■いつものを期待していったら、サプライズだったけど、設定(材料)を考えたら納得のオチだったかもしれません
Contents
■オススメ度
リーアム兄さんが活躍する映画が好きな人(★★★)
メキシコ・人身売買カルテルを題材にした映画に興味のある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.5.19(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:Memory
情報:2022年、アメリカ、114分、R15+
ジャンル:若年性アルツハイマーに侵されつつある殺し屋を描いたクライム・ミステリー
監督:マーティン・キャンベル
脚本:ダリオ・スカーダペイン
原作:ジェフ・ヒーラールツ/Jef Geeraerts『De Zaak Alzheimer』
リメイク元:『The Aizheimer Case(2003年、Erik Van Looy、ベルギー)』
キャスト:
リーアム・ニーソン/Liam Neeson(アレックス・ルイス/デヴィッド・マーシャル:メキシコ在住の殺し屋)
ガイ・ピアーズ/Guy Pearce(ヴィンセント・セラ:FBIの児童搾取対策班)
ハロルド・トレス/Harold Torres(ヒューゴ・マルケス:メキシコから派遣された刑事)
タジ・アトウォル/Taj Atwal(リンダ・アミステッド:セラの同僚)
レイ・ファイロン/Ray Fearon(ジェラルド・ヌスバウム:セラの上司)
Ray Stevenson(ダニー・モーラ:エルパソ警察の刑事)
モニカ・ベルッチ/Monica Bellucci(ダヴァナ・シールマン:メキシコシティの不動産王)
Josh Taylor(ランディ・シールマン:ダヴァナの息子)
Daniel de Bourg(ウィリアム・ボーデン:ダヴァナの弁護士、ベアトリス殺害の依頼主)
Natalie Anderson(マリアンヌ・ボーデン:ウィリアムの妻)
Atanas Srebrev(ジョセフ・マイヤーズ:ダヴァナの主治医)
Kate Nichols(ダヴァナのアシスタント)
Mia Sanchez(ベアトリス・レオン:パパ・レオンの娘)
Antonio Jaramillo(パパ・レオン:人身売買業者のトップ)
SigalDiamant(セレナ:ベアトリスのグループホームの管理人)
Lee Boardman(マウリシオ:アレックスの旧友、殺し屋)
Danay Velinova(マリソル:マウリシオの娘)
Scot Williams(エリス・ヴァン・キャンプ:テキサス中央処理施設の責任者、建設業者)
Rebecca Calder(ウェンディ・ヴァン・キャンプ:エリスの妻)
Sofia Soltess(エマ・ヴァン・キャンプ:エリスの娘)
Stella Stocker(マヤ:アレックスとバーで知り合う女)
Louis Mandylor(マヤに絡む酔っぱらい)
Dee(バーテンダー)
Doug Rao(アンディ・ヴィラロボス:ジェラルドの上司)
Josh Macrena(ハウ:ジェラルドの部下)
Vlado Mihailov(コールマン:ジェラルドの部下)
Tudor Chirila(ルイス・マタン:グアダラハラのアレックスのターゲット)
Marina Krumova(マデラ・マタン:ルイスの母)
Kalina Stancheva(クラウディア:病院の受付、病棟クラーク)
Emilia Klayn(エスパソのニュースアンカー)
Jake Tapper(CNNのニュースアンカー、本人役)
Lyubomir Bachvarov(ポール:施設に入っているアレックスの兄)
Raluca Aporodu(ポールの施設の介護士)
Neda Spasova(ウェイトレス)
Devina Vassileva(船上パーティーのウェイトレス)
Kent Sherwood(アレックスを尋問する白バイ警官)
Robert Kelty(ダニーの部下)
Clayton Shane(ダニーの部下)
Alex Apostle(ダニーの部下)
Jefrey Soltess(ダニーの部下)
■映画の舞台
メキシコ:ハリスコ州
グアダラハラ
https://maps.app.goo.gl/NqWHt9iQwQTzPA6t6?g_st=ic
アメリカ:テキサス州
エル・パソ
https://maps.app.goo.gl/Sb7SzGtXt7jfo5mk8?g_st=ic
ロケ地:
アメリカ:テキサス州
エル・パソ
ブルガリア:ソフィア
ソフィア
https://maps.app.goo.gl/CuvQ4sNLr993cmeD6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
メキシコ・グアダラハラにて仕事を終えた殺し屋のアレックスは、若年性アルツハイマーが悪化しつつあり、思い出せないことが増えてきた
依頼主でもある旧友のマウリシオに引退の相談をするものの、「俺たちには引退はない」と言われ、生まれ故郷のエル・パソでの仕事を依頼された
その頃、人身売買の内定を行なっていたFBIのヴィンセント・セラは、その元締めであるレオンに接触していた
娘のベアトリスをセラに当てがうレオンだったが、潜入がバレてFBIが乱入し、そのはずみでレオンは窓から転落死してしまう
ベアトリスは保護施設に送り込まれることになったが、セラは良心の呵責から、彼女に肩入れをしてグループホームへの斡旋と特殊ビザを所得させる
それは、彼女が人身売買の証言者になり得るからだった
アレックスがエル・パソで行う仕事は、建設業者のエリス・ヴァン・キャンプの殺害で、依頼人は弁護士のウィリアム・ボーデンだった
彼の依頼通りにエリスを始末し、金庫に入ってあったUSBメモリーを手に入れたアレックスは、次なるターゲットに向かう
それがベアトリスだったのである
テーマ:人身売買の闇
裏テーマ:忘れゆく正義
■ひとこと感想
リーアム・ニーソンさんが主演ということで、いつものを期待していましたが、「アルツハイマーに罹っている」という設定があって、それによって思わぬ展開を迎えていきます
ルールに反する殺しはしないということで、少女には手をかけないのですが、そこから話がややこしくなっていくあたりは「あるある」だと思います
警察と金持ちと人身売買組織という「いつもの」構図になっていて、話の展開はそこまで奇を衒ったものではありません
黒幕も何となく読めてきますが、黒幕なりの手法で周囲を固めていて、それに対抗する警察が一枚岩ではないというのもあるあるではないでしょうか
後半になって、まさかの展開になるのですが、リーアム兄さんもとうとうこの手の役をすることになったのだなあと思いました
人物相関がかなりややこしいのですが、観ている最中はそこまで混乱はしないでしょう
むしろ、映画を観た後にフルキャストを眺めて「こいつ誰?」となることが多いように思えます
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
メキシコの人身売買組織のバックには白人上流階級がいたという内容で、ある証拠を掴まれた黒幕が、それを隠蔽するために暗躍をしていきます
その一環として、アレックスたちが使われるという内容になっていて、行き過ぎた暗躍に抵抗が起こるという感じになっていました
アレックスがなぜ子どもを殺さないのかは明言されませんが、何らかのトラウマがあるように描かれています
でも、それが何なのかわからず、アレックスが行動を変える起点としては弱すぎるように思いました
依頼主に反抗することで危険が起こるというパターンになっていて、その戦う相手が「警察の闇」ということになるのでしょう
でも、それはセラたちFBIの足枷になっている程度で、それが敵の力という割にはグダグダな感じになっていましたね
最終的に「法が裁けないなら」というところに落ち着くのですが、肝心なところは隙だらけになっているのはおかしな感じに思えてしまいますね
■メキシコの人身売買問題
メキシコの「人身売買」についてググると、これまでに起きた事件のニュース報道が、驚く以上にヒットします
外務省のホームページには、「メキシコのテロ・誘拐情勢」の危機告知ページがあります
そこでは、「反政府組織」の暗躍と「麻薬カルテル等犯罪組織」という項目があり、「誘拐事件の発生状況」という項目では「2022年の誘拐被害届件数は497件」となっていて、2021年の625件、2020年の826件からすれば減少しているとされています
とは言え、1日に1件以上は起こっている(被害届が出されたものだけ)ので、犯罪被害の警察などへの被害申告は被害全体の10.1%とも言われています
なので、実際にはこの10倍の誘拐事件が起こっている可能性がある、と言えるのですね
実際に誘拐をするものから、バーチャル誘拐というものや、短期的誘拐」などというものも常態化しています
バーチャル誘拐は、実際には誘拐していないけど、誘拐したと親族に電話をするパターンで、オレオレ詐欺的な部類に属します
短期的誘拐とは、身柄を拘束して脅した状態でATMなどに連行してお金を引き出させるというもので、誘拐というよりは強盗に近いイメージがあります
国際労働期間の「Forced Labour and Forced Marriage(2017)」の資料によると、現在は約4000万人の人身売買が行われていて、その内の2500万人が強制労働、1500万人が強制結婚させられていると報告されています
1000人あたりでは、大人が5.9人、子どもが4.4人となっていて、その内の71%が女性となっています
詳しい資料はリンクを貼っておきますね
日本語訳版もダウンロードできるので、参考程度に目を通しておいても良いと思います
↓国際労働機関「「Forced Labour and Forced Marriage(2017)」リンク
https://www.ilo.org/tokyo/areas-of-work/child-labour/WCMS_615274/lang–ja/index.htm
■アルツハイマーがもたらす危機
アルツハイマー病は最も一般的な認知症で、脳の機能が適切に動かない時の病状のことを指します
不可逆的な進行性の脳疾患で、記憶や思考能力がゆっくりと落ちてゆき、最終的には「単純作業」すらできなくなってしまいます
アロイス・アルツハイマー(Aloysius “Alois” Alzheimer)によって発見され、精神疾患で亡くなったとされた女性の脳を調べた際、脳組織の変化を認めたのですね
彼女は記憶障害、言語障害、予測不可能な行動などがあり、彼女の脳からアミロイド斑を発見し、脳の中の線維の変化というものを見つけることになりました
アルツハイマーの発生に関しては不明なところが多く、症状が出るよりももっと早く(10年前後とされている)に脳内で異変が起こり始めています
蛋白の異常沈着が起こり、脳の至るところで「アミロイド斑とタウ蛋白からなる神経原線維変化」を起こり、ニューロンが効率よく機能しなくなるのですね
ニューロンがうまく働かなくなると、脳内の電気信号がうまく伝わらなくなってしまいます
このアルツハイマーによって引き起こされるのが認知症で、認知症とは「認知機能(思考力、記憶力、論理的推理力)というものが低下する病気」のことを言います
認知症は、アルツハイマーだけでなく、脳卒中などを繰り返すことによって起こる「血管性認知症」というものもあります
どのように起こるかは分かりませんが、今では誰にでも起こる病気という肌感覚がありますね
特に病院勤務だと認知症患者との接触は多いのですが、その多くは「アウトプットがうまくできない」という印象を持っています
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、リーアム兄貴が無双する映画なのですが、アルツハイマーの進行によって「致命的なミス」を犯すことになりました
それによって窮地に陥りますが、死因となる「車外への飛び出し」というのは、いまいち理由が釈然としません
セラの制止を振り切って外に出て撃たれるのですが、ある意味「人生の終焉」を感じ取っていて、セラを救うために犠牲になたように思えました
物語は、アレックスが殺し屋稼業から足を洗う中でアクシデントに遭遇し、その一連の事件をセラが追うことになっています
アレックスはグアダラハラの密売人らしき男を殺した後、自分の認知機能の低下が致命傷になると考えていました
このシーンでは、腕に覚え書きをしていたのにも関わらず、鍵を治した場所すら忘れていました
その後、マウリシオからの依頼でエリス・ヴァン・キャンプを殺しますが、この一連の事件が非常にややこしいことになっています
エリスは「ダヴァナと人身売買組織レオンの関与に関する証拠」を有していて、それを奪還するためにダヴァナの息子ランディの弁護士であるウィリアム・ボーデンが暗躍することになりました
ダヴァナは警察署長のアンディ・ヴィラロボスと通じていて隠蔽を図り、レオンからベアトリスを充てがわれていたのがランディだったように思えました(ちょっとうろ覚え)
ランディは依頼元を守るのと同時に、自分の性癖の暴露も恐れていたのですね
それが明るみになると、人身売買とダヴァナが繋がっていることだけに留まらず、自身の利用もバレるし、テキサスシティとメキシコの裏の密約までバレてしまいます
結局のところ、アレックスはウィリアムの殺害に留まってしまっていて、警察組織の汚職にまでは辿り着けていません
署長とダヴァナの癒着によって捜査は止まり、それによってセラとリンダの動きが封じられてしまうのですね
でも、その状況で暗躍したのがマルケスでした
彼が容易にダヴァナに近づけた理由はわかりませんが、捜査チームから外されて帰国させられている設定なので、その状況をうまく利用し、敵側が捜査員を押さえ込んでできた余裕につけ込んだということになります
このあたりの流れがめっちゃわかりにくいのですが、わかりやすい敵が暗殺されてことでチャラみたいな感じになっていましたね
それを行うのがアレックスではないというのが、ニーアム兄さんのシリーズとしては斬新だったように思えました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/387128/review/09907026-8ddb-480d-ad17-90904397bc1f/
公式HP: