■その魂が朽ちるまで、自分にしかできないことをやろう
Contents
■オススメ度
スポーツ自伝系が好きな人(★★★)
歴史の目撃者系映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.10.30(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:Nyad
情報:2023年、アメリカ、120分、G
ジャンル:ゲージなしにフロリダ海峡を泳いだ実在のスイマーを描いた自伝映画
監督:エリザベス・チャイ・バサルヘティ&ジミー・チン
脚本:ジュリア・コックス
原作:ダイアナ・ナイアド『Find Away:the Inspiring Story of One Woman’s Pursuit of a Lifelong Dream』
キャスト:
アネット・ベニング/Annette Bening(ダイアナ・ナイアド/Diana Nyad:フロリダ海峡をケージを使わずに泳ぐ挑戦をするスイマー)
(10代:Anna Harriette Pittman)
(5歳時:Pearl Darling&Belle Darling)
ジョディ・フォスター/Jodie Foster(ボニー・ストール/Bonnie Stoll:ダイアナの親友)
リス・エヴァンス/Rhys Ifans(ジョン・バートレット/John Bartlett:航海士)
カーリー・ローゼンバーグ/Karly Rothenberg(ディー・ブレンディ/Dee Brady:船長)
ジーナ・イー/Jeena Yi(エンジェル・柳原/Angel Yanagihara:クラゲ専門家)
Luke Cosgrove(ルーク・ティップル/Luke Tiple:サメの専門家)
JEthan Jones Romero(ニコ:ダイバー)
Marcus Young(マーカス:ダイバー)
Garland Scott(ジョン・ローズ:救命士)
Mauricio Adrian(医療補助者)
Nadia Lorencz(ナディア:操舵士)
Samantha Gordon(ケイティ・マッカーデル:企画に丸乗りする若いスイマー)
Eric T. Miller(ジャック・ネルソン/Jack Nelson:水泳のコーチ)
Jake Jackson(コーチのアシスタント)
Johnny Solo(アリス・ナイアド/Aris Nyad:ナイアドの父の若い頃、モデルはアリストテレス・L・ナイアド)
Anne Marie Kempf(キャンディス:ナイアドの母)
Lilo Grunwald(ニーナ:ナイアドの元カノ)
Tisola Logan(アンナ:ナイアドの友人)
Erica Cho(ナオミ:アンナのパートナー)
Katherine Montes(キャロリン:友人)
Marcella Acuña Báez(スザンヌ:ナオミかアンナの娘?)
Elizabeth Chahin(キューバのレポーター)
Grace Subervi(サム:救急看護師)
Iván Oleaga(ライアン:ジムのトレーナー)
Lacey Newhard(ビキニショップの少女、ナイアドの友人)
Jose Mota Prestol(ホセ:アシスタントを頼まれるキューバの漁師)
Marcos Sánchez(管理人)
■映画の舞台
1975年~2013年、
キューバ:バハナ
アメリカ:フロリダ州
キーウェスト
ロケ地:
アメリカ:フロリダ州
キーウェスト/Key West
カリフォルニア州ロサンゼルス
ドミニカ共和国
キューバ
■簡単なあらすじ
遠泳スイマーのナイアドは、60歳を迎えて、親友のボニーと他愛のない退屈な日々を過ごしていた
彼女は28歳の時にフロリダ海峡を泳ぐというチャレンジに失敗し、それ以降は遠泳から遠ざかっていた
ある日、亡くなった母の遺品を整理していたナイアドは、そこでメアリー・オリバーの詩集を見つける
付箋が挟まっていたページが気になったナイアドは、そこに書かれていた言葉に誘発され、ある想いを胸に抱く
それが、28年前に断念した「フロリダ海峡遠泳」の再挑戦だった
ナイアドはボニーにコーチを託し、彼女は航海士バートレット、サメ専門家ティップル、船長のディーなどを手配する
そして、ゲージなしで泳ぐために、サメよけのセンサーを製作し、2010年から挑戦を始めるのである
テーマ:退屈と不屈
裏テーマ:偉業の達成に必要なもの
■ひとこと感想
実話系ということですが、アメリカの話なので知らない状態で鑑賞
どれぐらい無茶なことなのかはわかりませんでしたが、2日間海から出られないというのは強烈なインパクトがあります
映画では、本人も登場しますが、見事なまでに寄せている感じがありますね
この辺りはエンドロール直前でお楽しみいただくとして、かなり有実に再現されていると思います
挑戦自体は結構地味ですが、アーカイブと再現映像を混ぜ合わせて、ナイアドのプライベートにまで踏み込んでいきました
この辺りはウィキペディアに書いているのですが、それにしても外道というのはどこにでもいるものです
その外道のウィキペディアもあるというのが結構な衝撃でしたねえ
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は史実ベースになっていて、若年期の映像で過去を説明し、14歳時の性的虐待まで踏み込んでいきます
エンドロール後に登場するように、チーム・ナイアドはほぼ実名で登場し、実際に着用していたマスク&ダイバースーツもそのまま再現しています
物語は、60歳を迎えたナイアドが、母の死(2007年)に人生を見つめ直すというもので、啓発を受けた書籍、見返している自分の過去の映像なども登場していました
その後の人生もダイジェストで紹介されていて、本人がまだ健在であることにも驚かされます
アーカイブで「脚色が過ぎる」と談笑するナイアドとボニーの関係性はとても微笑ましく思えましたね
彼女は性的虐待の他にレズビアンであることも公言していて、元カノまで登場したりします
その彼女がボニーとの関係をツッコむという一幕もあり、ここまで描いちゃんだなあと驚いてしまいました
映画は、スポーツ映画の胸熱展開で、ラストのスピーチはやりすぎな感じがありますが、映画的にはOKな演出だと思いました
それにしても、扱いづらそうだけど、コメディエンヌになれそうなくらいチャーミングな女性だったと思います
■ダイアナ・ナイアドとその偉業について
ダイアナ・ナイアド(Diana Nyad)は、1949年生まれの長距離水泳選手で、作家、ジャーナリストとして活躍されている人でした
1975年にマンハッタン周囲(45km)を泳ぎ、1979年にはバハマのノースビミニからフロリダ州のジュノビーチまでの164kmを泳ぎ切ったことで、全米への認知度が上がりました
映画で描かれているのは、2013年64歳時の時に果たした「キューバのハバナからフロリダ州キーウェスト」間の遠泳成功までの道のりになります
これまでは、1978年にウォルター・ポーニッシュ、1997年のスージー・マロニーが果たしていましたが、この二人は「サメのゲージ」を使用していました
また、ポーニッシュの場合は、フィンの使用と護衛船での数回の短い休憩があったとされています
2013年の横断に関しての論争が起こっていて、これは「独立した監視員の不足」と「不完全な記録」として正式には承認されていません
これについてナイアドは「これを誰にも証明する必要はない」と公言しています
映画の公開を受けて、2023年9月にも世界オープンウォーター水泳協会(WOWSA)は再度調査をしますが、認定については拒否をしています
この反応は本作を受けての問い合わせが起こることを考慮して発表されています
ナイアドは1986年に米国女子スポーツの殿堂入りを果たしていて、国際マラソン水泳殿堂賞を受賞しています(1978年)
また、2002年にはISHOFアル・シェーンフィールド・メディア賞を受賞しています
彼女はレズビアンを公言していて、幼少期に性的虐待を受けたことも明らかにしています
このあたりの詳細はアメリカの有料記事をディグるしかないのですが、本編以上を知りたいかと言えば微妙かなと思います
■引用「メアリー・オリバー」について
本作にて、ナイアドが感化されるのがメアリー・オリバー(Mary Oliver)の詩集でした
メアリー・オリバーは1935年生まれの詩人で、アメリカで最も売れている詩人とされています
全米図書賞、ピューリッツァー賞を受賞しています
最初の詩集は彼女が28歳の時に出版した『Voyage and Other Poems(1963年)』となります
そして、5番目の詩集『American Primitive』にて、ピューリッツァ賞詩賞を受賞するに至りました
その後も1990年『House of Light』にてクリストファー賞とLLウィンシップ/PENニューイングランド賞を受賞、1992年『New and Selected Poem』にて全米図書賞を受賞しています
ちなみに映画で引用されらのは「The Summer Day」という詩になります
以下が詩の全文になります(翻訳はグーグル翻訳、アレンジは筆者になります)
Who made the world?(世界を作ったのは誰?)
Who made the swan, and the black bear?(白鳥とツキノワグマは誰が作ったの?)
Who made the grasshopper?(バッタを作ったのは?)
This grasshopper, I mean—(このバッタは、つまり)
the one who has flung herself out of the grass,(草の中から飛び出して)
the one who is eating sugar out of my hand,(私の手の中の砂糖を手に入れている)
who is moving her jaws back and forth instead of up and down—(顎を上下ではなく、前後に動かしている)
who is gazing around with her enormous and complicated eyes.(大きくて、複雑な眼差しで、周りのものを見ていますね)
Now she lifts her pale forearms and thoroughly washes her face.(青ざめた腕を持ち上げ、顔をしっかりと拭いている)
Now she snaps her wings open, and floats away.(そして、羽根を広げ、飛び立とうとしている)
I don’t know exactly what a prayer is.(祈りとは何か、正確にはわからない)
I do know how to pay attention, how to fall down
into the grass, how to kneel down in the grass,(でも、どうやって注意を払い、草の中で倒れ込むか、その方法は知っている)
how to be idle and blessed, how to stroll through the fields,
which is what I have been doing all day.(どうやってぼんやりと過ごして幸せに感じるか、あるいは野原を散歩するか、それは私が一日中やっていることね)
Tell me, what else should I have done?(教えて、私は何をすべきなの?)
Doesn’t everything die at last, and too soon?(死ぬのはあまりにも早くないですか?)
Tell me, what is it you plan to do
with your one wild and precious life?(教えて、たった一度の貴重な人生で、あなたは何をするつもりなの?)
ナイアドはこの言葉の意味を自分の人生に重ね合わせ、そして年齢のことは問わずに、やるべきことを見出しています
28年前に止まった時間を取り戻すことになるのですが、燻っていた人生はゆっくりと流れ、充実した人生は一瞬にて過ぎ去ってしまいます
何かを始めるのに年齢は関係ありません
メアリーが自分の手に乗ったバッタを見て人生を考えるように、人生の岐路というものはどのタイミングで起こるのかわからないのですね
ナイアド自身も何度もその詩集を目にしているはずですが、その意味を感じるのに60年という時間と空白の時間が必要だったと言えるのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、ある老齢の女性の偉業を再現したもので、その意図には様々なものがあります
ひとつは公式に認定されていないことへのアンチテーゼになっていて、アーカイブ映像を取り入れて、記録に残っていないものを再現していると言えます
協会がわざわざ不認定を強調するのは、それだけ再現度が高く感じられるからかも知れません
この認定騒動は何をもって認定とするのかは難しく、映像が残っていても、1から10まで残っていないと認めないでしょう
彼女自身が言うように、協会が何を言おうと、彼女とその目撃者が知っていれば、それで良いと思います
そして、もうひとつの意味は、現代に生きる人々へのメッセージ、高齢化する社会に向けてのものだと思います
どの国も少子高齢化の社会に向かい、若年層というものの意味が変わり、何かを起こす人も減りつつあります
そう言った時代において、年齢を問わずに挑戦していくことは、次世代に向けてのメッセージになると言えます
自己保身で逃げ切りを図る世代に向けてのカウンターパンチ
そう言った概念へのアンチテーゼとして、本作品の存在意義があるのかなと感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP:
https://www.netflix.com/title/81447231?s=i&trkid=0
