■そう言えば、最後まで誰も「リボルバー・リリー」とは呼ばなかったような気がしました


■オススメ度

 

ガンアクション映画が好きな人(★★★)

綾瀬はるかさんのファンの人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.8.11(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報:2023年、日本、139分、G

ジャンル:隠居した諜報員が事件に巻き込まれる中で過去と向き合うアクション映画

 

監督:行定勲

脚本:小林達夫&行定勲

原作:長浦京『リボルバー・リリー(2019年、講談社)』

 

キャスト:

綾瀬はるか(小曾根百合/リボルバー・リリー:冷酷非情な諜報員、カフェー「ランブル」のオーナー)

長谷川博己(岩見良明:百合を手助けする弁護士)

羽村仁成(細見慎太:百合を訪ねて逃げる少年)

 

シシド・カフカ(奈加:カフェー「ランブル」の従業員)

古川琴音(琴子:カフェー「ランブル」の従業員)

 

清水尋也(南始:百合たちを追う謎の男)

 

ジェシー(津山ヨーゼフ清親:慎太を追う陸軍大尉)

葵揚(村田:陸軍少尉、津山の部下)

内田朝陽(三島:陸軍中尉、小沢の部下)

板尾創路(小沢:陸軍大佐、津山の上官)

 

佐藤二朗(平岡:慎太を拉致する地元のヤクザ)

米村亮太朗(雷神:平岡の子分)

二ノ宮龍太郎(金時:平岡の子分)

住久創(般若:平岡の子分)

阿見201(店獅子:平岡の子分)

 

吹越満(植村:内務省警備長官)

 

橋爪功(升永達吉:元陸軍中将、「ランブル」の常連客)

 

石橋蓮司(筒井國松:慎太を匿う老人)

相島一之(坂田:細見家の使用人)

伊藤歌歩(季代:細見家の女中)

葉丸あすか(楠緒:細見家の女中)

山村崇子(細見家の乳母)

 

阿部サダヲ(山本五十六:海軍大佐)

 

野村萬斎(滝田:百合が仕立てを依頼する洋装店の店主)

 

豊川悦司(細見欣也/水野寛哉:慎太の父、投資家)

 

アフロ(風鈴屋)

鈴木亮平(百合を狙う殺し屋)

緑魔子(謎の老婆)

 


■映画の舞台

 

1924年、

帝都・東京

玉の井

浅草

 

埼玉県:

秩父

熊谷

 

ロケ地:

栃木県:日光市

田母沢御用邸記念公園(ガーデンサロン、内務省)

https://maps.app.goo.gl/gyVGqNB56v1zSEZd6?g_st=ic

 

茨城県:常総市

板野家住宅(細見邸)

https://maps.app.goo.gl/oY3vgkxVsvd9LcaS9?g_st=ic

 

静岡県:富士宮市

朝霧高原(列車から逃亡)

https://maps.app.goo.gl/qjux5dpBxoSpc4Cg7?g_st=ic

 

埼玉県:久喜市

鷲宮神社

https://maps.app.goo.gl/9ySnFwezQKLmQUbG8?g_st=ic

 

神奈川県:鎌倉市

覚園寺(池上光緑寺)

https://maps.app.goo.gl/YpgydfyeUkknAnnWA?g_st=ic

 

群馬県:沼田市

21世紀の森(海軍省前)

https://maps.app.goo.gl/GSnWcFaKWAhAa7Wf6?g_st=ic

 

三重県:桑名市

六華苑(大森ホテル)

https://maps.app.goo.gl/Q3T71nrszejeoohf9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

かつて、台湾にて幣原機関という組織で諜報員として鍛えられた小曾根百合は、今は東京の玉の井にてカフェー「ランブル」を経営していた

百合は弁護士・岩見と懇意の中で、様々な調べ物をしてもらっていて、岩見は百合に密かな想いを抱いていた

 

ある日、秩父にて一家惨殺事件が起き、その犯人が自殺したという情報が百合の元に入った

その男は百合の知る人物で、その事件にはおかしな点がたくさんあった

そこで、百合は岩見に事件を調べさせ、そこで細見家には重大な秘密があることがわかる

 

その後、事件現場に出向いた百合は、その帰り道にて、ある少年が陸軍に追われているところに遭遇する

百合は陸軍を蹴散らし、少年を助けるのだが、少年は父からある人物を訪ねよと言われていたことがわかる

その人物こそ、百合自身であり、その少年は百合と関連のある人物だったのである

 

