■新しさを作り込むアイデアが不足しがちで、新しい常態を作るまでに至っていないのが残念でしたね
Contents
■オススメ度
オムニバスに見えて繋がっている物語が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.8.20(MOVIX京都)
■映画情報
原題:뉴노멀(ニューノーマル)、英題:New Normal(新しい常態)
情報:2023年、韓国、113分、G
ジャンル:ある殺人事件を巡る、意図せずに関わってしまう人々を描いたオムニバス形式のスリラー映画
監督&脚本:チョン・ボムシク
原案:テレビドラマシリーズ『トリハダ』
Amazon Link(Prime Video(期間未定))→ https://amzn.to/46T6Tdq
キャスト:
【Chater 1:M】
チェ・ジウ/최지우(ヒョンジュン/현정:一人暮らしの女)
イ・ムンシク/이문식(ジョンフン/정훈:火災報知器の検針員)
【Chapter2:Do The Rightthing(正しいことをしろ)】
チョン・ドンウォン/정동원(スンジン/승진:英雄になりたい中学生)
イ・ジュシル/이주실(ギュヨン/규연:路で困っている老女)
チャン・ジフ/장지후(サンフン/상훈:スンジンのクラスメイト)
ジョン・ワニ/정와니(ジヒョン/지현:スンジンの先輩)
ハギョン/하경(ウンサン/은상:スンジンのクラスメイト)
イ・ジユウ/이주우(ヒョジン:スンジンを呼びに来る生徒)
リュ・ジェユン/류제윤(ジョンホ:先生?)
パク・ジンヒョン/박진현(ヒョンテ:バス停にいるピンクのヘッドホンの男)
クリーピー/소름이(ポメラニアン)
ヤン・ヘジュン/양해준(タトゥーの男)
ジョ・ヒョンス/조현수(タトゥーの男)
【Chapter 3:Dress To Kill(殺しのドレス)】
イ・ユミ/이유미(ヒョンス/현수:誰かと繋がりたい女)
イェリン/예린(ヘギョン/해경:出会い系アプリを紹介するティンガー)
キム・ウリム/김우림(ソクミン/석민:マッチングアプリでヒョンスが会う男性)
イ・ヒョンチ/이현치(ミヨン/미연:ヒョンスの友人)
アン・イェジ/안예지(ヒョナ/현아:身代わりに殺される女?)
カン・ミンジ/강민지(カフェの客)
ミント・ハウン/박하은(カフェの客)
ヤンスル/양술(カフェの客)
ユ・ユテ/유의태(カフェのカップル)
ナム・ジス/남지수(カフェのカップル)
チョン・ウヨン/정우영(カフェのカップル)
イ・ヨンヨン이연주(カフェのカップル)
パク・ミンウ/박민우(カフェのオーナー)
パクジ・ュヨン/문호장(カフェのアルバイト)
【Chapter 4:Be With You(今、会いにいきます)】
チェ・ミンホ/최민호(ユ・フン/훈:孤独な大学生)
Mariam N’diaye(マッチングアプリのデート相手)
シン・ヨンス/신연수 (イ・チュボン:手紙の主の写真)
【Chapter 5:Peeping Tom(のぞき魔)】
P.O/피오(ギジン/기진:就職を諦めた男)
ファン・スンオン/황승언(ヘヨン/혜연:ギジンの隣人)
イ・ドンギュ/이동규(チャンス/창수:へヨンの恋人)
ク・ヨンジャ/구영자(エレベーターを閉め出されるお婆さん)
キム・ヒョンドク/김현덕(路地のカップル)
イ・ジヌ/이진우(路地のカップル)
イ・スンミン/이승민(路地のカップル)
キム・ミンジョン/김민정(路地のカップル)
シン・ヘソン/신혜선(路地のカップル)
イム・ジス/임지수(路地のカップル)
【Last Chapter:My Life Is A Dog(ろくでもない人生)】
ハ・ダイン/하다인(ヨンジン/연진:ミュージシャン志望のコンビニバイト)
チョ・ヒョヌ/조현우(ソンジェ/성재:酔っ払いの迷惑客)
キム・ミファ/김미화(ソンミ/송미:ゴミ袋のクレームをつける中年女)
キム・ハラム/김하람(チャンヨン/창영:ヨンジンのバイト先の同僚)
キム・ソンゴン/김성곤(コンビニの酔っ払い、携帯電話)
