■TV版を観ていない人は、専門用語の語句の読みと意味だけは調べておいた方が良いと思います(最適はパンフレットですね)
Contents
■オススメ度
TVシリーズのファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.7.29(MOVIX京都)
■映画情報
情報:2024年、日本、89分、G
ジャンル:大奥を舞台に新人女中の成り上がりと大奥に潜む謎に迫る様子を描いたミステリー映画
監督:中村健治
脚本:山本幸治&中村健治
キャスト:
神谷浩史(薬売り:大奥の謎に挑む男)
黒沢ともよ(アサ:大奥で役職に就きたい新人女中、御三ノ間)
悠木碧(カメ:憧れの大奥に飛び込む新人女中、御三ノ間)
小山茉美(歌山:大奥の御年寄)
花澤香菜(北川:行方不明になった大奥の御祐筆)
戸松遥(大友ボタン:大奥の御中臈)
日笠陽子(時田フキ:天子のお気に入りの大奥の御中臈)
甲斐田裕子(淡島:大奥の表使、新人女中の教育係)
ゆかな(麦谷:大奥の御次、淡島の部下)
和多田美咲(溝呂木二日月:御水様の儀式で水を配る女性、左目の赤化粧)
平塚紗依(溝呂木三日月:御水様の儀式で水を配る女性、右目の赤化粧)
梶裕貴(時田三郎丸:大奥の儀式の監視役、真面目)
福山潤(平基:大奥の儀式の監視役、女たらし)
細見大輔(坂下:大奥と「七つ口」の警備係)
入野自由(天子:幕府の象徴、最高位)
津田健次郎(溝呂木北斗:溝呂木家の当主)
■映画の舞台
江戸時代の日本
■簡単なあらすじ
江戸にある大奥では、天子様のための女中が集められ、そこに新人女中として、アサとカメがやってきた
男子禁制の中、そこに不穏なものを感じ取った薬売りは、正面突破をして大奥内へと入った
薬売りはモノノ怪が潜んでいると言い、女中をまとめる歌山は彼に特別な手形を発行することになった
薬売りは退魔の剣を所持しているが、モノノ怪を斬り祓うには、「形」「真」「理」の三様が揃わなければならない
大奥は予定通りに御水様の儀式を行おうと考えていて、薬売りはそれを邪魔しないように調査をしていく
そんな折、アサは行方不明となっていた女中・北川と遭遇することになったのである
テーマ:執着
裏テーマ:適性
■ひとこと感想
テレビシリーズの続編ということを全く知らずに鑑賞
予告編の和紙をバックに絵が動くというビジュアルに興味を持っていました
さらっと事前に調べた感じでは、4つの話を3回ずつで放映してきたようで、それぞれは独立しているようでした
なので、オムニバスっぽいストーリーなのかなと思い、そこまで気にはしませんでした
とは言え、薬売りに関する専門用語についていけず、パンフレットを読んで脳内補完することになりました
物語は、大奥に潜む闇を暴くというもので、新人女中がそこで生きていけるかを試している物語にあっています
女中に憧れを持つカメと、大奥で役職に就きたいアサという根本のマインドが違うので、どうなるかは一目瞭然という感じになっていましたね
ともかく、あの背景で絵がサクサク動くので、言葉の意味はほとんどわからないけど、凄いものを見たなあという満足感はありました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
大奥には秘密があって、というよりは、前回の儀式が延期になった背景を紐解くという流れになっていました
本来行われるはずの日程で行われず、それを不審に思った侍が調査に入る中で、薬売りも匂いを嗅ぎつけてきている、という感じになっています
物語は「隠れているモノノ怪」を誘き寄せるために薬売りが暗躍するのですが、アサがなぜかそれを先回りしてしまう展開になっていました
ある意味、導かれていることになるのですが、そのあたりの種明かしが一回観ただけでは意味不明な感じになっていました
おそらくは、モノノ怪によって影響を受けた北川が行方不明になり、儀式を執り行うことができなかったのでしょうが、モノノ怪の目的がよくわからない感じがしました
モノノ怪は大奥を去ることになった不適合者が残した残留思念のようなもので、それが失敗を誘発しようとしていたのかなと思います
ともかく、言葉が独特なので、そのあたりを理解してからでないと、会話の半分ぐらいが漢字に変換できずに意味がわからないと思います
なので、パンフレットを買う予定なら先に購入して、専門用語だけは視覚化しておいた方が良いのではないでしょうか
■これまでのシリーズについて
本作は、テレビ放映された『モノノ怪』の劇場版で、テレビの初回放送は2007年の7月のことでした
フジテレビ系列で放送され、全12話となっています
オムニバス形式になっていて、主人公・薬売りが事件を解決する物語でした
【座敷童子(前編、後編)】
旅籠「万屋」に身重の若い娘・志乃がやってきて、使われていない訳ありの部屋を借りることになります
志乃はそこで、いつの間にか部屋に入ってきた子どもを見つけ、その日から奇怪な現象が起き、それを薬売りが解決することになります
【海坊主(序の編、二の幕、大詰め)】
江戸行きの廻船に乗っていた薬売りは、何者かの仕業によって行き先を変えられてしまい、船はアヤカシの海に迷い込んでしまいます
薬売りは、そこで襲ってくるモノノ怪と戦うものの、一向に海をアヤカシに変えたものの正体が掴めずにいました
【のっぺらぼう(前編、後編)】
藩士の家に嫁いだお蝶は、夫や親族を殺した罪で死罪を言い渡されてしまいます
牢獄には薬売りも捕まっていて、お蝶の罪がアヤカシの仕業ではないかと疑い、その真意を見つける、と言う物語になっています
【鵺(前編、後編)】
寂れた家元にやってきた薬売りは、そこで殺された主人を見つけることになります
薬売りは事件の解明と、天下を取ると言われるアイテムを探すことになりました
【化猫(序の幕、二の幕、大詰め)】
地下鉄の開通祝いが行われるものの、初乗りが怪異な出来事に見舞われます
参加者が車両に閉じ込められ、市長が変死を遂げる中、薬売りがその謎に挑むことになります
これらの物語に薬りが登場しますが、どうやら映画の薬売りは別人とされています
何でも薬売りは複数人いると言われているのですね
また、薬売りは「形(かたち)」「真(まこと)」「理(ことわり)」の3つを見つけ出すことで、彼が所持している「退魔の剣」を鞘から抜くことができると言う設定になっています
■大奥に潜む闇
本作には、唐傘と呼ばれるモノノ怪が登場し、薬売りがその正体に迫る様子が描かれていきます
舞台は天子様のための大奥で、男子禁制の場所で女中たちの情念というものが描かれる内容になっていました
大奥は、天子様の世話をする女中たちがいる場所で、そこに新人のアサとカメがやってくることになりました
薬売りは、大奥から何かを感じ取り、その正体を突き止めるために侵入します
大奥とは、江戸城に存在した将軍家の御台所・子女・側室・奥女中がいる場所で、将軍の家族、夫人、世子、子女などの生活のお手伝いをする人がいる場所でした
男性は御典医のみが立ち入りを許され、原則として男子禁制の場とされてきました
その中でもたくさんの位があって、大奥の最高位は「御台所」と呼ばれ、映画では歌山というキャラクターがその場所にいました
その次には「側室」と呼ばれ、御中﨟の中から選ばれる者がいます
映画では、側室一歩手前のキャラとして時田フキというキャラが天子様に可愛がられていました
大奥の女中にはこれ以外にもたくさんの階級があり、上臈御年寄から中臈、御祐筆(映画では失踪した北川)などがいて、新人の2人は「御半下」と呼ばれる雑用係という位になります
アサは役所に就きたいと考え、最終的には御祐筆と呼ばれる位になることになりますが、彼女がどの地位まで行きたかったのかまではわかりません
映画では、表使と呼ばれる女中の教育係・淡島がいて、彼女の情念というものが大奥に乱れを生んでいるように描かれていました
女中たちが大奥で階級に就くというのは、その他大勢を蹴落としているという現実があり、また天子様に可愛がられるためには、美貌と若さというものが必要になってきます
そう言った世界で生きるには、嫉妬や対抗意識というものは捨てきれないもので、そう言った情念に目をつけたのが唐傘というモノノ怪という存在だったように思えました
ちなみに「唐傘」とは、唐傘小僧と呼ばれる一本足の妖怪で、捨てられた唐傘が恨みの力で妖怪に変貌したもの、とされています
この「捨てられた」という感覚が女中の中にあって、その感情を吸収することで巨大化していったように思えました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、薬売りが主人公のはずなのですが、前半はほぼ空気のような存在になっていました
事件が起きてから動くキャラなので、そこに至るまでに動きはないのは当然で、無理やり門番との絡みを作っていたように思います
実質的にはアサが大奥で成り上がる中で、大奥の秘密にふれるというもので、彼女がモノノ怪に近づくごとに、薬売りが反応していく流れになっていました
薬売りが大奥のモノノ怪に興味を持った理由は分かりませんが、たまたま通りかかった際に念のようなものを感じたのかもしれません
このあたりの「薬売りがモノノ怪に遭遇する道理」というものは映画の中では分からないのですが、これは単純に旅先で事件に遭遇しまくる探偵という設定だと思えば良いのかもしれません
彼がモノノ怪を退治するためには条件が必要で、「形」「真」「理」というものが揃わなければなりません
モノノ怪自体は「視えないもの」という存在で、それが目視できる段階を踏まえ、さらに退魔の剣で斬るためには、その理由や道理というものが必要になってきます
映画の中で説明はされますが、ぶっちゃけ「何言ってるか分からないレベル」だったので、唐傘のどの部分が真で理だったのかは何とも言えない感じになっていました
映画は、映像美を堪能する作品で、和紙を重ねたような特殊な効果が為されていました
それが鑑賞の理由なのですが、それに関してはすごいものを見たという満足感があります
物語も、テレビシリーズを見ていなくても大丈夫な1話完結探偵ものなので、そこまでハードルは高くはありません
とは言え、劇中で使われる独特な言い回しや単語については予習が必要で、漢字変換できない文言がたくさんありましたね
なので、公式HPかパンフレットで言葉の知識だけは入れておいた方が良いのではないでしょうか
「大奥」のウィキを「ふりがななし」で読める人がいれば問題ないですが、正解率一桁未満の難題に近いので、慣れ親しんだ人以外は無理だと思います
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/97377/review/04084812/
公式HP:
https://www.mononoke-movie.com/