■多次元立体構造体から重力を消した世界が、マルチバースの世界なのかもしれませんね
Contents
■オススメ度
スパイダーマンをこよなく愛する人(★★★★)
すんごいアニメを観たい人(★★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.6.16(MOVIX京都 ドルビーシネマ)
■映画情報
原題:Spider-Man: Across the Spider-Verse
情報:2023年、アメリカ、140分、G
ジャンル:スパイダーマンとしての使命を自覚する少年が、友人とともに敵に立ち向かう様子を描いたアクション映画
監督:ホアキン・ドス・サントス&ケンプ・パワーズ&ジャスティン・K・トンプソン
脚本:フィル・ロード&クリストファー・ミラー&デビッド・キャラハム
原案:スタン・リー&スティーブ・ディッコ
キャスト: (わかった分だけ)
シャメイク・ムーア/Shameik Moore(マイルス・モラレス/スパイダーマン:ピーター・パーカーの死後にスパイダーマンを受け継いだ青年)
【アース65】
ヘイリー・スタインフェルド/Hailee Steinfeld(グウェン・ステイシー/スパイダー・グウェン:マイルスの親友)
ショー・ウィガム/Shea Whigham(ジョージ・ステイシー:グウェンの父、スパイダーウーマンを追う警察署長)
ジャック・クエイド/Jack Quaid(ピーター・パーカー:リザードと化したグウェンの友人)
ヨーマ・タコンヌ/Jorma Taccone(エイドリアーノ・タミーノ/ヴァルチャー:鳥をテーマにした衣装を着るヴィラン)
ニコール・デラニー/Nicole Delaney(MJ:グウェンのバンドメンバー)
アヨ・エデビリ/Ayo Edebiri(グローリー:グウェンのバンドメンバー)
ニーナ・レントティーニ/Nina Lentini(ベティ・ブラント:グウェンのバンドメンバー)
【アース1610】
ブライアン・タイリー・ヘンリー/Brian Tyree Henry(ジェフ/ジェファーソン・デイヴィス:マイルズの父、署長への昇進を控えた警察官)
ルナ・ローレンス・ベレス/Luna Lauren Velez(リオ・モラレス:マイルスの母)
ドナルド・グローヴァー/Donald Glover(アーロン・デイビス:マイルスの叔父)
ジェイソン・シュワルツマン/Jason Schwartzman(ジョナサン・オーン/スポット:別次元を旅できる次元間ポータルで覆われている元科学者)
レイチェル・ドラッチ/Rachel Dratch(ウェーバー夫人:マイルスのカウンセラー)
ジギー・マーレイ/Ziggy Marley(レニー:店主)
Peter Sohn(ガンケ・リー:マイルスのルームメイト)
Atsuko Okatsuka(ユリ:ジェフの部下の警官)
J・K・シモンズ/J.K. Simmons(J・ジョナ・ジェイムソン:デイリー・ビューグルの編集長)
【アース928】
ジェイク・ジョンソン/Jake Johnson(ピーター・B・パーカー/スパイダーマン:マイルスのメンター的存在)
メリッサ・スターム/Melissa Sturm(メリー・ジェーン/MJ:ピーターの妻)
エリザベス・パーキンス/Elizabeth Perkins(メイディ/アンナ・メイ・パーカー/スパイダーリング:ピーターとメリーの娘)
オスカー・アイザック/Oscar Isaac(ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099:2099年の別次元のスパイダーマン、ソサエティのリーダー)
グレタ・リー/Greta Lee(LYLA/ライラ:ミゲルのAIアシスタント)
イッサ・レイ/Issa Rae(ジェシカ・ドリュー/スパイダー・ウーマン:妊娠中のスパイダーウーマン)
アンディ・サムバーグ/Andy Samberg(ベン・ライリー/スカーレット・スパイダー:別次元のピーターのクローン)
アマンドラ・ステンバーグ/Amandla Stenberg(マーゴ・ケス/スパイダーバイト:VRのスパイダーマン)
ダニエル・ペレズ/Danielle Perez(シャーロット・ウェバー/サン・スパイダー)
ニック・ノヴィッキ/Nic Novicki(レゴ・スパイダーマン)
メトロ・ブーミン/Metro Boomin(メトロ・スパイダー)
ジョシュ・キートン/Josh Keaton(スペクトラクチャー・スパイダーマン)
ソフィア・バックレー/Sofia Barclay(マララ・ウインザー/スパイダーUK)
ユーリ・ローエンタール/Yuri Lowenthal(インソムニアック・スパイダーマン)
タラン・キラム/Taran Killam(パトリック・オハラ/ウェブスリンガー)
【アース50101】
ダニエル・カルーヤ/Daniel Kaluuya(ホビー・ブラウン/スパイダー・パンク:別次元のイギリス人のスパイダーマン、ギターが武器)
カラン・ソーニ/Karan Soni(パヴィトル・プラパカール/スパイダーマン・インディア:別次元のインド人のスパイダーマン)
【アース42】
ジャレル・ジェローム/Jharrel Jerome(マイルズ・G・モラレス)
マハーシャラ・アリ/Mahershala Ali(アーロン・デイビス:マイルスの叔父)
【その他】
アンドリュー・ガーフィールド/Andrew Garfield(ピーター・パーカー/スパイダーマン:アーカイブ)
トビー・マグワイア/Tobey Maguire(ピーター・パーカー/スパイダーマン:アーカイブ)
キミコ・グレン/Kimiko Glenn(ペニ・パーカー)
ペギー・ルー/Peggy Lu(チェン夫人:実写の雑貨店、アーカイブ)
キャサリン・ハン/Kathryn Hahn(ドクター・オクトパス)
【日本語吹替】
小野賢章(マイルス・モラレス/スパイダーマン)
悠木碧(グウェン・ステイシー/スパイダーウーマン)
宮野真守(ピーター・B・パーカー/スパイダーマン)
関智一(ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099)
田村陸心(ジェシカ・ドリュー/スパイダーウーマン)
木村昴(ホバート・ブラウン/ホービー/スパイダー・パンク)
佐藤せつじ(パヴィトル・プラパカール/スパイダーマン・インディア)
江口拓也(ベン・ライリー/スカーレット・スパイダー)
■映画の舞台
スパイダーバースの世界
アース65(グウェンの世界)
アース1610(ブルックリン:マイルスの世界)
アース50101(ムンバッタン:インディアの世界)
アース928(ヌエバ・ヨーク:ソサエティのある世界)
アース42(マイルスを噛んだ蜘蛛がいる世界)
■簡単なあらすじ
アース65の世界
ここでは、グウェン・ステイシーがピーター・パーカーがリザードに化けたことに気づかずに殺してしまう
グウェンの父ジョージはピーターを殺したスパイダーウーマンを探していたが、その正体を知らずにいた
ある日、グウェンは父に正体を明かして、彼の前から姿を消した
その頃、アース1610の世界では、進路相談のために両親とカウンセラーとの待ち合わせをしていたマイルスは、スポットという白い姿のヴィランと戦っていたために遅れてしまった
度重なる遅刻などで外出禁止になったマイルスだったが、そんな彼の元にグウェンがやってきた
グウェンはあることを調べていて、それはスパイダー・ソサエティの指示の元行われていた
グウェンはかつてヴァルチャーと呼ばれるヴィランと戦っている時にミゲルとジェスに助けてもらったことがあり、ソサエティへと招かれていたのである
テーマ:スパイダーマンとは何か
裏テーマ:正義の代償と成長と覚悟
■ひとこと感想
『スパイダーバース』の記憶がほぼ飛んだ状態で、予習もなしに参戦
どうせなら「ドルビー」と思い、最前列のリクライニングをチョイスしましたが、「失敗」でしたねえ
映像があまりにも凄すぎるので、脳がそれを処理するので手一杯という感じになっていました
途中からほぼ字幕は追えず、拙いリスニングと字幕チラ見で対応しましたが、この映像を堪能するなら吹替版の方が良いような気がします
ある程度リスニングがOKか、一回観て話がわかっているなら「字幕を無視するつもり」で字幕版(ドルビー、IMAX)などもありかもしれません
物語は「マイルスとグウェンの覚悟」が描かれていて、二人とも「父親とどう向き合うか」というところが描かれていました
この構造さえ理解していれば、この二人の物語がほぼ並行で描かれ、最終的に集約していくということがわかると思います
映画は「思いっきり前半戦」でしたが、来年の公開とのことのなので、あまり待たされずに済むのは良かったですね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
前編なのでネタバレもあったものではないのですが、今回のオチを理解するには「前作までの知識が必要」であると思います
アース42から来た蜘蛛のあたりのエピソードは「なんとなく」しかわからず、プラウラーがわからないと驚きも何もないという感じでしょうか
さすがにほとんど覚えていなかったのでポカーン状態でしたが、プラウラー=マイルス(アース42)というところがサプライズになっていましたね
その後、「戦いはこれからだ!」ということで、正体がほとんどわからないまま次回に持ち越しになったスポットと戦うメンバーが選出されていました
あまりにも多くのスパイダーマンが出てきたので、はっきり言って「誰が誰だか」完全には理解できていません
とにかく、グウェンとマイルスが中心となって、2099&妊婦ライダー&インディア&パンクがサポートする形になるのかなと思います
映画は、映像がものすごいことになっているので、ドルビー最前列では「脳の処理」が追いつきませんでした
途中から字幕を置いといて、映像美を楽しむ感じになっていましたね
それでもなんとなく伝わってくるものがあるので、それはそれでアリなのかもしれません
もし、ドルビーで見るなら「真ん中あたり」にしておいた方が良いですね
フラッシュも結構エグいので、慣れていない人は酔ってしまうと思います
■マルチバースがもたらした革命
本作は『スパイダーバース』の続編で、たくさんのバースにいるスパイダーマンが集結するという流れを汲みます
思いっきり続編がある前編なので、多くの謎を残したまま後半に突入することになっていました
このマルチバースという概念は、これまでの「煩雑に作られたシリーズ」をひとつにまとめる効果があって、それぞれのバースでスパイダーマンがいてもおかしくない状況を生み出しました
これは禁じ手のようなもので、『アベンジャーズ』に見られるような「実は同じ世界線で活躍していたヒーローの集結」とは違う意味を持ちます
同じような概念でパラレルワールドという概念があって、こちらはある瞬間の選択で分岐した並行世界というものになります
本作の場合は「分岐点」があるのかわからないので、パラレルワールドとは違って見えますが、これは映画内で語られていないだけで、太古の昔の「ある選択」の結果なのかもしれません
次作で、このバース世界の正体が見つかるかもしれませんが、「Beyond」という言葉を考えると、「何らかの原因で多層構造になったバースが集約して一つの世界になる」のかなと考えられます
そうなると、新たなバースで派生するヒーローは作れなくなるのですが、違うバースの同じヒーローを集めさえしなければ問題ないのかなと思ってしまいます
マルチバースは、派生したヒーローを集結させるために使えますが、同じヒーローが何人も登場することで面白くさせるというのは難題なのですね
武器も目的も同じで、ビジュアルも似たようなものになる
ヒーローだけがバースを行き来できるわけではなく、多くの交流が行われます
別のバースの自分と会う影響は無視されているのですが、そのあたりも後半では描かれるのでしょうか
いわゆるドッペルゲンガーのようなものをリアルに描くとこんな感じになるのかなと思えてしまいます
■マルチバースで変わらないもの
本作では色んなバースが登場しますが、ルールがいくつかありました
ひとつ目は「一つの世界に複数のスパイダーマンはいない」というもので、マイルスは別のバースの蜘蛛がやってきたことによる特異的な扱いというものになっています
スパイダーマンは蜘蛛に噛まれることでしか登場せず、この蜘蛛が世界には一匹しかいないということになるのですね
この蜘蛛がどのようにして生まれたのかは分かりませんが、マルチバースの概念に気づいたバースでは、このルールの逸脱が起きないようにコントロールをしていたので、このバースにおける観測というものが基点の一つではないかと推測されます
もう一つのルールは、スパイダーマンの父は警察署長で死んでしまうというもので、これはスパイダーマンが力を授かる代わりに払う代償のようなものでした
また、身近な愛する人の死によって、生殺与奪の力を得たスパイダーマンの暴走を止めるという意味合いがあるようでした
本作では、2日後に警察署長に昇進する父ジェフを助けようとするのですが、これをミゲルたちは全力で止めることになります
このルールの適用に躍起になるということは、裏を返せば「そのルールを逸脱したために何かが起こった」ということになります
ルールが設定されるのは、人間社会でも多く存在するもので、その最高峰が憲法をはじめとした法令になります
これは、過去の人間の行動によって起きた影響によって設定されているもので、同じことがマルチバースの世界でも起きているのでしょう
となると、ミゲルたちのいる「アース928」にて起こした出来事が関係していると考えるのが妥当かなと思います
このルールの設定を深読みするならば、「署長を助けたことによって、命を軽んじるスパイダーマンが現れた」「複数の蜘蛛を同時に存在させたことによって、消滅したバースがある」というところかなと思います
過去の失敗を踏まえて、バースではルールが設定されているのですが、これらのルールは現世代で設定されたものではないでしょう
おそらくは近い過去によって起きたことが教訓となって次世代に伝わっているのだと思いますが、もしかしたら「全てのスパイダーバースは一本の線に繋がる時間軸の分断」なんてことになっているのかもしれません
アースにナンバーを振っている細かな設定なども出てこないのですが、全てのバースを監視できる存在(あるいはバース)とされる「創造主のいるバース」というものが「アース0」だったりするのかなと思ってしまいます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、マイルスがスパイダーマンとして、過去とマルチバースから学び、可能性と感情の結びつきを体現させていく流れになっています
マルチバースの中にいる彼は、バースのルールの外にいる存在で、それは他のバースの人々の脅威でもありました
マイルスがスパイダーマンになったのは、神の手ほどきのように思え、既存の世界を壊す役割を有しています
また、スパイダーマンが不在の世界というものも現れて、その世界ではスパイダーマンに変わる何かが必要とされているのか、そもそも不要なものなのかは微妙なラインだと言えます
アース42はスパイダーマン不在の世界で、この状況を生み出したのが、神の配慮なのか「上の人の実験」なのかはわかりません
でも、意図的なものを排除して、神の奇跡などを引用してくるのは、スパイダーマンの世界観には合っていないように思えます
全ては偶然ではなく必然で、何が起こるかをマイルスの目を通じて描いていく
アースを飛び越えた蜘蛛の存在があるように、バースを自由に行き来できるスポットがいるように、これらの全ては仕組まれたものだと推測できます
スポットを倒すことが本作と次作のメインになりますが、スポットの存在はスパイダーマンが生まれることになった要因であると思います
もし、全てのバースが一列に並んでいて、まるでメビウスの輪のように繰り返す存在だとしたら、時間軸の隣接という概念は変わっていくのかもしれません
アース65の前後はアース64とアース66になるはずですが、時間の概念を超えた多次元の世界は、遠目に見れば球体に見えるのかなと思ってしまいますね
また、別のバースに行けるのは、メビウスの輪を歪ませて遠いバース同士を近づけることで可能というようにも見えますので、その乱用は輪の秩序を乱すことになるように思えました
どのような落とし所を用意しているのかはわかりませんが、隣接しないマルチバースへの往来は常にバースが流動しているから可能なのかなと思います
スポットは自分の中にポータルを持っていますが、彼自身の存在が裏返る時、宇宙の謎は解けるのかもしれません
それは「Beyond」の世界なのかわかりませんが、色々と妄想して来年に備えるのは悪くないのかもしれません
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/380370/review/b31b2785-ef8a-4292-af20-097a2168dc2c/
公式HP: