下のバートンと言う弟がいます
父親は音楽活動には反対でしたが、彼自身は活動的で、自分の友人たちに音楽のレッスンなどをするようになっていました
この友人の中にシド・ラミン(Sid Ramin)と言う人がいて、彼はのちにバーンスタインのオーケストレイターになっています
この活動を通じて、父は音楽教育を支援するようになりました
1932年、アーサー・フィードラー(Arthur Fiedler)が指揮するボストン・ポップス・オーケストラに参加し、彼はこの時のことを「天国そのものだった」と回想しています
同年3月、彼はニューイングランド音楽院にて、ブラームスの狂詩曲ト短調を演奏、2年後にはグリーグのピアノ協奏曲イ短調を演奏し、オーケストラとしてのデビューを果たすことになります
バーンスタインは、公立高校で勉強し、ハーバード大学へと進学します
大学卒業後はにフィラデルフィアのカーティス音楽院に入学します
彼は卒業後もずっと音楽院に顔を出し続け、そこで若い学生たちを指導したりしていました
その後、バーンスタインはニューヨークに活動拠点を移し、マンハッタンなどで暮らし始めます
彼は音楽を教えることで生計を立てていて、ジャズなどの音楽作品を書いたりしていました
その後、ニューヨーク・フィルハーモニーに入ったバーンスタインは、アルトゥール・ロジンスキー(Artur Rodziński)の副指揮者に任命されます
そして、1943年11月14日に客演指揮者のブルーノ・ワンダーがインフルエンザに罹ったために急遽指揮者デビューを果たすことになりました
この挑戦が引き金となって、多くの新聞やラジオなどによって拡散されていきます
その後の2年間で、10の異なるオーケストラで指揮を執り、ピアノで協奏曲を指揮すると言うことを行なったこともありました
1945年から1947年までニューヨーク市交響楽団の音楽監督、1946年にはNBC交響楽団にて指揮を執り、海外にいくようになります
1947年には、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団にて、イスラエル軍のための野外コンサートを指揮します
また、1950年代にはブロードウェイの舞台のために楽曲を書きました
ワンダフル・タウンのミュージカルスコアを書き、この時に映画内でデュエットで歌っていたベティ・コムデンとアドルフ・グリーンらとともにミュージカルを完成させます
また、バーンスタインは「ウエストサイドストーリー」の監督兼振付師のジェローム・ロビンスと仕事をしています
映画の前半で曲の催促をしていたのがロビンスで、コンサート成功後のシーンで友人のアーロンたちと談笑していたシーンになります
1957年には、ニューヨーク・フィルハーモニーの音楽監督に任命され、単独で指揮を執るようになります
1958年には、楽団を率いて中南米を巡るツアーに参加し、アメリカ国防省もこのツアーを後援しました
その後、1966年にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者としてデビューを果たします
その後の活躍を全部書いていくとブログが終わらないのでここまでにしますが、Wikipedia他にもたくさんの情報があるので、気になる人はググってみても良いのではないでしょうか
いくつかの基本書籍を紹介しておきます
■妻フェリシアについて
映画では、バーンスタインの功績をさらっと紹介し、メインは妻フェリシアとの関係を紡いでいきました
バーンスタインとフェリシアの出会いは、妹シャーリーを通じてのもので、二人は1951年に結婚しています
カーネギーホールから8年後のことになりますが、映画ではそのままの流れみたいな感じになっていました
妻フェリシア・モンテアレグレ・コーンは1922年生まれで、コスタリカのサンホセで生まれました
彼女はコスタリカ人の母とアメリカ人の父を持ち、父親はコスタリカに滞在していた鉱山経営者でした
フェリシアには、ナンシー・アレッサンドロとマデリン・モンテアレグレと言う二人の姉妹がいますが、映画には登場していません
チリで教育を受けたフェリシアは、カトリック教徒として育ちますが、バーンスタインとの結婚にて、ユダヤ教に改宗しています
1945年、フェリシアはフェデリコ・ガルシア・ロルカ(Federico del Sagrado Coraźon de Jesús García Lorca)監督の『When Five Years Pass』に出演し、1946年7月20日に『ベン・ヘクト』にてブロードウェイ・デビューを果たします
1946年にクラウディオ・アラウ(Claudio Arrau León)主催のパーティーにてバーンスタインと出逢い婚約しますが、一旦破棄と言う流れになっています
その後俳優のリチャード・ハート(Richard Hart)と交際していましたが、彼は1951年に亡くなってしまい、同年の9月9日にバーンスタインと結婚することになりました
フェリシアはファッションアイコンとして活躍し、クラシック音楽に興味を持ってもらうために、さまざまなきっかけ作りをしてきました
ニューヨーク・タイムズのインタビューでも、その意図を説明し、自分がきっかけでクラシックにふれる人が増えることを願っていました
二人の家の家具は、フェリシアとその友人のゲイル・ジェイコブスと言う装飾家と作り上げ、「1964年のヘアスタイルのベスト10」に選ばれていました
戦後には、ダニエル・シュワルツやジェーン・ウィルソンなどの芸術家に師事していたとされています
そして、1978年6月16日、56歳の若さで肺がんにて亡くなっています
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、バーンスタインがインタビューを受ける形で「過去を回想する」と言う物語になっていて、自身のキャリアはそこそこに「フェリシアのことを語る」と言う内容になっていました
なので、彼の中では「キャリアよりも大切なもの」を語っていると言うことになります
この演出意図は製作陣のものですが、それぐらい密接な関係にあったと思われていたのだと思います
映画では、多くの著名人が登場し、バイセクシャルの面も描かれているのですが、さらっと流している格好になっていました
この映画で何かを得るかと言われれば難しいところがあり、バーンスタインの功績がわかるわけでもなければ、彼の音楽哲学が紐解かれることもありません
ただ、世界的に著名な指揮者も同じ人と言う感じに描かれていて、活躍の場所などは派手ですが、そこで起こっていることは普遍的なものだったように思えました
バーンスタインの映画ではあるものの、映画のトップクレジットはフェリシア役のキャリー・マリガンで、エンドロールの最初には「子ども三人の名前と謝辞」が挿入されています
指揮者としての側面を知るならば自伝やドキュメンタリーがありますし、実際の音楽はデータが残っています
それゆえに、そういった媒体では描かれないことを描く意味があり、それが夫婦の物語だったのではないでしょうか
プライベートな話になると、存命の家族に配慮する必要もありますし、何よりもバイセクシャルだったと言うことは家族としては避け難い事実だったかもしれません
彼らがそれについていつ知ったのかは分かりませんが、フェリシアが気づいているシーンはガッツリと描かれていましたね
映画は、行動の原点となるエネルギーで満ちていて、その源泉が音楽の思いであったり、夫婦の愛情だったり、いろんな要因が複雑に絡み合っていたと思います
そういったものを再確認する映画ではあるものの、知識不足だと世界観に乗れない作品でもありましたね
後追いでググって補完できないこともありませんが、あまりにも多すぎて、じっくりと配信で確認しながら追いかけたい作品だと思いました
濃いエピソードが多い著名人が驚くぐらいたくさん出ているので、興味を持った人から色々と探ってみるのも良いのではないでしょうか
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP:
https://www.cinema-lineup.com/maestro