■恥ずべき過去を引き合いに出して、今に生きる若者に届けよう
Contents
■オススメ度
若気の至りを体感したい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.12.21(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
原題:Never Goin‘ Back
情報:2018年、アメリカ、85分、PG12
ジャンル:バカンスを決め込んだ親友同士が様々なトラブルに巻き込まれていく様子を描いたコメディ映画
監督&脚本:オーガスティン・フリッゼル
キャスト:
マイア・ミッチェル/Maia Mitchell(アンジェラ:高校中退してレストランで働く17歳、ジェシーにバカンスをプレゼントする親友、モデルは兄イザヤの彼女ジャミ・テタクさん)
カミラ・モローネ/Camila Morrone(ジェシー:アンジェラの親友、ダスティンの妹、モデルは監督自身)
ジョエル・アレン/Joel Allen(ダスティン:ジェシーの兄、麻薬販売するアウトロー、モデルは実兄イザヤ)
ケンダル・スミス/Kendal Smith(トニー:ダスティンに騙されてTVを盗みに来る小悪党)
マチュー・ホルコム/Matthew Holcomb(ライアン:ダスティンの売人仲間)
カイル・ムーニー/Kyle Mooney(ブランドン:ダスティンの同居人、ダイナーの店長、モデルはフロリダビーチ近くで土産物店をしていた友人)
アティーナ・フリッツェル/Atheena Frizzel(クリスタル:ジェシーとアンジェラのバイト先の嫌な女)
Liz Cardenas(隣人の女性)
Michelle Sherill(ジェシーたちに声をかける街角の娼婦)
Julian Hilliard(ダイナーでいたずらする少年)
Jennifer Pilarcik(少年の母)
Marcus M.Mauldin(ロデリック:ダイナーの店長、ジェシーとアンジェラの上司)
Spencer Stevenson(ポール:ジェシーたちの元同僚、ドラッグパーティーに二人を招く若者)
Deontre Gardner(ポールのボーイフレンド)
Raymond Gestaut(ディクソン:スーパーで絡んでくる老人、ブランドンの雇用主)
Jane Willingham(ディクソン夫人)
Max Hartman(フェイス:ジェシーたちを逮捕する警官)
Craig Cole(クレイグ:フェイスの部下、巡査)
Brenda Schram(拘置所の女)
Annell Brodeur(拘置所の警官)
■映画の舞台
アメリカ:テキサス州南部
Bedford/ベッドフォード
Galveston/ガルベストン(二人が行きたい場所)
https://maps.app.goo.gl/fHnH3tR8xXqtdGW47?g_st=ic
ロケ地:
アメリカ:テキサス州
Bedford
The Buttermilk Cafe&Bakery
Buttermilk Cafe
https://maps.app.goo.gl/8vFcLp3cDVq5iwci7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
高校を中退してダイナーで働くジェシーとアンジェラは、ジェシーの兄ダスティンの部屋を間借りして一緒に住んでいた
そこにはダスティンの友人ブランドンも住んでいて、彼は近くのカフェの店長をしている
ある日、アンジェラはジェシーにサプライズを仕掛ける
それはガルベルトンへの旅行で、誕生日にそこへ行こうと考えていた
ジェシーは家賃でチケットを購入していて、二人はシフトを増やして家賃代を稼ぐことになった
二人は近くのダイナーで働いていて、店長のロデリックはジェシーを気に入っていた
その店にはクリスタルという性悪の女もいて、ことごとく衝突をしている
意気揚々と仕事に励むものの、ダスティン絡みで警察沙汰になって、二人は麻薬所持で逮捕されてしまう
また、元同僚のポールに誘われて言ったドラッグパーティーにて、ドラッグマシマシのクッキーを食べてハイになってしまう
だが、二人は逮捕の言い訳をするためにロデリックの元へ向かわなければならなかったのである
テーマ:若気の至り
裏テーマ:環境と性質
■ひとこと感想
若い二人がバカをやるということはわかっていましたが、そのバカさ加減がヤバいくらいにリアルに描かれています
あの街のどこかのこの二人がいるんじゃないかというぐらいにハマっていて、サプライズも高校生らしいものになっていました
旅費(家賃)を稼ぐために頑張って働こうとした矢先にトラブルに見舞われてしまい、その多くがダスティンのせいではあるものの、寄り道が多くて無駄な時間を過ごしていました
物語はあってないようなもので、妙な爽快感は残りますが、下品すぎて人に勧めづらい内容になっています
ともかく教育に悪い内容が満載で、南部の貧困層で起こる日常というものは環境と教育が作り出しているのだなと思い知らされます
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
レズなのかどうなのか微妙なルームメイトですが、そういった行為には全く行かなくて、どちらもそう言った性癖はないように思えます
ともかく、若い二人がハメを外す内容で、犯罪まがいのことが普通に描写されていました
のちにカフェのオーナーと判明する老夫婦との舌戦もえげつなくて、二人が発するセリフはコメディ一辺倒でしたね
Kマートとウォルマートの件は地元民じゃないとわからない内容でしたが、勢いだけでなんとなく笑えてしまいます
ラストシーンが壮大な展開になっていて、伏線がガンガンだったので、いつか爆発するんだろうなあとは思っていました
爽快なシーンではありますが、匂いが漂うSEのこだわりは職人技で、直接的な描写はなくても脳内補完できてしまうのはどうなのかなと思ってしまいます
■若者はどこへいく
この映画では、通常教育からドロップアウトした二人の高校生がメインで、その親というものは登場しません
ジェシーにはドラッグバイヤーの兄ダスティンがいて、彼と一緒に住んでいて、その家の家賃は折半みたいな感じになっていました
そして、その狭い部屋にアンジェラとブランドンがルームシェアしていて、ものすごく狭い雑多なところに若者4人が押し込められているという感じになっています
一応、中心に兄妹がいるので、お互いに肉体的な干渉がなく健全ですが、案の定というように「ドラッグ」まみれの生活を送っています
ジェシーとアンジェラは近くのダイナーで働いていて、制服で出勤をするという距離、ブランドンはカフェの雇われ店長のようですが高給という感じはありません
水道代や家賃をドラッグの購入資金に充てるダスティンにも商才は皆無で、テキサス南部の底辺にどっぷりと浸かっていました
時には約束を反故して恨みを買ったりしますが、その時に「テレビはいいけどプレステ3はダメ」みたいなやり取りには笑ってしまいます
テレビなくてプレステ3どうやってプレイすんだよというツッコミは無しで、ブラウン管テレビには価値がないという皮肉になっていました
ダスティンのせいでトニーが強盗に入り、それを隣人に見られて警察に通報されるのですが、その際に「ガラステーブル」でドラッグがバレるのは爆笑ものでしたね
「高校生がこんなガラステーブル持っているわけない」という凄い理由なのですが、警察の中でもダスティンの悪評は出回っていたのでしょう
映画はジェシーとアンジェラの「海に行きたい!」というだけの計画を遂行するというだけなのですが、環境が最悪で「海に行くためにバイトに出る」のに行き着くのがタイヘンなことになっていました
これ、監督のほぼ実話だそうで、どんな青春送ってたんだと思ってしまいます
てか、どっちが監督なんだろうかと少し心配になってしまいます
バケツ使用したのが親友だったら、その暴露話ヤバくね?と思ってしまいますね
■環境と教育
ジェシーにはどうやら祖父母がいるようで、そこで暮らすのは死んでもイヤという会話がありました
両親は死んだのか、どっか行ったのか、それとも厳格だから逃げたのかはわかりませんが、一応は成人している兄貴が預かっているということで、祖父母の干渉から逃れているように思えます
祖父母がどうしてイヤなのかは分かりませんが、途中で遭遇するディクソンへの悪態を考えると、単純に高齢者の若者への説教目線がイヤなのかなと思えます
高校をドロップアウトした理由は描かれませんが、ドロップアウトしても兄も気にしていないし、兄も学があるとは思えません