テーマ:因果と信頼

裏テーマ:大義の果てにある醜悪

 


■ひとこと感想

 

ほぼ予告編の内容ぐらいしか知らず、綾瀬はるかさんがリボルバーを撃ちまくるという理解で鑑賞

いわゆる巻き込まれ系の物語で、その理由は自分の過去にあった、という内容になっていました

 

ガンマニア向けのような内容ですが、百合がリボルバーを持つことになる経緯とか一切ガン無視になっていましたね

カフェ従業員は同じ幣原機関の出身のように見えますが、そっち方面の過去はほとんど描かれていません

 

映画は、因縁の少年と逃避行を繰り返すというもので、陸軍VS海軍みたいな内部抗争の様相を呈していきます

地元のヤクザも介入してきますが、単に金が欲しい3勢力が血眼になっているというだけの物語になっていました

 

原作をどこまで再現するかで苦労した感じがありますが、中途半端にふれているので説明不足&放棄の部分も多かったように思います

続編があるのかはわかりませんが、銃の持ち方教えている人の銃の持ち方がおかしいのは演出なのかよくわかりませんでした

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

百合のかつての恋人が、という感じの物語で、後半に急にメロドラマのヒロインみたいな感じになっていて微妙な感じがしましたね

慎太の出自がわかったあたりから無敵の諜報員感というものが消え失せてしまっていて、隙が多すぎて被弾も多いのに生き残っているという無茶な流れになっています

 

巻き込まれ系から理由がわかって使命系に変わっていくのですが、そこで母性登場というほど振り切らないのが何とも言えません

海軍大佐と話をするシーンでも、彼の話を信じるというのもよくわからない感じで、時効を迎えて金が無くなるまで耐え抜く方が良かったように思えてきます

 

結局のところ、金を手にできなかった陸軍からは狙われるし、海軍の裏切りも予期できるものですからねえ

最後に大物が暗殺者として登場しますが、謎の男が金を奪おうとする理由ははっきりとせず、単に百合と戦いたかっただけなのかと微妙な感じに仕上がっていました

 


時代背景あれこれ

 

映画の設定では、関東大震災の翌年の1924年となっています

関東大震災は1923年9月1日に起こった地震で、死者・行方不明者は推定10万5千人だったとされています

この震災では焼死が一番多く、台風に吹き込む強風が関東地方を襲ったことで、木造住宅が密集していた地域で広範囲に火事が起こったからでした

正午前(11時58分)だったこともあり、各家庭で食事の用意などに火が多く使われる時間帯だったことも、被害が大きくなった要因でした

 

政府機関が集中する都市部が直撃したことで、国家機能は麻痺していました

この8日前に当時の内閣総理大臣・加藤友三郎が急死していたため、外務大臣の内田康哉が臨時兼任する事態に至ります

翌日には山本権兵衛が新総理に就任し、帝都復興院を設置し、復興事業に取り組みます

総裁は内務大臣の後藤新平、副総裁に宮尾舜治を据え、この二人は元台湾総督府の幹部でもありました

 

当時の陸軍は、第一世界大戦後ということもあって、世界的な軍縮の流れを受けて、宇垣一成陸軍大臣のもとで三次に渡る軍縮を行なっていました

いくつかの師団が廃止され、陸軍地方幼年学校なども削減に至っています

また、当時の海軍は1920年に行われた海軍増強政策「八八艦隊案」によって、アメリカを仮想敵国に建艦競争を始めていきます

1922年のワシントン海軍軍縮条約によって建艦は一時的に中断されるものの、1936年にワシントン条約及びロンドン海軍軍縮条約からの脱退の後に再開されています

これが映画のちょうど10年後くらいになっているのですね

 


幣原機関って何なのさ(原作未読の想像です)

 

本作は、「幣原機関」にて鍛えられた百合が、台湾での職務を終えて引退している状況から始まっています

この「幣原機関」の元ネタは、幣原喜重郎元総理大臣もしくは、彼の兄である幣原 坦という政治家だと思われます

幣原坦は1919年頃に欧米諸国に出向き、教育制度の考案を行いました

のちの台北帝国大学の設立に寄与した人物で、この大学は日本の統治時代の台湾に設立されましたが、それは1928年のことでした

なので、時系列的には、台湾総督府があった頃の何らかの組織ということになりますね

 

兄の幣原重三郎は外交官から内閣総理大臣になった人物で、彼の活躍機は1928年頃になっています

パンフによれば、この幣原重三郎へのオマージュであったと書かれているので、このあたりの時系列を少し歪めて引用しているということになるのでしょう

映画では、この機関がどのようなものだったのかが全く描かれず、百合がどれほどの敏腕であったかも語り草程度のようになっていました

その機関は存続していないようですが、門下生とされる謎の殺し屋・南は何んらかの機関からの勅命を受けているように思えます(最後まで分かりませんでしたが)

また、ラストで登場する「役名:殺し屋X」も同等なものという感じで、最終的には「古巣の残党から狙われる」という感じになっていました

 

台湾総督府は陸軍の幹部が総督を歴任してきた歴史があり、1919年からは政治家が歴任する流れになっています

1936年頃からは海軍大将に代わり、1944年の最後の総督は陸軍大将の安藤利吉という人物でした

なので、前期の流れから、陸軍配下で秘密裏の特殊部隊が作られ、そこに財閥などが金を投じて作られた機関というふうに想像できます(小説には細かな設定があると思います)

その流れから、台湾繋がりで資本家の流入があり、その金庫番を特殊な契約で保護していたという経緯があるのでしょう

映画では、このあたりがざっくりし過ぎていて、何がどうなっているのかわからないのですが、単純に「陸軍のお金がピンチ!」というレベルの理解で良いと判断されたのだと思います

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、綾瀬はるかさんによる女諜報員の活躍を描くアクション映画なのですが、この手の物語にありがちな「諜報員時代の凄さ」という映像が全くありません

東京の玉の井でカフェをしている人物ですが、弁護士の岩見の好意を利用しつつ、様々なことにアンテナを張っているように描かれています

劇中ではほとんど説明はありませんが、組織のその後と自身の安全保障の面を担保するために、機関の動向を探っていたと思われます

 

彼女の生い立ちが映画では描かれず、幣原機関に入った理由とか、何歳からいたのかとか、どれぐらいの凄腕だったのか、など、何一つ説明がない状態を貫いていました

奈加や琴子と一緒にいる理由も端折られているので、味方の戦力値が見えないまま、争いに巻き込まれているという感じになっています

相手は陸軍であることが判明し、海軍が漁夫の利を得るという流れになっているのですが、陸軍が弱いのか、百合たちが強いのかは分かりにくいのですね

銃撃戦や海軍前の攻防でも、陸軍はただ人数がいるだけで、現場の命令系統は実に脆弱で無能に描かれていました

 

女性特殊工作員の映画はたくさんありますが、「主人公の強さ」に納得ができるものと、単に相手が弱いだけというものがあります

本作の場合は、陸軍の弱さと無能さだけが目立っていて、物量で一斉砲撃をすることすらもありません

土嚢に隠れて撃つの繰り返しになっていて、こちらの弾は百発百中で、相手の弾はほとんど当たりません

最終的にはナイフで胸の辺りを二度抉られたにも関わらずピンピンしているので、改造人間レベルのタフネスを持っているように描かれていました

 

本作は、リアリティラインが曖昧な作品で、それゆえに「完全なる虚構として改造人間というスタンス」で見れば良いのか、「生身の人間でリアルに強いんです」で見れば良いのか分かりません

関東大震災、陸軍&海軍などの当時のパワーワードを使い、幣原機関という架空の組織が登場したりもする

原作のテイストはわかりませんが、映画だけを観た感想だと、「もっと虚構に振り切れば良いのに」と思ってしまう内容なのですね

中途半端な時代考証を入れ込んでいるために、登場人物が使用している銃は当時はなかったみたいなツッコミが入りまくり、吸っているタバコの銘柄もどうなの?みたいな話があり過ぎます

 

個人的にはそのあたりの細かな時代考証は気にしない方ですが、百合の強さの原点を描かずして物語はスタートしないので、シナリオと展開の構成力、情報の取捨選択の不備の方が目立っていたと感じました

なので、綾瀬はるかさんのファンムービーとしてならばOKだと思いますが、説得力はほとんどないので、ドレス着ている姿を堪能するとか、背中あらわになるシーンに釣られましたぐらいの範囲に収まっています

諜報員時代の恋愛なのか、引退後に恋仲になったのか、子どもを失った悲しみを癒すために機関に属したのか、などの設定もほとんどわからないので、そのあたりの根幹ぐらいはきちんとシナリオに入れないと意味がないと思います

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

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公式HP:

https://revolver-lily.com/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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