■ワーグナーの「ラインの黄金」はググっておこう


■オススメ度

 

犯罪映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

 

鑑賞日:2024.4.2(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:Rheingold(ラインの黄金)

情報:2022年、ドイツ&オランダ&モロッコ&メキシコ、140分、PG12

ジャンル:実在のラッパーがブレイクするまでを描く犯罪自伝映画

 

監督&脚本:ファティ・アキン

 

キャスト:

エミリオ・サクラヤ/Emilio Sakraya(カター/ジワ・ハジャビ/Xatar/Giwar Hajabi:イスラム革命で迫害された音楽家一家の息子)

   (10代:Ilyes Moutaoukkil

   (幼少期:Baselius Göze

   (赤ん坊:Ama Razzazi

 

モナ・ピルサダ/Mona Pirzad(ラサル:ジワの母、オーボエ奏者)

カルド・ラザーディ/Kardo Razzazi(エグバル・ハジャビ/Eghbal Hajabi:ジワの父、指揮者&作曲家)

Minú Köchermann(ザニーナ:ジワの妹)

   (幼少期:Jesse Goldau

 

ソゴル・ファガーニ/Sogol Faghani(シリン:ジワの想い人)

   (幼少期:Greta Sophie Schmidt

   (少女期:Antonia Bilhac

   (10代:Madouna Said

Jesse Goldau(ディラン:シリンとジワの娘)

Meryem Moutaoukkil(シリンの母)

 

フセイン・トップ/Hüseyin Top(サミー:ジワの友人、CDコピー)

   (少年期:Rahmen Beljuli

 

アルマン・カシャニ/Arman Kashani(ミラン:ジワの友人、マフィア繋がり)

   (幼少期:Latif Hussein Elias Hussein

 

デニス・モシット/Denis Moschitto(マエストロ:ジワの楽曲に関わるDJ)

 

Ugur Yücel(イェロ:マフィアのボス)

 

Doga Gürer(ムラート:金塊強奪の仲間)

Samir Jebrelli(シダール:金塊強奪の仲間)

Jennifer Wob(シダールの妻)

 

【シリア(冒頭)パート】

KubilaySarikaya(ババ:シリアの囚人のボス)

Hadeer Khairi Hando(レイフ:シリアの囚人)

Ivar Wafaei(看守)

Sedat Kirtan(看守)

Ahmed Zirek(サマール:金塊を探すシリアの尋問官)

Adjmal Sheerzoi(ワリド:イラクの刑務所の拷問男)

 

【回想:父の指揮者時代】

Meryem Moutaoukkil(テロリストに立ち向かう勇敢なヴァイオリニスト)

Majid Bakhtiari(ムラー:テロリストの男)

Fatih Akin(ペシュメルガ:テロリストの男)

Layla Fadili(赤ん坊を探す村の若い女性)

Hicham Quarada(イラク国境警察官)

Amine Ghouada(サマワの刑務所の看守)

Anas El Akil(サマワの役人)

Abdellatif Chadellatif(サマワのドライバー)

Beri Shalmashi(USDの文化庁職員)

Farvad(ジナー:医師)

 

【回想:ジワの青春時代】

Korkmaz  Arslan(ハルン・シカク:ボクサー)

Loretta Stern(ソフィア・ボッツ:ピアノの先生)

Hussein Eliraqui( セム:薬パクるワル)

Selam Ali(ザル:セムの連れ)

 Julia Goldberg(ヴィオラ奏者、エグバルの不倫相手)

Constantin Gardemann(同級生)

Aurel Klug(同級生)

Jonathan Sussner(同級生)

Mathelehrer(同級生)

Harald Schwaiger(マーロン・ハイデル:高校の教師)

Petra Kalkutschke(校長先生)

Cem Babatas(セムのギャング仲間)

Affissou Adamou(セムのギャング仲間)

Serkan Ataman(セムのギャング仲間)

Mohammad Araqui(セムのギャング仲間)

Mücahit Alton(セムのギャング仲間)

Greta Schmidt(友人のギャングのメンバー)

Roosmarijin Wind(婦人警官)

 

【回想:ジワのマフィア時代】

Robert Elevert(クラブの警備員)

Ruben Brinkmann(クラブのオーナー)

Poal Cairo(マイク:クラブを牛耳るマフィア、イェロの部下)

Emilija Jakutye(カフェのウェイトレス)

Uğur Tasbilek(アーメッド:イェロの部下)

Cem Akin(イェロの相談役)

Salman Kurtulan(イェロの部下)

Senol Shayn Uğurlu(イェロの部下)

Gökhan izigi(イェロの部下)

Halim Demirel(イェロの部下)

Kazim Demirabas(イェロの部下)

Natalio Rijssel(スリナム人の男)

Shaima Boone(講師)

 

【回想:音楽ビジネス黎明期】

Karim Günes(トルコのロックアーティスト)

Ensar Albayrak(SSIO/カナコンダ:マエストロと組んでいたラッパー)

Alkan Çöklü(オズカン:売春宿の男?)

Joyce Sanhá(ジョイス:売春婦?)

Magdalena “Maggie” Bennarcyk(シスター・エヴァ/SCHWESTA EWA:売春婦のラッパー)

Yusuf Özkaya(セムの麻薬の卸売の男)

Denis Marshall Ölemez(粗暴な男)

Jesse Albert(粗暴な男)

 

【回想:やらかし&挽回】

José Barros(金塊情報を教える肥満の男)

Vincent Redetzki(肥満の男の連れ)

Kai Jänichen(金歯を抜く葬儀社)

Elfriede Krebs(金歯を抜かれる遺族)

Uwe Rohde(金を運ぶ男、バーの酔っ払い)

Wolfgang Czezor(ゲルハルト・シュナイダー:酔っ払いの同乗者)

Marcus Krone(ハイウェイの警官)

Laurens Walter(ハイウェイの警官にツッコむ検察官)

Markus Beck(裁判官)

Cigdem Gengin(ネイルスタジオの女性)

Torsten Lemike(ダマスカスの警備)

Timo Krogoll(シリンの同僚、クラーク)

 

【シリア(ラスト付近)】

Zülküf Canan(強制執行管理者)

Ivar Wafaei(ジワの同室の囚人)

Sidar Coskun(ジワの同室の囚人)

Maestoro(ジワの同室の囚人)

Samy Abdul Hadi(サミーの同室の受刑者)

Adam Bousdoukos(JVAの男、CDにサインもらう男)

Philipp Baltus(弁護士の声)

 

【ラストのイメージショット】

Daniela Rooler(ライン川の乙女、人魚)

Cristina Gwiasda(ライン川の乙女、人魚)

Andrea Scheider(ライン川の乙女、人魚)

 


■映画の舞台

 

シリア&イラン&イラク&パリ&ドイツ&オランダ

 

ロケ地:

ドイツ:ノルトライン・ヴェストファーレン州

ボン/Bonn

https://maps.app.goo.gl/HgKji8wPTSFwmJsJ8?g_st=ic

 

オランダ:

アムステルダム/Amsterdam

https://maps.app.goo.gl/i4pJWwHZPaKQG6Y57?g_st=ic

 

モロッコ

 


■簡単なあらすじ

 

指揮者の父、オーボエ奏者の母の元で育ったジワは、母のお腹にいた時にテロリストに捕まり、テロ組織との戦いの中で生まれていた

中東を点々とする中で、父が音楽家だったことで赤十字に助けられることになり、ドイツにてようやく平穏な日々が始まると思っていた

 

だが、悪友サミーとの出会いから素行不良になり、徐々にガラの悪い大人たちと付き合うようになってしまう

また、幼少期は育ちの良さを見せていた旧友ミランも交友関係がヤバくなっていて、その伝手でマフィアのイェロと絡むことになってしまう

 

イェロとの刺激的な日々の中、クラブに出向いたジワは、そこでラップで盛り上がる人々を目の当たりにする

そこで、レーベルを立ち上げるために一攫千金を狙うものの、ドツボにハマってしまうのである

 

テーマ:黄金の掴み方

裏テーマ:黄金の隠し方

 


■ひとこと感想

 

ラップで財を為した男の自伝と思っていましたが、その多くは「黒歴史」をひたすら眺めるという感じになっていましたね

とは言え、ヒットした楽曲ができる経緯を映像化しているので、この内容になるのは仕方ないと思います

激動の幼少期もさながら、テロと戦いながら出産した母がエゲツなくて、その後もずっとジワを支えてきたのは凄かったと思います

 

映画は、ほぼ犯罪映画で、「シリアで捕まっているのはなぜ?」を紐解く流れになっています

冒頭で三人の主要格が捕まったことがわかり、ジワ、サミー、ミランとどのように出会い、悪さをしていったかを描いていくのですね

かなり幼少期に絆ができていて、まったく違う人生を生きているのに絡んでいくところは面白くもありますね

あまりにも破天荒すぎるのでついて行けませんが、よく死ななかったなあと思いました

 

個人的なツボはコカインビールを落とすシーンでしょうか

後ろから追突されておじゃんになって、雨の中慌ててたらサミーがやらかしてという流れは実にテンポの良い寸劇を見ている気分になりました

エンディングでヒットした楽曲が流れますが、その内容の赤裸々加減に笑ってしまいます

でも、あんな場所で、あんな方法で録音したものが大ヒットを生むというのは、いつの時代にもあるもんなんだなあと思ってしまいました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画は、ジワことカター(Xatar)が成り上がるまでを描いていて、シリアで捕まっているシーンから始まります

この逮捕は、音楽レーベルを作るためのお金稼ぎの失敗のようなものですが、金をどこに隠したかは最後まで明かされていないので、ある意味「勝ち」なのかもしれません

エンディングで娘に耳打ちするシーンにて、ラインの乙女が登場し、近くの川にあるというおそらく嘘なんだろうなあというシーンで締めくくられていたのは面白かったですね

 

映画は、無計画な犯罪の想像通りのやらかしを描いていて、それを挽回しようとしてさらにハマるという展開を繰り返していました

思いつきは最高なのでしょうが、その後の冷静じゃないところに「美味しそうな話が舞い込む」と抗えないように思えます

現金輸送が素人のわけがなく、それでも成功してしまうのは笑ってしまいますが、高速の警官にマジキレしている検察官も笑いどころでしたね

 

物語としての面白みは普通ですが、小ネタが多いので、このゆるーいノリについて行ければOKでしょうか

歌詞にもあるように「ある日、母親の元に特殊部隊がやってきた」のくだりは、その後どうなったのか気になってしまいますね

あの母親なら、息子を懲らしめてくださいと言わんばかりに、色々と情報を提供したように思えてきます

それにしても、あの夜で一発で決めるところは流石だなあと思ってしまいました

 


ジワ・ハジャビについて

 

XATARことジワ・ハジャビは、1981年生まれのドイツのラッパー、プロデューサーとして名を馳せている人物で、Alles Oder Nix Recordsなどのいくつかのレーベルを持っています

自身のレーベルを通じて、SSIO(映画ではカナコンダ)、Schwesta Ewa(売春婦として登場)、Kalim、Eno、Shindy、Sero el Meroなどをヒップホップで成功させました

この他にも、ファーストフード会社、水タバコ、ラウンジ経営、ジュエリーとファッションにも業務を拡大させています

2015年に自伝『Alles oder Nix: Bei uns saga man, die Welt gehört dir(All or nothing:世界はあなたのものだと言おう)』を執筆しています

 

両親は音楽家で、彼自身も高等教育を受けていて、最終学歴はロンドンのメトロポリタン大学となっています

両親はクルド人で、父は音楽教師、1980年代初頭に両親はイラクへ逃亡し、この時に第一次湾岸戦争が勃発しています

サダム・フセインによってクルド人への攻撃があり、両親は拷問され、投獄されていて、彼自身ものちにバグダッド近郊にて3ヶ月間監禁されました

 

彼の音楽のルーツは「青少年センター時代」で、そこで「Xatar(危険という意味)」の名義でラップやビートを作り始めます

2007年に最初のレーベルを立ち上げ、SamyとSSIOと契約を果たします

また2008年末には最初のアルバム『Alles oder nix』をリリースすることになりました

 

その後、2009年に金塊輸送トラックの強盗を起こし、彼と共犯者は170万ユーロの金を盗んでイラクに逃亡しています

翌年にきちんと逮捕され、ドイツに引き渡されたのちに投獄されることになりました

映画で描かれるアルバム制作は実はセカンドアルバムで、密輸した携帯電話でインストを作ったり、歌詞をボイスレコーダーに録音して、それを自身のレーベルに送っていました

この時に色んなアーティストが参加し、『415』という囚人番号にちなんだタイトルのアルバムがリリースされます

 

このアルバムはドイツのアルバムチャートで19位に入り、スイスで23位、オーストリアで52位に入ることになります

その後も、投獄中にSSIOのアルバムを2枚、エヴァのアルバムを1枚、カリムのアルバムを1枚リリースさせています

そして、3枚目のアルバム『Baba aller Babas』が2015年にリリースされ、これがドイツでチャート1位を獲得することになります

ちなみに、映画のラストで登場する楽曲は『Mama war der Mann im Haus 』という楽曲でした

↑映画の映像が織り込まれているMVになります

 


ライン川の乙女(人魚)について

 

映画のタイトルにもなっている「Rheingold」は、リヒャルト・ワーグナーが作曲したオペラ『ニーベルングの指輪』の徐夜に当たる楽曲で、初演は1869年のミュンヘンの宮廷歌劇場で行われたものでした

台本はワーグナー自身によるもので、引用元としてドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』、アイスランドの歌謡集『エッダ』などがあります

物語の舞台はライン川流域で、時代は神々が生きていた時代という設定になっています

登場人物は、ヴォーダン(神々の王)、ローゲ(火の神)、エルダ(大地の母神)、フリッカ(ヴォーダンの妻、結婚の神)、フライア(フリッカの妹、美の女神)などが登場し、ニーゲルング族の小人、巨人族、ラインの乙女(ヴォークリンデ、ヴェルグンデ、フロースヒルデ)などがいます

 

物語は、川底に眠るラインの黄金を守っているラインの乙女たちが登場し、ニーゲルング族のアルベリヒが彼女たちに言い寄るところから始まります

アルベリヒは相手にされませんが、「愛を断念したものだけが世界を支配できる指輪を作ることができる」と教えられ、彼は愛を捨てて黄金を奪い、地下の国へと逃げていきます(第1場)

その後、ライン川を見下ろす山の上では、ヴォータンは巨人族のファーゾルとファフナーにヴァルハラ城を作らせていました

完成後、巨人族は約束の報酬としてフライアを要求しますが、それに困ったヴォータンは、火の神ローゲの入れ知恵にて、アルベリヒが指輪を使って集めた財宝を与えようと考えます(第2場)

ヴォータンとローゲは死の国ニーベルハイムに降りていき、そこでアルベリヒを騙すために「隠れ頭巾」を使い、彼を蛙に変えてしまいます(第3場)

ヴォータンとローゲに騙されて財宝を奪われたアルベリヒは、指輪に呪いをかけて去っていきます

巨人はヴォータンに財宝と一緒に指輪も要求しますが、ヴォータンはそれを拒みます

大地の神エルダは呪いの指輪を手放すように言い、それを巨人に渡したところ、巨人同士で指輪を奪い合って喧嘩になり、そのまま国へと帰ってしまいました

そして、神々はヴァルハラ城に入ることができた、という結末になっています(第4場)

 

映画では、父と最初に観に行ったオペラが「ラインの黄金」で、それは「黄金を世界を支配するための指輪に変える」という意味合いがありました

ジワたちは黄金を盗み、それを何かに変えたのだと思いますが、それとわからないものに変えたのでしょう

映画では言及しませんが、おそらくはそのまま指輪になっているんじゃないかなあ、と思ってしまいました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、あるラッパーが世界を掴む様子を描いていますが、実質的には犯罪映画の様相を呈していました

幼少期は湾岸戦争の余波を受け、まさかの戦闘中に出産という凄まじいところから始まります

父は厳しい人でしたが、最終的に若い女と逃げるという最悪の行動をしてしまいます

それが反面教師になっているのか、ジワ自体は身持ちが硬い感じに描かれていました

 

ラップ文化は嫌いではありませんが、センスがないのでカラオケで歌えないのが難点ですね

言葉数が多くて覚えきれないので、歌詞見ながらしか歌えないし、変な韻の踏み方をしている「俺、かっけえ系」は苦手だったりします

カラオケバトルでラップ限定の大会をして、100点取れる人が出るのか見てみたいですね

あとは千鳥の番組でラップ部分だけを取り上げるとかやらないでしょうか

平井堅でBBBBとか、無理かなあ(無理ですよね)

 

映画で印象的だったのは、刑務所でのデータ交換のシーンでしたね

SDカードを指で弾いて交換するのとか、一瞬すぎて笑ってしまいました

毛布かぶってコーラス重ねるとかも傍で見てたら爆笑ものでしょうけど、世紀の瞬間の横で過ごしていたというのは語種になっているのかもしれません

 

映画では、まんま日常を切り取った歌詞になっていて、どんなものでも音楽になるのだなあと思い知らされます

でも、トラックメーカーのマエストロの存在はとても大きいですよねえ

ラップの独特なビートはパターンの繰り返しが多いのですが、そこにフックを効かせて変化させているので、とても心地が良い音楽になっていました

立体的な音楽をどうやって作るのかは分かりませんが、売れるには売れるだけの要素があるんだなあと感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/100941/review/03675078/

 

公式HP:

https://www.bitters.co.jp/rheingold/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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