■あの時に感情を昂らせた人たちのその後の方が気になってしまいますね
Contents
■オススメ度
障がいを持つ家族の関わり方について考えたい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.1.18(京都シネマ)
■映画情報
原題:Mio fratello rincorre i dinosauri(僕の弟は恐竜に夢中)、英題:My Brother Chases Dinosaures(僕の弟は恐竜に夢中)
情報:2019年、イタリア&スペイン、102分、PG12
ジャンル:ダウン症の弟を恥じて嘘をついてしまう思春期の少年を描いた青春映画
監督:ステファノ・チパーニ
脚本:ファビオ・ボニファッチ
原作:ジャコモ・マッツァリオール製作のYoutube動画「ザ・シンプル・インタビュー(Una Simple Entervista)」
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キャスト:
フランチェスコ・ゲギ/Francesco Gheghi(ジャック・マッツァリオール/Jack Mazzariol:ジョヴァンニの兄、高校生)
(幼少期:Luca Morello)
ロレンツォ・シスト/Lorenzo Sisto(ジョー/ジョヴァンニ・マッツァリオール/Giovanni Mazzariol:ジャックの特別な弟)
(幼少期:Antonio Uras)
アレッサンドロ・ガスマン/Alessandro Gassmann(ダヴィデ・マッツァリオール/Davide Mazzariol:兄弟の父)
イザベラ・ラゴネーゼ/Isabella Ragonese(カティア・マッツァリオール/Katia Mazzariol:兄弟の母)
ロッシ・デ・パルマ/Rossy de Palma(ジア・ドロレス/Zia Dolores:兄弟の叔母、美容師、ミュージシャン)
Gea Dall’Orto(キアラ・マッツァリオール/Chiara Mazzariol:兄弟の姉)
(幼少期:Elena Minichiello)
Maria Vittoria Dallasta(アリーチェ・マッツァリオール/Alice Mazzariol:兄弟の姉)
(幼少期:Victoria Perga Cerone)
アリアンナ・ベケローニ/Arianna Becheroni(アリアンナ:ジャックの想い人)
ロベルト・ノッキ/Roberto Nocchi(ヴィットーリオ/ヴィット:ジャックの親友)
(幼少期:アンドレア・ティンパネッリ/Andrea Timpanelli)
Edoardo Pagliai(スカー:バンド仲間)
Saul Nanni(ブルーネ:バンド仲間)
Sara Lacitignola(ブルーネの恋人)
Francesco Lopes(リンゴ:怪我をしたドラマー)
Leonardo Scarini(ギタリスト)
Gabriele Scopel(ピゾーネ:クラスメイト、ガリ勉)
Micaela Casalboni(ドイツ語の教師)
Fabrizio Careddu(ピニン:弁護士)
Laura Dondoli(ドロレスの客)
Albertina Malferri(ドロレスの客)
Carlotta Miti(ドロレスの客)
Nicholas Zanoni(ドロレスのアシスタント)
Jonada Gjorllaku(キスをする女の子)
Vittorio Russo(ピアスをつけた少年)
Marco Nanni(ヴィットの祖父)
Margherita Ruggeri(ブルーナの祖母)
Pio Luigi Piscitelli(警備員博物館)
Luisa Vitali(博物館係員)
Giulia Quadrelli(ティラノサウルスを見ている赤ちゃんの母)
■映画の舞台
イタリア北部の小さな街
ロケ地:
イタリア:エミリアロマーニャ州
チェント/Cent
https://maps.app.goo.gl/f8E8HxedZf8CLbPb7?g_st=ic
ピエーヴェ・ディ・チェント/Pieve diCento
https://maps.app.goo.gl/fqst6WzHkXvXVmnE9?g_st=ic
アンツォーラ・デッレミリア/AnzolaDell‘Emilia
https://maps.app.goo.gl/LvBP9CL3jdpAKQyu7?g_st=ic
ボローニャ/Bologna
https://maps.app.goo.gl/zCo9QiVriZtEvcty8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
5歳になった少年ジャックは、ようやく待望の弟ができて、二人の姉から解放されると喜んでいた
家族会議にて「ジョヴァンニ(愛称:ジョー)」と決まった4人目の子どもは医師から「ダウン症」だと告げられる
両親は喜ぶジャックに「ジョーは特別な子どもだ」と伝えた
それから数年後、中学生になったジャックは、アリアンナという女性に一目惚れをしてしまう
親友のヴィットとともに彼女のいる高校に入学したものの、なかなか距離を詰められずにいた
叔母のドロレスも「友達カテゴリーに入ったらおしまい」と脅しつけ、ジャックは彼女の友人たちのバンドにドラマーとして参加することになった
普段から、ジョーの楽譜のない音楽に付き合わされてきたジャックは、器用にドラムをこなすものの、それでも距離は縮まらず、彼女とバンドメンバーができているのではないかと思い始めていく
そんな折、アリアンナが主催する「学生会議」に出席したジャックは、家族のことを聞かれて「弟はいたけど死んでしまった」と嘘をついてしまうのである
テーマ:ひとりよがりの恋心
裏テーマ:家族だからこそ許せないこと
■ひとこと感想
YouTube動画がバズった兄弟を取り扱った作品で、目線は兄のジャックということになります
原作も動画も知らなかったのですが、ダウン症の弟がいて、それを知られたくないという思春期の葛藤が描かれていました
周りは自分が思っているほどに気にしていなくて、完全に思い込みから最悪の嘘をついてしまうのですが、身内を知られるのが恥ずかしいという感覚は幼少期の誰にでもあることでしょう
今回の場合はダウン症の弟ということになりますが、ジャック自身がダウン症に否定的というわけではないのですね
でも、嘘をついたことで重ねるしかなくなってしまい、最終的には思ってもいないものを積み重ねることになってしまいました
映画は、嘘を重ねることの愚かさを描いていて、当初は「好きな人との最初の会話」にこだわりを持っていて、好き好きアピールが思いがけない方向になっていったように思います
ジョーはそんな兄の行動の意味も知らなければ、世間から自分がどう思われているというところには言及しません
両親は「一度でもジョーを存在しないもの」にしたことを咎め、それを許しはしないのですね
やって良いことと悪いことをしっかりと分別できるように成長してほしいというもので、これは真っ当な親としての感覚であると思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画のラストにて、本人が登場し、話題となったYouTubeの動画『Una Simple Entrevista』も引用されています
この動画は「世界ダウン症の日」にジャックのモデルとなっているジャコモ・マッツァリオールが弟のジョヴァンニを撮影したもので、これがバズって、出版社などが飛びついて、さらに火がついたというものになっています
物語は兄の目線で描かれた贖罪のような感じになっていて、青春期の気の迷いのようなものが事態を悪化させていく様子を描いていきます
カッコつけたい年頃で、アリアンナが好きなのに彼女の気持ちには気づけないのですが、若気の至りあるあるのような感じになっていました
上に姉が二人(一人は妹?)いても、女の子を理解できるわけもなく、むしろ間違ったイメージを女性に抱き続けることになったようにも思えます
青春を拗らせて、周囲が見えなくなる典型ではありますが、ネオナチ騒動の時に自分から告白したのはよかったと思います
ずっと逃げ続けて、誰かに暴露された方がもっと深刻な傷になっていたでしょう
もしかしたら、という未来を描きかねないほどに自己嫌悪に陥っていたのだと推測されます
■「Una Simple Entrevista」について
本作は、ジャコモとジョーによって作られた5分間のYouTube動画がバズった先にできた映画で、その元ネタとなるのが「Una Simple Entrevista」という動画になります
当時、18歳のジャコモと12歳のジョーが登場し、就職面接を装ったかたちで行われています
動画は「世界ダウン症の日(World Down Syndrome Day)」のために特別編集されたもので、数日のうちにイタリアのメディアで話題になって、一気に拡散される事態になっています
「世界ダウン症の日」とは、国連が定めた国際デーの一つで、3月21日がその日として制定されています
3月21日に制定されたのは、「子どもが21番目の余分な染色体を持って生まれてきた」ことに由来し、これがダウン症の原因となっているから、とのこと
イベントでは、ダウン症へのサポートを示すために、カラフルな靴下や、不揃いの靴下を履くなどがされていて、靴下が染色体の形に似ているから、というのが理由となっています
本作は、この動画の後に兄によって書かれたノンフィクション小説が元になっています
2016年に出版されたのですが、前年にアップロードしたYouTube動画が話題となった結果、ジャックは多くの学校に招かれて自分の体験談を話すことになりました
それらが出版社の目に留まり、プロジェクトが立ち上がって、執筆期間6ヶ月を経て、出版されることになります
この本も反響が強く、著者の元にテレビ番組が訪問するなども起こっています
今では8ヶ国語以上で翻訳され、世界中で愛される本になっています
■家族を隠したがる心境
ジャックはアリアンナとの恋において、ジョーを隠すという行動に出ました
彼はそのことを「最初に話す話題ではない」と言い訳していましたが、その嘘のせいで話せなくなり、学生集会の場でもさらに嘘を重ねることになってしまいました
この「隠す」という行為はジョーだから起こるという訳ではありません
得てして、家族内に問題があると思っている人物がいるときに起こるもので、この時のジャックには「ジョーを問題だ」と認識していたことになります
ジャックがこのようにジョーを問題だと感じるようになったのは、両親が言葉を濁して「特別だ」と説明したことから始まっています
この時の「特別」を良い意味に捉えていたジャックも、やがて親の思う「悪い意味での特別」を理解し始めていました
映画では、この「特別」の意味が転換したシーンまでは描かれていませんが、わかりやすい「自分との違い」というものを認識していったように思えます
家族のことを誰もが好意的に発信できるものではなく、時には問題がない場合でも避ける人もいます
自分のアイデンティティの一つとして組み込まれることを嫌い、自分以外の家族の印象で自分を語られることを拒むのですね
個人的にも、そう言った時期はあるので、家族の話題になっても言葉を濁したりする時期があったように思います
大人になると、自分の背景を聞かれることが少なくなるのですが、思春期の対話では「自分と相手との距離」を測るために、しばしば家族の話題が出るようになります
「父親の社会的地位」「家族の所得レベル」「質問者から見た異性のルッキズム」などが話題に上がるようになるのですね
アリアンナの質問もそれに近いものがあって、それはジャックがどのような人物かを見定めようとしてたのでしょう
彼女がその質問をするのは、自分は答えやすいからで、彼女の家庭に問題があれば家庭の話題は避けると思われます
自分の中では問題がないものが相手にはある、というのは良くあることですが、それが事前にわかるなんてことはありません
でも、ここで「特別な弟」と言ってしまうと、それはそれでジャックの中で何かが終わってしまうような気がしてしまいます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、弟がガウン症だったジャックの青春を描いていて、そこで起こる反応と言うものは想定内のものだったと思います
とは言え、「弟はいない」からの「実はいた、死んだけど」と言うのは塗り固める嘘としては最悪の部類でしょう
「いない」と言う無感情から「死んだ」で感情を揺さぶってきているので、この感情が嘘で起こったことだとわかると、同じだけの感情が逆のベクトルで発信者に向くことになります
アリアンナの無視だけに留まらず、他のクラスメイトは「死ね」と言わんばかりに強い感情をぶつけてきているのが誇張に見えないところが怖くもあります
特にイタリアは家族の結びつきが強い土地柄でもあり、家族主義とまで言われる風潮があります
そんな土地での「家族を死んだことにする」「しかもその理由が障がい者」と言うのは、許されざる嘘であると言えます
その後、ジャックとジョーの関係が以前と変わらないことが描かれますが、友人たちの接し方がどう変わったのかは描かれていない分怖いなあと思ってしまいます
現実では、その後に動画を撮って、それがバズると言う展開になっているのですが、あの時に感情を動かされた人がどのように捉えているのかは気になってしまいます
その後、超有名人になっているのも何だかなあと言う感じなのですね
ここまで来てしまうと、自分の感情関係なく、彼らを否定しにくい部分もあるので、感情的にはより複雑なものを抱えてしまっているように思えます
実際には、家族以上に許し難いことになっていそうなので、やはり「嘘」と言うものはつくものではないと思い知らされますね