いわば、ドロップアウトしやすい環境になっているのですが、両親の存在が不明なので、ドロップアウト時点で親元から離れたのかまではわからなかったりします
これらは監督の原体験ではありますが、監督自身はサウスガーランド・ハイスクール(中退)からリッチランド・カレッジに進学はしているのですね
ちなみに彼女の祖父はあのレフティことウィリアム・オーヴィル・フリツェッル(William Orville Frizzell)で、カントリーシンガーの殿堂入りしている存在ですね
この祖父が厳格だったのかは分かりませんが、カントリーシンガーが祖父で、孫がドラッグハイでドロップアウト寸前となると、そりゃあ合わないのかなとは思えてきます
インタビュー記事(海外サイト「The Dallas Morinig News」)では、離婚した両親の間を行き来して、労働者階級として育ち、高校は途中で辞めたと答えています
フロリダのパナマ市にいる父のもとで暮らしたけれど、父は子育てに不向きで、兄のイザヤと彼の恋人ジャミ・テタクと共に父の元を去り、ビーチ近くのモーテルを借りて過ごしたようですね
その際に、ビーチの近くで土産物屋として働いていた友人がいて、一緒に偽装強盗を企んで、800ドル手に入れたなんて答えています
このエピソードが本作のメインイベントになっていて、アンジェラはジャミ・テタクがモデルなのだと思います
↓インタビュー記事リンク(翻訳してね)
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
監督自身は今は結婚し、娘もいる生活をしていて、彼女の邸宅には祖父の大きな写真も飾られています
彼女が本作を手がけることになったきっかけが「娘の誕生」で、彼女自身は「若者はみんな愚か」という考えがベースにあります
でも、そんな若者たちを導くのは「大人であり、大人の行動である」と言えます
本作では、彼女を変えるような大人は出てこなくて、それゆえに無茶なことに歯止めがかかっていません
多くの大人はディクソンのように罵るか、無視するかですが、若者の方向性が間違っていることに対して何もしません
そんな中で、このような体験談を紡ぎながら、「こんな人生はイヤでしょ」と伝えるのが、監督自身のスタンスなのだと思います
映画では「ずっとトイレを我慢している女の子」が描かれていて、結局は人前で放出するという最大の羞恥が描かれるのですが、この誰にも話したくないような過去話をすることで、何かしらの鬱積に耐えている人にとっては優しさに変わります
映画は「閉塞感に満ちた若者」が「微かな希望に向かって全力」になってそれを叶えていきます
その過程は色々と問題があって、道徳的なものも孕みますが、そこにディクソンの闇を配置することでイーヴンにしているところが良心だったりします
彼女たちが「海に行きたがった理由」はものすごく感覚的なもので、アンジェラがジェシーが喜ぶと企画したものでした
その日はジェシーの17歳の誕生日で、親友のために何かできることはないかと考えた17歳の精一杯だったのですね
なので、起点がほっこりしていて、倫理的には問題だけど、なぜか爽快感を感じるというという物語になっています
彼女たちがあのような不遇にいるのは、彼女たちだけが原因ではないのですが、その象徴的なキャラがクリスタルという「世渡り上手な若者」なのだったのでしょう
二人の対局にいるような「大人を使いこなす若者」なのですが、最終的に理解し合わないというところがリアルでもありました
おそらくは生き方が違うのでしょうが、それが違っても「同じバイトをする羽目になっている」という現実は同じだったりします
なので、人生の通過点においては、そんなことはどうでも良いことなのかなと思ったりもしてしまいます
繰り返し観たい映画ではありませんが、フェチの人ならたまらない作品かもしれません
私にはその趣味がない(どちらかというと嫌悪)ので、感情的に評価は低めですが、「人生は片道切符」という考えには共感できるので、映画的な価値は高いのかな、と思っています
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/384681/review/1fc1be6c-61fa-4662-829e-db95b6117e52/
公式HP: