■周囲を巻き込む熱量が育ったとき、人は計り知れない愛情に包まれている
Contents
■オススメ度
婚活の実態を知りたい人(★★★)
松本若菜さんのファンの人(★★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.2.21(京都みなみ会館)
■映画情報
情報:2023年、日本、110分、G
ジャンル:婚活に向き合う人々との出会いを通じて成長するカウンセラーを描いたヒューマンドラマ
監督:前田直樹
脚本:松井香奈
キャスト:
渡辺いっけい(赤羽昭雄:大手不動産会社「鶴福エステート」の営業マン、事業拡大のために結婚相談所で研修を行う)
松本若菜(時田結衣:結婚相談所「とわえもあ」の相談員、実はバツイチ、プリマリタルカウンセラー)
宮崎美子(時田十和子:結衣の母、ベテラン相談員)
青山倫子(里中梨奈:婚活に悩むアラフォー女性)
永山たかし(坂口真治:里中に惚れ込む婚活男子)
坂口涼太郎(中山敦:4回目のデートに行けない婚活男子)
宇乃うめの(高山遥香:中山とマッチングする女性)
呉城久美(野上裕子:赤羽と揉める婚活女子、十和子マジックにかかる女性)
藤井太一(佐藤利明:十和子マジックで野上とマッチングする男性)
久田莉子(笹川藍:赤羽が大失敗をやらかす婚活女子)
大和田悠太(川原直樹:笹川の最初のマッチング相手)
円城寺あや(杉山茜:結婚相談所の協会の代表、「マリアージュ杉山」のカウンセラー)
樋渡真司(米倉泰三:赤羽がしつこく口説くカウンセラー)
寺田浩子(寺井:仲人)
田所ちさ(原:仲人)
中込佐知子(青木:仲人)
上地春奈(島田玲子:仲人)
今藤洋子(前田郁子:水回りにこだわる赤羽の不動産時代の顧客)
鈴木亮介(小野:巻き込まれる赤羽の後輩社員)
卯内里奈(川瀬朱莉:赤羽の部下、アウトドアパーティーに参加する)
三波豊和(小林紘一:赤羽の上司)
岡安泰樹(武村:赤羽の同僚)
岸田タツヤ(大谷貴洋:赤羽の同僚)
もりとも舞(下山瑞稀:赤羽の同僚)
成海花音(夏凛:クレープ店の店員さん)
細井学(高田勝:赤羽の行きつけの小料理屋の店主)
歌川椎子(高田美知子:女将さん)
大塚ヒロタ(センスアップセミナーの講師)
山下徳久(山下:アウトドアイベントの司会者)
奥村アキラ(山﨑:十和子の担当看護師)
大家由祐子(赤羽園子:ハーブ作りが趣味の赤羽の妻)
■映画の舞台
愛知県:各所
ロケ地:
愛知県:西尾市
若駒(結衣たちの行きつけの料理屋)
https://maps.app.goo.gl/vivqbGRwpga4pUJf8?g_st=ic
愛知県:蒲郡市
ラグナシア(イルミネーションデート)
https://maps.app.goo.gl/EjLMfGMuR53jfboR9?g_st=ic
西浦園地(会員のデート地)
https://maps.app.goo.gl/VeSMrkSD4U4N8B1C6?g_st=ic
愛知県:岡崎市
岡崎駅(東口側のペデストリアンデッキ)
https://maps.app.goo.gl/VEGkcpktUm92u6Ey9?g_st=ic
くらがり渓谷(アウトドアパーティー主催地)
https://maps.app.goo.gl/QrgpksaQZjt75Va28?g_st=ic
愛知県:豊田市
下山の里(五平餅の売店)
https://maps.app.goo.gl/vZ61DpUrgeitoo7YA?g_st=ic
愛知県:豊川市
三河一之宮 砥鹿神社(成功祈願の神社)
https://maps.app.goo.gl/j8b5Lr4wuT5kwuvE9?g_st=ic
千両町宝辺(「とわえもあ」のある場所)
https://maps.app.goo.gl/Dn9uF9ddgkKArhPEA?g_st=ic
■簡単なあらすじ
不動産の営業一筋35年の赤羽昭雄は、口の悪さと図々しさで生きてきたが、時代にマッチせず、なかなか成績が上がって来なかった
そんな折、会社の辞令にて結婚相談所「とわえもあ」にて研修をすることになった
物件を捌くのと同じだと軽く考える赤羽をカウンセラーの結衣は呆れ、会員へのフォローでてんやわんやになってしまう
高スペックを望む会員を断罪したり、勝手に相性が悪いと決めつけたり散々かき乱していくものの、結果が出ずに少しずつおとなしくなっていった
ある日、病気療養中の結衣の母・十和子が帰宅し、そこから3人の時間が始まっていく
結衣はバツイチだったために、カウンセラーをしていて良いか悩むものの、その経験があるからこそできることもあると思い始める
そんな中、赤羽のミスで協会からハブられることになった結衣たち
だが、赤羽はメゲることもなく、自分ができることをコツコツと積み上げていった
テーマ:縁を結ぶのは希望
裏テーマ:縁を切るのは想像力
■ひとこと感想
松本若菜さんのファンなので脳死状態で参戦
もうね、ずっと眺めてたいですわ〜
映画は結婚相談所を舞台にしたヒューマンドラマ&コメディで、昭和テイストのセクハラ親父と訳あり相談員の成長を描いております
結婚相談所を利用したことのない人が利用者にアドバイスをするという妙な構図の中、それぞれの特性で突っ走るところが魅力的でしたね
会員の皆様も個性的なキャラが多く、実際には婚活に困らないタイプに見えますが、男女の縁とはわからないものです
いろんな条件を書き出しても、魂レベルの相性なんてものは見えないのですが、十和子マジックは文脈から会員の特性を見抜いていましたね
チラッとしか条件が見えませんでしたが、おそらくは箇条書きの順序とか筆圧などから、その人が大事に思っているものが見えてくるのかもしれません
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
個人的に結婚相談所を利用してこともなく、マッチングアプリをインストールしたこともありません
かといって結婚に困ることはなく(と言っても1回しかしてないけど)、小学校時代は学年が上がるごとに好きな人が変わるというフラフラした少年時代を過ごしていました
中学は暗黒時代でしたが、高校ではうまくいきそうな恋愛がチキンすぎて丸焦げ
その反動で大学では結婚決まっている女性に突撃してフラれるという経験もありました
男女の縁はわからないものですが、一目惚れとまで行かなくても、初対面で何かしらざわつく感じがあったら関係性を進める方が良いでしょう
それが勘違いだとしても、そのざわつきの変化に敏感になることで、縁が生まれることもあると思います
■結婚相談所の今
結婚相談所(Dating Agency)とは、「結婚を希望する独身の男性・女性の会員に、結婚を前提とした出会いを提供し、出会いの際の日時の調整から、お引き合わせ、交際から結婚に至るまでのフォローなども含めてサービスを提供する結婚情報サービスの業者、または公共サービスのこと」を言います(By Wikipedia)
形態は、個人事業主から会員数数千人の会社、市役所、地方自治体などの多くの相談所があります
入会資格は「独身で結婚を前提としたお付き合いを希望する人」となっていて、今では「国際結婚希望者」「身体障害者に対するサービス」などもあります
男性の場合は「安定した収入」が求められ、年齢制限はありませんが、定職に就いているという条件が求められ、入会に際して「独身を証明するもの(戸籍抄本など)」が必要な場合もあります
結婚相談所を介した出会いでNGなのは、「婚前交渉」「宿泊」「同棲」とされていて、これは結婚相談所によって異なるとされています
結衣が経営する結婚相談所は個人事業主が行う小規模なもので、ざっと調べた相場だと入会金5万〜10万円、月会費5000円前後と推測されます
現在の婚活というのは色んな方法があって、マッチングアプリなども普及しています
職場で結婚する人にさりげなく聞いた程度のマーケティングによると、「マッチングアプリです」と言う若者もいますし、出会いの場として公言してもOKというところまで浸透しています
ちなみに過去1年間で職場で結婚した人は、私の知る限り10人はくだらないのですが、高校&大学時代の付き合いが2名、職場結婚が5名、相談所が1名、マッチングアプリが1名という構成でした
職場の環境や年齢なども影響がありますが、結婚が進む職場とそうでない職場というのは何となく感じ取れます(同じ職場でも部署によっては景色が違いますね)
私の場合はそもそも婚活に無縁の肉食系で、惚れやすい性質でもあったので、小学校の時から「クラス替えのたびに好きな子が変わる」という特殊な人でした
交際に発展するのは大学までお預けなのですが、両思いだと思われていたのに勇気が出せずに自然消滅とか、相手がいる相手に特攻して玉砕など、赤羽のマインドを地で行くような恋愛経験を持っています
その果てに職場で知り合った人と交際に発展し、そのまま同棲、結婚、死別へと至るのですが、冥土の土産は多い方が良いというのは言い得て妙だと思います
相談所のお世話になることはなかったのですが、大学に入ると「各種合コンには積極的に参加」というスタンスで、仲の良かった5人組が毎週のようにどこからの女性グループと飲み会をしていましたね
当時はカラオケブーム真っ盛りだったので、「飲み会→二次会はカラオケ」というテンプレートがあって、その5人はカラオケで良いところを見せるために「楽曲は被らない」という申し合わせのもと、毎晩のように集まってカラオケの練習をしていました
「尾崎を熱く歌う没入系」「浜田省吾を歌うイケオジ系」「こぶし回しが特徴な琉球系」「流行のスタンダードを攻めるイケメン系」の4人がいて、私のポジションは「ビーイング系を中心にした雑食系」でしたね
これだけで身バレしそうな雰囲気ですが、それらに費やす情熱というのは思った以上にすごかったと思います
■縁はどのように育つのか
縁というものは面白いもので、自分の周りに大量に張り巡らされていて、あるきっかけをもとに可視化する、という特徴を持っています
きっかけの種類は様々あって、個人的な感覚だと、大体「第一印象でその縁が可視化している」と考えています
その縁を難しく考えると大変なのですが、劇中でも笹川&川原が感じたように「一緒にいたいと思える」というのがわかりやすい例で、「手放したくない」と思える里中&坂口というものもあります
その他にも映画では多数の縁の可視化が起こっていて、第三者視点で引き起こされた野上&佐藤は「十和子マジック」と呼ばれていましたし、坂口のように「追いかけすぎて切れる」というものもありました
これらの「縁」というのは、行動によって可視化される傾向があって、相談所への相談という起点から、それぞれが行動を起こしています
十和子マジックはお互いのプロフィールを確認した上で、条件に合致しないカップルを組み合わせるもので、これは十和子と結衣の相談スタイルによって「同じものの見え方が違っている」というものでした
この辺りは「十和子目線のプロフィールの見方」と「結衣目線のプロフィールの見方」というところにヒントがあって、映画でははっきりと明言されませんが、客観視した十和子にだけ見えた「条件の優先順位と本音」というところに行き着くと思います
共感型で寄り添うスタイルの結衣は、会員と同化する傾向が強く、それによって「会員と同じ場所が見えなくなる」という弱点を持っています
女性との対話で必要なのは共感力と言われますが、そこで客観的視点が損なわれるほどに入れ込んでしまうと見えなくなるものがあります
一方の赤羽は「俯瞰的かつ自意識過剰系」で、「自分の価値観を押し付けながらも、客観的に見た会員の心情を汲み取る」という性質がありました
里中&坂口の関係性において、彼の中では「好き同士なのになぜうまくいかないのか」と憤ります
これに対して、結衣は里中の心情を最大限に汲み取って、彼女の選択を最優先させます
これが相談員の限界というところで、赤羽には相談員という枠組みを逸脱しても、この成立に命を捧げているように思えます
この違いは職業に対する心構えの相違でもありますが、自身の恋愛&結婚観が如実に現れたエピソードだったと言えるのではないでしょうか
ちなみに十和子マジックにおいて、十和子が着目したのは「結衣との会話の中で話される内容」と「野上のプロフィールに書かれた条件の順番」であると推測しています
共感同化型の結衣と本音で話している野上ですが、プロフィールには見栄のようなものが内包されているのですね
なので、例えば「条件を10個書いてください」と言われて書いた10個目と、自然と出てきた10個目の意味は違います
そういった思考の表現と実際の感覚を組み合わせることによって、対話の中では見えて来ない本音というものが見えてくるのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
現在は少子高齢化で晩婚化、独身の割合も多くなっています
その打開策の多くは、出産に対する手当金などで、結婚一時金などの助成もあります
内閣府による結婚新生活支援事業によると、「新規に婚姻した39歳以下の夫婦で、合計所得が540万未満の世帯」に対して、「新居の住居費、引越し費用」などに対して「交付上限60万円」という制度があります
条件に関しては細かいのと、各自治体によって異なるので、お住まいの地域でググった方が正確な情報が出ると思います
よく結婚に際して「お金がないからできない」と言いますが、結婚に対して必要な経費というものは実はありません
結婚式を挙げる、新居に引っ越しするなどの婚姻に付随することを行えばお金は無尽蔵に要りますが、それをどの程度必要とするかはそれぞれの夫婦の価値観によります
最近、職場で結婚した夫婦も「婚姻届は出したけど式はしていない」という夫婦もいるかと思えば、「コロナ禍が落ち着いたので、身内だけで式を挙げた」という夫婦もいます
個人的には「同棲生活10年ぐらいの事実婚状態」だったのと、夫婦どちらもが結婚にこだわりがありませんでした
その状況を両方の親族が受け入れていたので問題はなく、かたちとして「2000年のミレニアム婚」に乗っかって、婚姻届を出して、親族だけで海外で挙式を挙げました
個人的な経験を踏まえると、結婚というのは社会に対する表明みたいな側面があって、それよりもずっと前に「相手との生活に対する覚悟」みたいなものがあるのですね
この感覚が誰にでもあるのかはわかりませんが、その覚悟ができたのは「一緒に住む」という状況になってからだでした
一緒に住み始めると、これまでに隠してきたものが暴露されるのですが、その相手の嫌な部分に対して許容できるか否かというのは結構重要なところだと思います
マッチングによるデートを重ねても、そこでわかる情報量は少なくて、後半のアウトドアパーティーの方がもう一歩先の情報に踏み込めます
でも、結局は「初期衝動」というものが一番「正確」なのですね
情報がゼロの段階で膨らむ妄想は期待値を上げるのですが、そういった頭の中で考えたことよりも、最初に会った時のフィーリングというものが本当に大事なのですね
このフィーリングというのは、これまでの自分の体験が紡いできたものであり、数々の失敗と成功の中で生まれた価値観であると思います
私の場合は、「一生この人といられればいいな」という漠然な感覚があって、それが消えることなくずっと続いていました
恋愛は盲目性があっても、時間とともにそれは現実感を伴ってきます
そう言った過程において、自分の可能性という希望を持ち続けるのか、自分の可能性を否定しながら絶望を感じるのかによって結果は変わって来ます
縁は希望によって育ち、絶望によって断ち切られるのですが、希望も絶望も「想像力の使い方」だと言えます
より強い希望を感じて「自分ならできる」と思うか、より強い絶望を感じて「自分にはできない」と思うのか
日常を否定で生きている人は後者のマインドになりがちで、まさに里中がその生き方を体現して来た人物だと思います
でも、できるかできないかはやってみないとわかりません
そんな中で、赤羽が坂口に問うたのは「もう二度と会えなくなる」という初期衝動に訴えかける問いでした
これを坂口に押し付けるだけではなく、赤羽自身が「この二人をこんな形で終わらせたくない」と感じていました
相談員は他人ではあるものの、一生の決断と連れ添って来た時間は本物です
なので、そう言った熱量こそが、人と人の関わりの中でとても大事で、そう言った想いを第三者に持たせる関係性というのは、多くのハードルを超えていける絆に育つのではないかと感じました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/379484/review/34a6e1a3-bc6b-4024-a420-d093ba45fdd2/
公式HP: