■これから始まる「晴明と博雅の物語の序」としては及第点だと思います
Contents
■オススメ度
山崎賢人のファンの人(★★★)
『陰陽師』シリーズのファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.4.19(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2024年、日本、113分、G
ジャンル:陰陽寮で起きた不可解な殺人事件をめぐる安倍晴明の活躍を描いたファンタジーアクション映画
監督&脚本:佐藤嗣麻子
原案:夢枕獏『陰陽師』シリーズ
キャスト:
山﨑賢人(安倍晴明:陰陽寮の学生、忠行の弟子)
染谷将太(源博雅:醍醐天皇の孫、音楽好きの貴族、中務大輔)
奈緒(徽子女王:醍醐天皇の皇孫、元伊勢斎宮)
(幼少期:木村日鞠)
安藤政信(平郡貞文:農家生まれの陰陽寮の最年長の学生)
村上虹郎(橘泰家:上から目線で傲慢な陰陽寮の特業生)
板垣李光人(帝:醍醐天皇の第十四皇子)
國村隼(賀茂忠行:陰陽家、晴明の師匠)
北村一輝(惟宗是邦:天文博士、天文道の専門家)
小林薫(藤原義輔:陰陽頭、陰陽寮のトップ)
桐山漣(丈部兼茂:火鉢で腕を焼かれる学生)
石田法嗣(小野春光:平郡貞文と晴明を追う学生)
高橋里恩(佐伯義忠:平郡貞文と晴明を追う学生)
嶋田久作(葛木茂:暦博士)
眞島秀和(寛朝:晴明と話す真言宗の僧侶)
筒井真理子(小?薫子:橘泰家の母)
吹越満(橘泰家の屋敷の使用人)
蔵原健(右大臣)
山崎一(左大臣)
中台あきお(僧侶)
細谷雅幸(寺の案内人)
加賀壮也(呪を見たがる公達)
浦井のりひろ(呪を見たがる公達)
平井まさあき(呪を見たがる公達)
福田裕也(漏刻博士)
島崎義久(陰陽師)
あらいはんば(陰陽師)
歌川貴賀志(陰陽師)
伊藤雄太(陰陽師)
宇賀神亮介(陰陽師)
奥津裕也(陰陽師)
市原朋彦(学生)
高品雄基(学生)
杉本泰郷(学生)
倉富なおと(学生)
仲哉(学生)
颯俊介(学生)
松村陸平(学生)
葉山侑樹(学生)
宮本龍之介(学生)
田中尚樹(学生)
佐藤岳人(学生)
鳥居功太郎(学生)
井上雄太(学生)
河村晃太郎(学生)
平良太宣(学生)
小結湊仁(学生)
宮澤佑(学生)
若尾颯太(学生)
後藤田しゅんすけ(学生)
笠島智(徽子女王の女房)
島津尋(徽子女王の女房)
松本享子(徽子女王の女房)
小池まり(徽子女王の女房)
飛香まい(帝の女宮)
青島心(帝の女宮)
黒澤はるか(帝の女宮)
竹田有美香(帝の女宮)
溝口奈菜(帝の女宮)
管井知美(帝の女宮)
河原あずさ(帝の女宮)
津田健次郎(ナレーション)
■映画の舞台
平安時代(948年)
日本:平城京
ロケ地:
岩手県:奥州市
えさし藤原の郷
https://maps.app.goo.gl/G2DCAp9sfNoSvRj36?g_st=ic
静岡県:裾野市
不二聖心女子学校
https://maps.app.goo.gl/t8hs8uL5nSUa36576?g_st=ic
京都市:右京区
大覚寺
https://maps.app.goo.gl/rHsy3KoeTMXA7Tv86?g_st=ic
仁和寺
https://maps.app.goo.gl/zgDiLAJGRKPBiwzB7?g_st=ic
奈良県:奈良市
平城京跡記念公園
https://maps.app.goo.gl/FYoatspqcrzaNybC8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
平安時代、平城京の中では、帝を中心とした権力行動が出来上がっていた
国を動かすのは陰陽師と呼ばれる能力を持った人々で、そこにある陰陽寮では学生(がくしょう)たちは、陰陽師になるための訓練を積んでいた
ある日、貴族の源博雅は徽子女王の悩みを解決するために晴明の元を訪れた
彼は見事に徽子女王の悩みを解決し、その噂は京内に響いた
それも束の間、陰陽寮にて、得業生(とくごうしょう)の橘泰家が殺される事件が勃発する
そして、その犯人を探したものが次の得業生になれると言う試験が行われることになった
時期の得業生に推薦されている陰陽博士の愛弟子・晴明に嫌疑がかかるものの、彼は独自の調査で犯人へと近づいていく
テーマ:呪の真理
裏テーマ:深層で結びつくもの
■ひとこと感想
陰陽師と言う存在自体は知っていますが、これまで小説も漫画も読んだことがありませんでした
古書店を経営していたので、よく売れる本だなあぐらいの感覚で、呪術を扱った特殊能力系の話だと言うことぐらいは知っていました
映画は、この手の特撮だと大体彼が主人公になると言う配役で、呪術のCGがすごいことになっていましたね
物語としては、「0」と言うことで、晴明と博雅のバディが誕生する過程を描いていました
パンフレットを購入しましたが、色んな説明があっても、字が細かすぎて読むのが辛いですね
エンドロールを載せているのですが、ほぼ字が潰れていて、これを読めと言うのは無理な話だと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
晴明が陰陽寮で起きた(正確には得業生の屋敷)殺人事件を解決する中で、全てを牛耳っていた黒幕と相対すると言う内容になっていました
その裏側で、博雅と徽子女王の恋愛話が進むと言う、深層心理の世界だけど、少女漫画のような展開になっていましたね
晴明と博雅がBLっぽい感じになっているのは、監督の深層心理にそのような願望があるからなのでしょうか
それとも、原作も「薄い本」の餌食になりやすい設定なのかもしれません
映画は、バディ誕生と晴明の能力を見せると言う内容になっていましたが、肝心なセリフが聞き取りにくいのが難点でしたね
そのうち「字幕版」の要望が大きくなって、実現しちゃいそうな気がします
晴明の必殺技?の呪文唱和、全く聞き取れませんでした(効果音もやかましかったです)
■陰陽師とは何か
陰陽師とは、古代日本の律令制下において、中務省(今の宮内庁、総務省)の陰陽寮に属していた官職の一つで、「陰陽五行思想に基づいた陰陽道」によって、占筮及び地相などを職掌する方技として配属された人の事を言います
「陰陽五行思想」とは、中国の春秋戦国時代に発生した「陰陽説と五行説がのちに結合した思想」のことを言います
陰陽思想は、森羅万象あらゆる事象をさまざまな観点から「陽と陰の2つに分類する思想・哲学」のことを言います
また、五行思想は、古代中国に端を発する自然哲学のことで、万物は火・水・木・金・土の5種類の元素ならなる説のことを言います
中国にて興った陰陽五行説が日本に来て、そこに天文学、暦学、易学、時計などが絡んできて、陰陽師たちはそれらを日本独自に進化、完成させていきます
602年の推古天皇の頃に観勒(百済出身の僧)が聖徳太子をはじめとして選ばれた34名の官僚に陰陽五行説を含む諸学を講じたところ、その思想が日本の国政に大きな影響を与えるようになります
これによって、暦が官暦として採用されたり、遣隋使の派遣、聖徳太子の十七条憲法、冠位十二階などの制定に影響を与えることになりました
天武天皇に至っては、壬申の乱の戦局を自分の手で占っていたとされています
そして、676年に陰陽寮や占星台などを設け、陰陽師という用語が使われるようになります
その後、718年の養老律令において、中務省の内局である小寮として陰陽寮が設置され、その方技として「天文博士・陰陽博士・陰陽師・暦博士・漏刻博士」が常置されることになります
これが映画で描かれる時代の話になっていて、この200年後の平城京時代が舞台となっています
■呪(しゅ)について
映画に登場する「呪」は、マインドコントロールを行うようなものに描かれていて、言葉の力を利用して、相手をコントロールするという描かれ方をしていました
意識を支配するために使用されていて、自分自身が自分の呪に囚われることもあるとされています
映画では、「友達も呪のようなものだ」と晴明が語っていますが、人間社会における様々な概念というものの根幹にあるように思えます
呪と書くとマイナスイメージに思えますが、それを肯定的に捉えるために、様々な言い換えをすることがありますね
日本には言霊信仰が古代よりあり、事象を正確に表すために様々な言葉があります
雨という天候を表す場合でも、その強さ、季節、長さ、地域によって様々な言い方があり、その言葉によって情景を封じ込めるというものがありました
口癖が習慣を作り、それが行動に現れるなど、思想も大切ですが、その思想を言語化する際にどのような言葉を選ぶかも重要なのですね
陰陽師は、このような言葉選びにも長けていて、それが意識にも作用することを知っています
映画では、自分に掛けられた呪に気づく晴明を描き、意識の中ならば壁を越えられるということで、ワープのような技を使っています
空間を切り裂き、一気に目的地に向かうのですが、意識下だと移動は自由なのですね
陰陽頭が仕掛けた意識の操作を逆に利用することになるのですが、晴明にはそれ以上の力が備わっていました
それは「現実世界で意識を物質化する能力」であり、映画のラストにて登場していました
陰陽頭は「お前は本物か」と言い、この能力を有するものこそが「真の陰陽師である」と言えるのでしょう
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、これまでに数多く映像化されたシリーズの前日譚ということになっていて、新しい『陰陽師』シリーズの幕開けとなっています
原作はいわゆるバディ推理ものみたいなテイストで、このタッグがいかにして生まれたのかを描いていく序章になっていました
陰陽寮は内裏とは直接的な関わりはなく、いわゆる雲の上の存在になっていて、貴族の博雅が陰陽寮に人を訪ねてくるというだけで大騒ぎになっていました
博雅は中務大輔(なかつかさたいふ=中務省の四等官のトップ)であり、かなりのお偉いさんということになります
そんな博雅が「自身の想い人・徽子女王」の悩みを解決するために晴明を頼るという流れになっていて、それほどまでに晴明の名前は宮廷に響き渡っていたことになります
博雅はコメディ担当要員でもありますが、彼の言動が晴明を救うという流れもあり、晴明の天才性を補完する役割を担っています
いわば、博雅は晴明を映す鏡として、彼が意図しない部分を照らしていく存在であると言えるのでしょう
今後、これまでのシリーズを焼き直すのかはわかりませんが、新シリーズの序章としてはOKだと思います
晴明のキャラクター、能力、人間関係などが明確で、彼らの住んでいる世界も何となくイメージできるものになっています
映画としては、当時の言葉がわかりにくいので「現代語に翻訳」という荒技を使ってはいますが、語句に関しては当時のものが使われていましたね
なので、当時に使用されていた言葉とか、陰陽師の世界で用いられる専門用語などは頭に入れておいた方が良いかもしれません
一部の多用される言葉はしっかりと説明されますが、それ以外の細かなところが「音を文字に変換できない問題」というものが付随しています
また、滑舌の悪さと効果音が重なって聞こえにくい部分もありました
雰囲気で察して流さなければならないシーンがいくつかあったので、音だけ覚えておいて、パンフレットの解説などを頼りに、後追いで補完することをおすすめいたします
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100612/review/03739532/
公式HP:
https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/