ムン・スンジュ/문순주(手を握ってくるコンビニの酔っ払い)
ハ・ボヨン/하보영(コンビニの客)
チェ・ビョンサム/최병삼(コンビニの客)
ホン・ソンフェ/홍성회(コンビニの客)
【その他】
イ・ウヨン/이우영(イ・ウォンヨン/이우영:ニュースアンカー)
アン・ヨンヒョン안영현(アン・ヨンヒョン/안영현:ニュースアンカー)
イム・ヘスン/임혜승(チョン・ワニ/정와:ニュースアンカー)
チョン・イェジ/전예지(チョ・イェジ/전예지:ニュースアンカー)
イ・ジェヨン/이재연(イ・ジェヨン/이재연:ニュースアンカー)
チョン・ヨンジン/정범식(ヨンジンとギジンのボイスチェンジャーの声)
チョン・ボムシク/정범식(コンビニの店長の声)
Sarah Malarcher(出会い系アプリのマッチングの音声)
Ruby Malarcher(出会い系アプリのマッチングの音声)
ホ・ソヨン/허소영(へヨンの鼻歌)
チョン・ボムシク/정범식(ヒョンジョンの口笛)
ジョアラ/조아라(ヨンジンのバンドメンバー、演奏)
キム・スヨン/김수영(ヨンジンのバンドメンバー、演奏)
キム・ヒョンイ/김현이(ヨンジンのバンドメンバー、演奏)
パク・アラム/박아람(ヨンジンのバンドメンバー、演奏)
■映画の舞台
韓国:ソウル
ロケ地:
上に同じ
■簡単なあらすじ
ソウルでは連続殺人事件が起こっていて、そのニュースを不安そうに眺める一人暮らしの女・ヒョンジュンがいた
そんな彼女の元に、火災報知器の検査員がやってきたが、彼は事あるごとに気味の悪い言葉を投げかけてきた
一方、街ではマッチングアプリで相手を探す若い女や男、善行を行いたいと考える中学生などがいて、街角のコンビニでは酔っ払いに悩まされる店員などもいた
彼らはそれぞれの日常を行きていたが、予期せぬ出来事に遭遇し、街で起こっている連続殺人事件に吸い寄せられてしまうのである
テーマ:死に繋がる行動
裏テーマ:連鎖の先にある日常
■ひとこと感想
映画は、全6章の構成になっていて、しかも時系列がシャッフルしている内容になっていました
第1章「M」が「2日目」で、その後「第2章:3日目」「第3章:1日目」「第4章:3日目」「第5章:2日目」というふうに続いていきます
物語としては、日常を打破する行動をした先に悲劇が待っていたというもので、変化を恐れなかった先にあった新しい人生は悲惨なものばかりだったということになります
これで良いのかは分かりませんが、人の狂気は薄い壁の向こうにある、という感じで、人間の気持ち悪さを体感するには良いスリラーなのかなと感じました
日本のテレビドラマをベースにしいるためか、「湿度」に関してはよく似た感じに思えました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
時系列シャッフル系なのですが、章ごとに「何日目」と表示されるので、その入れ替えがあるというぐらいになっていました
時系列に直すと、
「1日目:コンビニで酔っ払い客に絡まれる」「そのコンビニに黄色いカバンの女来店」「マッチングアプリで黄色いカバンの女+@が殺される」「コンビニ女、チャットでアドバイス&遺棄現場で殺害される」
「2日目:のぞき魔騒動、オンラインゲームで告白決行&見つかって殺される」「一人暮らし女と火災報知器検査人」
「3日目:中学生善行&拉致殺人」「マッチングアプリ大学生、手紙を追う」「大学生の上から黄色いカバンの女落下」
という流れになっています
流れを把握するというよりも、その人間関係のつながりを楽しむ映画になっていて、例えば「マッチング大学生と孤独大学生が友だち」とか、「殺人鬼に殺されたマッチング女がコンビニに寄っていた」とかを楽しむ内容になっていると思います
映画は、ちょっと奇妙な物語という感じなので、映画館で観るほどなのかは何とも言えない感じですね
各章ともに面白い仕掛けがあるのですが、理解しづらい構成になっているのは残念な感じがしました
いっそのこと、1~5章をバラバラにして、何日目かを隠しておいて、それを6章で繋げるという方がサプライズがあったように思えました
■各章が描いていたこと
本作は、6章立てになっていて、それぞれのチャプターの時系列が目まぐるしく入れ替わっている作品になっていました
どれもが不穏な印象を持たせる内容で、それが日常の延長線上で同時に起こり、繋がっていることを示しています
第1章は、2日目の出来事で、これは一人暮らしの女性の元にセクハラまがいの検針員が来るというもので、その女性が実は殺人鬼だった、というオチになっていました
この殺人鬼は、第3章のマッチングアプリにて相手をエレベーター内で殺し、その死体を第4章で登場する大学生の目の前に落としていました
サイコパスは近くにいる、という不穏さを見せていますが、これは日常生活の見えない部分に危険が蔓延っていた、という以上の意味を見出せません
このストーリーと別ラインで動いているのが第2章で、これは善行をしようと思った高校生が危ない目に遭わされる様子が描かれています
高校生を狙ったグループの目的はよくわかりませんが、これは女殺人鬼と同じテイストで、この物語も日常の潜む危険というものを取り扱っていましたが、それ以上ではないように思えます
そして、さらにもう一つのラインがあって、これが第5章と第6章で描かれるコンビニ女と覗き魔ということになっていました
覗き魔のターゲットには恋人がいて、それはこれまでの殺人鬼とほぼ同等の性質を持っていて、テーマ的にもおんなじだったりします
その中でも異質だったのはコンビニ女と殺人鬼のチャット関係で、ろくでもない現実も大概だけど、ネットの世界も、その向こうの世界も大変な感じになっていました
現実の憂さを晴らそうと放言しても、その言葉がリアルに結びついているかも知れないという怖さがありました
また、その連鎖として、覗き魔の欲望が自分の破滅を引き寄せることになっていて、悪いことはできないんだなあと思わされます
これらの章が何を示しているのかというところに深いものはありませんが、自分の行動の先には何か連鎖するものがあって、それが自分の元に帰ってくるという感じにまとめられていたのかな、と感じました
■勝手にスクリプトドクター
本作は、時系列をシャッフルすることで独自性を保っていますが、かと言って怖さが増幅するという効果はなかったように思えます
どちらかと言えば、何が起こったかわからない部分が多く、殺人鬼の殺人の目的も快楽以外の要素が見出せませんでした
一人暮らし女が検針員を殺すのはなんとなくわかりますが、その後のマッチングアプリの相手を殺す意味とか、大学生の目の前に落とす(本当は当てるつもりだったのかも)という行動の整合性というものはありません
殺人を起こした後処理に関しても事務的な部分が多いのですが、結局のところ、どうやって処理しているのかはわからないのですね
検針員の死体がどうなったのかはわからず、死体を落として放置するだけという、殺しには興味があるけど、それ以外は杜撰という印象を受けます
これに対して、チャットで死体の処理方法を聞いている殺人犯は、かなり具体的にどうしたら良いかを打診していました
彼は殺しに対する快楽がある一方で、その行為をネット上に誇示して、その反応を楽しむという側面がありました
それがコンビニ女との繋がりになりますが、その後彼女の死体は無防備にも部屋のクローゼットに押し込まれているだけだったりします
このコレクションに覗き魔が入ることになるのですが、だからと言って何かが描かれているとも思えません
映画のタイトルは『ニューノーマル』ということで、別の言い方をすれば「新しくスタンダードになるもの」ということだと思います
これは、従来の快楽殺人にも「処理」というものがあって、その処理を完璧にこなしてこそ完全犯罪が成り立つという思い込みがありました
本作は、その部分を否定し、快楽殺人者はそれ以外のことには興味がないという感じに描かれていて、これが現代の殺人者の感覚である、というふうに結びたかったのだと思います
でも、その意図はほぼ伝わらず、単に気持ち悪さだけが先行しているので、結局はよくあるオムニバスドラマになっていた、という感想になってしまうのでしょう
本作に手を加えるとしたら、完全なるリンクを作ることであり、それは一人暮らし女と覗かれ女の彼氏との関係性を完成させることでしょう
二人は共に快楽殺人者なのですが、その接点がないままに物語が終わるのは微妙だと思うのですね
なので、二人がどこかで、何かしらの繋がりを持っていた、と結ぶのが良いと思います
それが、死体処理に困っていた男に対して、もう一人のアドバイザーがいた、という設定にするのですね
このアドバイザーは「処理に関する煩わしさよりも快楽を優先すべき」という持論を展開し、それを男は無視するという流れを汲みます
そんな中で、素人の戯言に付き合ってみたけれど空虚で、それで彼女の書き込みを再認識するという流れになります
それがクローゼットの放置という方法に繋がっていき、その杜撰であることを推奨する書き込みをしていたのが「実は反対側の隣の部屋に住んでいた」という世界観を描くことだと思います
これによって、構造の緻密さが表現され、実は同時期に隣あった部屋で殺人が行われていた、というカラクリになる方が効果的だったのではないか、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、別々に思われる物語が実は繋がりがあったというテイストの作品ですが、お世辞にもうまく絡んでいるとは言えません
これらの連鎖に関しては、想像できないことが必須とされていて、思いがけぬところで接点があったというものになります
例えば、検針員と一人暮らしの女の関係性にしても、その因果というものを作る必要があります
この検針員がどの人物とも繋がりがないことが問題で、映画内の描写で関連性を紐づけるとしたら、チャットかマッチングアプリということになります
検針員はマッチングアプリを利用していますが、それはマッチングが目的ではなく、一人暮らしであるかどうかというものを調べるために使っているというのが効果的でしょう
待ち合わせをするまでに至ったけどその場には現れず、実は女を尾行していたというものですね
そして、後日検針員になりすまして彼女の部屋に上がり、そこで密室の犯行に及ぼうとした、という流れになります
でも、実際には、この女も殺す相手を探すためにマッチングアプリを利用していたことがわかり、さらにオープンチャットの回答者でもあった、という流れを汲みます
この女のオープンチャットに興味を示したコンビニ女は、日常とは乖離した世界があることを知り、普段から憎しみを持っているものをネットの世界にぶつけます
それが覗かれ女の彼氏を刺激することになり、巡って自分が被害者になるというものでしょう
さらに覗き男は、アプリで出会った女に悉く振られ、それが転じて覗き魔になったとか、この男も目的の女を探すものの、会わずに自宅を探し出し、隣に越してくるという陰湿さを持っていた、ということになります
覗かれ女は恋人に自分の写真を使われていたことを知らないという設定にして、全くの部外者だったりするのですが、彼女自身の職場が学生を狙うお婆さんたちのグループと関係している、という設定も加えられます
彼女は夜の街で働いていて、団地婆さんたちが関わっているヤクザの店で働いているというもので、彼女の彼氏もその組織と関連がある、というのでも良いと思います
画面の端々に実は他の人物が写っていたという因果を作ることで、その世界はとても閉鎖的に感じられるというのが面白いと思います
そうした先にある連鎖というものが重みを帯びるので、そこまで作り込んでこそ、という印象が拭えません
本作は、日本の昔のテレビをアレンジしたものになっていますが、それ以上でもないところが残念ですね
新しさを感じさせるものがないとムーブメントは起こらないので、その訴求力が本作にはなかったように思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101774/review/04159409/
公式HP: