■OUT以上に大切なものがあれば、人はいつでも一線を超えてしまうもの
Contents
■オススメ度
喧嘩映画が好きな人(★★★)
原作ファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.11.17(MOVIX京都)
■映画情報
情報:2023年、日本、129分、PG12
ジャンル:年少上がりの青年が抗争に巻き込まれる様子を描いたアクション映画
監督&脚本:品川ヒロシ
原作:井口達也&みずたまこと『OUT(2012年〜2023年、講談社、全25巻)』
キャスト:わかった分だけ(演者名欄の※はSNSで確認済)
倉悠貴(井口達也:「狛江の狂犬」と呼ばれた伝説の不良、年少上がり)
醍醐虎汰朗(丹沢敦司/あっちゃん/暴走守護神:斬人の新人総長)
与田祐希(皆川千紘:先代の総長・状介の妹、ボウリング場のバイト)
近藤拓馬(皆川状介:5代目総長、千紘の兄)
【斬人の幹部】
水上恒司(安倍要/肝心要:達也と仲良くなる斬人の新人副総総長)
與那城奨(長嶋圭吾/殺人剣士:斬人の特攻隊長、剣道有段)
大平祥生(目黒修也/狂拳番長:斬人の親衛隊長、グラサン&シルクハット)
金城碧海(沢村良/風神:斬人の遊撃隊員、メッシュ)
小柳心(田口勝/金剛力士:斬人の遊撃隊長、巨漢)
久遠親(武藤将吾/雷神:斬人のメンバー、要のボディガード)
山崎竜太郎(今井啓二:要命の弟分)
都丸沙也華(沢村の姉)
【斬人のメンバー】
舘野将平(目黒のグラサン預かる男)
かんた※
澤井一希※
中太佑※
成瀬広都※
和道巧※
椎名寛太※
【爆羅漢の幹部】
宮澤佑(下原一雅:爆羅漢のナンバー1、長男)
(幼少期:小林空叶)
長田拓郎(下原孝二:爆羅漢のナンバー2、次男)
(幼少期:中健悟)
仲野温(下原賢三:爆羅漢、三男)
(幼少期:三浦綺羅)
林田隆志(一雅の父)
美玖空(賢三の母)
【爆羅漢のメンバー】
榊原徹士(爆羅漢のメンバー)
小野塚渉悟(爆羅漢のメンバー)
須賀裕紀(弓山ひさし:売上NO1)
青山一澄(ネイバーヘッドにボコられるメンバー)
キャッチャー中澤(爆羅漢のメンバー)
大野瑞生※(爆羅漢?)
宮園博之※(爆羅漢?)
【ネイバーヘッド】
今村謙斗(トップのタイマン男)
井上雄太(2列目)
宮田龍樹(2列目)
山下新生※
堀川太陽※
松本旭平※(ネイバーヘッド?)
【その他】
じろう(石戸:少年課の刑事)
酒井貴浩(石戸の部下の刑事)
大悟(少年院の教官)
野崎亨類(小川:少年院の教官)
庄司智春(焼き肉店の客)
成島敏晴(客の連れ?)
福田雄貴(客の連れ?)
渡辺満里奈(伊丹静香/おばちゃん:達也の叔母)
杉本哲太(伊丹九蔵/おじちゃん:焼き肉店「三塁」のオーナー)
バッドナイス常田(年少前で絡む男)
下田真生(年少前で絡む男)
ミニサヤヒメ(キメる女)
染谷裕香(キメる女)
小南らな(空気読めないクラブの客)
岩崎藤江(クラブの客?)
蘭(クラブの客?)
奈良岡にこ(クラブの客?)
加賀美茂樹(救急隊員)
中村匡志(ケンカ相手)
高橋里英(TVのアナウンサーの声)
■映画の舞台
日本:
西千葉
ロケ地:
千葉県:木更津市
食堂しげ(三塁)
https://maps.app.goo.gl/ayCf4Vrxkp5firen6?g_st=ic
パンチャンフード(キムチ屋)
https://maps.app.goo.gl/X7nsxrYs8UjLhaYm7?g_st=ic
アイビーボウル木更津(廃業)
https://maps.app.goo.gl/i4NYSdhagoggKopr8?g_st=ic
アクアスタジオ(決戦場所の廃墟ビル)
https://maps.app.goo.gl/1SNjkyNahvcVrQFr6?g_st=ic
ガソリンスタンド(廃業)
https://maps.app.goo.gl/5pHvAab1kMzi8fbe8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
喧嘩ばかりして少年院に入った井口達也は、折り鶴折りに嫌気が差しては壁を殴るなどして暴れていた
ようやく出所が決まった日も、因縁をつけてきたヤンキーと喧嘩になって戻ってしまう
3ヶ月後、ようやく出所が叶った達也は叔父叔母の焼肉屋で働くことになった
ある日、コンビニ前のバイクに興味を持った達也は、そこで持ち主の要と小競り合いになる
喧嘩をしたら年少に逆戻るため、急遽相撲で勝負と言い出して、バックドロップを決めて勝ってしまった
要は地元の暴走族「斬人」の副隊長で、要は達也を気に入って、仲間たちに紹介することになった
斬人のメンバーは達也をからかい、そこで喧嘩ムードになるものの、アルバイトの千紘がそれを制して止める
千紘は斬人の先代総長の妹で、彼の死によって、この一帯では休戦協定が敷かれていた
だが、その状況をぶっ壊したいと思う「爆羅漢」という半グレグループがいて、彼らは斬人の溜まり場に挑発に来るのである
テーマ:正義と暴力
裏テーマ:OUTはOUTでもクズじゃねえ
■ひとこと感想
どうやら『ドロップ』のスピンオフの作品のようですが、予習をする時間もないままに突入
ヤンキー漫画だということだけわかっていましたが、内容的には予習不要だったように思います
年少に入っては出てを繰り返す達也は「2アウト」状態で、今度何かあればという感じになっていて、それでも抗争に巻き込まれていく様子が描かれて行きます
基本的にヤンキー系アクション映画なので、殴る蹴るのシーンで構成されていますが、非暴力の辛さと限界というものを描いているように思いました
映画は、叔父のセリフ「バカだがクズじゃねえ」を自分で言えるようになる成長物語になっていて、物語の骨子もしっかりしたものになっています
とは言え、何歳設定なのかわからない感じになっていて、一応は未成年ということになるのでしょうか
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
基本的に何でも観る派なのですが、芸人さんが入り乱れるタイプの映画はあまり好みではありません
それはネタをしている姿が浮かぶからで、それがノイズになることが多いからです
特に深刻なタイプの映画だと集中力を切らす感じになっていて、コメディなどでは本来の姿が重なっても問題なかったりします
本作では、ちょい役で箸休めみたいな感じだったのでよかったのですが、芸人さんが監督をやっているので、どこまで無理やりねじ込んでくるのかが心配でしたね
そのあたりはうまくバランスが取れていて、ノイズにはなっていなかったように思います
物語は、更生途中の元不良が喧嘩に巻き込まれるというもので、つるむだけでOUTという状況を生み出していきます
要は、喧嘩や犯罪の近くに行くことすらリスクという感じになっていて、見境のなさというものが生まれるからだと思います
戦う理由があれば覚悟はできるものだと思いますが、それ以前に暴力を誘発して逮捕にこぎつけようとする刑事の方が悪徳のように感じられます
いつの時代も、権力を持っているクズというのが一番タチが悪いということなのでしょう
■ヤンキー文化の歴史
もともと「ヤンキー」と言う言葉は、アメリカの白人に対する俗称で、国外においては「アメリカ人全体に対する俗称」となっています
日本での意味は「まともな生活をしない若者」のことを意味し、その始まりは「アメリカ村(難波)にて派手なアメリカ風ファッションをしていた若者」となっています
その後、不良っぽい人をヤンキーと呼ぶようになったのですが、制服を改造したり、派手なメイクや派手なジャンパーなどを好んでいたことが由来となっています
1970年代から「ツッパリ」文化が始まり、シンナーや覚醒剤を使用し、暴力事件が多発しました
この頃のファッションとして特攻服などのツッパリファッションというものが生まれています
1980年代に入って、不良少年少女を「ヤンキー」と呼ぶようになり、これは1975年に発売された上田正樹と有山淳次のアルバム「ぼちぼちいこか」に収録されている「Come On おばはん」と言う楽曲の中に「しかめっ面のヤンキーのあんちゃん」と表記されたことが由来ではないかとされています
そして、1983年に嘉門達夫が「ヤンキー兄ちゃんのうた」と言う歌を作り、これが有線大賞を取るまでにヒットしています
2000年頃から、従来のヤンキースタイルは廃れ始め、アメリカの低所得者層のギャングスターに似た文化が広がり始めます
これらを「ヒッポホップ系ヤンキー」と言い、カール・カナイやガルフィーのジャージを着るのが流行っていました
オーバーサイズの腰履きスタイルで、同時にギャル男文化を真似る不良も出てきます
また「まじ卍」の流行によって、ストリート系のファッションに卍マークが入るものが増えていきました
■戦う理由があれば正当化されるか
達也は年少の出で、2アウト状態にまで追い込まれていました
今度警察沙汰になればと言う感じになっていますが、「起こしたことの大きさ」によって、少年院に戻るか違う場所に行くかと言う感じになっています
未成年が少年院以外のところに行くとなると、「実刑を受けた際にいく少年刑務所」と言うことになるので、ステージが全く違います
少年院は「非行を行った少年に対して改善更生のための処遇を行う矯正施設」なので、実刑を受けた犯罪者が行く少年刑務所とは意味合いが違います
ちなみに、実刑を受けた場合でも、14歳から16歳未満の少年は少年院に入ることになります
高校1年生までは少年院で、それを超えての実刑だと少年刑務所と言う取り扱いになるのですね
達也の年齢ははっきりとしないのですが、今度は少年刑務所と言う意味合いなので、16歳になっているのだと思います
これまでは少年院で済んだけどと言うニュアンスなので、これまでに起こしたことは実刑を喰らうものだったと思われます
今回のケースでも、爆羅漢が訴えを起こせばわかりませんが、相手は拳銃所持が発覚しているし、賢三がシラを切ったことで、斬人側が罪に問われることはないと思います
とは言え、爆羅漢のやられた誰かが通報することはあり得るので、丸く治ったとは言い難いと思います
達也の行動は「拉致された千紘を助ける」と言う名目があり、少人数に対する拳銃所持者を含む暴漢との戦いになるので、「正当防衛」が認められるかもしれません
とは言うものの、あそこまでボッコボコの現場では過剰防衛と言われても仕方ないかもしれません
それでも、下原三兄弟がシラを切り続ければ、現行犯逮捕できなかった警察はどうしようもないでしょう
達也にもあっちゃん達にも戦う理由はあって、それは当事者の間で交わされている戦ってもOKと言う理由づけにはなります
とは言え、日本では「決闘罪」と言うものがあるので、さすがに双方の合意や理由があっても罰せられます
でも、罰せられることよりも優先するものが存在するので、これを刑罰で取り締まるのは難しいと思います
世界中でテロによる報復としての戦争というものが黙認されている中で、個人のトラブルで「当事者以外に迷惑がかからないもの」だと、それを止める大義名分というものはほとんどないのかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、『ドロップ』に登場するキャラクターを掘り下げたものですが、スピンオフではなくしっかりとしたシリーズになっています
斬人に気に入られてメンバーに入るかどうかというところで物語は終わりますが、族に属さなくても喧嘩はできるので、制限がない分、多様に動ける印象があります
基本的に暴力肯定映画なので、その理由づけが必要になってくるのですが、そのためには「いかにして敵を極悪に描くか」ということが命題になってきます
今回の場合は「半グレ集団」で、ドラッグ・誘拐・拳銃所持と何でもありになっていました
敵を凶悪に描く場合、倫理的かつ法的にアウトな人たちを登場させるか、身内が危機に起きるかしかなく、それを一挙に登場させた感じになります
なので、今後どんな敵が来ても、爆羅漢よりも凶悪あるいは強力なのかという側面でしか測れないものになっていきます
ヤンキー=ファミリー映画にも通じていて、赤の他人のために力を尽くすというのはカラーには合わないので、ヒーロー映画でもない限りは「その力をどう使うのか論議」というものは起こらないと思います
本作のようなチーム映画になると、それぞれのキャラクターのカッコいいシーンが必要になってきて、主人公に使われる尺というものがどんどん失われてしまいます
なので、今後、仲間が増えるたびに、主人公の影が薄くなるという展開が予見されるので、息が長いシリーズに育てるのはハードルが高いように思えます
主人公が形態を変えるというのもヤンキー映画では無理難題なので、このあたりをどうクリアしていくのかというのが課題になるように思えます
コミックスは全25巻のミドルサイズなので、映画としては5〜6本作れると思いますが、最後まで商業映画として成り立たせられるかは結構難しい問題かもしれませんね
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP:
https://movies.kadokawa.co.jp/out-movie/