■守るべきものがあると強いけど、それを1人で守るのは難しい
Contents
■オススメ度
サバイバル・アクションが好きな人(★★★)
緊迫感のある映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.11.29(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
原題:Plane(飛行機)
情報:2022年、アメリカ、107分、PG12
ジャンル:乱気流の影響で反政府組織が支配する島に降りてしまった民間機搭乗者を描いたスリラー映画
監督:ジャン=フランソワ・リシェ
脚本:チャールズ・カミング&J・P・デイビス
キャスト:
ジェラルド・バトラー/Gerard Butler(ブロディ・トランス:元イギリス空軍のパイロット、スコットランド人の機長)
マイク・コルター/Mike Colter(ルイス・ガスパール:殺人容疑でカナダのトロントに引き渡される男、元GCPフランス外国人部隊の傭兵)
【トレイルブレイザー社】
トニー・ゴールデン/Tony Goldwyn(スカーズデール:元特殊工作員、救助活動を支援)
ポール・ベン=ヴィクター/Paul Ben-Victor (テリー・ハンプソン:航空会社のオーナー)
Tara Westwood(状況報告をする女性幹部)
Jeffrey Holsman(トレイルブレイザーの社長)
Thomas Curran(幹部)
【119便スタッフ】
ヨソン・アン/Yoson An(サミュエル・デレ:副操縦士)
ダニエル・ピネダ/Daniella Pineda(ボニー・レーン:フライトパーサー、CAチーフ)
Michelle Lee(イザベル・ユー:客室乗務員)
Amber Rivera(マリア・ファレス:客室乗務員)
【テロリスト関連】
エヴァン・デイン・テイラー/Evan Dane Taylor(ダドゥ/ジェンマー:ホロ島のテロリストのリーダー)
クラロ・デ・ロス/Claro de los(ハジャン:ジェンマーの右腕)
Ariel Felix(アラン:ダドゥの部下)
Edwin Lee(テロリスト)
Yao Tsai(テロリスト)
Enele Ma’afu Tauteoli(ブロディと組み合う大男)
Jeff Francisco(ロロ:ダドゥに報告する村人、漁師)
【119便乗客】
リリー・クルーグ/Lilly Krug(ブリー・テイラー:SNSのフォロワーが多い乗客)
ケリー・ゲイル/Kelly Gale(ケイティ・ダー:ブリーの友人、スウェーデン人)
ジョーイ・スロットニック/Joey Slotnick(マット・シンクレア:短気なビジネスマン)
オーティス・ウィンストン/Otis Winston(ルイスを護送するRCMP職員)
Angel Fabián Rivera(カリム・レヒム:中東系の乗客)
Fernando Chang(チャン・ユエン:アジア系の乗客)
Modesto Lacen(アントニオ・オルテガ:窓際に座る強面の乗客)
Rose Eshay(アナ・フェルナンデス:カップルの乗客)
Ricky Robles Cruz(ハビエル・モリーナ:アナの恋人)
Jessica Nam(ロザリー・チョン:パニックになる乗客)
John J. Shim(ジョシュア・チョン:ロザリーの夫)
Quinn McPherson(ライリー・ドナヒュー:マイルを貯めて良い席に座る乗客)
Oliver Trevena(マクスウェル・カーヴァー:ライリーの友人)
【救援部隊】
レミ・アデレケ/Remi Adeleke(シェルバック:スカーズデールに雇われた民間軍事部隊の救助活動指揮官)
Matt Cook(モーセス:シェルバック6のメンバー)
Pete Scobell(ジム・レイク:シェルバック6のメンバー)
James Sang Lee(ウィリス:シェルバック6のメンバー)
【その他】
ハリー・ヘッキング/Halleigh Hekking(ダニエラ:ブロディの娘、大学生)
Heather Seiffert(キャリー・トランス:ダニエラの叔母)
Kate Bisset(マリア・バーナム:イギリス人女性、テロリストの人質動画の女性)
Jeremy Denzlinger(マーク・リチャード:エセ気象学者と揶揄される運航管理官)
Emilio Gerena(救急救命士)
■映画の舞台
フィリピン:ホロ島
https://maps.app.goo.gl/vtK1HUVWjAhQSQxS6?g_st=ic
ロケ地:
アメリカの未編流領域
プエルトリコ
サン・ファン/San Juan
https://maps.app.goo.gl/tyP9jU9Kbproi8nw6?g_st=ic
プエルトリコ・コンベンション・センター/Puerto Rico Convention Center
https://maps.app.goo.gl/VC9iZ11hAFTivabR9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
シンガポールから東京に向けてフライトするトレイルブレイザー社の旅客機119便は、定刻通りに出発するものの、直前になって、招かれざる客を乗せることになった
燃料費をケチった社の判断に巻き込まれ、嵐の予報があるにもかかわらず、回避ルートを取れない
機長のブロディはカリフォルニアの大学に通っている娘ダニエラと新年を祝う予定だったが、その空路は前途多難なものだった
その後、嵐と遭遇した119便は、落雷の影響を受けて電子機器が不具合を起こし、やむを得ずに不時着場所を探すことになった
着水やむなしと思われた矢先、陸地が見えたことで、ブロディはジャングルで覆われた島への不時着を敢行する
道路を見つけて滑走路がわりに着陸を果たしたものの、招かれざる客を管理するはずだったRCMP職員と客室乗務員1名が犠牲になってしまう
電子機器のトラブルで通信手段を失った119便はトレイルブレイザー社も捜索を行なっており、秘密裏に民間救助部隊が現地に向けて出発をする
着陸場所はフィリピンのホロ島で、そこは無政府状態となっている危険な島で、一刻も早く脱出しなければならない
そこでブロディは招かれざる客・ルイスの手錠を解き、近くに見えた建物に通信手段を探しに出かける
だが、島を支配する反政府組織も機の不時着に気付き、現地へと向かってしまうのであった
テーマ:サバイバルへの決断力
裏テーマ:盟友との邂逅
■ひとこと感想
ジェラルド・バトラー主演のサバイバルものということで、直近では『カンダハル 脱出せよ』というイランから逃げる特殊部隊員の映画がありました
今回は民間機の機長という職種で、特殊能力は持ち合わせていませんが、大男をねじ伏せるだけの腕力があるという人物になっています
映画は、不時着した先が無政府状態の危険地域となっていて、現地でのサバイバルと救出に向かう特殊工作員などがスピーディーな動きを見せていきます
フィリピンを監視している衛星の映像を要求できる飛行機会社というのはアレですが、まあ色んな仕事をしているのかなと想像してしまいます
特殊部隊も精鋭揃いで、動きに無駄がないのは凄かったですですね
不用意な動きで犠牲者が出たりするのですが、理不尽に殺されたというよりは自己責任に近いところがあったりしますね
テロリストも無駄に殺す意味合いはなく、身代金の餌がたくさん上陸してウハウハだと思っていたと思います
でも、その島に降りたのが、元軍人の人殺しと常人離れした腕力を持つ機長というのは不幸だったようにしか思えませんでした
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、フィリピン政府が怒りそうな設定になっていて、「めんどくさいから介入しない地域」みたいなことになっていました
曰くつきの119便に乗せられた乗客は不幸にも思えますが、ブロディじゃなかったら島にすら降りれていないと思うのですね
その後も乗客の命を優先に行動するのですが、その行動に冷静さを与えるのがガルパールだったところが意味深だったりします
映画は、ガスパールが主役の続編『Ship』というものが制作段階に入っていて、ブロディとどのような関わりを持つことになるのかは興味が尽きません
救出部隊も有能な人ばかりで、車ごしに貫通するライフルで百発百中なのは恐れ入りますね
電源がバッテリーだけで、燃料は放出できなかったものしかなく、300マイルしか飛べないという制限付きの中、「一つ一つ着実に」というモットーで機を飛ばしたブロディは凄すぎて草も生えません
■フィリピン情勢について
1941年、太平洋戦争時に日本軍の南方作戦による侵攻を受けたフィリピンは、「第一次共和国時代」「米比戦争」を経て「アメリカの植民地」になっていました
日本軍はアメリカ陸軍を駆逐してマニラに入城し、在フィリピン司令官のダグラス・マッカーサーはオーストラリアに脱出していました
1942年には、日本軍によるフィリピン全土の占領が完了しています
1944年になって、アメリカ軍機によってマニラ市内の空爆が行われ、フィリピンは米英に対して宣戦布告を行います
しかし、年末にアメリカがフィリピンに上陸し、フィリピン・コモンウェルズ(日本占領時以外のフィリピン政治体制のこと)が実権を握ることになります
1945年に戦争が終わり、フィリピンはアメリカの植民地に戻りますが、1946年のマニラ条約にて、フィリピン第三共和国として独立を果たすことになりました
1965年から、反共産主義のフェルディナンド・マルコス大統領が独裁国家を築くことになります
これはアメリカの支持を得ていたもので、さらにマルコス夫人やその取り巻きによって私物化されていきます
この腐敗政治に対し、モロ民族解放戦線や新人民軍(NPA)による武装蜂起が起こることになりました
1986年、エドゥサ革命が起き、マルコス政権は崩壊し、現在に続く第四共和国の体制が成立します
この裏側でフィリピン紛争というものが起こっていて、1969年には毛沢東主義による革命と体制変革を目指す「フィリピン共和党」が「新人民軍」を結成しています
さらに1970年にはモロ民族解放戦線(MNLF)がミンダナオ地区にイスラム教の自治区を作る目的で武装闘争を開始します
このMNLFから分離独立したのが「モロ・イスラム解放戦線(MILF)で、その理由はMNLFがフィリピン政府と和平交渉を締結しようとしていたからでした
さらに、1990年には、「アブ・サヤフ・グループ」が東南アジア地域にイスラム教の国家設立を目指して動き始めます
これらの武力闘争の一部は今もなお継続中ではありますが、2018年になって、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は「ムスリムによる自治政府樹立」を認めることになりました
これによって、バンサモロ自治地域が発足するに至っています
映画の舞台であるホロ島は、フィリピン南東部にある島で、スールー諸島の中央にあります
「アブ・サヤフ」の最大拠点の一つとなっているので、映画内の武装勢力のモデルは「アブ・サヤフ」になると考えられます
2005年には、フィリピン部隊との衝突があり、1万人以上の避難民が出ることになりました
フィリピン政府の認識として「新たなソマリアになる危険性がある」とされていて、これが「ホロ島には政府が迂闊に関与できない」というセリフの下地になっていると考えられます
■未曾有の体験に巻き込まれたらどうするか
本作は、不時着したのが「反政府組織の支配地域」となっていて、そこでどうやって生き延びるかというサバイバルものになっていました
ブロディ機長と犯罪者ガスパールが「通信手段を探す」という名目でグループから離脱し、その後乗客たちは拉致されてしまいます
この際に韓国人夫婦の妻ロザリーがパニックになって逃げようとしていて、それによって夫婦共々に殺されることになりました
また、不時着前の機内にて、落としたスマホを拾おうとして席を立ったRCMP職員とCAのイザベラが犠牲となっています
このような未曾有な危機に遭遇した場合、まずは冷静に状況を分析することが必要となります
捜索から戻った2人の目の前で拉致られるのですが、そこで助けに行こうとするブロディをガスパールが力付くで抑え込んでいました
ガスパールは元フランスの特殊部隊出身で、武器を持っていても、闇雲に出ていけば犠牲になることを理解していました
彼が行なっていたのが「状況把握」というもので、それによって「対策を練るための情報」というものを収集していきます
彼は軍人だからそれができたとも言えるのですが、犠牲になっている人を見ていると「やってはいけないこと」というのは目に見えてくるのですね
それが「自分の感情を制御できるかどうか」ということになっていて、冷静になる以上に必要なものがあるということになります
冷静になった先にある状況把握では、「相手(敵)の目線に立つ」ということが重要で、彼らの目的を知ることで対策というのが見えてきます
また、敵だけではなく、味方側にも目を向けないといけません
それは、自分にとってのリスクというものの把握にもなり、この映画の場合だと、乗客の性格などを知る必要があると言えます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、リアルと虚構が混じっているのですが、フィリピンのホロ島というガチな場所が登場するので、フィクションですよと通じないところもありました
このホロ島が「反政府組織に支配されている」というところもリアルになっていて、さらに「フォリピン政府が手を出せない」とか、「軍隊用意するのに24時間かかる」など、随所にフィリピンをディスっている感じになっていました
なので、フィリピン政府激おこ案件なんじゃないの?と心配してしまいます
フィリピンを立てるのなら、ラストに反政府組織を倒すために軍が活躍するというものになると思いますが、実際には「アメリカの民間軍事組織」が暗躍し、反政府組織を壊滅させてしまっています
とは言え、フィリピン軍が不時着機の乗客を助けるという流れになると、ますますブロディとガスパールの出番がなくなってしまうのですね
あくまでも正規軍が登場しないゲリラ戦になってこそ、民間人の活躍が活きてくると思います
本作では、民間人と犯罪者のペアがどのように事態を解決するかになっているのですが、それ以上に「あまり役に立たないジェラルド・バトラー」というものを描こうとしているように感じました
この辺りは、キャストの先入観というものをうまく利用する形になっていて、ギリギリ一般人というラインを敷いていたと言えます
どう見ても民間機の機長という風体ではなく、元◯◯にしか見えないのですが、それをできるだけ出さないようにしていました
肉弾戦で民兵を力で制圧する場面はありましたが、それ以上に他のメンバーがかなり有能に動いていましたね
犠牲者フラグの副機長も電気系統のトラブルを治しているし、シェルバック6もゲリラよりも統制が取れていてめっちゃ強かったのは良かったと思います
物量的にシェルバック6では敵わず、無茶を承知で飛行機で脱出するというのも「結果がわかっていても」楽しめる感じになっていました
ラストでは、1人機内に残って泣くのですが、もらい泣きをしてしまいそうになります
生き残る目的も明確で、それゆえに無茶をしないという線引きがなされていましたね
機内に命懸けで守らないといけない恋人などがいたらブレてしまうので、そう言った存在がなく、チームパーサーとの関係も業務以上のことは何もないというのは良かったですね
主人公の目的が明確で、それに対する熱量があって、そしてその目的を助けるための有能なスタッフがいました
生かされていることへの感謝が積もり、その安堵が彼を包み込んだのかな、と思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP: