■インフルエンサーの影響力を利用する者こそ、真のインフルエンサーなのかもしれません
Contents
■オススメ度
玉城ティナさんのファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.8.30(TOHOシネマズ西宮OS)
■映画情報
情報:2023年、日本、78分、G
ジャンル:インフルエンサーの理不尽な炎上案件を描くスリラー映画
監督&脚本:宮崎大佑
キャスト:
玉城ティナ(山根ミト/ミトヤマネ:世界中で絶大な人気を誇るインフルエンサー)
湯川ひな(山根ミホ:ミトの妹、裏方)
稲葉友(田辺キヨシ:ミトが所属する事務所のマネージャー)
片岡礼子(松本:炎上を相談する弁護士)
安達祐実(山城紗智子:ウェブドラマで共演するベテラン女優)
筒井真理子(木村:故郷の住民)
オラキオ(食レポ芸人)
平原テツ(ドラマの監督)
内野謙太(警官)
戸田昌宏(路上活動家)
高澤聡美(AD?)
海沼未羽(冒頭のファン?)
村山千夏(冒頭のファン?)
レオ(冒頭のファン?)
加藤紗希(出演&振り付け担当)
サンゴ(ブタのモモ)
■映画の舞台
東京:渋谷&表参道近辺
ロケ地:
東京:渋谷近辺
■簡単なあらすじ
世界的に人気を誇る「ミトヤマネ」は、妹のミホが裏方にいて、事務所に所属しているインフルエンサーだった
ミトは色んな動画を撮ってアップしたり、各社のCMに出演したり、イメージキャラクターを務めたりもしている
これまでは屋内の活動が中心だったが、徐々にアウトドアの露出も増やし始め、食レポに参加したり、ドラマに出演したりすることになった
ある日、マネージャーの田辺から中国発のアプリのイメージキャラの仕事の打診が舞い込む
アプリはミトの画像をマスクにして、それぞれの写真に合成できるというもので、破格のギャラが提示されていた
ミトは面白そうという理由で引き受けるものの、そのマスクを使った迷惑動画などが拡散され、その批判が彼女自身に向かってしまう
特定班によって家バレし、SNSでは誹謗中傷の嵐が鳴り止まず、弁護士に相談するものの、打つ手がない状態だった
活動停止を余儀なくされ、そして故郷へと舞い戻ることになったものの、心休まる場所はなかったのである
テーマ:イメージの功罪
裏テーマ:バズる狂気
■ひとこと感想
インフルエンサーが炎上するというわかりやすいストーリーで、いわゆるアート系に属するようなスタイリッシュな映像が目立つ作品になっていました
SNSを駆使して知名度を上げるミホは、裏方の妹ミホと共に活動を続けていましたが、怪しいアプリの広告塔になったことで日常が一変してしまうのですね
物語はあってないようなもので、屋内から屋外に出たことによる弊害をもろに受けているという感じに描かれています
ネット上の人気キャラを間近で見た事はありませんが、誰かが気づくと連鎖反応が起こるというのは恐怖でしかありません
とは言え、ミトを追う人たちの凶暴化というのが誇張のようにも思えてしまい、あからさまな危険案件を受ける流れも微妙でしたね
何も考えていない結果、流されて窮地に陥っているのですが、自業自得感が否めない感じになっていました
映画は、玉城ティナさんのファンならOKという内容で、ラストのオチも深読みするほどのものでもありません
エンドロール後に「ある音」が入っているのですが、ほとんどの観客が席を立った後なので、真意が伝わらないまま消化されてしまうような気がします
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
インフルエンサーの炎上というのは、基本的に「本人が何かをしてしまう」というものが多く、今回のようにマスキングで画像を使用されて、批判が一極集中するかと言われれば微妙な感じもします
むしろ、潜在的なアンチとか、ライバルなどがここぞとばかりに仕掛ける印象があって、とりあえずバズれば良いというノープランが傷を深くしていきました
後半では、故郷に舞い戻っても安息の場所がない感じで、方言を使ったり、地元民の意味深な言葉があったりと、ミステリーっぽさというのは醸し出していました
でも、そこまで深く考える作品でもなく、意図せぬ方向に追い込まれたミトを利用する妹とマネージャー、ギブアップする本人という感じに描かれていました
エンドロール後はサイレンの音が鳴り響くというもので、最後の動画を撮った後に何かが起こったことだけがわかります
現実逃避をしたのか、単なる事故を引き起こしたのかは読めませんが、不穏のまま終わらせるという意図を優先したように思え、オチが伝えるメッセージ性は二の次のような感じに思えました
■インフルエンサーとは何か?
インフルエンサー(Influencer)とは、インターネット上で名声と知名度を発展させた個人のことで、ソーシャルメディアの発展とともに台頭してきた存在の事を言います
特定のライフスタイルを発信する第一人者的な意味合いがあり、ファッション、料理、テクノロジー、旅行、ビデオゲーム、映画などの多くのエンターテイメントに関わっています
起業はインフルエンサーと協力して、彼らのフォロワーに向けて宣伝活動を行うようになっています
1991年頃から、インターネットの普及に伴って多くのWebサイトが作られるようになりました
これらの広がりによって、インターネットユーザーは多くの経験豊富な個人から情報を受け取るようになります
これまで主流だったマスメディアや企業のWebサイトよりもパーソナルな情報が入手可能になり、これらの発展から独自のプラットフォームが登場し始めました
その先駆けとなったのが「Six Degrees.com」というサービスで、さらにブログをサポートするサービスも台頭し始めます
この流れを汲んで、Facebook、Instagram、YouTube、Reddit、Twich、Snapchat、TikTok、Twitter(現在のX)、Discord、Viber、Wechatm WhatAppなどのサービスが普及するようになりました
当初は、10億人ほどユーザーがいるInstgramにインフルエンサーの大部分がいましたが、彼らが「インスタグラマー」と呼ばれるようになります
その後、2000年代に入り、ブロガーに企業が商品を無償提供するという流れが起こり、彼らが記事を書くことで金銭を受け取るようになり始めます
これに寄与したのがPayPerPostで、この動きは他のサイトにも波及効果をもたらしました
その後、この流れを悪用するような宣伝方法も登場するようになって、現在に至っています
ちなみに、Instgramにおけるインフルエンサーの定義はフォロワー500万人以上とされています
■実在と虚構の狭間にて
インフルエンサーは、主にインターネット上に存在するので、実際にいるのかどうかわからない部分があります
基本的に顔出しをして発信をしているのですが、実際に街で見かける可能性はほぼゼロに等しいと思います
彼らがファンイベントなどをするとか、実際に外で撮影しているところに遭遇するなどがあれば別ですが、当初のミトも屋内撮影が主流なので、実際に目にする機会はなかったと思います
それでも、身バレを防ぐために、外では変装のような格好をすることになっていました
現実と虚構の間にいる彼らですが、別の意味でも「現実と虚構の間にいる」と言えます
それは、その告知や宣伝に対する姿勢やマインドのことで、本当にそれを好んで使用しているのかわからないという部分なのですね
映画でも、「服が次々に増える」という妹の発言があり、それは一部は購入なのでしょうが、企業側から贈られてくるものもあったと思います
また、いくらファッションに興味があると言っても、更新頻度の数だけ好きな衣服を見つけるということもないはずで、コロコロと趣味が変わることはありません
この映画ブログでも、自分が本当に好きな作品だけを取り上げていたら更新頻度は下がりますし、多くの作品を取り上げるスタンスでも、「映画が公開される頻度」というのがマックスになります
長い付き合いの人ならわかると思いますが、このブログは「劇場公開作品」を主に取り扱っているので、コロナ禍で映画館が閉まったら書くことがないわけですね
また、個人的に入院をしていた時期もあり、その間は「公開作品」の鑑賞は不可能なわけで、そこでも更新というのは途切れてしまいます
既存のサービスや商品をネタにブログを書く場合は、特定の企業活動と連動するというのが常なので、それが最大値にもなり得ると言えるでしょう
そういった意味において、全てがインフルエンサーおよび発信者の好みや意図によるものではないということになっていて、特にミトのようなファッション&フードという分野においては、本当に好んでいるものを取り上げているかどうかはわからないと言えます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作では、インフルエンサーが通るであろう道を描いていて、露出が増えれば起こる危険性を取り上げていきます
認知度が増えるに従って行動は制限され、個人のマネージメントのため、彼らを守るものも限界があります
一応、田辺というマネージャーがついてはいますが、彼の事務所での取り扱いとか、事務所自体の規模というものは、そこまで大きなものではありません
実際に、この映画のミトほどの影響力があれば、大きめの事務所に所属するとか、個人事務所を設立して、ガードを固めるということになると思いますが、そのあたりのリアリティラインはあえて無視しているように思えました
その後、中国の怪しいアプリの広告塔になったことで運命が変わり、それによって活動休止状態に陥ります
このあたりを主導していたのが妹と田辺で、追い詰められたミト自身はネットにふれることすらできなくなります
そんな状況下で、ミトになりすまして活動を始める妹は、インフルエンサーの負の部分をミトに押し付けて、その影響力だけを手に入れるという暴挙に出ていきます
ミトのマスクが世界中に流布したことで、ミト本来のビジュアルというものが歪んで認知されるようになり、それによって「ミトのビジュアルに寄せた妹」というのは本物であってもなくても構わない状況に近づいていきます
これらのシーンの前に、妹の方がファンに囲まれるというシーンがあり、裏方に徹していたはずの妹が、それなりの認知度を得ていたことが明らかになるのですね
なので、ミトに寄せた妹は、彼女自身の知名度と「表に出れなくなったミトの代理」を務め、まずは批判を一心に受けることで印象操作を行なっていきます
ストーリーとして、悪いことをした姉の代わりに健気に対応する妹というキャラクターを演じることになり、それがさらなる波及効果を呼んでいきます
ラストでは、ミトが精神的に病んで、おそらくは自殺か何かをしたのでは?と思わせる内容で終わりを告げます
カメラに向かって何かを話した後、エンドロールの暗転があり、その最後に「サイレンが近づく」という演出がなされていました
最後まで席を立たなかった人だけが気づいた演出ですが、おそらくは「生配信中に何かをして、それを見ていた人が通報」という流れを示していると思われます
このあたりまで妹のシナリオなのかは分かりませんが、インフルエンサーの影響力を最大限に利用するという闇が描かれていたと思うので、ある種のホラーのような内容だったのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP: