■兵馬俑を初見で読めて打ち込めたあなたは、小学校を真面目に行った人だと思います(偏見です)
Contents
■オススメ度
中国のアニメに興味がある人(★★★)
兵馬俑の世界に興味のある人(★★★)
■公式予告編
https://youtu.be/wDW8IS3XLtI
鑑賞日:2023.6.17(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:俑之城(フィギュアの城)、英題:Realm of Terracotta(テラコッタの王国)
情報:2021年、中国、115分、G
ジャンル:兵馬俑の呪いが解けた世界で、将軍のために支えようとする雑用係を描いたファンタジーアクション映画
監督:リン・ヨンチャン/林永長&レオン・ディン
脚本:シュー・ユン&ツィ・ティエジ
キャスト:
シュ・ガンズー/朱光祖(蒙远/モンユエン:鋭士として将軍に尽くしたいと願う兵馬俑の雑用係)
チャン・ミン/张茗(史玉/シーユイ:祖父を殺された町民)
シュウ・ズーユー/周子瑜(青铜羊/シャオバオ:妖術使いに捕まっていた青銅の山羊)
リウ・ペイ/刘沛(大将军/シアホウ将軍:兵馬俑を牛耳る豪傑)
シェ・フォンゼァ/谢丰泽(坏兵俑乙/キツネ:シアホウ将軍の部下)
ゴウ・ユーハン/缑宇航(坏兵俑乙/ゴン:シアホウ将軍の部下)
タン・ショウ/谭笑(坏兵俑丙/ガマ:シアホウ将軍の部下)
リウ・スーチー/刘思奇(巫医/妖術使い:国を混乱させようと目論む呪術師)
リー・ジャヨウ/李家耀(客栈老板/オババ:宿屋の主人)
シェ・フォンゼ/谢丰泽(都尉/ワン親方:町の鍛冶屋)
ソウ・チョンユー/宋成钰(瘦兵俑/ヤセ:モンユエンの友人)
ウェイ・ユーハン/维宇航(胖兵俑/太っちょ:モンユエンの友人)
リーシン/李鑫(大耳朵/モモ:九尾大師がモン・ユエンに授ける妖獣)
タン・ショウ/谭笑(九尾大师/九尾大師:石碑の森の主人)
【日本語吹替】
福山潤(モンユエン)
寿美菜子(シーユイ)
中島ヨシキ(シャオバオ)
星野貴紀(シアホウ将軍)
水島裕(九尾大師)
桜岡あつこ(オババ)
橘潤二(キツネ)
白石兼斗(ゴン)
杉崎亮(ガマ)
株元英彰(ヤセ)
石狩勇気(太っちょ)
武田太一(ワン親方)
小林康介(妖術使い)
■映画の舞台
中国、戦国時代(紀元前350年)
咸陽、秦陽城(現在の咸陽市)
https://maps.app.goo.gl/XaGmDQ6UpcCi6L5GA?g_st=ic
■簡単なあらすじ
紀元前350年前、秦陽城の地下に眠る兵馬俑は呪いから目を覚ました
泥の体を持つ彼らは、妖力によって自由に動くことができ、地下の一大帝国を築いていた
兵馬俑は、地犼と呼ばれる霊獣の攻撃を受けていて、それに相対するのがシアホウ将軍が率いる軍隊だった
彼らは鋭士の称号を持ち、豪傑として名を馳せている
そんな彼らに憧れを抱いている雑用係のモンユエンは、金具などを集めて売り、それで剣を授かろうとしていた
だが、鋭士以外は剣を所持することができず追い返されてしまう
だが、突如町に号砲が鳴り響き、地犼の群れが襲撃に来てしまう
モンユエンは隙を見て剣を取り、戦いの場へと赴いていく
なんとか生き残ったものの、軍は彼の参加を認めず、シアホウ将軍は「昆仑」を捕まえることができたら認めるという
そこでモンユエンは崑を探す旅に出かける
だが昆仑を探していたのはモンユエンだけではなかったのである
テーマ:力とは何か
裏テーマ:称号よりも必要なもの
■ひとこと感想
映画館のディスプレイ広告で気になっていた作品で、小学校ぐらいの時に見た「兵馬俑」を思い出しました
美術の美しさが際立つ作品で、地下都市の描写はとても印象的でしたね
青銅の山羊のキャラ、耳の長いうさぎのようなキャラ(うろ覚えでミミと呼ばれていた気がする)などもかわいかったと思います
物語は、鋭士になりたいモンユエンの奮闘が描かれ、家族を地犼に殺されたシーユイとの出会いが描かれていきます
剣術を教えてもらいながら、少しずつ恋愛っぽさも出てくるところは微笑ましかったと思います
映画は、兵馬俑の秘密が暴かれる中で、今の国を作ったものの正体が暴かれていきます
ありきたりではありますが、王道的な展開で安心して見れますね
とにかく映像が美しい作品で、この世界観を感じ取れるだけでも満足感がありました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
まさかのパンフレットなしで、しかも吹き替え版しかないので「用語の漢字変換」が全くできずに困りました
なんとか調べて見たところ、中国の妖獣などがたくさん登場していたようですね
シーユイの祖父の仇は思い過ごしになっていて、地犼が実はいい奴というのは胸熱展開になっていました
ツンデレキャラのシーユイが少しずつ砕けていく感じも良くて、挿入歌などの演出も良かったと思います
モンユエンは「称号」があれば鋭士になれると思っていましたが、実際には「生死を賭けた経験値」が、鋭士たるものの資格であったと思います
将軍はいわば「ズルをしている」のですが、絶大な力を手に入れて世界を牛耳ろうと考えています
でも、九尾大師が世界の大きさをモンユエンに伝えることで、兵馬俑がかなり狭い場所であることを思い知ります
たくさんの文化的なものがたくさん登場しますが、中国の古典にそこまで詳しくなかったので、パンフレットで解説して欲しかったですね
■兵馬俑とは何か
「兵馬俑」とは、古代中国で死者を埋葬する際に副葬された俑のうち、兵士及び馬を模ったもののことを言います
秦の始皇帝陵兵馬俑坑で見つかったものを「兵馬俑」と呼ぶケースが多いと思います
古代中国では、死者の墓に副葬される明器(冥器)というものがあり、葬られる人の霊魂の生活のために作られたと考えられています
かつてあった殉葬という習慣が廃れて、人馬や家屋を模ったものが作られるようになりました
この「兵馬俑」は秦の始皇帝の墓として有名なもので、その数8000体とも言われています
兵士の俑には「一つとして同じ顔がない」とされていて、同じ型で量産したものではないのですね
また、俑は着色されていた形跡が残っていて、秦の始皇帝を守った軍団をそのまま再現したのではないかとも言われています
モンユエンは俑の城を守る兵団の雑用係ではありますが、この兵団(=都)というものは、この世界に多く存在することが描かれています
その中にある「東唐」にいくことを夢見たモンユエンとシーユイは、世界を認識した最初のカップルなのかもしれません
「兵馬俑」に関しては、そのレプリカか何かを小学校の社会見学で見に行った記憶があります
2022年に、「日中国交正常化50周年」を記念して、「36体の兵馬俑を展示する展覧会が行われました(現在は終了)
私が40年前に見た展示品はレプリカだったと思いますが、ググっても見つかりませんでしたね(記憶では地方の文化博物館だったと思います)
ちなみに、実物を観たい人は「中国の西安にある秦始皇兵馬俑博物館」に行けば2万平方メートルにも及ぶ広大な実物を見ることができるそうですね
公開されている1号杭には2000体の兵馬俑がありますが、まるで魔法にかかったように「時が止まって見える」というのは歴史のロマンを感じさせます
■地犼たちの世界
映画に登場する「地犼」は、中国の伝説に登場する神話上の獣とされています
龍王の息子であり、龍王と守る存在が「犼」というもので、清東玄の怪奇小説『書易記』に登場するとされています
一般的には「狗(いぬ)」「獅(しし)」のような姿をしているとされていて、イメージトしては神社にある狛犬のような姿をしています
また、霊獣として描かれ、人を食べるとされています
明の時代(1400年頃)の書物『偃曝与談』の中に、「形はうさぎのようで両耳は長く、その尿を浴びると血肉はただれると言い、虎や獅子も恐れる」と書かれているそうです
清の時代(1910年頃)の書物『続子不語』では、神通力を有して、口から炎を吐くと書かれていて、仏の乗り物であると記されているのですね
映画内では、兵馬俑の城を襲う猛獣という扱いになっていて、それが生命の宝石「神石」奪還のためだったと描かれています
動きは怖いのですが、よくよく見るとビジュアルが可愛い方に振り切っているので、ぬいぐるみなどを作れば売れそうな気がしますね
映画はパンフレット自体なく、とりあえず公開したというものですが、実にもったいない話だなあと思いました
中国における神獣は他にもたくさんあって、有名なのは「龍」「鳳凰」「麒麟」だと思います
その他にも「虁(き)」と呼ばれる一本足の雄牛のような神獣もいますし、「饕餮(とうてつ)」と呼ばれる全体像がわからずに頭部と口だけが描写されるものもいます
「獬豸(かいち)」と呼ばれる角を持った神獣(ユニコーンみたいなビジュアル)は「狛犬」の起源であるとされています
この他にもたくさんの神獣がいるので、ググって楽しんでもらえたら良いと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、兵馬俑が単なる墓の装飾物ではなく、呪いか何かで封印されていたものという感じになっていて、さらに彼の住む世界は「地下都市」という感じの設定になっていました
彼らの住む世界の一つ下の階層には「碑林」の世界があって、そこには九尾大師なる神様のような存在がいたりします
大師は、大耳朵をモンユエンに遣わすのですが、大耳朵はどんな速度にもついていく俊敏さがあって驚きましたね
ゆったりと耳を上下に振って宙に浮いている存在ではありますが、まるで衛星のようにピッタリとモンユエンに追尾していたのは驚きました
大耳朵は妖精か何かの一種ですが、モンユエンが運命を自覚した時に内なる力を引き出す役割があって、その力はシャオバオを剣に変える力をも持っています
このあたりのベタな展開が実にかっこよくて、悪の権化と化したシアホウ将軍を圧倒していくシーンは痺れてしまいます
大耳朵もシャオバオもキャラクターとして完成されていて、愛着があってキャラクターグッズも飛ぶように売れるタイプだと思います
なので、急仕上げで公開して、何も用意しないよりは、権利関係もクリアしてマーケティングを展開すれば、もっと相乗効果があったと思います
映画は中国のサイトで解説がちらほらありますが、日本語サイトは皆無に等しい内容で、キャスト欄や登場キャラを調べるのにかなり時間を要しました
映画圏の映画と違って、アジアの映画は「現地語」というものが公式サイトや解説サイト、ニュースサイトでメインで使われます
中国語がニュアンスで読めても、検索するときに文字を打ち込めないのが厄介で、ハングルも通常のキーボード仕様では打ち込めません
それ故にコピー&ペーストを駆使するのですが、頻出の言葉は「ユーザー辞書」に入れるしかないのですね
大耳朵の「朵」の字は読めませんし、読めても出てくるのかわかりません
ちなみに「タ、ダ、うご(かす)、えだ」などの読みがあるようです
現在ではグーグル翻訳、グーグルレンズなどの様々な翻訳ツールが出てきて、「読むこと」自体はかなり楽になったと思います
でも、書くほうはまだ大変な段階で、文字パッドで手文字入力が限界の世界なのですね
多言語のコミュニケーションはまず「会話ありき」なので、そちらの進化が早く進みますが、そのうち「書く」方のニーズが増えてくると思うので、その方面も進化することを欲して止みません
言語は色々とググったりするだけで、その法則性が見えてくるものなのでだいぶ慣れましたが、またまだ勉強が必要だなあと思ってしまいます
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/380653/review/176310b2-2b58-419e-bbe0-6351a3903c86/
公式HP: