■音響のプロがいるのに、アナログで逆再生は笑ってしまう


■オススメ度

 

GENERATIONS From EXLIE TRIBEのファンの方々(★★★)

都市伝説系ホラーが好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日2023.8.18(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報2023年、日本、102分、G

ジャンル:ある曰くつきのテープによって起こる異変に巻き込まれるミュージシャンを描いたホラー映画

 

監督清水崇

脚本角田ルミ&清水崇

 

キャスト:

【GENERATIONS from EXILE TRIBE】

白濱亜嵐(本人役、グループのリーダー)

片寄涼太(本人役)

小森隼(本人役、ラジオでテープに言及するパーソナリティ)

佐野玲於(本人役)

関口メンディー(本人役)

中務裕太(本人役、霊感のあるメンバー)

数原龍友(本人役)

 

早見あかり(角田凛:「GENERATIONS from EXILE TRIBE」のマネージャー)

 

マキタスポーツ(権田継俊:私立探偵)

内田奈那(権田ゆづき:権田の反抗的な娘)

黒沢あすか?(権田マナミ:権田の妻の声)

山田竜弘(権田の助手)

 

穂紫朋子(高谷さな:自分の歌を人に聞かせて、自分の世界に引き摺り込みたい女子中学生)

山川真里果(高谷詩織:さなの母)

松木大輔(さなの父)

白鳥廉(高谷俊雄:さなの弟)

 

天野はな(柳明日香:テープを見つけるラジオ局のAD)

加治将樹(ラジオ局のディレクター)

空雅(ラジオ局のプロデューサー)

西山真来(ラジオ局のAD)

花岡芽佳(ラジオ局のAD?)

 

今井あずさ(川松良江:さなの通う中学の先生→現校長)

堀桃子(学校の先生?)

南山莉來(さなのクラスメイト)

田口音羽(さなのクラスメイト)

シダヒナノ(さなのクラスメイト)

 


■映画の舞台

 

日本のある都市(ロケ地は千葉県銚子市)

 

ロケ地:

千葉県:銚子市

旧銚子市立第六中学校

https://maps.app.goo.gl/RbZithapvVqyX3J69?g_st=ic

 

東京都:港区

シュラトン都ホテル東京

https://maps.app.goo.gl/HkTJqtZnDQG2nGNM8?g_st=ic

 

埼玉県:川口市

モンパルテ川口

https://maps.app.goo.gl/PpJG3iVYJmHSroxj9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

人気グループ「GENERATIONS From EXILE TRIBE」のメンバである小森隼は、自身のラジオ番組にて、ある投稿を読み上げることになった

それは「私のテープは届きましたか?」という不可解なもので、誰もその存在を知らなかった

 

放送後、ADの明日香が物置の整理をしているところに遭遇した小森は、そこで30年前に局に送られてきていたカセットテープを見つけてしまう

 

翌日、小森は音信不通となり、3日後にライブを控えていたグループと、そのマネージャー角田凛は慌てふためいてしまう

凛は事件解決に名を馳せるとされる私立探偵・権田に依頼をかけ、3日間で小森を探してほしいと依頼をかける

 

そこで権田はメンバーから小森の様子を聞き出し、彼が番組で「テープ」について言及していたこと、その日の行動から用具庫に立ち寄ったことを突き止める

そして、同じ頃に音信不通になったADの明日香のデスクから、例のテープが発見されるのであった

 

テーマ:魂の声

裏テーマ:テープに刻まれた慟哭

 


■ひとこと感想

 

GENERATIONSのファンムービーで、公開初週はエラいことになるだろうと感覚を開けてあえて翌週に鑑賞

さすがにまばらになっていましたが、それなりにお客さんが多い鑑賞回になっていました

 

都市伝説シリーズでの評価にて終わった感のあるJホラーですが、本作は意外なほどの良質なホラーになっていて驚きました

キャストのファンの年齢層を考えると、あまりガチホラーになると無理じゃね、と思っていましたが、映倫区分Gの割には攻め込んでいたように思います

 

物語もそこまで破綻しておらず、少女さなの背景などもうまく機能していましたね

久しぶりにとあるパワーワードを聞きましたが、このネタがわかるのは40歳以上のように思えますね

ファン層の若者が理解できたかはわかりませんが、最低限の説明はなされていたように思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

テープを逆再生したら、という懐かしいネタで、カセットテープ世代ならやったことがある「再生と巻き戻しを同時に押す」という小ネタに郷愁を覚えてしまいます

最近ではミセスの楽曲『ケセラセラ』のイントロが逆再生というので話題になりましたが、テープサンプリングの時代だと普通に行われていたことを思い出します

 

映画では、テープに録音されていた「逆再生音が断末魔の叫びだった」というホラーになっていて、このシーンを映画館の音響で聴くと怖さが倍増してしまいますね

後半にはファン向けのライブ映像があったり、それぞれのプライベートなども登場していて、ファンムービーとしてもうまい構成になっていました

 

これでホラーが陳腐だとJホラーは終わったと言われてしまうと思いますが、これまでの足跡を消してしまうような「まともな出来」に驚いてしまいましたね

おそらくは、都市伝説系でもリアル・アクロッシングになっているために、訳わからんオカルトに走れなかったから、いうことだと思います

このあたりは巧妙なブレーキングになっていたのかな、と思ってしまいました

 


逆再生について

 

逆再生、いわゆるバックマスキング(Backmasking)とは、順方向に再生されるトラックにメッセージなどを逆再生で録音する録音手法のことを言います

逆再生することによって、録音されたメッセージがわかるというもので、意図されたものと意図されていないものがあります

その歴史はビートルズに遡り、『Revolution 9』に裏メッセージがあるという噂が広まった都市伝説がありました

1980年台のアメリカでは、バックマスキングをロックミュージシャンが悪魔的な目的で使っているという批判が教会を中心に起こっていました

これによって、反バックマスキング運動というものが起こったりもしています

でも、実際には意図的である場合が少なく、パレイドリアPareidolia)という「漠然としたものに対して意味を与える知覚傾向である」という見方が一般的になっています

丸が三つ逆三角形のように並んでいると「顔に見える」といったものがパレイドリアで、この他にも偶然起こった音声反転などによって偶然起こっている場合もあります

 

本作の場合は、おそらくは意図的に行われたメッセージになっていて、順録音で鼻歌、逆録音で断末魔という構成になっていました

これに気づいたのが探偵の権田で、彼の世代に存在したカセットテープを見て思いつくことになります

この時はカセットデッキの再生ボタンと巻き戻しボタンを同時に押すという手法で行っていますが、全てのラジカセでできるものではありません

昔持っていたカセットでできた記憶がありますが、再生ボタンと巻き戻しボタンを押している間だけ変な音が鳴ったというものなので、あれが逆再生だったのかはわからないのですね

当時持っていた機種は「再生と録音ボタンを一緒に押すと録音できる」という仕様だったので、間違えて再生と巻き戻しを押しただけのような感覚でした

 

現在で同じことをしようとしたら、カセットテープの音源をMP3に変換して、音楽ソフトで逆再生をするということになります

映画の場合は「A面に入っていた鼻歌」と「B面に入っていた断末魔」を同時に聴くことになっているのですが、ぶっちゃけ「B面だけ流したら断末魔聞けたんじゃね?」というツッコミをしてしまいます

おそらく、A面にもB面にも断末魔は入っていて、それを重ねて再生することで「鼻歌よりも強調されてエコー効果がある」というものではないでしょうか

音楽のプロがそこにいるのに「MP3変換しない」というのもアレですが、そこら辺は演出ということで割り切るしかないのかなと思いました

 


魂の声とは何か

 

映画の中でテープに刻まれたのは「断末魔の叫び」で、その完結はさなの自殺の時の呻き声ということになっています

さなは死の間際に発せられる声こそが本物の声であると考えていて、それを録音するという趣味がありました

それを聞いた人がおかしくなる理由はオカルトですが、その音が殺される時の叫びであると認識すると、頭から離れなくなるというのはあながち無茶でもないでしょう

実際には「鼻歌の背景で鳴っていた断末魔の叫びというサブリミナル効果」というもので、それによって無意識に声を聞いていたことで不調を来していると考えるのが自然だと思います

 

魂に声があるのかは分かりませんが、感情の発露の場所であるとも考えられるので、言語を通さない音というのはあるように思えます

感情は身体的に様々な反応を見せていくので、その中で声帯を通した呼吸が音になっていると考えられます

映画における断末魔は「首を絞められている」状態なので、気道が閉塞し、声帯が圧迫されたところを僅かな空気が通っているという状況なのですね

それを魂の声と呼ぶかは何とも言えないのですが、生命の根源欲求に付随する音なので、純粋な魂による「生きたい」という感情が音になっているとも言えるのではないでしょうか

 

映画は、それを収集するのが趣味というサイコパスが登場し、あらゆる音を重ねていきました

それによって、叫びが共鳴現象を起こしていて、それはそこに刻まれていた人たちの「助けて」であり、「こっちにおいで」であると考えられます

歌(=音)を聞いた人が神隠しに遭うのは、その世界に引きずられているからとも言えるので、その解放を行うことで元通りになるという展開を迎えました

さなの本心に気づいた凛が「あちらの世界に行って彼女を助けた」ことで終わりを告げるのですが、それは「彼女を理解したから」なのだと考えられます

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、アーティストが主役になっていますが、実質的には権田と凛の探偵バディものになっていて、解決すべき案件の対象者がアーティストだったという構図になっています

これによって、「誰も死なないんだろうなあ」ということは想像できるのですが、せめてADとかプロデューサーあたりは死んでしまうのかなと思っていました

でも、死者ゼロというホラー映画になっていて、予想通りではあるものの、ホラー映画としては物足りない感じになっていました

 

勝手にスクリプトドクター案件ではあるものの、アーティストのファンムービーに血みどろのホラー映画を期待する方が間違っているし、演技に不慣れなメンバーが事件を解決する方向に向かうのも無理があると思います

実際に演技NGのメンバーが歌唱シーンのみ登場ということになっていて、演技になっているのも数人だけという感じになっていました

本作がホラー映画として成り立っているのは「さなと母の存在」で、この二人が怖いからなのですが、ガチでファンが震え上がる展開になった方が伝説になったように思いました

 

実在のアーティストが実名で登場し、そこでメンバーが複数人死んだらどうなるか、というのは炎上にもなり得るし、バズる要素にもなります

基本的に炎上確率98%ぐらいのリスキーなものになりますが、アーティストの限界突破を考えるなら、いっそのこと振り切ってもよかったように思いました

意味不明なシャワーシーンやライブシーンで尺を取るぐらいなら、何人か犠牲になって、ファンが実際に葬式をしてしまうみたいな社会現象を含めても良かったのかなと感じます

でも、実際にそれを行うと監督への誹謗中傷メールなどが起こると思うので、やりたくてもやれないでしょう

本作では、ホラー映画の怖さというものが担保されていないので、別の方法でホラー要素を取り込むというチャレンジが必要だったかもしれません

 

映画のラストはコンサートで拡散されたというものになると思いますが、被害者=アーティストという図式を守るのなら、観客全員があの鼻歌を合唱し、アーティストたちが顔面蒼白になるというオチがよかったように思います

そして、周りを見渡せば、ファンはさなの顔をしていて、数万人のさながアーティストを取り囲むというホラー演出に繋がります

鼻歌が会場に響き渡り、その意味を知る人たちが困惑する

そして、歌が終わったと同時に観客全員がその場で倒れるのですね

このシーンを実際のライブ会場で行えば、ファンも映画を作ったことに参加することになると思うので、そこまで展開させてもよかったかもしれません

 

最後まで会場で立っているのがステージにいるアーティストだけで、傍にいるスタッフたちも同じ光景を見ている

彼らにさなのトラウマが想起され、そして、倒れた群衆の中から一人だけ立ち上がって、ステージに向かってくる

そのあとは想像にお任せしますという感じになると思いますが、最後に「歌ってくれてありがとう」というセリフで暗転すれば、「イヤミス感」もあってよかったのかなと思います

色々と展開できたと思いますが、ファンムービーとしてはイマイチな部分も多く、ホラー映画としてもサブキャラ扱いなので、「彼らが出ていなくても成り立ってしまいそうなシナリオ」というのでは勿体無いなあと思ってしまいました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

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公式HP:

https://movies.shochiku.co.jp/minnanouta/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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