■トムとジェリーのように、いつまでもその関係のままでいて欲しいと思ってしまいます
Contents
■オススメ度
泥臭い男の喧嘩を見たい人(★★★)
ブラックコメディが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.5.19(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2023年、日本、118分、G
ジャンル:人を轢き殺した刑事と、それを追う監察官を描いたクライムブラックコメディ
監督:藤井道人
脚本:平田研也&藤井道人
原作:キム・ソンフン『끝까지 간다(邦題:最後まで行く、2014年)→Amazon Prime Videoリンクhttps://amzn.to/3OrqQ4a
キャスト:(わかった分だけ)
岡田准一(工藤祐司:轢き逃げ事件を起こす刑事)
綾野剛(矢崎貴之:祐司を追う監察官)
広末涼子(工藤美沙子:別居中の祐司の妻)
寺田藍月(工藤美奈:祐司の娘)
浅井たみ子(工藤カズエ:祐司の母)
磯村勇斗(尾田創:祐司に撥ねられた男)
清水くるみ(岸谷真由子:創の仲間)
柄本明(仙葉泰:仙葉組の組長)
杉本哲太(淡島幹雄:祐司の上司、刑事課の課長)
駿河太郎(久我山太地:祐司の同僚)
黒羽麻璃央(松田優生:祐司の同僚)
駒木根隆介(川上昌平:祐司の同僚)
諏訪太朗(祐司の同僚)
泉礼文(北原敦:祐司の同僚)
山中崇(梶征士:交通課の警察)
野川慧(交通課の警官?)
山田真歩(植松由紀子:矢崎の婚約者、県警本部長の娘)
千葉哲也(県警本部長)
富山えり子(葬儀屋)
アベラヒデノブ(ハッカー?)
安東弘樹(カウントダウンレポーター)
福澤重文(ドライアイス業者)
比佐仁(ドライアイス業者)
五頭岳夫(火葬場の職員)
福田弘(火葬場の警備員?)
■映画の舞台
挨原市(架空)
ロケ地:
愛知県:名古屋市
レイヤード ヒサヤオオドオリパーク ZONE1(カウントダウン)
https://maps.app.goo.gl/kYRoAcxhqMbEqAT46?g_st=ic
ストリングスホテル 名古屋
https://maps.app.goo.gl/TzDAW3Juz7oM56VV6?g_st=ic
スタンザベルデ名古屋 民泊
https://maps.app.goo.gl/TYAeqxWG2KnCPgLS7?g_st=ic
愛知県:知多市
新舞子マリンパーク(検問所&陸橋)
https://maps.app.goo.gl/ffXURdgrN3vWBRiv7?g_st=ic
愛知県:豊田市
妙楽寺の奥(金庫)
https://maps.app.goo.gl/xy4Ux5K1DhDW7yfq5?g_st=ic
愛知県:常滑市
旧常滑市役所(挨原警察署)
https://maps.app.goo.gl/HiQXwUFN7kTjjzVz5?g_st=ic
三重県:四日市市
小牧地区コミュニティープラント(事故現場)
https://maps.app.goo.gl/2bujFBf3Erw3idQ17?g_st=ic
三滝通り交差点(パトカーに追突)
https://maps.app.goo.gl/vZerZwwGFF4nevCq8?g_st=ic
(有)清水自動車工業所(修理工場)
https://maps.app.goo.gl/uHbosWcKnf18kkjAA?g_st=ic
三重県:桑名市
鯉料理 大黒屋(仙葉の自宅)
https://maps.app.goo.gl/EjEDqknGD6fK6rxx9?g_st=ic
メゾンテラモト(美沙子の家)
https://maps.app.goo.gl/Zx7DkKJcZJC25feB6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
挨原署の刑事・工藤祐司はヤクザとの癒着を監察官・矢崎貴之に疑われ、母の介護疲れと借金に追われていた
妻・美沙子から愛想を尽かされて別居し、娘・美奈とも離れて暮らす日々が続いていた
ある雨の夜、母の容体の急変にて病院に呼び出された祐司は、その道中にて轢き逃げ事件を起こしてしまう
目撃者もいなかったため、祐司は死体をトランクに詰めて立ち去り、病院へと向かった
年末に差し掛かっていたために各所では飲酒検問が行われ、祐司もそれに引っかかってしまう
執拗に尋問する交通課の梶と一悶着あった頃、偶然その道を祐司を疑っている矢崎が通りかかった
事なきを得た祐司は、葬儀社のダクトに死体を隠す
その後、矢崎からの聴取を受けた祐司だったが、「何かを隠している事」を看過されてしまう
やり過ごしたと思った矢先、祐司の携帯に一つのメッセージが届く
それは「お前は人を殺した。知っているぞ」というものだった
テーマ:真っ当な人生
裏テーマ:俯瞰できる者が勝つ
■ひとこと感想
韓国映画のリメイクということで、「人を轢き殺した刑事」がそれを隠蔽しようと奮闘する様子が描かれています
ハードボイルド奈刑事ドラマの印象がありますが、色々とぶっ飛んでいて、いわゆるブラックコメディの部類に属するのかなと思いました
不遇と救済の連続の背景にあった「ある男の企み」
映画は前半を祐司目線で語り、後半を矢崎目線で語るという内容になっています
なので、前半の違和感が後半ですっきりと形になるというシナリオですね
日本映画でここまで泥臭くて、俳優陣が大変なことになる映画というのは珍しくて、かっこつけてキレイな顔でアクションをする映画が前時代の異物のように思えてきます
とにかく展開は無茶苦茶なのに、妙なリアリティがある映画という感じに仕上がっていますね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
前半はスリラー、中盤からミステリーになって、ラストは「ホラー?」という感じになっていましたね
矢崎の執念がネタっぽくなっていて、最後は二人とも精神崩壊をしていたように思います
全てを失った二人が最後までしがみつきあっていくのですが、後始末のことを考えると、戦っている間は至福なのかもしれません
映画が、それぞれにキャラの深みがあって、矢崎がこだわる理由も明確で、周囲からどのように思われているかもきちんと描いていきます
後半の格闘シーンは「体力尽きたけど精神で動いている」という感じになっていて、達観したような笑いがシニカルになっていましたね
この時の二人の顔がとても印象的で、内心楽しくなってしまっているんだろうなあということが伺えます
「最後まで終わってねえし」とツッコむのは野暮なのかもしれませんが、「いつまでも戦っていてほしい」と思える仁義なき戦いだったのかもしれません
■別視点での補完
本作は「羅生門効果」と呼ばれる手法をとっていて、「轢き逃げ事件」の真相が矢崎視点によって暴露される流れになっています
祐司は自分が轢き殺したと思っていたのですが、実際にはその前に矢崎に撃たれていたことがわかります
それでも、銃殺か事故死かは鑑定しないとわからない感じになっていて、その真相は闇の中という感じになっていました
一つ目の物語(本作だと祐司目線)は「違和感が多い=祐司が理解できない事象」というものがあって、それが「二つ目の物語=矢崎視点」によって、整合性が取れるという感じになっています
祐司視点だと「矢崎の登場はご都合主義」にしか見えないのですが、矢崎視点によって「矢崎の登場は必然」という風に理解できます
この「違和感」というものが「物語のフック」になっていて、また映画が羅生門効果で描かれていることが伏せられていたこともあって「矢崎目線の事実」がサプライズになっていましたね
この効果を隠すことで物語への没入感が増しているので、うまい宣伝になっていたと感じました(映像的には見せすぎではありましたが)
映画の宣伝にて羅生門効果を全面に打ち出すこともできましたが、その使う場合には「多面的である」という状況が必要になります
本作では、最終的に「仙葉視点」が加わることによって多面的にはなりますが、「祐司の起こした事故」「矢崎が登場する理由」に関しては「仙葉視点」は必要ないのですね
なので、「ある事件を取り巻く複数の証言」みたいな感じの宣伝は逆効果になってしまいます
本作の場合は、あくまでも主人公視点を強調し、それを補完あるいは反故することを目的とした「矢崎視点」があるので、事件に関するお互いの誤解を解くためにあるわけではなかったと言えます
最後に描かれる「仙葉視点」は、この二人が知らない「物事を取り巻く真相」ということになっていて、それは祐司と矢崎が知る必要がないものでした
なので、あの二人は最後まで「自分たちが踊らされていたことを知ることもなく戦い続ける」という結末に向かうことになります
「仙葉視点」は観客に対するエクスキューズになっていて、手形を取った真由子の存在とか、その辺りの補完になっていたように思えました
■勝者は一体何を見ていたか?
ラストによって、全ての黒幕は「仙葉」ということがわかり、彼が「祐司の借金苦」「矢崎の出世欲」をうまく利用していたことがわかります
また、尾田を仲間に引き入れるために真由子(=尾田の彼女っぽい女性)を暗躍させていて、彼女は矢崎の手形を取るという罠も仕掛けます
結婚式場で手形を取ることになった時に「控室の出来事がフェイクだったと気づく二人(矢崎と県警本部長)」の顔芸は見事だったと思います
仙葉がどこまで把握していたのかはわかりませんが、警察の内情には詳しかったようで、マネロンしているところまでは掴んでいたと思います
そこで、この金を手に入れるために何が必要かを調べた結果、鍵が二つある(物理キーと指紋認証)ことがわかり、それを手に入れる方法を思い描きます
慎重な矢崎の指紋をどのようにして採取するのか、物理キーを手に入れるためにどうするかという「計画に必要なもの」をピックアップしていきます
その結果、必要となるのは「矢崎を精神的に追い詰める=正常な判断をさせない」ということと、「尾田を引き入れる」ということになりました
祐司が起こした事件は偶発的なものではありますが、それによって「矢崎が遺体を探さねばならない」という状況が生まれています
これに関しては「仙葉の範疇」ではなかったため、彼はあえて「祐司の母の葬儀に参加」して、アクシデントによって起こった不測の事態というものを観察することになりました
その結果、祐司を泳がせることで、さらなる「矢崎の焦燥」を生み出すことがわかり、そこからは事態がどう転ぶのかを眺めていたのだと思います
最終的に「借金苦がある祐司の行動」というのは予測できるので、仙葉にとっては「矢崎が開けようが、祐司が開けようが関係ない」という状況になっていました
仙葉が鍵を手に入れたことを矢崎が認知すればOKで、それによって矢崎がどう動くかというのは、かなり単純なものだったのでしょう
それによって、仙葉の思惑通りにことが運んだということになっていましたね
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画では、幾度となく矢崎が復活し、それはコントのような感じになっていました
車が爆発した後に生き残っているのは無茶だと思いますが、それをツッコむ映画ではないのかもしれません
ラストシーンはどこまでも行く二人が描かれていますが、あの橋のカーチェイスは夢や妄想のようにも思えます
金庫の前で殴り合った後、朝になって二人とも起きるのですが、そこから先は「夢だった」と言われても納得できる感じになっていましたね
実際に夢かどうかは「人それぞれ」ですが、なんとなく「トムとジェリー」のような趣を感じてしまいましたね
生きているとかどうでもよくて、二人はずっとあのまま、真相を知ることもなく争っていく、という感じでしょうか
いつまでも「バカやってるのを眺める」ということは、映画が終わることの物悲しさに通じているのかなと思います
映画は、「急いでいる刑事が人を撥ねた」というだけなのですが、この設定で120分を描き切るのは相当難しいと思います
警官としてのタガを外させる理由、一人で奮闘する理由、生き延びたい理由などを設定の中に落とし込んで、そうして納得行くものにする
協力者なく、無関心で物事が進むのには無理があるので、それを登場させながら、どうやってスムーズに退場させるのか
かなり強引な退場になっていましたが、無関心のまま事が進んでいくこと(=警官なので妙な嗅覚は働くはず)よりは良かったように思いました
遺体安置所の一幕でも「リアリティがあるのかないのかわからないコミカルさ」になっていましたが、本人が必死の分だけ、そのように見えるのでしょう
このあたりのバランス感覚が絶妙で、うまく原作からアレンジされている部分もあったので、口コミで広がって興収に繋がるのかなと思いました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385943/review/7a78ef68-6255-4090-8ab3-5a0b2e7f162e/
公式HP:
https://saigomadeiku-movie.jp/