■空気感が作り出すハラスメントには、自分自身が放つ空気感も含まれていると思います


■オススメ度

 

不穏な男女差別の映画に興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.7.29(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:The Royal Hotel

情報:2023年、オーストラリア、91分、G

ジャンル:あるパブで働くことになった女性二人が不穏な空気に苛まれる様子を描いたスリラー映画

 

監督:キティ・グリーン

脚本:キティ・グリーン&オスカー・レディング

原案:Pete Gleeson『Hotel Coolgardie』

 

キャスト:

ジュリア・ガーナー/Julia Garner(ハンナ:オーストラリアに観光に来た若者)

ジェシカ・ヘンウィック/Jessica Henwick(リブ:ハンナの親友)

 

Alex Malone(ジュール:イギリス人観光客)

Kate Cheel(キャシー:イギリス人観光客)

 

ヒューゴ・ウィービング/Hugo Weaving(ビリー:「ロイヤルホテル」のオーナー)

アースラ・ヨビッチ/Ursula Yovich(キャロル:「ロイヤルホテル」の厨房)

Baykali Ganambarr(トミー:キャロルの甥、食料品業者)

 

ジェームズ・フレッシュビル/James Frecheville(ティース:口下手でリブを気に入る客、1杯目は無料サービス)

トビー・ウォレス/Toby Wallace(マティ:ハンナを気に入る客)

ダニエル・ヘンシュオール/Daniel Henshall(ドリー:不穏な雰囲気があるハンナを揶揄う客)

 

ハーバート・ノードラム/Herbert Nordrum(トルステン:客船で出会う青年)

 

Nic Darrigo(ケブ:大柄でひげ面の客)

Ben Eggleton(スパナーズ:髭の老人客、ライター)

Barbara Lowing(グレンダ:大柄で態度の悪い女性客)

 

Adam Morgan(キース:パブの客)

Adam MacNeill(マッカ:パブの客)

Bruce R. Carter(ダレン:パブの客)

Craig McArdle(シモ:パブの客)

Len Firth(ウェイン:パブの客)

Valerie Berry(スージー:パブの客)

Greg Morrison(ミック:パブの客)

 

Joel Hartgen(クラッカー:爆竹男)

 

Chrissie Page(年配の夫婦、妻)

Patrick Frost(年配の夫婦、夫)

 

Jonathan auf der Heide(警官)

 

Dylan River(シドニーの客船のバーテンダー)

Keylan Devine-Ingerson(フランス人のナンパ男)

Bree Bain(アルバイト斡旋の事務員)

 

Trisha Lindgren(鉱夫の客)

Ben Kobs(鉱夫の客)

Stephen Schofield(パブの客)

Todd Gray(パブの客)

 


■映画の舞台

 

オーストラリア:シドニー

オーストラリア:南部の田舎町

 

ロケ地:

オーストラリア:南オーストラリア州

アデレード/Adelaide

https://maps.app.goo.gl/orpAx9ETjsxtagAp6?g_st=ic

 

ヤティーナ/Yatina(ロイヤルホテル)

https://maps.app.goo.gl/9GRpFobT5HfsJrtXA?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

オーストラリアに観光に訪れたハンナとリブは、お金が尽きてきたために現地で働くことになった

職業斡旋所に紹介されたのは、奥深い田舎町にある「ロイヤルホテル」という名前のパブの仕事だった

 

3日に1回程度しか来ないバスに乗った二人は、広大な大地が広がる奥地へと進んでいく

そして、ようやく訪れた場所は、1階がパブになっていて、2階で休める部屋があった

二人はその部屋を間借りして住み込んで働くことになった

 

パブにはイギリス人観光客のジュールとキャシーがいて、彼女たちはストリッパーまがいのことを平気でやってのけた

客も興奮し、ダンスが始まって盛り上がりを見せるものの、その異質さに躊躇してしまう

なんとか、数週間働いて、お金を稼いで逃げようと考えるモノノ、二人は多くの性差別の対象となり、やがてハンナとリブの間に溝ができてしまうのである

 

テーマ:無自覚な悪態

裏テーマ:適性

 


■ひとこと感想

 

バックパッカーの若い女性が二人、怪しさ満点のパブで働くという内容で、起こるべくして起こっていくものに巻き込まれていく様子を描いていました

パブとホテルが一体になっているところで、地元の酒飲みを相手にすることになるので、セクハラ&パワハラ&カスハラ当たり前の無法地帯になっていました

 

リブは適応を見せるものの、ハンナはまったくついていけず、早々に帰りたいと言い出してしまいます

地方のパブにどんな幻想を抱いていたんかはわかりませんが、お酒が入る場所は大体こんなもんだと思いますし、むしろ大人しい方のように感じました

 

予告編ではフェミニストホラーと銘打っていますが、この状況をホラーと感じる女性もいれば、金を巻き上げるチャンスだと思う女性もいるのですね

彼女たちの旅の目的はぼやかされていますが、現実逃避のように描かれていたので、何を我慢するのかというものが命題のようになっていたと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

本作は予告編でほとんど描かれていて、パブで働き出したら不快な思いをした、という内容になっています

それに対する反応があからさまで、その反応に周囲が感情をむき出しにしていると言えます

 

シドニーの客船では旅先のロマンスを満喫するのに、パブの客は相手にしないというのも無茶な話で、酒が入った相手に紳士的な行動を期待するのが間違っているように思えます

特に、誰がいるというわけでもないのにぞんざいに扱われたマティはちょっとかわいそうに思いました

 

映画は、セクハラが激化して仕返しをするという感じになっていますが、職業斡旋の事務所でパスポートも提示しているので、いずれは逮捕されるか事情聴取は受けることになるのだと思います

後先を考えていない二人が想像力に欠けているという話で、そこまで不快ならばバスを待たずに帰るしかないように思えます

どんな地域や場面でもハラスメントを大切にしたいというのは理想論に近く、都合の良い出し入れをしても響かないのではないでしょうか

 


原案「Hotel  Coolagrdie」について

 

原案となる「Hotel  Coolagrdie」は、2016年に撮られたドキュメンタリーで、監督はピート・グリーソンでした

内容は、飛行機を降りたばかりでお金に困っていたフィンランド人のバックパッカーの女性2名が主人公で、オーストラリアの辺鄙な鉱山にあるパブのバーテンダーとして働くという内容になっています

文化的な違いなどに直面しながら、女性蔑視の言動に耐えていくのですが、そこでは「新人組」のカテゴリーに入り、ドリンクの提供以上のことを強要されることになります

映画としては、小さな町における孤立主義、脆弱な男性性などとどのようにして適応するのか、を問われていくものになります

 

彼女たちは、その町に来る前にバリ島に行っていて、そこで強盗被害に遭っていました

「お金が必要で、仕事を失うわけにはいかず、優しく礼儀正しく振る舞って、一目につかないところで泣いた」と、当事者のリナさんはインタビューで答えています

もう一人のバックパッカーはステフさんという人で、映画以外にもインタビュー記事などがたくさんあります

参考になさりたい方は下記のリンクを踏んでみてください(英語です)

The Guardian「‘I was crying, and I was angry’: Hotel Coolgardie’s shocking portrait of sexism in the outback」URL

https://www.theguardian.com/film/2017/jun/22/i-was-crying-and-i-was-angry-hotel-coolgardies-shocking-portrait-of-sexism-in-the-outback

 

日本語版はおそらく出ていないので、視聴環境を含めて鑑賞は難しいと思いますが、この映画の公開をきっかけに配信される可能性はゼロではないと思います

公式サイトには各種の配信サイトのロゴがあるのですが、「You Tube」をクリックしても再生はできませんでした

Prime Videoも「お住まいの地域では視聴できません」なので、裏技を知っている人は自己責任で閲覧してくださいまし

Trailerは視聴可能なので、雰囲気だけでも感じられるかもしれません

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、女性二人が辺境の地に行って、そこでその土地の風土に晒されるという内容になっています

彼らが常にあのような行動を取っているのかは分かりませんが、ハンナの無愛想な言動がエスカレートさせている部分はあったように思います

その点、リブは文化だと割切っている部分がありましたが、ドラッグの使用あたりから隠された目的が見え隠れしていたと思います

本作の問題点は、ハンナたちと現場のどちらに非があるのかというところで、それがどっちとも取れる感じになっているのが微妙な感じになっていました

 

ハンナたちの自業自得感もあるのですが、彼らも実力行使に出ているわけでもないのですね

猟奇系ホラーでもないし、サイコスリラーでもないし、フェミニズムホラーという域にも入っていません

巻き込まれ系だとしたら、現地民のヤバい慣習に馴染めないという感じになりますが、そこまで特異な環境でもなかったりします

旅の目的が合致していれば、イギリス人旅行客のように弾けることもありますが、彼女たちは単にお金が欲しいだけなので「何があっても耐える」という方向に向かいます

 

閉鎖的コミュニティの飲食店などには、その店独特のルールとか慣習があって、それを全て理解できなくても、愛想があれば問題なかったりします

でも、ハンナには「生理的に無理」というのが表面的にも表れていて、それを察している客もいました

独自のルールに慣れていなくても、目的が明瞭なら適応するというのが仕事なので、それが無理ならばなぜこの仕事を選んだのか、というところに行き着きます

職業紹介のところで彼女たちが「どのような条件を提示し、あのホテルに決まったのか」がわからないのですが、感覚的には「君たちが働けるとしたらここしかない」みたいなニュアンスになっていました

シドニーにいるのに郊外を紹介されるという状況が意味不明で、そこに向かわざるを得ない状況に関しては、もう少し説明があった方が良かったように思います

むしろ、シドニーで弾けているのに、突如お金がなくて働かなければならないという状況設定に無理があるように思いました

 

ラストシーンでは、パブを全焼させて去るという流れになっていますが、火事に関しては事故で扱われると思います

でも、現場を去っているので、放火だと思われても仕方ないのですね

現場を調べれば、そこであの二人が働いていたことはわかるので、いずれは捕まることになります

キャロルが彼女たちに有利な証言をする可能性はありますが、おそらくは関わりを断ちたいと思うので、それも叶わないかもしれません

そのあたりのことが放置で映画が終わってしまっていたので、もやもやしたものが残るだけになっていました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

現在はハラスメント社会で、この問題は受け手がどう感じるかというのが主体になっています

なので、行き違いが起こることもあるし、個別の関係性によって、行為が同じでも反応が変わるということもあります

ハラスメントを意図的に起こしているのか、それとも無自覚なのかは微妙なラインがあって、第三者的に判断がつかないこともあります

そういったこともあって、受けた側の感情というものが重要視される傾向があって、なんでもかんでもハラスメント認定される、ということも起きています

 

一線を越えるとハラスメントになるのですが、従来から指摘されてきたパワハラ、セクハラに加えて、今ではカスハラ(カスタマーハラスメント)というものもあります

いつの間にか自分がハラスメントを行なっていたという可能性もあり、ハラスメントだと指摘されないとわからないくらいに細分化されているように思います

日常的に行なっている行為が、場所が変わればハラスメントになるということもあり、公私混同になっているケースもあります

家族間で許容されていた行為も、一歩外に出ればアウトという事例もあるのですね

 

映画だと、あの町では許容されている行為でも、外部から来た人には通用しないというものはあります

それをわかっていて控える人もいれば、郷に入れば従えという感じに行動を変えない人もいます

とは言え、接客の現場でもあり、お酒が入る場所でもあるので、あの場の雰囲気で対外的に通用する慎んだ行動をする、というのはほぼ不可能に近いでしょう

ただでさえ、アルコールが入った段階で人は豹変するので、ハラスメント以前に「アルコール摂取時の覚えていないので無罪」みたいなものを撲滅する方が先だと思うのですね

当事者にその意識がなかったり、その行為を覚えていないなどの問題が解決しない以上、そう言った場所からは距離を置くしかない、というのが現状の対策なのかなと思わざるを得ないように感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101577/review/04084814/

 

公式HP:

https://unpfilm.com/royalhotel/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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