■夢を叶えたのは「⚪︎⚪︎」だけど、それを言ったらおしまいだよねえ
Contents
■オススメ度
実話系映画が好きな人(★★★)
スイーツが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.4.2(アップリンク京都)
■映画情報
原題:A la belle etoile(星空の下で)、英題:Sugar and Stars(砂糖と星々)
情報:2023年、フランス、110分、PG12
ジャンル:実在のパティシエが世界大会に挑む様子を描いた伝記映画
監督:セバスチャン・テュラール
脚本:セドリック・イド
原作:ヤジッド・イシェムラエン『A Starry Child’s Dream(2016年)』
キャスト:
リアド・ベライシュ/Riadh Belaïche(ヤジット・イシェムラエン/Yazid Ichemrahen:パティシエ世界一を目指す育児放棄された青年)
(8歳時:Marwan Amesker)
ルビナ・アビダル/Loubna Abidar(サミナ:ヤジッドの母)
クリスティーヌ・シティ/Christine Citti(シモーヌ:ヤジッドの養母)
パトリック・ダスマサオ/Patrick d’Assumçao(パスカル:ヤジッドの養父)
Phénix Brossard(マチュー:シモーヌとパスカルの息子)
ジャン=イブ・ベルトルート/Jean-Yves Berteloo(ルナ・マセナ:「hôtel Paris」のヤジッドの憧れのシェフ)
Frédéric Saurel(アントワーヌ:「hôtel Paris」のシェフ)
Justine Honorez(「hôtel Paris」のパティシエ)
Frédéric Radepont(「hôtel Paris」の支配人)
Jasmin Selimovic(デジャン:「hôtel Paris」のホール係)
パスカル・レジティミュス/Pascal Légitimus(ブシャール:ヤジッドのスイーツを気に入る実業家)
エステバン/Estéban(ジュリアン:「コートダジュール」の意地悪な料理人)
源利華(サトミ:「コートダジュール」のシェフ)
Georges Corraface (シャルル・バション:「コートダジュール」のオーナー)
ディコシュ/Dycosh(マニュ:「コートダジュール」の料理人、ヤジッドの友人)
Richard Roggero(「コートダジュール」の支配人)
Kim Koolenn(ジェス:「コートダジュール」の料理人)
Sandrine Dumas(ヴィクトリア:寮長)
Saïd Benchnafa(サミー:面倒見の良い寮のスタッフ)
Saboor Sahak(オタック:寮の食堂の料理人)
アニ・マンスール/Anis Mansour (アルバン:寮時代の友人)
Lancelot Jardin(セドリック:寮時代の友人、ラッパー)
Hakou Benosmane(スティーヴ:寮時代のルームメイト)
Bakary Diombera(ケヴィン:寮時代の悪友)
Meledeen Yacoubi(ハジョージ:寮時代のドラッグの売人)
Frédéric Fix(フレッド:フランス代表のパティシエ)
Guillaume Bursztyn(フランス代表のチームコーチ)
Philippe Beglia(世界選手権の主賓)
Ary Gabison(世界大会のスタッフ)
Alexandros Giannou(世界大会のスタッフ)
Audrey Looten(世界大会のプレゼンター)
Sebastian Marx(世界大会プレゼンター)
Philippe Beglia(世界大会の主賓)
Vincent Jouan(世界大会の審査員)
Julie Bargeton(ミルナ:社会福祉士)
Adeline Tayoro(サミナの友人)
Nawal Ach Chajai(サミナの友人)
Frédérique Kuhnowski(サミナの主治医)
Nellie Tarizzo(バーのウェイトレス)
Kizo(フランス大会の警備員)
■映画の舞台
フランス:エペルネ
https://maps.app.goo.gl/7jSFjiFxydD7ibJR7?g_st=ic
フランス:パリ
ロケ地:
フランス:エペルネ
https://maps.app.goo.gl/7jSFjiFxydD7ibJR7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
フランスの田舎町のエペルネに住んでいるヤジッドは、養父母の元で育てられ、学校の寮で生活をしていた
彼はパティシエになる夢を持っていて、パリのレストランでシェフをしているマセナの元で働きたいと考えていた
ヤジッドはシェフの知り合いとツテがあるように偽装して面接を突破し、見習いとして潜り込むことに成功した
ヤジッドは生活の破綻した母サミナから切り離され、シモーヌとパスカルの元で育ってきた
だが、母はヤジッドに執着し、ルールを捻じ曲げて息子と過ごそうとする
それでも、夫に逃げられ、新しい男とも破滅的な生活を繰り返していて、その惨状はヤジッドの心を廃れさせてきていた
彼は高級ホテルのレストランで勤めることになったが、面接はでっち上げで、実力を見せて居残ろうと開き直る
マセナは才能の片鱗を感じて彼を残し、ヤジッドはマセナから多くのことを学んでいく
ホテルを辞めた後も高級レストランで自分を磨き、ようやくパティシエの全国大会への扉が近づきつつあった
テーマ:夢を叶える行動力
裏テーマ:行動を起こさせるもの
■ひとこと感想
世界王者になったパティシエの実録もので、ヤジッド本人による自伝が原作になっています
幼少期の手癖の悪さ、遅刻癖など、生活面で擁護すべき点はほとんどありませんが、作品に関してはそれを黙らせるものがあったように描かれていました
基本的に甘いお菓子が苦手な部類で、好んで食べることはしないのですが、映画に登場するスイーツなら観て楽しめそうな感じがします
てか、あれを食べるんですよねえ
お値段云々を置いておいてももったいないなあと思ってしまいます
映画は、スイーツはガチな仕上がりになっていて、変に主人公を美化することはないように思えます
とは言え、素行が悪すぎるので、あまり応援しようという感じにはならなかったですね
パトロンや顧客には恵まれたけど、女性関係がまったく出てこないのは配慮なのか実話なのか、気になってしまいます
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本人の自伝の映画化ということで、ある程度の脚色は入っていると思いますが、事のほか美化をしていない感じに仕上がっています
とは言え、トントン拍子に上っていってしまうので、母親以外のハードルがなかったように思えます
意地悪なシェフが登場したりしますが、色恋沙汰で道に迷うというのもなかったですね
スイーツを作るシーンで暗転するという「ここ、集中しているシーンですよ」というわかりやすい演出がありましたが、何度も登場すると「そろそろ、来るで」という感じになってしまいます
そこにブレーカーが落ちるという、おそらく狙ったけど滑っている演出がありましたね
他のブースの電源が落ちなかったのは笑いましたが、あれも事実なのでしょうか
映画は、スイーツを目で見て楽しむという感じになっていて、おそらくあのスイーツを食べることができても、旅費などを入れてものすごい値段がしそうな気がします
とは言え素人に再現できるものではなく、パンフレットにも説明はあるけどレシピはない、という感じになっていました
■ヤジッド・イシェムラエンについて
映画の主人公のヤジッド・イシュムラエン(Yazid Ichemrahen)は、フランス・エペルネ出身のパティシエで、モロッコ出身の両親のもとに生まれました
2歳〜10歳まではチョウイリーに住む里親のもとで育っています
彼はパティシエ見習いの間に、ショコラティエのパスカル・カフェ(Pascal Caffet)、パティシエのアンジェロ・ムサ(Angelo Musa)、フィリップ・コンティエーニ(Philippe Conticini)、そしてジョエル・ロブション(Joël Robuchon)の料理学校で学びました
彼が栄光を手にしたのは、2014年のフローズンデザートコンテスト(Jelato World Cup)で、そこで世界王者となります
その後、モナコにあるジョエル・ロブションのレストラン「メトロポール」で副料理長を務めたのち、アヴィニヨンに高級ペストリーショップをオープンすることになりました
彼は自身の旅と美食に対する考え方をまとめ、2016年に『A Starry Child‘s Dream』を執筆し出版しています
また、2023年には『il sort Créer pour survivre, vivre pour ne pas sombrer』という書籍を出版しています
映画は、彼の幼少期からの生活を赤裸々に綴っていて、若干犯罪自慢めいたところもありましたね
時効と言えばそれまでですが、ヤンチャすぎて引いてしまいます
でも、映像化できるのがあれぐらいだとしたら、という感覚が無きにしもあらずですね
それは、1回や2回の練習でスイーツが作れるほど甘い世界ではないからとも言えますね
■パティシエの大会について
ヤジッドが挑戦したのは、2014年の「Gelato World Cup」という大会でした
この時のメンバーは、ヤジッドの他にクリストフ・ブーレ、ブノワ・ラガッシュがいて、フランスチームのマネージャーはエリー・カザウスという人物でした
大会は2024年の段階で20年以上の歴史がある大会で、世界シェフ協会をはじめとした運営形態になっています
2024年にはイタリアが優勝、2位が韓国で、3位はハンガリーでした
大会の規則によると、「ジェラート ワールド カップ」展は、Associazione Gelato e Cultura (アイスクリームの価値を高める文化運動のこと)のアイデアから生まれ、 リミニ・フィエラとジェラート・エ・カルチャー協会が主催している、とのこと
2年ごとに開催され、世界中から集まったチーム(ジェラートメーカー、チョコレートメーカー、シェフ、氷彫刻家で構成される)によるコンテストで構成されています
2014年は「Sigep, International Exhibition Artisan Production of Gelato, Pastry, Confectionery and Bakery」の会期中に開催されています
優勝チームには「2014年ジェラートワールドカップチャンピオン」の称号が与えられ、翌年の大会には出られないとのこと
各チームは、ジェラート作り、チョコレートとペストリー作り、氷の彫刻、高級料理の能力を持つ参加者 4 名とチームマネージャーで構成されます(映画はシェフ3人、マネージャー1人)
メンバーは、出場する国の国民であるか、その国で少なくとも 5 年間働いたことを証明する必要があります
チームマネージャーは、ジェラートワールドカップの技術審査員の一員となりますが、審査に投票する権利はないとされています
詳しくはPDFファイルになりますが、以下に大会規則(2014年版)がありますので、興味のある方は読んでみても良いかもしれません(英語でした)
PDFを全文コピペしてWordなどに貼り付けて「翻訳機能」を使ってみてください
↓「Gelato World Cup 2014 Edition」URL
https://www.gelatoworldcup.com/wp-content/uploads/2011/09/Regolamento-CMG-2014-ing-copia.pdf
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は自伝本がベースになっていて、それを映画用にアレンジしている内容になっています
自伝本のタイトルに「星(Starry)」が登場するので、冒頭で引用がありますが、これは「ル・メトロボール(映画では「コート・ダジュール」)」時代のエピソードにかかるものだと思います
本人が共同プロデューサーとして映画化に携わっているので、無茶な改悪自体はないとされています(映画化の際に改変しないことが条件だった、とのこと)
それゆえに、映画で描かれるエピソードはほぼ実話ということになっていて、それゆえに素行の悪さというものが目立っているように思えます
とは言え、それは日本が舞台ならという感じで、極限化で育っている状況だと、生きるために必死で、そのトリガーというものは外れてしまうのかもしれません
スイーツ作りが彼を極貧から救うことになりますが、映画では「母との決別」というものがきちんと描かれていました
それを秘密裏に「完全な決別」にしなかったのが養母の計らいのように思えます
物語は、努力で成り上がる様子を描いていますが、それ以上に大切なのは鍛錬を鍛錬と思わない心と、どんな状況でも日和らない不屈の闘争心、そして、類まれなる集中力が必要であることを訴えています
映画の演出にすると少し安っぽい感じになっていますが、それは「多用」によるものかな、と思いました
最後の最後で1回だけというのが理想で、同じ集中力を発揮する場面でも、「音だけ消す」「背景だけ消す(白と黒)」「音と背景を同時に消す」というバリエーションを作ることができたでしょう
個人的には、ラスト以外は不要で、初回の時に「それっぽい感じの演出」にして、集中力すらも成長して「長続きする」というものでも良かったように感じました
映画は、思ってたのと違うという感じですが、これはもう邦題の印象のせいだと思います
副題が「何らかのスイーツを開発して、それで賞を獲った」みたいな印象で、それが「パリ・ブレスト」のように誤解させていますね
ちゃんと作ってはいますが、彼の夢を叶えさせたのがスイーツではなくて「氷像」というところが、「タイトル考えた人映画観てないね」とわかってしまう案件になっています
「お菓子作りの先にあった母親との和解」というのがメインテーマのようなものなので、それをもう少し匂わせるタイトルでも良かったのではないでしょうか
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100793/review/03675079/
公式HP: