■性衝動をどうやって克服してきたのかは疑問で、それがないと「楓に性的魅力がない」というふうに見えるのは可哀想かなと思ってしまいます
Contents
■オススメ度
胸キュン系ラブコメが好きな人(★★★)
キャストのファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.5.16(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2023年、日本、113分、G
ジャンル:幼馴染から進展できなかった男女を描いたラブロマンス・コメディ映画
監督:高橋洋人
脚本:吉田恵里香
原作:中原アヤ『おとななじみ(集英社、2019年)』
キャスト:(子役は自信なし)
井上瑞稀(青山春/ハル:恋愛に鈍感な「超残念男子」)
(小学生:高木波瑠)
(幼少期:上野山夢輝)
久間田琳加(加賀屋楓:ハルのことを20年思い続けている幼馴染、オカン系女子)
(小学生:竹澤咲子)
(幼少期:ポン璃菜アメリー)
萩原利久(蓮見伊織:楓を想う超完璧クール男子、ハルの親友)
(小学生:小山一輝)
(幼少期:齋藤潤)
浅川梨奈(小戸森美桜:バリキャリのデザイナー、モテアネゴ女子、ハルと楓の親友)
(小学生:岡本望来)
(幼少期:高乘蒼葉)
岡本夏美(立花恵:ハルの元同僚、あざと系女子)
菊池亜希子(加賀屋香織:楓の母、病気で他界)
穴戸美和公(荻窪美代子:楓の上司)
村上健志(目黒智宏:楓にアプローチするエリアマネージャー、既婚者)
横澤夏子(目黒みちこ:智弘の妻、CA)
アンミカ(蝶子:カフェの店主、ハルたちの恋愛アドバイザー)
松金よね子(トメ:カフェの常連)
二階堂高嗣(ハルと楓のアパートの隣人)
碧斗(ハニワダンサーズ)
LAG(ハニワダンサーズ)
メメタア(ハニワダンサーズ)
Kan-G(ハニワダンサーズ)
じゅんぺいtheグレート(ハニワダンサーズ)
早織(ハルの母?)
鈴樹志保(伊織の母?)
北澤舞悠(伊織の部下?)
山崎果倫(楓の同僚?)
■映画の舞台
日本のどこかの地方都市
ロケ地:
神奈川県:横浜市
よこはまコスモワールド
https://maps.app.goo.gl/NquZSm5QadU5GanZA?g_st=ic
横浜みなとみらい万葉倶楽部
https://maps.app.goo.gl/FnPP3yybTu78C2aq9?g_st=ic
千葉県:我孫子市
我孫子第三小学校
https://maps.app.goo.gl/qQZRK93QdXB2bw2m9?g_st=ic
千葉県:成田市
撮影スタジオ ナリタリア 747ハンガー
https://maps.app.goo.gl/oxGFsHhV7ZMWTs6H9?g_st=ic
東京都:台東区
イリヤプラスカフェ@カスタム倉庫
https://maps.app.goo.gl/RS2V8D7QeNsGE7637?g_st=ic
東京都:世田谷区
Bet池尻大橋
https://maps.app.goo.gl/6koiPqoUh6q8Yzsz7?g_st=ic
埼玉県:草加市
じゃぱん亭 長栄店
https://maps.app.goo.gl/ZEgdM39LNTSaYhy68?g_st=ic
■簡単なあらすじ
4歳の頃に隣同士になったハルと楓は、その後同じ進路を歩み、社会人になっても同じアパートの隣同士になっていた
ズボラで残念なハルを「おかん」のように面倒を見る楓だったが、彼女はずっとハルに想いを寄せていた
楓はある弁当チェーン店に就職していたが、それも「その店の唐揚げがハルの好物だから」であり、ハルの母から合鍵を預かって、部屋の掃除やら何から何まで面倒を見ていた
ハルも亡くなった楓の母・香織と約束をしていて、それによって彼自身もある想いを封印している
そんな彼らには幼馴染の伊織と美桜がいて、二人は「いつまでウジウジしているのか」と苛立っていた
だが、伊織は密かに楓を想っていて、楓がハルから離れて自立しようとしているのをきっかけに、その想いを伝えることになったのである
テーマ:想いは言葉にしないと伝わらない
裏テーマ:恋愛の区切り
■ひとこと感想
20年間片思い中の幼馴染ということで、主人公たちの年齢は24歳前後になっていました
少女漫画としては大人の部類に入る年齢設定でしたが、展開される内容は小学生のイチャラブの精神性を超えていないように思います
少女漫画が原作で、対象年齢が低いので、読者層に合った内容になっていました
地雷覚悟で踏み抜くのがジャニーズ映画に対する所作で、今回も「これからブレイクする俳優さん探し」をしていましたが、印象的だったのは立花恵役(ハルの元同僚)の岡本夏美さんと、バイプレイヤーとして荻窪役(楓の店の後任マネージャー)の宍戸美和公さんでしたね
良い意味で脇を固める女優さんとして活躍されると思います
映画は、恋愛偏差値の低い男女のもどかしい恋愛劇なので、楽しめるのは中学生以下かなと思います
とにかく寒い展開が続くので、大人が観る映画ではないのですが、細かなギャグは大人でないとわからないものが多かったですね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
大人になっても恋愛下手という人は多くいると思いますが、日常生活まで中学校ぐらいから変わらないというのは相当だと思います
「おかん」系女子なのですが、舞台は関東のようで、このあたりの土地勘がよくわかりませんでした
幼馴染から「おとななじみ」になるのでうが、この言葉の定義がよくわからず、感覚的に腐れ縁のようですが、ガッツリと恋人関係になっていました
原作を読めば理解が進むのかもしれませんが、さすがにハードルが高すぎるように思います
告白ありきの日本の恋愛文化の弊害のような物語で、恋愛がきちんと終わらないと次にはいかないという律儀さもありました
ハルは人間として情けないのですが、フラッシュモブのシーンだけはキレッキレでしたね
あのシーンだけはものすごく輝いていたので、ファンにとっては至福の瞬間だったのではないでしょうか
■幼馴染が恋人にならない理由
恋愛には二つの側面があって、一つは「自分の想いを伝える求愛行動」で、もう一つは「喪失への畏れ」であると思います
幼馴染というポジションは、「常にそばにいる」という状況なので、喪失の畏れというものは「相手が誰かを好きになる」ということが起きないと、感じることは少ないのですね
今回は「幼馴染+両思い」という状況なので、どちらも「他の異性に行かない」という状況になっていて、それゆえに「危機感が欠落」しているという状況に陥っています
お互いに「相手に良い人ができたら諦められる」と思っていて、自分の想いを消してくれる「第三者」というものを求めていました
そんな時に立候補したのが伊織という「二人のルールを壊す幼馴染」で、これによって二人の概念が覆されてしまいます
二人は「幼馴染」という「永遠に一緒」という感覚の中で育ってきたのに、その関係性が「嘘だった」という現実を突きつけられます
そして、この行動がきっかけで「喪失への畏れ」が噴出し、同時に「求愛行動」に拍車がかかって来るのですね
これまでに言語化せずにきたものが一気に心をそばだたせて、そして相手を意識し始める
そんな中で動いていく物語になっていました
幼馴染の場合、通常の男女の出会いに生じる「知らない部分」というものがあまりなく、知らないが故に隠せてカッコよく見せたいという欲が発生しようがありませんでした
二人の場合は「カッコつける」という感覚がなくて、秘密もそれほどない
そう言った関係性は「相手の秘匿によるイメージ」を膨らますことができないのですね
恋愛は「相手のことを好きになった時」に、相手に対する過大な妄想をして、過ごしたい日々を夢想することになります
でも、それらは全て「想像できてしまうし、知っている部分が多い」ので、その妄想すらも逸らないという状況になってしまうのですね
このような固定概念を打破したのが「伊織の行動」で、それによって「伊織が隠してきたもの」というものが楓に妄想をさせていきます
でも、残念なことに、その妄想の全てが「ハルとしたかったこと」という残酷な想像になって、楓は自分の想いを知ることになってしまいました
■精神的に幼い社会人は本当にいるのか?
映画を見ていると、この二人は実社会において過ごせているのか、と不安になってしまいます
精神的に幼く、行動も幼いので、社会で通用するかわからないように見えるのですね
でも、彼らにもONとOFFはあって、ハルに関してはあまり描かれないまま物語は進んでいきます
ハルは何かしらの小さな企業に所属していて、上司のセクハラを止めたが故にクビになっていました
立花さんを助けることが言い訳になっていて、日頃の鬱憤を晴らしたと本人は言っています
彼がその行動に出たのは伊織の行動があったあとだったと思うので、日常のパワハラへの抵抗というものが、伊織との関係性で起きた感情とリンクしているように思えました
こう言ったプライベートとビジネスを連動してしまう精神的な幼さというのは、実社会においてはビジネスのパフォーマンスをマインドが支配している状況と言えます
なので、仕事をプライベートに引き摺り込んだり、プライベートを仕事に引き摺り込むと厄介なことになってしまいます
対する楓の方は「チェーン店の店員」というポジションで働いていましたが、「自分の働いている企業の規模を知らない」という状況になっています
通常だと、全国規模のチェーンだと「本社面接」のようなものがあって、店長に正社員を雇う権限というのはありません
このあたりが「アルバイト上がりの社員なのか?」というところがあるのですが、それでも企業の規模を考えると無理があると思います
店長はいわゆるエリアマネージャー的な存在になっていて、その後任が荻窪ということなので、実質的には「エリアマネージャーが不在の時に店の責任者になる」という副店長のような立場だったはずなのですね
ですが、バイトリーダーみたいな扱いになっていたのが、あまり現実味がないように思えました
ものすごく大きな規模の会社で「地方面接でOK」だとしても、その場に採用担当の本部の人間は来るので、せめて「本社は東京で規模はそこそこ」にしておいて、今度「全国展開するから抜擢されて九州行きになる」という方がリアルに寄っていたのかなと思いました
とは言え、九州行きは「喪失の増大」という役割以外のものはなく、そこまで考える必要はないのかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、両思いが結実する様子を眺める映画になっていて、それを推進させたのが伊織という人物でした
伊織は「ワンチャンあるかも」と思っていましたが、実際には「自分の恋愛を吹っ切るため」に行動をしたのだと思います
彼は「いつまで経っても進まない二人」を見ていることで幸福感はありましたが、彼自身が社会的に成功をしていくことで、「想いだけでは幸せになれない」というものを感じてきたのだと考えられます
もっと、楓の喜ぶ顔を見たいと思って、それがハルにはできないことが増えてきて、これが「大人の恋愛(=経済的自由がもたらすもの)」へとシフトしていきます
伊織と楓のデートは大人の恋愛に近いものがあって、これまでに経験したことがないものがたくさん詰まっていました
大人の世界(=裕福な世界)を見せることで、ハルとの距離を取れるのかなと思った伊織でしたが、楓にはお金で買える幸せ以上の幸福感を「ハルとの生活」で感じていたのですね
なので、伊織がどんなに尽くしても、新しい世界は「ハルと一緒にしたいことノートに一文を足すだけ」の効果になってしまっていたと言えます
伊織の行動は、逆に「楓のハルとの妄想の世界を拡げる」ということにつながっていて、思惑とは逆の効果をもたらしてしまったと言えるのではないでしょうか
この展開が伊織の想定内なのかはわかりませんが、伊織自身は次のステージに行きたいと考えていたのだと思います
それを促したのが、恋愛の先にある「性欲」というものを満たしている美桜の存在だったと思います
美桜が誰かを連れて消える時、健全な男子なら「その先」というものを想像してしまいます
美桜はその辺りはあっけらかんとしていて隠さないので、より伊織の性欲というものを刺激していくのですね
それに寄って、伊織が抱えていた「楓との大人のラブロマンス」を実現させたいと考えていました
楓に性欲があるのかないのかは明確ではありませんが、幼い子ども向けの少女漫画なので、あえて「女子は性的には聖人」に描いていたのかなと思います
原作がもっと成人寄りならば、日常で描かれる「エロ要素」というのはもっと登場していたはずなのですが、「下着姿に恥ずかしくなる」ぐらいに留まっていましたね
その下着姿を見て「あらぬ妄想を抱かない」というテイストがあって、それが本作における「処女の聖人化」みたいなものにつながっていました
この映画がかなり虚構寄りに見えてしまうのは、セックスというものを恋愛の延長線上に置いていないところなのだと言えますね
実際には年頃の年齢を経過してきたはずなので、3人には普通に「相手を性的に見る」という瞬間があったと思います
それらは「踏み込むと関係性を壊す」要因ではありましたが、青春時代の彼らは描かれていないので、そのあたりをどうやって克服してきたのかなというのは不思議に思います
でも、少女漫画の純粋な恋愛の世界観だと、それを描くことはタブーに近く、それゆえにこのような物語になっているのかな、と感じました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385395/review/534ec67a-53c4-4ae6-a7fe-e07ec6cb73fc/
公式HP: