■日本で作ったら、謎の血清を主人公が射って、怪物と戦う映画になりそうですね
Contents
■オススメ度
スプラッター系のホラーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.4.13(T・JOY京都)
■映画情報
原題:늑대사냥(オオカミ狩り)、英題:Project Wolf Hunting
情報:2022年、韓国、121分、R15+
ジャンル:犯罪者輸送船内で起きるサバイバルバトルを描いたクライムホラー
監督&脚本:キム・ホンソン
キャスト:
ソ・イングク/서인국(パク・ジョンドゥ:一級殺人手配者、組織の中心人物)
チャン・ドンユン/장동윤(イ・ドイル:韓国に向かいたい寡黙な犯罪者、ナイフ使い)
ウ・ミンジ/우민지(イ・ドイルの妻)
クォン・ユル/권율(イ・ドイルの息子、赤ん坊)
(少年期:キム・ガンフン/김강훈)
チェ・グウィワ/최귀화(アルファ/キム・ハンギュ:殺人兵器)
ソン・ドンイル/성동일(オ・デウン:中央海洋特殊構造団チーム長、プロジェクト責任者)
イム・ジュファン/임주환(ピョ理事:デウンの上司)
バイドル・エリザベス・リサ/Beidle Elizabeth Lisa(ピョ理事のアシスタント)
パク・ホサン/박호산(イ・ソクウ:韓国警察署長、護送現場責任者)
チョン・ソミン/정소민(イ・ダヨン:ソクウの部下、女刑事)
チャン・ヨンナム/장영남(チェ・ミョンジュ:女囚人、ジョンドゥの姉貴的存在)
コ・チャンソク/고창석(コ・バンベイ/ゴンベ:パク・ジョンドゥの右腕、兄貴的存在)
ソ・ジョンハ/손종학(ソン・スチョル:30年の長期刑を食らった囚人)
イ・ソンウク/이성욱(イ・ギョンホ:乗船する医師)
ホン・ジユン/홍지윤(ソン・ウンジ:乗船する看護師)
【警察】
クォン・オユル/권오율(イ・ウンジェ)
キム・ムンハク/김문학(キム・ジンソク)
キム・チャンヒョン/김찬형(パク・ジェウ)
チョン・スギョ/정수교(ナム・ヒョンス)
キム・ギチャン/김기창(オ・ジャンフン)
オム・ジュンギ/엄준기(ホン・ジンソン)
パク・ボンジュン/박봉준(キム・ウォンホ)
アン・ジヘ/안지혜(ジョ・スンジン:女刑事)
チョン・ソンイル/정성일(ジョン・ピルソン)
【囚人】
カン・ジョンウ/강정우( チェ・ヨンダル:ジョンドゥの同室の男)
キム・デハン/김대한(チャン・イング)
キム・ジンマン/김진만(オ・ドクス)
チョ・ソング/조성구(ギュ・ギョンへ)
ヨン・ギチャン/윤기창(パク・サンマン)
キム・チョルユン/김철윤(イ・テオン)
ソン・ジヒョク/송지혁(チョ・ドゥサム)
ソン・ヒョンジュン/손현준(キム・グナム)
ヤン・スンホ/양승호(シン・ドンボム)
チョン・ウジェ/전우재(チャン・ピルウ)
キム・ソンリョン/김성령(ユン・ヘラ:ミョンジュの同室の女)
【ジョンドゥの手下】
チョン・ウォンヨン/정원영(パク・ムベ)
チャン・ジェホ/장재호(チョ・ミョンス)
キム・ミンチョル/김민철(チェ・ソクジン:船員になりすます手下)
ジョン・ムンソン/정문성(キム・キュテ:船員になりすます手下)
クォン・スヒョン/권수현(ジン・ガンウ)
【護送船の船員】
イ・ギョンホ/이성욱(機関士)
イ・ジョンユン/이종윤(船長)
ソ・スクキュ/서석규(操舵士)
ユン・ドンソン/윤돈선(機関室チーフ)
チェ・ヒョンジュン/최현준(操舵士)
キム・ウンジュン/김원중(操舵士)
イ・ジェホ/이재호(操舵士)
【海上保安庁臨時管制室(デウンの部下)】
パク・ソンジュン/박선준(海上保安庁特殊部隊)
チョン・ハジュン/정하준(海上保安庁特殊部隊)
ファン・ミョンファン/황명환(海上保安庁特殊部隊)
ソ・ジュンウ/서정우(海上保安庁特殊部隊)
【その他】
チョン・ドンピル/정동필(冒頭で国内に移送される国際犯罪者)
シン・ドンリョク/신동력(空港の自爆男)
キム・ヒョン/김현(空港の自爆男)
チャ・ヨンジュ/차영주(空港の報道レポーター)
ペク・スンイク/백승익(養豚場の死体処理班長)
キム・デグン/김대근(養豚場の職員)
イ・ホンネ/이홍내(船底のピアス男)
ユ・サンジェ/유상재(吉村:日本軍陸軍中将)
■映画の舞台
囚人護送船「フロンティア・タイタン号」
ロケ地:
不明
■簡単なあらすじ
2016年、フィリピンからの囚人引渡しにて護送したものの、港にて被害者が犯人を巻きっこんで自爆をする事件が勃発した
それから7年後、同じように囚人引渡しが行われることになったが、同じ轍を踏まぬようにと、民間の貨物船を貸し切ることになった
護送の責任者には警察署長のイ・ソクウが任命され、彼らの部下を含めた10人ほどが同乗することになる
対象の囚人は15名ほどで、艦長や機関士、担当の医師イ・ギョンホと看護師ソン・ウンジも乗り込むことになった
航海は順調に思われていたが、凶悪犯として名高いパク・ジョンドゥの一味が暗躍し、また船員になりすました彼の部下たちが秘密裏に動く
数人の警察を始末し、機関室と操舵室を占拠した彼らだったが、その船には「別の何か」が移送されていたのである
テーマ:躊躇なき暴力
裏テーマ:国家と陰謀
■ひとこと感想
密室の中の格闘というイメージはありましたが、まさかの展開と延々と続く暴力にびっくりしましたね
主演級の2人の若者がアイドルっぽい感じの甘いマスクなのですが、そのファンらしき女性陣は「この展開」に耐えきれたのか心配になりました
とは言え、流血は男性より耐性がありそうなので、直接的なゴアがないので大丈夫かもしれません
映画は、囚人護送船の中で犯罪者が反旗を翻すというもので、警察VS囚人という図式になります
狭い船内をところ狭しと制圧に乗り切るのですが、容赦ない暴力と流血の連続に、とにかく疲れる映画でした
物語は単純なもので、警察VS囚人だと思っていたところに、まさかの「怪物」の参戦
スリラーから一気にホラーになっていて、このジャンルチェンジは韓国映画ならではだなあと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画はスプラッターホラーというジャンルで、警察VS囚人のアクションスリラーから一転して、日本軍の研究を引き継いだイオンジェネティクスの暗躍によって、人間兵器が登場していました
その人間兵器とのサバイバルがメインですが、同じような実験を施された連中がいて、その生き残りであるイ・ドイルが実質的な主人公に取り変わります
群像劇のように、次々と主要人物があっさりと死んでいくのですが、ジョンドゥ役のソ・イングクさんを観に来た人は唖然としたかもしれません
主人公のように思えたので、途中で薬を打ち込んでモンスター化するのかなと思っていました
女性刑事も女性囚人もエゲツない死に方をするので、ゴア描写には容赦がありません
この辺りのテイストは韓国映画ならではで、とにかく「血が見たい」という人には垂涎ものの展開が待っていると言えます
サイキックバトルではないのですが、サイキックっぽさが出ているところも面白かったですね
■日本軍描写あれこれ
韓国映画あるあるで、旧日本軍が悪魔的な存在として扱われています
今回もどこで研究していたかまでは描かれませんが、旧日本軍の人体実験があって、オオカミとのハイブリッドを目指していた、みたいな解説がありました
この手のネタで「反日」とかいう人がいるのですが、これはもうフィクションのネタの様式美のようなもので、今回の内容に反日要素はほとんど感じません
それよりも攻め込んでいたのが、その研究を受け継いだのが韓国の企業で、その名前が「イオン・ジェネティクス」なんですよね
アンブレラ社を彷彿とさせる「遺伝子工学系の研究所」で、そこでは実にリーズナブルな薬剤に変貌を遂げていました
続編があるっぽい感じなので核心はぼかされていますが、船底にいたピアス男たちはその企業に雇われた用心棒のような存在でした
唐突に「オオカミとのハイブリッド」が出てきて、中国がコウモリなら、韓国はオオカミなのか?と余計なことを考えてしまいましたね
こういう旧日本軍いじりをどう捉えるかなのですが、韓国にとって、この手のネタをブッ込めるのは日本以外にないのですね
中国や北朝鮮だとリアルすぎるし、ロシアやアメリカだと嘘っぽ過ぎる
なので、遺恨を継続させてモノ言うことが常態化している国ならではの、国民にエンタメとして見せられる関係性として、わかりやすいアイコンになっています
この映画のテイストだと、旧日本軍の研究をなんらかの形で韓国企業が受け継いでいるので、反日認定することの方が難しいと思います
「反日が人を惹きつけない時代」というものが明確に訪れていて、一部の声を全体として切り取るジャーナリズムで楽している間は、この手の印象操作はうまく機能するかもしれません
でも、実際には「ネットの中に虚実混合の色んな情報がある」ので、反日がビジネスにならなくなれば少しずつ薄くなっていくでしょう
そのためには、公式見解として、国の立場を明確にして向き合うのが先決ですが、それをしないのはその方が利益があるからかもしれません
■こうなったらどうする?
船上にて怪物に遭ったらどうするか?という映画ですが、問題は危機意識をどのように保つかが肝要だと思います
映画では、わざと向かって行くバカがたくさんいますが、その多くは「中途半端に腕っぷしがある」「仲間をやられた反動(感情的)」「パニクって意味不明」の3パターンに分かれます
この逆のタイプが「身を潜めて様子を伺う」のと、「本能的に逃げる」というパターンです
敵がどのようなタイプかわからない時に、いきなり攻撃に転じるのは最悪で、勝てる自信があっても身を潜めて生還するのがイ・ドイルでした
最終的にイ・ドイルも同じ怪物であることが判明しますが、自分の能力を隠したまま、一定の距離を置くという方策を採っていました
彼の影に隠れていたのがスチョルで、彼自身はドイルの能力を知らないのですが、関わりを避けるということを徹底していました
この2人と同調した医師ギョンホだけが最終ステージに辿り着いていて、「敵のことを知る観察者」「敵のことを知らない傍観者」「敵を少しだけ知る避難者」という感じに分かれています
この3人は「敵の認知度が少しずつ違う」のですが、行動が同じというところが面白いなあと思いました
ジョンドゥは好戦的で、これまでの体験から根拠のある自信を持っています
その能力を過信しているために、本能的な恐怖の感度が弱くなっているのですね
この感度を上げるには、「状況の把握」を正確に行う必要があります
なので、観察者として姿を隠し、一定の距離を保ちながら冷静になること、が最適解であるように思えます
実際には恐怖が感情を揺るがせて冷静な判断ができないのが常ですが、これはサファリパークで猛獣と遭遇した時の初期対応に近いものがあります
視線が交錯したならば逸らさないことが肝要で、視線を保ったまま距離を少しづつ開け、周囲の状況を理解するために360度回転する
猛獣の背景を変えることで、どの方角に何があるかを見て、逆に自分の後ろに何が来るかで猛獣の反応を見る、という方法になります
視線を切って戻すと、フォーカスを合わせる瞬間的なロスが生じるので、それによって相手に間合いを詰められる可能性があります
ちなみに、これらを訓練するとしたら、鎖に繋がれている猛獣注意の犬を相手にすることぐらいしか、日常でシミュレートすることはできないと思います
なので、危険を察知したら、素早く距離を置いて、気配を消しつつ逃げるのが最適だと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、ジャンルチェンジが起こる韓国映画で、警察VS囚人のバトルが一転して、怪物との生き残りになっています
かなり早い段階で、怪人の存在は知れていて、それが暴れ出すのは目に見えていました
シナリオとして、どの段階で怪物を動かすかというのが肝要で、本作ではちょうど囚人の反旗が達成された頃合いになっていましたね
ほぼ「囚人の勝利で終わりそうな流れ」の中にあって、このままでは終わらせないという気概がきちんと示されていました
パンフレットはほぼソ・イングクさんの写真集で、彼が序盤で退場したのはギャグのようでしたね
いわゆる自信過剰タイプがそのまま策もなくやられるというパターンで、その死に方も「顔がなくなる」という壮絶なものになっています
私の鑑賞回でも、多くの女子たちが後方に陣取っていましたが、アイドルの活躍を観にきたら「まさかの前半退場で、その後は延々とスプラッターホラー」というのをどう受け止めたのか気になってしまいます
韓国映画の凄いところは、アイドルだろうが綺麗な女優であろうが、必要に応じて残酷な死に方をするし、泥まみれにもなるところでしょう
この映画を日本でリメイクして、主演にアイドルを据えたら、ここまでの描写にはならないですし、汗ひとつかかない女優が綺麗な死に方をすると思います
これらのストップがどこでかかっているのかはわかりませんが、この甘さが却って演者の生命を短くしているし、次のチャンスを摘み取っているように思います
プロモーションとキャリアアップを考えた時に、無難な方向を選びがちですが、それは転落へのスタートラインに乗っているようなものでしょう
ちょっと過激な役を演じた時に「挑戦」を煽るマスコミもアレですが、作品に必要な演技を見せるのが俳優の仕事なので、そもそも「挑戦」というハードルを低く設定する行為こそが、演者本人を下に見ていることにつながっているように思えてなりません
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/386190/review/4e9fecd3-beb2-4dcb-86a3-42a17fae4d31/
公式HP:
https://klockworx-asia.com/pwh/